一夜が明けた。目が覚めると、俺は久美の胸に寄り添い彼女の腕枕で寝ていた。

 広くて逞しい胸、太い腕、こうしているとほっとするなぁ。

 昨日のセックスの心地よさを反芻しながら、俺はぼんやりとそんなことを考えていた。

 ちょっと体を捻ると、久美の広い胸に押し潰されていた俺の胸がその膨らみを取り戻す。

 膨らみ・・・俺の胸・・・ちがう、これは・・・





続・白い闇の中で(前編)

作:toshi9





「あー!」

「あら目が覚めた?」

「お前、俺のことを……」

「おっはよ〜、く〜みちゃん、もう朝だよ。さあ早くシャワー浴びなよ」

「お前、お前、よくも」

「ほらぁ、早くしないと。そんなべとべとな体で会社に行かないでよね」

「馬鹿やろう。戻せ、俺の体」

「往生際が悪いわね。もうあなたが安田久美なんだから、今日からしっかりと頼むわよ」

「何を言う」

「ふふっ、私はあなたの仕事をばりばりやらせてもらうから。自分の思い通りに仕事ができるなんて、これから毎日が楽しみだわ」

「お前になんかに俺の仕事ができるもんか」

「昨日何を見ていたのかなぁ。それに何年あなたと一緒に仕事してると思っているの。あなたの仕事なんて訳ないわ。これからあなた以上の成績を上げてみせる」

「ずっとこのまま」

「そう、ずっと」

「何でこんなことを」

「あなた昨日私の言ったこと聞いていなかったの。でもまあいいわ。ほら時間がないから早くシャワーを浴びてよ。それとも私が洗ってやりましょうか」

「や、やめろ、わかった。確かに汗で体がべたべただ。気持ち悪い」

「ふふっ、汗だけじゃないでしょう。じゃあ早くいってらっしゃい。久美ちゃん」

「いちいち名前を呼ぶな」

「あら、だってあなた久美じゃない。早くその名前に慣れなくっちゃね。あっはは」

 俺は裸のままベッドから跳ね起きてシャワールームに駆け込むと、シャワーのコックを捻った。

 勢い良く噴出すシャワーのお湯が俺の体の汗を洗い流していく。

 昨日はひとみの姿であの関西弁のオヤジにやられて、それから俺の姿の久美にまでやられて・・・まさか。

 俺は今の俺の股間にできている裂け目の中に指を突っ込むと、ゆっくり引き出してみた。

 指に白く濁ったべとべとしたものがまとわり付いて出てくる。

 ひっ!

 俺はそこにシャワーを当てると、何度も何度も指で中のものを掻き出した。何度も何度もそれを繰り返しているうちに、段々涙がこぼれてくる。

 何でこんなことになったんだ。俺が何をしたっていうんだ。



・・・昨日反省した事も忘れて、ただ自分の不幸を嘆く広岡であった。



「早く! 時間が無いわよ」

「わかったよ」

 俺はバスタオルで体を拭くと、一昨日久美に教わったようにバスタオルを体に巻いてシャワールームを出た。久美はすっかり俺のスーツを着込んでいつでも出掛けられる体勢のようだ。

「さあ、早く着替えなさい」

「ここでか」

「私しかいないんだからいいじゃない」

「だ、だが」

 久美は俺の姿で俺のことをじっといやらしい笑いを浮かべながら見詰めていた。まるで俺の裸を想像しているような目だ。俺もこんな目で彼女を見ていたことがあったんだろうか。

「ほら!」

 久美は強引にバスタオルに手を伸ばすと、剥ぎ取ってしまう。

「きゃっ!」

「あら、かわいい悲鳴なんか上げちゃって、主任、すっかり成りきっちゃってますね」

「そんなんじゃない。わかった、着るよ。でも頼むからあっちに行っててくれ」 

「ふふっ、まあいいわ」

 久美はそう言うと、意外にあっさりとベッドルームから出て行った。

 俺は彼女がいなくなって何故かほっと安心すると、ベッドの周りに散ばっている下着を拾い集めて身に付けようとした。しかしショーツはすんなり穿けたものの、ブラジャーは全くサイズが合わなかった。ホックを留めてみたものの、それはぶかぶかゆるゆるだった。

 そうだ、これってひとみの下着じゃないか。

 久美の体はひとみに比べて5cm位背が高いが、体つきはひとみよりも細くって胸は逆に小さい。まあスレンダーな体型とでも言うのだろうか。おかげでひとみの体で着ていたブラジャーのサイズが合わないのだ。

