好奇心


作:Sato


「早く起きてよ!もう朝ごはんできてるんだよ!」

 おれは突然部屋に入ってきた妹の甲高い声によって、夢の中から現実に引きずり戻された。寝ぼけ眼で時計を眺めると時計の針は9時を指している。昨日は3時ごろまでRPGをしていたから・・・まだ6時間ほどしか寝ていないじゃないか。

「う、う〜ん・・・日曜なんだから、寝かせておいてくれよ・・・」

「ダ〜メ!せっかく作ったんだから、ちゃんと食べてよね!」

 声の主は妹の美佳だ。中学2年になったばかりだけど、それにしても体のほうは全然成長していない。身長も140センチを超えたかどうか、というところだし。

 ところが、性格のほうは今も見てもらっているように、きついことこの上ない。この辺りはB型の特徴なのかもしれないけど、とにかくマイペースなのだ。そのこともあって、おれは彼女にするなら、B型の女の子は避けようと思っているぐらいだ。

 まま、そんな心配しなくても、今の彼女はB型じゃないんだけどね・・・

「もう、起きてくれないんだったらこうしちゃうんだから!」

 美佳は業を煮やしたのか、ついにおれの布団を取り上げてしまった。暖房も入っていないおれの部屋の冷たい空気がおれの全身を包む。さすがにこの状態では寝ているわけにも行かないみたいだ。おれはベッドから跳ね起きた。

「あ、やっと起きたね。おはよう、お兄ちゃん!」

 おれが顔を向けると、美佳が「とびきりの笑顔」と自分で呼んでいる、にこやかな表情をしておれを出迎えた。確かにかわいいといえばそういえなくもないけどね。けど、さすがに妹に興味があるわけじゃなし、彼女もいるおれにとっては、小生意気な印象しか抱けない。

「さ、早く着替えてよ。朝ごはんが覚めちゃうじゃない」

「あん?そうか、今日はおふくろたち、でかけちまってるのか・・・」

 家におふくろがいない時は、美佳が食事の当番となる。これは美佳が中学生になった最近からはじまったパターンなんだけど、これがまたはた迷惑なんだ。美佳にしてみれば、花嫁修業の一環のつもりなんだろうけど、毒見(!)をさせられているおれにとっては、迷惑なことこの上ない。美佳も少しずつは上達していってはいるのだけど、まだまだ食事として認められるレベルには達していない。

 そんなこんなで、おれにとっては食事だからといって、起きたいってことにはならないってことが分かっていただけたと思う。ま、だからといって、いつまでも駄々をこねていてもはじまらないのも事実なんだけどね。


「ささ、食べて食べて!」

 そして辿り着いた食卓――おれの目の前には、ここはどこの国なのか疑いたくなるような物体が並べられている。この皿の上に乗っている、ぐちゃりとした物は一体なんだろうか・・・最初は目玉焼きの出来損ないかと思ったけど、よくよく見ると、白と黄色が入り混じった卵の下には何やら赤いものが見え隠れしている。

「もしかしてこれって?」

「何よ。これがオムライス以外の何だっていうのよ」

 ううむ・・・やはりそうか。するとこの白みがかった卵は一応混ぜているつもりなのか・・・う〜ん、まだまだ美佳には修行が必要なようだな。これでもまだマシになったほうなんだけどな。美佳にはじめて食べさせられた時は、いや正確には違う。とてもじゃないけど食べられなかった。あんな炭みたいなもの、人間の食べるものじゃない!

