気が付くと、そこは地下室のカーペットの上だった。まだ動いているあの機械が目に飛び込んでくる。 そうか、戻ってきたんだ。全く清水の奴、とんでもないことえを……。 俺は体を起こして立ち上がろうとした。しかしくらっとした目眩が俺を襲い立ち上がれない。 「ううう、頭が痛い」 やっと上体を起こしてあぐらをかいた俺は、ヘアバンドを外そうと己の頭に手をやった。 そこにあの金属製のヘアバンドは無かった。それはいい。だが……。 頭にやった俺の手に、自分のものとは思えないさらさらした髪が触れる。 え? そしてヘアバンドの代わりに何か別なものを被っていた。 何だ、この手触り。これ……これって。 慌てて俺は自分の体を見下ろした。 「なんだこりゃあ」 俺は女の服を着ていた。白い襟の濃紺のワンピースの上に、ひらひらのエプロンをつけている。そしてスカートから剥き出しになった、あぐらをかいた自分の脚は白いストッキングで覆われていた。 そう、俺が着ていたのは、あのメイドが着ていたメイド服だった。頭につけているものは、布製のカチューシャの手触りだ。 恐る恐るエプロンの間を覗き込むと、自分の胸がふっくらと膨らんでいるのがわかる。 「この服、この体……まさか」 ガチャリ その時ドアが開くと、清水が部屋の中に入ってきた。 「清水、お前なんて事を……え?」 清水の後から入ってきたもう一人男をみた時、俺は思わず息を呑んだ。そこに立っていたのは……なんと俺だった。 何故俺が俺の目の前に、これはまだバーチャルの中なのか! 清水ともう一人の俺は、カーペットに座り込んでいる俺を見下ろしてにやにやと笑っている。 「どういうことだ。これはまだバーチャルの続きなのか。何で俺が俺の目の前にいる」 「いいえ、あなたはもう現実の世界に戻っているんですよ。でもね」 清水はにやにやしながら手鏡を差し出した。 俺はそれを受け取り中を覗き込んだ。だが、そこに映っていたのは頭にカチューシャを付けた栗色の髪の女の子だった。鏡の中の女の子は不思議そうにこちらを見ている。 この子……あのメイドだ。 「ふふふふ、気分はどうですか、里崎さん、いや可奈子」 清水はにやにやと笑い続けながら俺に向かってそう言い放った。 可奈子? 俺のことか? 「さあ、君はもう自由だ」 自分の後ろに立つ俺の姿をした男に向かって清水はそう言い捨てた。 「へへへ、ようやくその体から解放されたか。全くとんでもない目に遭ったぜ。その体に比べたらこの体でもまだましってもんかもしれないな。なになに、俺は里崎圭40歳か、なんだ中年のオヤジじゃないか。お、だがなかなかかわいい奥さんがいるじゃないか。それに中学生の娘か。ひひひ、こりゃあ楽しみだぜ」 目の前の俺の姿をした男は、だらしなく笑いながら変なことを言っている。 誰なんだ、こいつ。 だが、もう一人の俺はそれ以上俺に構う事無く、嬉しそうに部屋から出て行った。 「ま、待て」 「もう遅いですよ。あなたの体は今まで可奈子をやらせていたあいつにあげたんですから」 「??? どういうことだ」 「あの男も嫌な奴だったんで可奈子にしてやったんですよ。でも僕の命令には従っても、あいつって仕事がチャランポランでメイドには向いてないんですよ。やっぱ仕事の向き不向きってあるんですかね」 「お前何を言っているんだ」 「あなたには、これから僕のメイドをやってもらいます。僕のことが大好きで僕の言うことに忠実に従うメイドの新藤可奈子をね」 「な、何だと!」 清水がポケットからあのヘアバンドを取り出した。 「あ、それ……」 「あの機械のもう一つの機能はですね、子機をつけた者同士の意識を入れ替えることができるというものなんですよ。実はあれはずっと以前に手に入れたものでしてね。最初に可奈子に対して試してみたんですが、調整失敗で彼女の心は壊れてしまった。でも残された彼女の体には面白い作用があることがわかったんです。どんな奴でも可奈子の体になると、僕のことが大好きで何でも従うようになってしまうという作用がね。それから気に入らない人間がいたら可奈子になってもらってるんですよ。だってどんな嫌な人間でも可奈子になると僕に嬉々として従ってくれるんですから。