Life 《2》

〜ゼリージュース・青色〜

作:JuJu
 
 
 
 

  chapter.4
 

 体が揺さぶられている。
 気が付くと、目の前に妹の萌がいた。
 

「萌……?」
「よかった、気が付いたんだね? 悲鳴が聞こえて来たら、香里ちゃんが倒れているんだもの」
「香里……? ああ」
 

 思い出した。
 俺は萌の親友の香里ちゃんを包み込んだのだ。クロの時みたく、俺は香里ちゃんになってしまったのだろう。
 俺の口からは、香里ちゃんの声が出た。今度は「ニャーニャー」とかではなく、人間の言葉がしゃべれる。
  これで萌にゼリージュースの事を聞き出せる。
 足元には猫のクロがいた。
 よかった。元気になったみたいだ。
 これなら、取り込んでしまった香里ちゃんも、きっと大丈夫だろう。
 安心したせいか、余裕が出てきた。
 こんな目に遭ったのも、すべては萌のせいだ。
 せっかくだから、しばらく香里ちゃんのふりをして、萌をからかってやろう。
 その後、ゼリージュースの事を聞き出せばいい。
 

「外があまりに暑かったものですから。でももう大丈夫ですわ」
「よかったー。とりあえず、あたしの部屋に行こうよ」
「はい」
「今ジュースとお菓子、持ってくるね?」
「それよりも萌ちゃん、聞きたいことがあるのですが?」
「ん? 何?」
「光一お兄様の事、どうおもってるの?」
「え? お兄ちゃん……のこと?」
「お兄様の事を愛しているのでしょう?」
「な! ……あたし達、兄妹なんだよ? 兄としては好きだけど、そんな恋人みたいに愛しているとか……!!」
「うふふ。本当はお兄ちゃんと、こんな事をしたいのでしょう?」
 

 俺は萌のスカートを一気にまくり上げる。
 

「ひっ? 何? 香里ちゃん?」
「わたくし達親友ですもの。萌ちゃんの考えることなんて、全部お見通しですわ」
 

 俺はパンツの上から、萌の股間を触った。
 

「ね? お兄様と、こういう事がしたくてたまらないのでしょう?」
「ひゃん! ちょ、ちょっと香里ちゃん、いったいどうしたの? 今日はおかしいよ? あ、そこは……だめ……」
 

 俺の指は萌のスリットを探し当てた。
 

「濡れてますわよ」
「それは……」
「親友同士に隠し事はなしですわ。
 

 萌ちゃんのここが敏感なのは、先程までお兄様の事を思いながらエッチした証拠。そうですわね?」
 

「香里ちゃん……どうしてそんな事まで……。
 あっ!
 もっ、もしかしてお兄ちゃん?
 そうだ、この感じ! クロからも感じた、そのいやらしい目つき!!
 香里ちゃんは、そんないやらしい目しない!!」
「お兄ちゃんってなんの事ですの? わたくしは香里ですわ」
「冷蔵庫のゼリージュース、飲んだんでしょ? わかってるんだから!!
「チッ、ばれちゃしょうがないな」
 

 クロの時もそうだったが、なぜか萌にはばれてしまう。
 口調は俺の物になっても、声が香里ちゃんのままなのでなんか違和感を感じる。
 

「お兄ちゃん、ゼリージュース苦手じゃなかったの?」
「間違えて、飲んじまったんだよ。
 それよりも、どうやったら元にもどれるんだよ?」
「排泄をすれば元に戻れるって書いてあったけど」
「排泄? ああ、小便か。やっぱりそれでクロから抜け出たんだな。でもこの姿でおしっこするのか?」
「ダメ!! お兄ちゃん、香里ちゃんの姿で排泄なんてダメ!!
 それに、香里ちゃんの声で、そんな事言わないで!」
「ダメったって……。
 とにかくおしっこすれば香里ちゃんの体から抜けられるんだな?
 じゃあ、スライムからはどうやって元に戻るんだ?」
「スライム?」
「スライムって言うか、巨大なゼリーって言うか……。
 ほら、ジュースを飲んだ後、体が崩れて透明なまんじゅうみたくなるだろ?」
「体が崩れるって?」
 