 ま、それを考えるとこんな出来でも食べられそうな物に見えてくるから、慣れとは不思議なもんだ。いつものごとく、美佳が真剣な目つきでおれの一挙手一投足を見詰めている。おれは仕方なく用意されているスプーンを引っ掴んで、オムライス(?)をひと掬いした。半熟の卵が・・・本来なら食欲をそそるはずのものなのに、それが意図してそうなったのではないと明らかに分かっているだけに、食べるのが恐ろしい気がする。

 おれはおそるおそるそれを口の中に入れた。味は・・・それなりだ。調味料など、入れるものも間違ってはいないし、分量も致命的ではないような。けど、この生煮えの米はいただけない。おれに歯を鍛えろという無言のメッセージなのだろうか・・・

「どう?見た目はあれだけど、味は結構自信があるんだけどなあ」

 美佳が期待半分、不安半分といった表情で、おれのことを見詰めている。ここでヘタに褒めるとつけあがるだけなので、ここは心を鬼にして、正直な感想を伝えなくてはならない。それが兄としての務めだよなあ、うん。

「味付けはまだましだったよ、確かに。でもなあ、この米は何でこんなに硬いんだ?」

「え・・・そんなに硬かった?炊き方が足りなかったかな・・・どれ・・・」

 美佳は自分の分をスプーンで掬って口に放り込んだ。こう見えても美佳は味にはそこそこうるさいんだ。その肥えた舌がなかなか自分の料理に生かされないところが非常に痛いところではある。

「う・・・うわ、何コレ?う〜ん、残念・・・上手くできたと思ったのに・・・」

 心底悔しそうな表情を浮かべている美佳。今日の料理のできは、個人的には満足の行くものだったんだろう。こんな顔を見せられると、ついつい慰めたくなってしまう。おれも甘い男だなあ・・・こんなだからこいつがつけあがるんだ、そう分かってはいるんだけど。

「まあ、味はかなりマシになってきたよ。あとはタイミングとか包丁の使いかたとかだね。この辺りは慣れの問題になってくるのかな?ま、ゆっくりとやっていくことだね」

「・・・うん」

 おれの言葉に、美佳は心底救われたような表情に変わった。こういった素直な面は、こいつのかわいいところではあるんだけどな。


 そんなこんなで昼前。突然に呼び鈴が鳴り、来客を告げていた。

「は〜い」

 すっかり気が落ち着いたのか、美佳は昼食でリベンジを果たそうとメニューを考えている最中だったけど、おれを制して応対に出向いた。この辺りの切り替えの速さはさすがだ。

「こんにちはー」

「こ、こんにちは」

 明るい声の挨拶に続いて、美佳の警戒したような挨拶が続いた。このリビングからは玄関の様子は見えず、声しか聞こえない。そしておれはその声には聞き覚えがあった。

「あ、あなたが美佳さんね。いつも真悟から話は聞いてるわよ」

「お兄ちゃんから・・・?」

 おれは玄関に出向いた。案の定、玄関にはおれの彼女の芙美が立っていた。背の高さは140センチ強しかない美佳に比べて、頭ひとつ分くらいは抜けている。実際に聞いたことはないけど、ざっと見て165センチはあるんじゃないだろうか。ヒールなど履かれたら、おれとほぼ同じ高さになってしまうほどの長身だ。

「よう、芙美、早かったな。約束は昼頃じゃなかったっけ?」

「あら、さっきメールしたんだけど。もしかしてまだ見てないとか?」

「えっ、そうなのか?全然気がつかなかったな」

「おっと、美佳、紹介しておくよ。こちらは和田芙美さん、おれと同じ大学の同級生なんだ」

「同級生だけど、私のほうが年下なんですけどね」

「あはは、おれは浪人したからね。でも今は同級生じゃないか」

「この人ってもしかして、お兄ちゃんの彼女?」

 美佳がおれのことを見上げながら聞いてくる。その表情はどこか寂しげだった。

「ああ、元々は同じサークルの仲間だったんだけど、年末から付き合いはじめたのかな」

「そうよね。真悟から告られちゃったときは、一度は断ったんだけど、あんまりしつこいんでOKしちゃった」

「へえ・・・そうなんですか」

 美佳はそう答えたものの、どこか上の空だった。どうも美佳は芙美のことがあまり気に入らないらしい。そういえば芙美のやつはO型で、B型の美佳とは合わないのかも知れないな。