あなたは、いやお前はこれから可奈子として、ぼくのメイドとしてここで働くんだよ。あっはははは」 「そんな馬鹿な。俺はお前にとって嫌な奴だって言うのか」 「入社以来散々罵倒されて、もうあなたと一緒に働きたくないんだよ」 「そ、そんな、俺はお前のことを思えばこそ」 「これからはあの男があなたとして生きていく。まあ、あなたになったあいつが会社やあなたの家で何をするのか、それも楽しみだがね。あっははは」 「な、なんてことを」 俺の体が、課長としての地位が、妻が、娘が奪われる……そ、そんな。 「戻せ、いやだ、今すぐ元に戻すんだ」 俺はソファーから起き上がると清水に掴みかかった。だがその俺の両腕を軽々と受け止めると清水はまたもにやりと笑った。 「ふふふ、今のあなたの力では何もできませんよ。そしてこれからはあなたには私のために働いてもらいますよ。一生この屋敷の中でね」 そして俺の両腕を掴んだまま、清水は俺の口を己の口で塞いだ。 「なにを! うっ、うぷっ……」 それはバーチャルの中でのものとは違う、荒々しく力強いものだった。必死に拒もうとする俺の口の中に強引に奴の舌が侵入してくる。 (や、やめろ、や、め、あ、は……) 拒絶しようとしている俺の心とは裏腹に、口からはぞくぞくとするような快感が広がっていった。唇の温かさ、俺の舌を絡め捕ろうとする舌の動きの強引さ。 嫌だ、気持ち悪い、いや気持ち悪い筈なのに、あ、あふっ、何だこの感じは。 胸の奥でどくんどくんと鼓動が高まっていくのがわかる。 どうしてだ。俺が男に、それも部下の清水にキスされてときめいている。何故だ……。 体の中に広がる心地良さが、俺の抵抗する力を徐々に奪っていった。 俺のか細い腕から力が抜けていくのを感じたのか、清水は俺の唇から己の唇を離すと、腕を掴んでいた手を離して俺の胸をメイド服の上からゆっくりと弄りはじめた。 「う、あ、あ、ああ、あん、ああん」 「ふふふ、感じるかい」 「う、いや、そんな、うあ」 清水は立っている俺のメイド服のスカートの裾からもう一方の腕を差し入れると、俺の穿いているパンツに滑り込ませ、その奥、股間を弄り始めた。 「は、はひぃ、く、くう、う、うん、ううう」 段々とその部分が熱くなってくる。そして胸の高まりは俺の全身を覆い尽くそうとしていた。 「里崎さん、あなたはもう僕の思い通りさ。いやお前はもう可奈子だ。さあ、可奈子」 「はい」 え? 口が勝手に。 「しゃがむんだ」 「はい」 俺は清水の言う通りに素直にその場にしゃがみ込んだ。 「さあ、これを元気にしてくれ」 清水はズボンのファスナーを開くと、俺の目の前に自分のペニスを突き出した。 「はい、ご主人様」 ち、違う、俺は、違う、駄目だ、いやだ、やめてくれ……やめ……て……。 俺は突き出されたものをそっと手に取ると、ゆっくりとそれを頬張った。 「は、はふ、はふ、はふん」 ああ、体の芯がどんどんと熱くなってくる。胸の先が、股間がじんじんとしてくる。何だこの感覚は。 俺は清水のものを口に咥えて喜んでいるのか? そんな、馬鹿な。 そう、嬉しいの。 え? 何だ? あたしご主人様のものを頂けて……嬉しい。 違う、違う、この気持ち、俺じゃない。違う。 だが否定しながらも、何故か口の中の奴のものがいとおしくてたまらない。心の中で別な俺が俺の中をどんどんと覆い尽くそうとしていた。 やがて清水は俺を自分の股間から引き離した。 あたしの口から抜き出されたご主人様のものはすっかりいきり立って脈打っている。ああもっともっとご主人様のもの、しゃぶっていたいのに……え? 駄目だ、もう何が何だかわからない。 清水は奴のことを不満そうに見上げている俺の表情をにやにやと笑いながら見下ろしていた。そして、再び俺に命令した。 「服を脱げ」 「はい」 何故だ、清水の命令が俺の中で心地良く響く。奴に命令されるのが嬉しく感じるなんて。 俺の体は混乱している自分の意識とは無関係にゆっくりとメイド服を脱ぎ始めた。 エプロンを外し、ボタンを外したワンピースがファサっと床に落ちる。 