 萌は慌てて部屋を出て、ゼリージュースの入っていた空のペットボトルをつかんで帰ってきた。
 

「お兄ちゃん! 二本とも飲んじゃったの!!」
「あ……ああ。すまんな」
「そんな……。これは一度に一本までなのに!!
 だから間違って二本飲まないように、一度に一人一本ずつしか買えないのに。
 あたしの時はお兄ちゃんの名前でもう一本頼んだけど……」
「お前って、意外とずるがしこいのな」
「本当に一本はお兄ちゃんにあげるつもりだったのよ」
「それじゃスライムになったのは」
「きっと一度に二本飲んだ副作用よ!!」
「はー、なるほどなぁ」
「なにのんきにしているのよ!! お兄ちゃんこのまま一生スライムのままかもしれないのよ!!」
 

 萌は慌ててパソコンのスイッチを入れると、インターネットにつなぎ始めた。
 

「何しているんだ?」
「このジュースを買った食品会社のウェブにアクセスしているの!
 副作用について、何か書いてあるかも」
 

 だがそこには「青いゼリージュースは、一度に2本以上飲まないで下さい」見たいな事が書いてあるだけだった。
 

「でもスライムなら、好きなだけ人の体に入れるんだろ? 楽しいじゃないか!」
「お兄ちゃんのバカ!! スライムになるって事は、お兄ちゃんがいなくなるって事なんだよ?
 誰かの体を借りたって、それは本物のお兄ちゃんじゃない!!
 第一、スライムってご飯って何食べるの? おトイレは?
 それに、病気になったら、どうやって治したらいいの?」
 

 萌はパソコンのディスプレイから目を離さずに言った。
 俺が近づくと、涙ぐんでいる。
 なぐさめないとな。まったく女って奴は、すぐに泣いて世話がかかる。
 

「悪かったな、お前の気持ちも考えずに。
 だけど大丈夫だ、体がスライムになったって俺は俺だ。
 他にどんな副作用があるのか、スライムの寿命がどのくらいあるのか、まったく分からないが、
 香里ちゃんの姿を借りていても、今ここにいるのは俺だ。
 さ、涙を拭いた拭いた」
 

 俺はハンカチを探して部屋を見渡した。どこにしまったっけ?
 

「ふふ。香里ちゃんになっても、中身はお兄ちゃんなんだね。
 ハンカチはそこの……タンスの一番下だよ。
 やっぱり、お兄ちゃんはあたしがいないと、だめだね。
 あたしがしっかりしなくちゃ」
 

 俺はハンカチを持ってくると、萌に渡した。
 萌は、パソコンの画面を見て、今度はTSショップとか言う店の地図を描き移していた。
 

「ここでゼリージュースを買ったの。一度行ったけど、万が一迷子にならないようにね。鷺之宮駅まで電車で15分間。さあ行きましょ」
「行くってどこに?」
「だから、ジュースを買ったお店に行けば、手かがりがあるでしょ? さあ、いくわよ!」
「この姿でか?」
「まさかスライムの姿で外には出れないでしょ?
 あ、でも確かに、香里ちゃんを知っている人が見たら変だと思うか」
 

 萌は家中からマスクやコート、マフラーやら深めの帽子やらを持ってきて、俺に着せた。
 

「うんうん。これなら香里ちゃんて、ばれないわ。
 プッ!
 お兄ちゃん、これじゃ小学校に現れる変態だよ!」
「お前が着せたんだろうが! それにこのクソ暑いのに、こんなの着てられないって!!」
 

 俺はコート等を脱ぎ捨てた。
 萌はまだ笑っている。
 お前、俺をおもちゃにしてないか?
 