「じゃあ美佳、約束なんで今からこいつと出かけてくるよ」

「あ、お兄ちゃん!」

 おれは芙美の手を引き、一緒に家を出た。今から美佳の昼飯を食うことを考えれば、芙美におごるぐらいのことはどうということはない。

「さ、例の店にでも行こうか!」



「あれがお兄ちゃんの彼女・・・」

 玄関に立ち尽くした美佳がそうつぶやいていた。



「ただいま〜」

 芙美との軽いデートを終えたおれは、足取りも軽く家に戻ってきた。芙美とはまだキスまでしかいっていないけれど、おれにすればかなり順調にきているつもりだ。

 もうお互いに覚悟はできているようだから、今月中にはカタをつけたいとすら思っているぐらいなのだ。

 そんな今が一番いい時なのかもしれない。人生経験はあまりないけれど、おれはそんな風に思っていた。

「ん?あれ?」

 そろそろ6時になろうとしている、という時間なんだけど、家の中からは何の匂いも漂ってはいなかった。今日はおふくろが帰るのは8時ごろだと聞いている。だったら美佳がそろそろ夕食を作っていないとおかしい時間なんだけど・・・

 玄関を見ると、美佳の靴も見当たらない。返事がないことも相俟って、おれは不安を抱えながら家の中に入った。

「おーい、美佳、いないのか!?」

 リビングまで入っても、人の気配を感じなかったおれは、少し大きな声で呼びかけた。しかし、返事は聞こえてはこなかった。その時、時計の針が6時を指し、時計からオルゴールの音が聞こえてきた。その柔らかな音が、逆におれの不安を駆り立てる。

 中学生である美佳はまだ携帯を与えられていない。「バイトして買え」とのことで、バイト自体が認められていない美佳の境遇では持つことができないのだ。そんなわけで、見当たらない美佳の場所を特定する手段は、実際にこの目で見付ける以外の方法はなかった。

「誰かと遊びにでも行ったのかな?それだったらいいんだけど・・・」

 そう、そうであれば何の問題もない。しかし、この時間まで帰らないというのは、親がいなくて美佳が夕食を作らなければならないことを考えると、あまり考えられることではない。おれが不安を持っているのも、正にその点なのだ。

「・・・待つしかないか・・・」

 おれは美佳の交友関係は知らないではないけど、その家の電話番号までは知らない。6時に帰らないからといって大騒ぎするというのも、過保護なお嬢様じゃあるまいし大げさな話だ。あいつのことだからすぐに帰ってくるだろうと思い、おれはテレビを見ながら待つことにした。

「・・・遅いな」

 しかし、30分ほど経っても、美佳は帰ってこなかった。もうすでに日が暮れてしまって、外は真っ暗になっている。まあ、美佳のことだからそれは特に問題はないんだけど、この時間まで帰ってこないのに連絡がないことが不安の種だった。ううむ、やはり親に持ちかけて美佳にも携帯を持たせることにしないといけないな・・・

 そう思いはじめた矢先、玄関の呼び鈴が鳴った。ようやく帰ってきたか――おれは一瞬そう思ったけど、よく考えると自分の家に入るのに呼び鈴を鳴らすのも変な話だ。そうなるとこれは美佳ではないことになる。おれはやや緊張しながら玄関に出て扉を開けた。

「あれ?芙美じゃないか」

 扉の向こうに立っていた人物、それは芙美だった。普通ならばうれしいと思うところかもしれないけど、さっきまでデートしていた芙美が、再びおれの家に来るというのはちょっと想像がつかなかった。そんなおれにとって、芙美の突然の来訪は新たな混乱を来たすだけのものに過ぎなかった。

「どうしたの?何か忘れ物でもあった?」

「うん、ちょっとね・・・上がらせてもらってもいいかな?」

「え、あ、ああ。いいけど」

 おれは芙美を促すと、芙美は靴を脱いで中へと入ってきた。昼間のデートの時とは違う、カジュアルな服装をしている。大学での彼女がよく見せる姿だ。黒のジーンズにベージュのトレンチコートといういでたちは、背の高い彼女の魅力を強調している。

