珈琲ゼリーで、美白美人?
作・よしおか
俺は、鏡の前でいろいろなポーズをとった。
「ん?なんだ、これは」 ジムの帰り、ちょっとした用事があり、いつもと違う帰り道で、ふと目に留まったコンビニへと入った。そこは、どこにでもある品揃えのコンビニだったが、他の店よりもゼリージュースが多いような気がした。俺もゼリージュースが嫌いではないので、ゼリージュースの並ぶ棚を見ていると、一本のビンの帯びに目が止まった。
『色黒でお困りのあなた。この一本で、美白美人になりませんか? カフェ・オ・ビハク』
なんとも、笑うに笑えないコピーと商品名だが、美白という文字と、値段が気に入って俺はこれを買うことにした。 「税込みで126円になります。お客様、この商品には、ミルクとガムシロップが付きますがいかがいたしましょう?」 コンビ二のかわいい女の店員が、俺の買ったゼリージュースを、ビニル袋に入れながら聞いてきた。 「もちろんもらうよ」
こんな当たり前のことを聞いてくるなんて、どうなっているんだ。そんなことを思いながら袋を受け取るとそのコンビニを出た。
「ありがとうございました。またご利用くださいませ」
俺を送り出すその店員の声が、笑っているように聞こえたのは気のせいだったのだろうか。俺は、家路を急いだ。 家に帰り着くと、ゼリージュースを袋ごと冷蔵庫の中に放り込むと、シャワーを浴びた。この身体は、結構暑苦しく、まるで肉襦袢を着込んでいるようなものだった。シャワーで汗を流し、さっぱりして出てくると、パンツもはかずにフルチンのままで、冷蔵庫の前に立った。そして、冷蔵庫のドアを開けると、中からさっき買ったゼリージュースの袋を取り出した。 袋から容器を取り出すと、取り出した容器の中で、珈琲ゼリーがプルプルンと動いた。他のゼリージュースよりは量が少ないが、ミルクやガムシロップを入れて混ぜるためにそうなっているのだろうから仕方がない。(とは言え、ちょっと損したような気がした)俺は、容器の白い蓋を摘んで回した。そして、もらって来たミルクとガムシロップをぜんぶ容器の中に入れた。ミルクやシロップの容器は、流し込みやすいようになっていたので、こぼれることはなかった。きれいに入れ終わると蓋をして、よくシェイクした。
『お客様。御飲みになる前にかならず使用上の注意をお読みくださいね』
単なる飲み物に使用上の注意などおかしなことを言うと思ったが、その時の言葉が妙に耳に残っていたので、俺は、容器に書かれている説明書を読んだ。
『これは、夏の間に焼かれたお肌を白くスベスベのお肌にお戻しするゼリージュースです。お飲みいただいて5分ほどで、焼けたお肌だけ浮き立たせます。あとは、シャワーなどで洗い流してください。この商品は、男女兼用で、女性の方がご使用の場合は・・・』
あまりたいしたことが書かれていないので、俺は読むのをやめ、ゼリージュースを一気に飲み干した。甘くやわらかいノド越しと、コーヒーのいい香りが、口の中に広がった。
「うまい」
俺は思わず声を上げてしまった。この珈琲ゼリーは、いままで食べたどのゼリーよりもおいしかったのだ。俺は至高の余韻を味わった。
「あ〜、気持ちいい。シャワーがこんなに気持ちよかったなんて。まるで、生まれ変わっていく見たいだぁ」 シャワーに洗い流されるゼリー状になった肌が流され、その下から白い新しい肌が現れてきた。俺は、新しい肌の肌触りが気持ちよく、古くゼリー状になった肌を洗い流していった。褐色の肌は、バスルームの排水口から流れ出ていった。 「あ、ふぅ、あ、あん」 身体にあたるシャワーの刺激に今まで感じたことのなかった快感を味わっていた。ただシャワーが身体にあたっているだけなのに、まるで、温かい手に身体を優しくマッサージされているかのようだった。シャワーとともに身体をさすると、その感情はさらに高まった。 「あ、あ、あ〜〜ん」 それはまるで女のあえぎ声のようだった。 「ふぅ、なんて感じるんだ。まるで、女にでもなったようで・・・・え?」 胸の辺りを触っていた俺の手が止まった。 「ぷよぷよ?ぷにゅ〜〜ん!」 俺の引き締まって厚い胸板に大きくふくよかな膨らみがあった。 「ま、まさか?」 俺は、下に手を伸ばした。そこには、触りなれたものがあった。 「ほ、よかった。じゃあ、あれは何かの錯覚か」 そう思いながら胸を触るとやはりそこには、柔らかなふくらみが・・・・
「な、なんじゃこりゃぁ」
俺は、思わず叫んでしまった。そして、バスルームを飛び出した。その時、最後に残っていた髪がずり落ち、顔の皮が足元に剥がれ落ちたことには気付かなかった。
「え?あ?なんで?お、お、おんなに、いや、オカマになっちまったんだ」 そう、俺は、あそこ以外はきれいな女性になってしまっていた。 「どうすればいいんだよ」
俺は、思わず膨らんだ胸を掴んだ。
「あん」
放さなくてはという思いと裏腹に、俺はその柔らかな膨らみをもみだしていた。胸をもみほぐしていた両手のうち、左手が下に伸びてあそこをつかみ、しごきだした。
「あ、う、んん〜〜あ、あ〜〜」
胸とあそこの感覚。オンナとオトコの快感。それらが入り混じって俺は、言い知れぬ新しい快楽に溺れていった。これからの未知なる生活への不安から逃れるためかのように・・・
あの注意書きは、こう続いていた。
あとがき
|