「くーみちゃん、いい格好ね。ひとみのじゃ駄目でしょう。ほらこれ着なさい」

 再びベッドルームに現れた久美がどさっと紙袋を投げてよこす。 

「これは」

「あたしの下着とスーツよ。ほら早く早く」

 俺は急かされるようにしてブラジャー、キャミソール、ブラウスと着込んでいった。

「お前・・・まさか下着のサイズが合わないって最初からわかってたのか」

「当たり前じゃない、私自身のサイズだもん。でも着替えているあたしって、何か色っぽいなぁ」

「見るなって言っただろう」

「あら、いいじゃない。それにあたしと主任ってもうそんな遠慮するような関係じゃないでしょう」

 その言葉に、さっき股の間から出てきたもののことを思い出し。俺はかっと頬を赤くしてしまった。

「あら、赤くなっちゃって、主任ったらかーわいい。ほら、パンスト忘れないでね」

 その言葉に促されて、俺はそれまですっかり穿くのを忘れていたパンストに足を通した。そしてタイトスカートのファスナーを上げてホックを留めた。

「ようやく終わったか。うん、いつものあたしだ。じゃあメイクしましょう」

「自分でやるよ」

「あら、言うじゃない。でもあたしのメイクはひとみのとは違うんだからね。今日はあたしがやるから主任早く覚えるのよ」

 メイクを久美に施されて、スーツの上着を羽織るとようやく出来上がりだ。

 鏡にはタイトスーツに身を包んで椅子に座っている久美が映っている。でもいつもと違ってその表情は少しおどおどしているように見え、後ろに立って久美の両肩に手を置いてにやにやと笑っている俺とは対称的だ。いや少しおどおどしている久美が俺で、後ろでにやにや笑っている俺が久美なんだ。俺は鏡に映った光景を見て惑乱しそうになった。

「おい、本当にこのまま会社に行くのか」

「当たり前じゃない。主任ってもう3日間もひとみをやってたんだから大丈夫でしょう」

「それはそうだが・・・いや、そうじゃなくって」

「じゃあ今日からよろしく、久美ちゃん。ほら行くぞ」

「あ!」

 久美の力強さに成す術もなく、俺はその手にただ引っ張られるままについて行くしかなかった。そして俺たちはホテルを後にした。

 俺たちって他人から見るとどういう風に見えるんだろう。

 久美に強引に手を引っ張られて朝の街を歩きながら、俺の頭の中にはふとそんな思いが浮かんでいた。




 久美と共に会社に着くと、俺は今度は安田久美として仕事することになった。そう、俺と久美は姿は勿論のこと、会社での立場も全く逆転してしまった。

 久美の仕事は昨日までしていた仕事、つまり松岡ひとみの仕事に比べると、俺、すなわち広岡秀雄のアシスタントとしての仕事が多い。つまり俺は俺自身にこき使われることになったのだ。

「安田くん、これ20部揃えておいてくれ」

「はい」

「FAX出しておいてくれよ。すぐにだぞ」

「はい」

「このデーター、パソコンに入れておいてくれよ」

「はい」

 全く休む暇もない。松岡ひとみの時に比べると他の男から受けるセクハラはかなり減ったものの、その代わり四六時中俺の仕事をこなしていく久美の雑用をやらされることになってしまった。久美としてそれに従うしかない俺を久美はその都度優越感に満ちた笑いを浮かべて見ていた。

 そんな久美の様子に俺は内心はらわたが煮えくり返る思いだったが、か弱い女性社員の立場になってしまった俺には成す術もなかった。一時は俺たちが入れ替わっていることをみんなにしゃべってしまおうかとも考えたが、ひとみの時にその行為が無駄なことだと既に思い知らされており、今の俺にできることは、ただ黙々と久美を演じることしかなかった。




「久美先輩、お昼食べに行きましょうよ」

 お昼になると、今日から出社してきた本物の松岡ひとみが声をかけてきた。

「う、うん。でも・・・」

「おーい、安田君、食べにいくぞ」

「は、はーい」

「え? 広岡主任と一緒? 久美先輩って、いつからあいつと一緒に・・・」

「そんなんじゃないんだけれど」

「助かります! もうあいつがあたしたちに変なことしないように、この際しっかりと教育してくださいね。久美先輩にはいろいろお世話になっちゃいましたけど、もう二度とあんな思いしたくないし、それに・・・」