「ええっと、何か飲むかい?」

 突然の来訪者に、おれは美佳のことなどすっかり忘れてしまっていた。一体、芙美のやつは何をしにきたのだろうか?何か忘れ物をしたというわけではなさそうだけど・・・

 芙美はコートを脱ぐと、どういうわけかキッチンのほうに向かった。

「お、おい芙美・・・何をするつもりだ?」

「いいのいいの。夕食まだなんでしょ?作ってあげるわよ」

「えっ?」

 おれはどう答えていいか分からず、返答に困ってしまった。芙美の家にも行ったことはないし、芙美がここに入るのもはじめてなので、おれは芙美の手料理なんか食べたことはない。芙美自身は一人暮らしなので、料理はできるはずだとは思うけど・・・いや、それより何より、美佳のことが問題だった。果たして美佳を無視してこんなことをしていていいのかどうか・・・

「まあ、テレビでも見ながら待っててよ。すぐにできるから」

 芙美はそういうと、冷蔵庫を開けて中を覗き込んだ。どうやら、材料を吟味しているようだ。冷蔵庫の前で座り込んで材料を一つ一つ取り出しては戻し、あるものはまな板の上に置いたりしている。全然似ていないにもかかわらず、その様子には美佳を連想させるものがあった。女の子はみんな同じなんだなあ、そんなことを思いながらおれは芙美のことを見ていた。

「よし、これだったらアレができるわね。お米は炊けているようだし、あとはおかずだけね!」

 冷蔵庫を閉めて立ち上がった芙美は、両手をこすり合わせて気合を入れると、一気に料理にかかった。野菜、肉と切っていき、鍋に放り込んでゆく。その様子はあまり手馴れた、という印象は持てず、むしろ美佳よりヘタなんじゃないかって思えるほどだった。芙美もその辺りは承知しているようで、その包丁使いはえらく慎重だった。

「ここをこうして・・・よしっ、これでオッケーっと・・・」

 何だか心配になってきたおれだったけど、さすがにそれを口にすることもできない。美佳に対してだったら、いくらでも強くいえるんだけど・・・

 そうこうしているうちに、鍋からはいい香りが漂ってきた。どうやらメニューは肉じゃがのようだった。この分だと、どうやら食べられるものにはなりそうだと、おれは少し安心をしていた。

「ふう、これであとは10分ほど煮込めば終わりね。今の内にサラダを作っておくか!」



「おまちどおさま」

 テーブルに皿に盛られた料理が並べられていく。慎重に盛り付けていたので、見た目は悪くない。もちろん、問題は味なのはいうまでもない。

「いただきま〜す」

 おれは芙美の視線を痛いほどに感じながら肉じゃがを口の中に入れた。

「う・・」

 食べた瞬間、強烈な歯ごたえが芋にあることに気が付かされた。もちろん、次に食べたにんじんも同様だった。全然火が通ってない、それが正直な感想だった。

「どう?」

 おれは迷った。ここで正直な感想をいうべきか、それとも通り一遍の褒め言葉を口にしてお茶を濁すべきなのか。

 おれは後者を選ぶことにした。せっかく芙美が作ってくれたのに、ここで気を悪くするようなことをいうのも何だか申し訳ないから。

「ん、ああ。美味いよ。短時間で作ったせいか、まだちょっと煮込みが足りない気はするけどね」

「え?そうなの?」

 芙美も自分の作ったものを試食してみた。口に入った瞬間、一気に表情が苦くなった。どうやら、おれと同じ感想を持ったようだった。

「う・・・これはちょっと硬いわね。芯がまだ残ってる。味も染み込んでないし、お、真悟、こんなんでよく美味いなんていえたわね!」

「え?ええっと、その・・・」

 おれはまた返答に窮してしまった。どうやら選択を誤ったようだった。芙美にしてみれば、正直な感想を望んでいたのか・・・おれは公開したものの、とき既に遅し、だ。

「ふうん、なるほどね」

「え?何の話だ?」

「いえ、こっちの話よ。それよりもごめんね。ちょっと早く仕上げすぎちゃったみたいね」

「ああ、いや。おれもいつももっとすごい料理を食わされているからね。それに比べたら何てことないよ」

 う〜ん、我ながらひどいこといってるな。美佳が聞いたら怒るだろうなあ・・・いや、それ以前にフォローになっていないような・・・

 案の定、芙美は黙り込んでしまった。それ以後は無言の食事が続いた。う〜ん、空気が重い・・・

「ごちそうさま」

 おれのほうが早く食べ終わり、おれは芙美の様子を窺った。芙美自身も味が気に入らないのか、顔をゆがめながら食べている。それほど差がなく芙美も食べ終わり、芙美とはあまり会話も盛り上がらないまま、芙美は後片付けをはじめた。