「まあ仕方ないか。今のかっこうで行きましょ。
 その代わり、なるべくしゃべらない事。しゃべるときは香里ちゃんの真似してね」
「わりましたわ、萌ちゃん」
「よろしい! TSショップにいくわよ?」
「もうかよ? 心の準備が……」
「手遅れになったらどうするのよ!!」
 

 萌はそう言うと、香里ちゃんの帽子を俺に手渡して、俺の手を引っ張って玄関に行く。萌はさっさと外に出てしまった。
 俺は靴を履くためにしゃがんで足を伸ばした。
 香里ちゃんの体があまりに自分の体のように動くので、女の体に入っている実感がなかったのだが、
 こうして丈の長いスカートと、白いストッキングに包まれた足をじっくりと見ると、恥ずかしい気持ちになってくる。
 香里ちゃんの手でスカートをまくる。ストッキングは太ももで終わっており、素肌の太ももがあらわれた。
 さらにまくると白い下着が見える。シルクだろうか? 萌のコットンパンツとは違う、品のいいデザインだった。
 この体。これが俺なんだ。
 香里ちゃんになって、俺は外に出るんだ。
 小さな黒い革靴に足を入れた時、俺は香里ちゃんなんだと、脳に強く印象づけられた。
 

「もー、まだ心の準備が出来ていないの?」
 

 玄関の扉が開いた。外に出ていた萌が入ってきて、俺を引っ張る。
 いつもなら萌の引っ張る力など大したことがないのに、香里ちゃんの体だと抵抗が出来なかった。
 俺はバランスを崩して道路に飛び出す。
 

「さ、急ぎましょ、香里ちゃん」
 

 俺は無言で頷いた。
 街を歩くとまったく違った。いつも見なれている風景が大きくなったのは、香里ちゃんが小さいからだろう。
 匂いがした。アスファルトに熱せられた空気の匂い、遠くのパン屋のパンを焼く甘い匂い、洗っていない犬の匂い。
 

「いつもとは違う匂いがしますわ。なんと言うか、普段感じない様な物まで感じると言うか……」
「ふーん? 香里ちゃんて鼻が良いのかもね」
 

 石けんの香りだろうか? 光一の時には乳臭いとしか思ってなかった萌からもいい香りがした。
 俺達は無風状態の新谷商店街を抜けて、新谷駅のホームに着いた。
 

「なあ萌」

 俺は萌の耳もとでささやいた。
 

「何? お兄ちゃん」

 萌も小声で答える。
 

「このストッキングってやつ、脱いじゃだめか? 暑くてたまんねえよ」

 俺は短いスカートから涼しそうに素足を出している萌の足を見ながら言った。
 

「だめだよ。あたしも前に暑いから脱いじゃえばって言ったら、素足は恥ずかしいって言っていたもん。
 いきなり素足になったらおかしいでしょ?」
「この、ブ……ブラジャーって奴も、締め付けて暑くるしいし。お前はいいよな! ブラジャーしてないから」
「悪かったわね!! 電車が来たわよ!!」
 

 萌は俺の手を引っ張って電車に乗った。
 萌が耳元で言った。
 

「お兄ちゃんもブラしている女が好きなの? あたしも付けようかなぁ」
「無理に付ける必要は無いと思うぞ。きついし」
「どう? 女の子って結構大変でしょう?」
 

 俺は香里ちゃんと萌の服装を見比べてから言った。
 

「香里ちゃんだから大変に見えるけどな」
 

 それでも、萌は萌で、俺には気が付かないところで大変なのかな?
 TSショップがあると言う鷺之宮駅から出ると、わずかだが風が吹いてきた。
 これで少しは涼しくなるかと思ったが、湿気を帯びた熱風だった。
 長い髪の毛が風に乗って顔や首筋ににまとわりついて、うっとうしい。
 萌がショートカットにしている気持ちが分かるよ。
 だが、香里ちゃんの長い髪が顔にまとわりつく度に、これは香里ちゃんの体なんだと思い出させた。
 香里ちゃんの体を俺が動かしている。
 ここで香里ちゃんを裸にする事だってできる!!
 あの大人しそうな香里ちゃんが、町中で裸になる。
 