「それに?」

「お二人って案外お似合いかもしれませんよ。あはっ♪」

 俺はあっけにとられてひとみのことを見詰めた。俺たちってそんな風に見えるのか。

「あ、冗談ですよ冗談。じゃあがんばってくださいね」

 教育してください・・か・・・はぁ〜




 そしてその日の仕事が終わった後、久美が声をかけてきた。

「安田くん、今日の帰りちょっと付き合ってくれ」

「は、はぁ」

 それを聞いた松岡ひとみが俺に近づいてきた。

「久美先輩、本当に主任と付き合い始めたんですか」

「え? っていうか」

「じゃあ今晩はデートなんですね」

「いや、デートだなんて」

「がんばってくださいね」

「う、うん」

 結局ひとみには今晩デートだと決め付けられてしまった。

「うーん、まいったな」

「あら、丁度いいじゃない。どうせこれからあたしたち同棲するんだから」

「どーせい? なんだそれ」

「あら今までとおんなじでしょう。主任がひとみだった時からあたしたちって一緒に暮らしていたんだから」

「いや、それってちょっと違うんじゃ……」

「ねぇ主任、これからあなたのマンションに連れて行ってよ」

「何をする気だ」

「あら、着替えとか必要でしょう。私のマンションにいろいろ持って行かなきゃ」

「お前、どうでもういいけれど俺の声で女言葉使うな。俺がそんな言葉を使うなんて、聞いていてぞっとするぜ」

「あなたもね。ちゃんと女言葉を使ってよ」

「わ、わかったわよ」

「うん、上手上手。じゃあ行くぞ、ね、くーみちゃん」

「それはやめろって」




 俺が久美を俺のマンションに連れて行くと、入口で管理人がちらりとこちらを見た。

「こんばんわ〜」

 久美のほうが管理人に声をかけると、管理人も軽く会釈した。

 久美は俺の肩に手を組んで歩き出した。

「あ!」

「こうしていると、あなたがあたしをマンションに連れてきているように見えるんだよね」

「お前しゃあしゃあと・・・マンションで変な噂されたらどうするんだ」

「あら、いいじゃない。どうせもうあたしがあなたなんだから。ほら何階なの」

「は、8階の805号だ」

 エレベーターに乗って8階に上がると、久美はポケットの中から鍵を取り出してドアを開けた。

 俺の家なのに。

 その行為に、俺は今更ながら彼女に俺の全てを奪われてしまったことを実感させられてしまった。

「じゃあ入って、くーみちゃん」

「ここは俺の家だ」

「今はあたしの家よ、この広岡秀雄のね。へぇ〜いい部屋じゃない」

 久美は部屋に入ると中を物色した。

「でも煙草がくさいなぁ、あちこち散らかっているし、折角の部屋が勿体無いなぁ」

「余計なお世話だ」

「じゃあかばん出して。それから着替えもね」

 仕方なく俺は旅行かばんを出すと、普段着、スーツ、下着を入れた。

「ふふっ、そうしているあなたって、奥さんになったあたしが旦那様の旅行準備をしているみたいに見えるわよ」

「え? そ、そんなこと」

 その言葉に俺はうろたえた。

 久美のやつ、急に何を言い出すんだ。

「ねぇ」

「え?」

「しようか」

「お、お前なぁ」

 久美はまだ荷物を仕度中の俺を突然抱きしめると、俺にキスしてきた。

 ああ、気持ちいい。

 へなへなと力が抜ける俺をベッドに運び、久美は俺の服を手早く脱がせ、自分も服を脱いだ。

「これってあなたのベッドよね。ここであなたは女としてあなた自身に犯されるの。さあてどんな気分かな?」

「どんなって・・・」

 ベッドに横たわった俺に俺が圧し掛かってくる。俺の目の前の俺の手が俺のアソコをまさぐる。

 あ、あふん、き、気持ちいぃ。

「ふふっ、気持ち良さそうじゃない。さあて、あたしの・・・俺のも頼むぞ」

 久美が・・・いや目の前の俺が一物を俺の目の前に突き出す。

 俺のもの、いや俺のものだった・・・

 だらんと目の前にぶら下がったそれを見ている内に、それを口に含んでみたいという衝動がどんどん湧き上がってくる。そして手に取ったそれを静かに口の中に含んで舌で刺激してやると、みるみる口の中で膨らんでいった。

「う、うう、いいぞ。上手いじゃないか」

「んん、んんん」

 俺の股間は目の前の俺の手で尚も刺激され続けていた。どんどん俺の中から熱いものが込み上げてくる。そしていつも間にか夢中になってそれを頬張っていた俺を、突然目の前の俺は自分の物から引き離した。