 少し手の空いたおれは、不意に美佳のことを思い出した。時計の針は7時を少し回っている。いくら何でもこの時間は遅すぎる。芙美がきているものの、さすがに放置しておくことはできなかった。

「・・・芙美!」

 立ち上がろうとしたおれの目の前に、いつの間にか芙美が立っていた。たじろぐおれに対し、芙美は余裕の笑みを浮かべながらおれの首に手を回してきた。

「ど、どうしたんだよ、芙美?」

 芙美は何も答えず、膝を落としておれに顔を近づけてくる。驚いたものの、おれは彼女に逆らうことはせず、芙美の唇を受け入れていた。

「ん・・・」

 珍しいことに、芙美は舌を絡めてきた。お互いの口の中にわずかに残っている夕食の塩味が何とも妙な感じだ。

 どれほどの時間が経っただろうか、おれは芙美から唇を離すと、芙美の顔を見詰めた。芙美は恍惚とした目をしていた。珍しい情熱的なキスに、身も心もとろけてしまっている、という感じだった。

「芙美、どういう――!」

 芙美はおれが言葉を終える間もなく、服を脱ぎはじめた。あっという間に上着を脱ぎ捨て、ブラジャーだけの姿になってしまった。芙美の下着姿をはじめて見たおれは、その光景に釘付けになってしまった。下着の上からでも見事な曲線を描いている乳房を容易に想像することができる。

「お、おい芙美!」

「どう?私の体、キレイでしょ?」

 迫ってくる芙美に対して、おれは思わず生唾を飲み込んでしまった。今までに芙美はこんな積極的な行動を取ってきたことはない。一体、どういうつもりなんだろうか。

 芙美は少し顔を赤らめながら、とうとうジーンズも脱ぎ下ろしてしまった。見事な脚線美がおれの目の前に展開されている。もはや、下着しか身に着けていない芙美の姿がそこにあった。魅力的な女性美を目の前にして、知らず知らずのうちにおれの股間は熱くなってしまっていた。

「やだ・・・ここはもうこんなに元気になってるじゃない」

 それを目ざとく見つけた芙美が、おれの股間に手を伸ばしてくる。いつになく積極的な芙美に、おれは振り回されっぱなしだ。

「ふ、芙美、これ以上はやめてくれ・・・!」

「あら、いいじゃない。誰もいないんだし。さ、真悟も脱ぎなさいよ」

 躊躇しているおれを無視するかのように、芙美はおれのズボンを脱がせにかかってきた。あっという間に下半身をさらけ出されてしまったおれは、黙って芙美の行動を見守るしかなかった。

「こんなのはどう?」

「う、うお・・・」

 芙美はしゃがんだままおれの股間に顔を近づけるや、そそり立ったそれを遠慮なくくわえたのだ。えもいわれぬ温かさに包まれるおれの象徴。

 さらに、芙美はそのままゆっくりと口を前後させはじめた。おれの股間はあっという間に芙美の唾液でぐっしょりと濡れてしまう。それにつれておれも段々と立っていられなくなってくる。

「おいしい、真悟のココ・・・」

 ふと芙美の顔を見てみると、芙美自身もどんどんと性的な興奮を覚えていっているようで、すっかり目がうつろだった。おれもはじめて見る芙美のそんな表情に、興奮がいや増していった。