「本当の香里は、こんなにエッチな女の子なのですのよー!!」
 

 香里ちゃんの声で叫んで、道行く人に披露する。
 そう想像しただけで、やってみたいと言う衝動に駆られた。
 もちろん、本気でやる気はない。
 萌がいることもあるが、香里ちゃんにも可哀想だと言う気持ちがあった。
 そうだ、俺が可哀想だとおもうから、やらないだけなんだ。
 やるもやらないも俺の自由。
 香里ちゃんの体をどうにでも出来る。
 香里ちゃんの体は、今は俺の物なんだ。
 

「香里ちゃん、なにしてるの〜! こっちこっち」
 

 遠くで萌が手を振っていた。
 俺は慌てて萌の所に走った。
 もちろん、出来るだけ女の子っぽく。
 俺達はTSショップに着いた。
 TSショップの店員に事情を話すと、このゼリーの開発に関わったと言う、柳沢さんが飛んで来てくれた。
 俺が被害者だと言うと、こんな可愛い娘を選ぶなんて、なかなか趣味がいいなどと言っている。
 ミニスカートに白衣という色っぽい容姿なのに、どこか子供っぽい印象を受けた。
 それとも俺を心配させない様にそう振る舞っているのか。
 柳沢さんには俺に根ほり葉ほり、様々なことを聞いてきた。
 どうやら、俺のことを実験材料とか、珍しい例として興味津々らしい。
 ときどき携帯電話で、トシユキと言う人と話している。
 結局ゼリージュースを飲んだ時の条件。俺の体質や、風呂上がりの体温、胃に残っていた残存物などが作用して、
 偶然にこうなったんだと診断された。
 かんじんな元の戻り方だが、ゼリージュースを大便として排泄をすれば、スライムから人間に戻るそうだ。
 

「本当ですか!? ありがとう御座います!! よかったねお兄ちゃん」
「ああ。でもこの体――香里ちゃんって言うんですが――の体は大丈夫なんですか?」
「あなたが抜け出た後、この娘は眠っていると思うけど、すぐに目を覚ますはず。
目を覚ました直後はちょっとだるいかも知れないけど、体調はすぐにもどるわ。体的な問題はそれだけ。
もちろんあなたが香里ちゃんの体を動かしている間の記憶は残ってないから、問題はないはずよ。
だけど今回は本当に特殊なケースだからね。もう二度と二本一気なんて気を起こしたらだめよ? 
私もどんなことが起こるかか保証できないから」
 

 柳沢さんも変な噂でも立てられては商売に関わると思ったのだろう。
 「あ。でも、ちゃんと用法を守って一回一本を守れば大丈夫」とつけ加えた。
 帰り電車の中。
 萌は笑いながら、涙を流していた。
 

「よかったねお兄ちゃん」

 もちろん小声だ。
 

「お前、こんな所でなに笑いながら泣いているんだよ?」
「安心したら涙が出て来ちゃった」
「どうせ問題がないなら、一週間位スライムになっていたかったのにな」
「バカ言わないの!!」
 

 俺は萌の涙を拭いてやろうと思った。香里ちゃんならハンカチを持っているだろうとスカートのポケットをさがしたが、
 ポケットがどこにあるのかわからなった。
 慌てる俺を見て萌はにやけながら自分のバックからハンカチを取り出していた。
 

「そのスカートは、ポケットがないんだよ、お兄ちゃん。本当あたしがいないとだめなんだから」

 電車は俺達が住む町、新谷駅に向かっていた。
 
 
 
 
 
 

  chapter.5
 
 