「四つんばいになれ」 「はい」 「尻をあげろ」 「はい」 「もっとだ」 ピシリという音が部屋の中に響く。 「ううっ、あん」 俺は奴の声に促されるように肘を床に付けて頭を下げると、尻を高く差し上げた。その動きに、床に向かって俺の胸からたわわにぶら下がった乳がぷるんぷるんと揺れた。 「よし、じゃあいくぞ」 奴の手がショーツ越しに俺の臀部に宛がわれた。滑らかな生地越しに、その手にぎゅっと力が入っているのがわかる。 奴のものが、口に咥えていたアレが今から俺の、俺のアソコの中に入ってくる……こんな屈辱的なことはない。だが、俺の股間の内側からはむずむずとした感覚と共に蜜が溢れ出し、俺の股間をすっかり濡れそぼらしていた。 ああ早く、早く欲しい。 違う、違う違う、でも……ああ。 奴が3本の指で今度は乱暴に俺の股間のソコを弄る。そして人差し指を、中指をショーツの脇から中に滑り込ませていった。そしてそれは俺の肉襞の中に分け入り、その中を確かめるように少しずつ奥へ奥へと入れていった。すっかり濡れきっていたその部分は、しかし異物の侵入を敏感に俺に伝えていた。 「うっ、いたっ!」 「力を抜け!」 「つぅぅ、は、はい」 床に触れる程に頭を下げたままの姿勢で、あたしはご主人様の命令に答え、踏ん張っていた両足の力を抜いた。 奴は股の間の部分をぐっしょりと濡らしてしまった俺のショーツをペロリを尻から剥ぎ下ろすと、尻を両手で掴み、自身の熱く硬くなったモノを俺のソコに宛がった。パクっと開き、一段と敏感になった花弁にソレの先端が触れているのが伝わってくる。 ああ、今あたしのアソコにご主人様のものが触れている。これから俺の中に入ってくる……。 最早奴の声に逆らうことの出来ない俺の体は、すっかり奴のモノを受け入れる準備が出来上がっていた。 はぁはぁ、はぁはぁ 息がどんどん荒くなっていく。ドキドキとした興奮が体中を駆け巡る。入れられるのをわくわくと待つあたしとそれを拒絶する俺、どっちが本当の俺なんだ。だが、そんな俺の思いを打ち破るかのように、奴が声を上げた。 「いくぞ、うっ」 「はぁはぁはぁ、はひぃ」 その瞬間俺は四つんばいになったまま顔を仰け反らせた。そう、アソコににゅるんと熱いものが入ってきたのだ。 「あふ、あふ、あふ」 「うっ、うっ、うっ」 腰を動かしながら清水が……ご主人様が、俺の後ろから尻に添えていた両手を俺の胸に回し、人差し指で乳首を刺激する。ゆっさゆっさと揺れ動く胸は手の平に絡め取られ、そしてさらに揉みしだかれた。 「あ、あう、ううう、あん、ああん」 乳首の先を撫で回され、さらに快感が体を突き抜ける。ふと見ると、指に刺激されている自分の乳首がつんと立っていた。 胸から体を突き抜ける快感と股間から体中を駆け巡る快感、俺は……あたしはもう何がなんだかわからなくなりかかっていた。 そう、もう全てがどうでも良くなっていた。ただ今はこの快感に身を任せていたい。 「感じる、感じるぅ、ああ、いい〜、気持ちいいよ、ああ、ご主人様、このままずっと、ずっとあたしを愛して……」 「うっ、うぉっ」 あたしの中のご主人様のモノが一段と硬さと膨らみを増した。一番奥に入ってくる。ああ、あたしもイ、イ……ク……。 「あ、ああ、ああああああ…… … ‥ 」 そして一週間が過ぎた。 「行ってくる」 「はい、行ってらっしゃいませ、ご主人様」 朝、いつものようにご主人様が会社に出かける。 あたしは準備していたカバンをご主人様に差し出した。 それを笑って受け取るご主人様。 あたしはその笑顔が何よりも好きだ。 最近のご主人様は何だか機嫌が良い。 きっと会社で良いことがあったのだろう。 それに最近のあたしの仕事振りにもとっても満足されているようだ。当たり前だ。だってあたしはいつもご主人様が何を望まれているのか考えながら行動しているんだもの。それがメイドの心がけだしあたしはそうすることが得意だ。 何故? 何故あたしはそれが得意なんだろう。 それはきっとあたしがご主人様のことを愛しているから。 あたしは新藤可奈子、清水家のたった一人のメイド。 忙しいけれどご主人様のために働く、それがあたしの幸せ。 (了) |