 それもあってか、おれはあっという間に頂点を迎えてしまう。芙美は一瞬驚いたように目を見開いたものの、そのままおれの全てを口の中に受け止めていた。

「んふ、美味しかったわよ♪」

 もう主導権は完全に芙美に握られていた。芙美に押し倒されるようにソファにもたれかかると、すぐに芙美がブラジャーの紐を外した。重力に引かれ、服の上からの印象よりもはるかに大きく見える乳房が揺れた。知らず、おれの手はそこに伸びてしまっていた。

「あん、くすぐったい。もっとちゃんと触ってよ!」

 芙美は鼻に抜けた甘い声を出し、おれを狡猾に誘ってきた。崩壊寸前だったおれの理性はあっさりとそれに負け、芙美の胸を強く握った。

(うわ、やわらけ〜)

 久しぶりに触った女の乳房は、思った以上に柔らかく、まるでおれの手が吸い込まれてしまうかのようだった。わずかに震える芙美の体の動きを感じたおれは、それが興奮からであると判断し、ちょっとうれしくさせられてきた。

「んん、真悟の手、冷たい・・・」

 おれはすでにわずかに固くなってきている芙美の乳首に指を伸ばした。今度は明らかに分かるほどに芙美の体がびくりと反応した。

「あん・・・そこ、いい!」

 おれは指でそこをしっかりとつまみ、ゆっくりとこねはじめた。芙美は両手をソファの上に置き、ただひたすらにおれに与えられる刺激を楽しんでいる。おれも芙美の乳房の感触とその反応を楽しみながら、二人の体は徐々にきたるべき瞬間に備えて準備が整っていく。

「ん、ここももういいみたい」

 芙美はそういうと、ついに最後に残されたショーツも脱ぎ捨ててしまった。はじめて見る芙美のそこを目の前にして、おれの興奮は最高潮に達した。いつの間にやら一度果てて萎えていたそこも、再びぴんと自己主張をしていた。

「そのまま動かないで」

 芙美はおれを制すると、おれの腰のあたりで中腰になり、おれのモノを掴んで位置を調整した。芙美が腰を落とすと、直立したおれのそこが、芙美の股間に吸い込まれていくのが見えた。

「う・・・」

 入り口のところで、かなりの抵抗があるらしく、芙美は顔をしかめたまま、それ以上腰を落とすことができないでいるようだった。けれども、地球上には重力というものがある。芙美の筋力はやがてそれに負け、おれのモノは芙美の内部に徐々に侵入していった。

 当然というか、処女ではない芙美のそこは、それ以降は抵抗らしい抵抗もなく、おれを受け入れてしまう。

「あ、入ってくる!!・・・んっ!」

 芙美の肉体の奥深くにおれが侵入している。そう考えただけでも興奮ものだというのに、芙美のそこはおれをぐいぐいと締め付けてきて、肉体的な興奮を与え続けてくれるのだ。

「う、きつ・・・温かいよ、芙美のなか・・・」

 ついに子宮にまで達したらしく、おれのそこから壁のようなものに当たった感触が伝わってきた。おれのモノも一番根元の部分しか見えなくなってしまっている。

 いまだに苦しそうに顔をしかめている芙美だったけど、今度はそこから逃れるように腰を浮かしはじめた。ずぶずぶという音が聞こえてくるような気さえするほど、芙美の体から出てきた部分は、芙美の肉体から分泌されてきた液によっててらてらと光を放っている。

その光景は限りなく官能的で、男を興奮させるだけのものを十分に持っていた。

「うう・・・ん、段々気持ちよくなってきた・・・んんっ」

 芙美は興奮してきたのか、目を閉じると腰を上下に動かしはじめた。弾むような呼吸音とともに、時折洩れる芙美の喘いだような声。知らないうちにおれの手は芙美の乳房に伸びていた。腰の上下に合わせて揺れているその先端を指で優しく撫でてやると、芙美は敏感にそれを感じ取り、それに合わせて反応を返してくれた。