 家に帰ってから、俺達は萌の部屋に入った。
 

「それで、お前はあのジュースで何をしたかったんだ?」
「お兄ちゃんになるつもりだったの」
「俺? 男の体でエッチな事をしたかったのか?」
「それはお兄ちゃんでしょ!
 したかったのは、お兄ちゃんになって『萌、好きだよ』って言いたかったの」
「たったそれだけか? せっかく男になったのに?」
「何よ! 何をしようがあたしの勝手でしょ? とにかくあたしにとっては大切な事だったの。
 お兄ちゃんの体を借りっぱなしじゃ悪いから、お兄ちゃんの分のゼリーも買ってきたのよ」
「俺が萌の体を借りていいって事か?」
「うん」
「俺、間違いなお前の体でエッチなことするぞ?」
「うん」
「俺がお前が好きだって言うだけの代償として、自分の体をイタズラされてもいいって言うのか?」
「お兄ちゃんになら……。
 あ。だから、クロになってイタズラしたことは、もう怒ってないよ?」
 

 色々あってクロになって萌にイタズラした事を忘れていた。
 確か香里ちゃんになったばっかりの時も、萌にイタズラしようとした所で終わっていたんだよな。
 

「と言うことは、萌ちゃんの体は光一お兄様の物ですのよね?」
「何?」
「うふふ。イタズラしてもいいんでしょう? じゃさっそく、さっきの続きを」
「続きって?」
「光一お兄様だって、酷い目にあわれたんですから、この程度のお詫びはしていただかないと!」
 

 俺は萌に抱きついた。
 そこにはいつもの小さな萌はいなかった。
 自分と同じ位の大きさの萌。
 本気で抵抗すれば、逃げられるほど大きさ。
 でも萌は、嫌がるだけで逃げようとはしなかった。
 

「調子に乗らないでお兄ちゃん! 何かお詫びよ!
それに、兄妹でエッチなんて……」
「兄妹ではありません。だってわたくしは香里ですのよ?」
「香里ちゃん……」
「はい。萌ちゃん」
「香里ちゃん……。今は香里ちゃんなんだよね?
だからいいんだよね。
兄妹じゃないからいいんだよね?
中身はお兄ちゃんだけど、いいんだよね?」
 

 萌は確かめる様に言いながら、自分の服を脱いでいった。脱ぎながら萌の目は俺の体を見ていた。
 俺の白い肌、黒い瞳、長い黒髪を一つ一つ、丹念に確かめるように見ている。萌の視線が痛い。
 まるで視線で犯されているような、そんな感じがした。冷房の効いた部屋なのに、体が熱くなってくるのがわかった。
 俺は萌に顔を近づけた。
 萌も目を閉じる。
 俺は萌と唇を重ねた。
 抱きしめる。布地を通して、萌の体温が俺の肌に感じられた。
 俺が口を開くと、萌の口も開いた。
 舌を入れる。
 かるく舌をからませる。
 萌は体を離すと、言った。
 

「ずるいよお兄ちゃん。あたしの裸を見たのはいいの。一緒にお風呂に入ったのもいいの。
 でも、あたしの想いを、クロになって聞き出すなんて! ずるい!」
「あれは成りゆき上……ゆるせ……」
「許さない! お仕置き!」
 

 萌はいきなり、俺の腰に手をあてて、一気にスカートのファスナーを下げると、ホックを外した。
 

「萌!」
 

 俺が抵抗すると、萌は黙って左腕で俺の髪をなでた。
 女の子は髪の毛でさえ敏感なんだろうか? 快感に、怒りが溶けてしまう。
 萌の右腕は、俺のブラウスのボタンを外していく。ブラウスを脱がすと、俺の脇の下から腕を入れて抱きしめる。
 抱きしめながら背中のホックを外して、ブラジャーを取ってしまった。
 萌は俺の乳首を舐めた。まだ膨らみかけの先にある小さな乳首。萌がなめる度に、胸の辺りに甘い小さな快感が走る。
 思わずあえいでしまった。
 

「はうっ」
「ちゃんと感じるんだ? かわいい。あ、大きくなってきた。本当に女の子なんだ」
「あああ……萌……たのむ、やめないでくれ」
「お兄ちゃんにもどってるって。女の子女の子。ちゃんと心まで香里ちゃんになりきらなきゃ。
 今はお兄ちゃんじゃなくて、あたしの親友の香里ちゃんなんだから」
「う、うん。はい。ですからお願いしますわ。続けてください。気持ちよくて我慢できません。
 もう、香里ちゃんの真似でもなんでもする。いや、香里その物になる。だから……やめないで!!」
 

 俺は快感への欲望を止められなかった。初めての女の快感だからなのか、香里ちゃんの体が性欲を求めているのか。
 

「あん」
「感じているの?」
 

 俺の可愛らしい声あえぎ声に、萌は驚いた様だ。俺自身も驚いている。恥ずかしさに、頬が火照ってくるのがわかった。
 

「香里ちゃん感じているんだ? 初めてなのに敏感ね。あたしだって、初めはくすぐったいだけだったのに」
「こんな事、どこで覚えましたの?」
「お兄ちゃんが教えてくれたんじゃない。お風呂場で」
 

 萌はまた俺の乳首を舐めた。
 胸をなめられているだけなのに、快感が全身を襲った。中でも香里ちゃんの秘所は快感に反応して熱くなっていた。
 愛液が滲んでパンツを濡らしている。湿気を帯びたパンツは気持ち悪かったが、今はそんな事よりも快感に浸っていたかった。
 

「ああん……!! ちがいます、わたくしのせいではありませんわ。これは香里ちゃんの体が、やたら敏感なせいです……ああっ」
「かわいい。でもね、女の子の快感ってこんな物じゃ無いんだよ」
 

 萌はストッキングをはいた俺の足を広げた。
 

「濡れてる……」

 その一言で、恥ずかしくて俺は顔を背けた。
 

「ショーツまで濡らしちゃうなんて。香里ちゃんって本当にエッチなんだから」

 萌は俺のパンツを脱がすと、顔を俺の股間に近づいた。
 

「ふーん、女の子の中ってこうなっているんだ?」
「そこは!」
 

 萌は両手の指で俺の膣を広げると、中を覗いた。
 香里ちゃんの体なんだから、何をされようとかまわないはずなのだが、こうやって恥ずかしい部分を見られると、体中が熱くなる。
 男の時は熱さが肉棒に集まっていく感じだったが、香里ちゃんの体は、熱が秘丘から全身に広がっていく感じだ。
 ストッキングに包まれているせいか、足が特に熱く感じる。
 

「香里ちゃん、濡れているよ?」
 

 自分の体だ、さっきから秘丘が濡れて気持ち悪いのは分かっていた。でも口に出されると恥ずかしくて、俺はうつむいてしまった。
 萌は俺のひだの部分に触れた。
 

「こんなに濡らしちゃって、香里ちゃんてエッチねー」
 

 萌は右手の指を膣の中に入れてきた。
 

「はうっ!」
 

 まるで萌の指先から電気が出ているように、俺の肉壁から脊髄に向かって、甘い電撃が走った。
 俺のアソコの内壁が、捕らえて放さない様、萌の指を強くしぼっているのが、自分でも分かる。
 萌の指が膣から外に出ようするのを感じた時、俺は声を上げた。
 

「抜かないで!」
 

 たのむ……何でもするから……しますから……。お願いやめないで……ください。

 俺は負けた。女の快感の前に、兄と言う事も、男と言う事も、羞恥心も捨てた。
 この甘い時間に、少しでも長い間いたい。
 今はたた、指を抜かないで欲しい。
 さわっていて欲しい。
 そばにいて欲しい。
 体をさわって欲しい。
 抱きしめていて欲しい。
 考えるのがめんどくさくなっていた。
 考えようとしても、頭が動かない。
 もう、なんでもいい。
 こんなに気持ちがいいのなら。俺は何にだってする。
 ただ、この快感の海に浸っていたい。
 