「んふ・・・はぁ・・・・いいわ・・・・」

 すでに腰の動きも芙美の性感に比例するように激しさを増している。芙美は腰を後ろに反らし、顔は上向き加減になっていた。その上を向いた口から弾んだ喘ぎ声が発せられる。

「んっ、んっ、んっ・・・あ、い・・・イク・・・・んっ・・・イ・・・イクッ!・・・」

 芙美はついに絶頂を迎えようとしていた。それにつれておれの股間への締め付けも、徐々に強烈になってくる。芙美の女性の肉体がもつ本能が、おれの肉体から精を搾り取ろうとしているのだろう。おれの男としての本能もそれに逆らうことはできず、おれも一気に頂点へと向かっていく。

「・・・あはぁぁぁぁ・・・・・」「ううっ!」

 芙美が果てたのと、おれのそこから熱いものが放出されたのはほぼ同時だった。おれの体の上にぐったりともたれかかる芙美。柔らかい胸がおれの胸に押さえつけられる。おれも芙美の体重がかかり重苦しかったものの、はじめて芙美と体を交えたことに、興奮を隠せなかった。

「はぁ、これがセックス・・・やっぱりすごい・・・」

「え?今なんて?」

「う、ううん。何でもない。それよりもそろそろ帰るわね。そろそろ両親が帰ってくるんでしょ?」

「あ、ああ。そんなことよく知ってるな」

「え?な、な、何いってるのよ。デートの時にいってたじゃない!」

「そうだったかな?そういえばいったような気がしないでもないけど」

 どうにも釈然としないけど、疑ってみてもはじまらない。おれの上から体を離した芙美は、さっさとシャワーを浴びに行ってしまった。

 その間、おれは何もすることがない。さすがに裸でいることはためらわれるので、ティッシュでおおまかな汚れだけは拭き取ると、さっきまで着ていたものだけは身に着けた。

 そこでようやくおれは美佳のことを思い出していた。時計の針は7時半を指している。あと少しするとおふくろたちも帰ってきてしまう。そうなるとちょっとした大騒動になるのは目に見えている。美佳の捜索を急がないといけない。そう思った矢先――

「お待たせ。じゃあ私は帰るわね」

 すっかり身なりを整えた芙美がおれに声を掛けてきた。芙美はそういうと無言のまま玄関へと歩いていってしまう。おれも今の状態では外に出る気にはならない。とりあえず芙美を送り出すと、おれもさっとシャワーを浴びることにした。

 着替えを終えて外に出ようとした矢先、玄関のドアが開く音が聞こえてきた。どうやら誰かが帰ってきたようだった。

「ただいま〜」

 玄関から聞こえてきた声は紛れもなく美佳のものだった。おれは駆け足で玄関へと向かった。

「美佳!」

「どうしたの、お兄ちゃん?」

「どうしたのって、こんな時間までどこに行っていたんだ?何をしていたんだよ!?」

「何をって・・・ふふふ、ナイショ。とってもいいことよ」

「いいことって・・・お、おい晩飯はどうしたんだ?」

「ふふ、さっき食べたわよ。味はともかくとしてね」

「??」

 美佳は不思議な笑いを残して、自分の部屋へと消えていってしまった。釈然とはしないけど、とにかく無事に美佳が帰ってきてよかった。おれは一安心しつつ、リビングへと戻った。



『お兄ちゃんは全然気がついてなかったみたいね・・・今日の話を芙美さんにしちゃったら大変なことになるかも。ま、別れてくれたほうがいいけど』

 美佳は目の前にある空の瓶を見ながらそうつぶやいていた。瓶の中には飲みきれなかった青い液体がわずかに残っている。

『今度また買ってみよっと!次はどれにしようかなあ・・・♪』


(おわり)




あとがき

またもや体験談シリーズ。
今回は青色のゼリージュースのお話です。
しかも今回も女同士になってますね(笑)
とは言え今回はまともに絡ませてみました。
美佳は真悟に対して兄以上の思いがありそうです。
それにしても美佳はいつの間にゼリージュースを用意していたのでしょうか。
初めて芙美の存在を知ったと言うのにね。
う〜ん、他の目的に使う予定だったんでしょうか(笑)

それでは読んでいただき、ありがとうございました!

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