「も……もえ……ちゃん」

 声がうわずっているのが、自分でもわかった。
 

「わたくしの……からだを触って……ほしいのです……」

 萌は頷くと、俺におおい被さってきた。
 温かい。
 萌の体温が、俺に伝わってくる。
 萌の左手が俺の体を這う。
 長い黒髪を。頬を、胸を、お腹を、背中を。
 萌に触られるたびに、快感が俺を襲う。
 腰が勝手に前後に揺れる。
 合わせるように、俺の膣は萌の指を締め付ける。
 俺の口からは勝手に甘いあえぎが漏れ、その声の主が自分だと思うと、さらなる快感が襲う。
 次々と言葉が出ている様だが、自分でも何を言っているのか分からない。
 何も考えられなくなった俺の頭は、唯一、萌が淫裂から指を抜きはしないかと言う事だけを恐れていた。
 

「指を抜かないで!」
 

 それだけが、自分の意志で言った言葉だった。
 やがて、俺は何も考えられなくなっていく。
 俺はのけぞっている様だった。
 萌は約束通り抜かないでいてくれた。
 沈んでいく思考の中で、俺は萌に感謝していた。
 
 
 
 
 
 

  chapter.6
 
 

 俺はあのまま香里ちゃんの体でいってしまったらしい。
 気が付くと、おしっこを漏らした裸の香里ちゃんが目の前にいた。
 萌がいそいで服を着ている。
 俺が目を覚ましたのに気が付くと、ドアを開けて外に出るように催促した。
 俺はスライムの体を引きずって、萌の部屋から出た。萌はドアを閉める。
 俺はドアに自分の体を張り付けて、中の様子を盗み聞きした。
 おしっこの始末と、香里ちゃんに服を着せているのだろう。時折ゴソゴソと言う音が聞こえる。
 

「萌ちゃん?こ……ここは?」
「よかった。香里ちゃんが気が付いたんだ! 香里ちゃん玄関で気を失って倒れていたんだよ?」
「また気絶してました? いつもご迷惑ばかりおかけして……そうですわ! 玄関で透明なお化けがいて……」
「お化け? なにそれ? お化けなんているわけないよ! きっと夢でも見ていたんだよ。
 今日はもう帰って、また明日遊ぼうよ」
「……夢? 暑さで幻想でも見たのでしょうか?
 確かに体が……熱くてだるいですわ。なんい言うか、体が……。
 いえ、……そうですわね。今日はお言葉に甘えて、もう帰ってベッドに入ることにいたしますわ」
 

 俺は慌ててドアから離れて、廊下の隅に身を潜めた。
 また気絶されては堪らない。
 香里ちゃんは肌が赤く、足元がふらついていた。頬が赤く、目がうつろだ。
 まあ、柳沢さんが大丈夫だといったんだから、大丈夫なんだろう。
 緊張が解けたせいか、俺はウ○コがしたくなった。
 ズルズルと体を滑らせて、便所に行く。ドアのノブを回すのが一苦労だったが、なんとか便所に入ると、便座の上に載って排便をした。
 便所から出ると、萌が待っていた。
 

「お兄ちゃん、香里ちゃん帰ったよ?
 兄ちゃん本当にスライムだねぇ」
 

 誰のせいだと思っているんだ?
 

「あっ、お兄ちゃんが…」
 

 萌の言うとおり、スライムの体が少しずつ上に伸びて行き、元の俺の姿に戻った。
 

「ふー。あ! しゃべれる。一時はどうなることかと思ったぞ?」
「うん。いま、お兄ちゃんの服持ってくるね」
 

 言われて俺は、自分が裸なのに気が付いた。
 

「よかったー。お兄ちゃんが元に戻らなかったらどうしようと思ってたんだよ」
「もっといろんな女になって見たかったな」
「そう? じゃ、また女になってみる? 新しいゼリージュースもあるし」
「いつの間に」
「お兄ちゃんとTSショップに行った帰りに買っておいたんだよ」
 

 萌はニッコリと笑った。
 
 

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