「さあて、お互い準備できたようだな。・・・じゃあ久美、入れるよ」

 そして目の前の俺は、俺の股間に自分のものをあてがった。

「うっ、締まる」

 すっかり濡れてしまっていた俺の股間のアソコはそれを難なく受け入れた。目の前で俺が激しく腰を動かす。

 俺は久美なのか・・・俺のものを俺が受け入れている。その不思議な感覚と股間から湧き上がっていく快感に、俺は体全体が翻弄されていた。

「く、あ、あん、くふぅ、い、いい、いいよぉ」

「うっ、うっ、うっ」

 俺は目の前の俺の首に手を回して腰を密着させ、その心地よさを全て受け入れようとしていた。

「あ、あん、ああん、いく、いく、いくぅ」

「よし、いくぞ」

 俺がいくのと同時に、目の前の俺は俺の中から一物を抜き出すと、俺に向かって白いものを思う様放った。

 俺の腹も胸も顔も、白いものまみれになる。

 朦朧とした意識の中で、俺はそれを指に付けるとぺろりと舐めた。

 に、苦い……





 結局俺たちの同棲生活がこうして始まった。

 それは昼は久美としてこき使われ、夜は夜で俺の姿の彼女に弄ばれる日々だった。そんな彼女との生活を嫌だと思う自分と、それを受け入れている自分、どっちが本当の自分の気持ちなのか未だにわからない。いや結局どちらも今の自分の気持ちなのかもしれない。

 俺は俺だ。

 そう割り切るしかないと思いながらも、毎朝久美の腕の中で目覚めると言いようの無い不安感が俺の中に募っていた。




 数日後給湯室でお茶の用意をしていると、ひとみが俺に話しかけてきた。

「広岡主任ってあれからあたしたちにセクハラまがいのことを全然しなくなりましたね。この間のことってよっぽど懲りたんですね。それとも久美先輩の教育がうまくいってるんですか? ちょっと気持ち悪いけれど、私も私になった広岡主任ってどんなだったのか見たかったな。ねえ久美先輩、他のセクハラ男どもにも魔法をかけてくださいよ」

「魔法・・か」

 そう、確かに魔法だ。いや、今こうして久美としてひとみと話をしていることだって実は夢なんじゃないかって思うこともある。でもトイレに行く度、風呂に入る度、そして俺の姿をした久美に犯される度に今の俺が久美に、女になっていることを実感させられた。それは心地よさと共にどんどん俺が俺でなくなっていくような気にさせられた。久美の体、久美としての生活に慣れていく俺がそこにはいた。

 いつまでこんなことが続くんだ。このままでは・・・




 その夜、俺は久美にもう一度食い下がった。

「本当に一生このままなのか」

「あら、まだ元に戻りたいって思っているの。毎晩あんなに乱れるくせに。あたしって今までなかなかいけなかったのよ。それなのに主任って何度もいっちゃうんだから。本当に羨ましいくらいだわ」

「そ、それは」

「主任が会社でやってるあたしってとってもかわいいし」

「何とでも言え」

「主任って、あたしの体にだいぶ慣れてきたんじゃないの。段々違和感がなくなっていく感じだし」

「いや、そんなことは」

「とにかく明日も頼むわね。じゃあベッドに行こうか、くーみちゃん」

「う、うん……」







 そして1週間が過ぎた。

「おーい、安田くん」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「安田くん、聞こえないのかなぁ」

「え? は、はい」

「全くどうしたんだい。仕事の出来る君が最近おかしいじゃないか。何だかぼーっとしていることが多いし」

「すみません」

「広岡くんは最近ぐんぐん成績上げているしな。これも君のフォローのおかげだと思ってるんだ。頼りにしてるよ」

 課長はそう言いながら俺の制服に包まれた肩をぽんぽんと叩いた。

「はあ」

「それから、応接室にお茶を持っていってくれ。四つだ」

「・・・わかりました」

 お茶・・か。ひとみになって以来何度も入れさせられて、だいぶ上手に入れられるようになったけれど、応接室とは・・・誰が来たんだ。



「失礼します」

 俺はこんこんとドアを叩くと、お盆に4つの湯のみを乗せて応接室の中に入った。

 そこには部長と俺、つまり久美がお客さんの応対をしていた。

 相手は・・確か

「おお、ありがとう。松井さん、後の一人は彼女ですが如何ですか」

「うーん、ルックスはまあまあですね。身長もあるし、うんいいでしょう」

「な、何の話ですか」

「こちらは『チームTS』のマネージャーの松井さんだ。今度富士のレースに参加されるらしいんだが、レースクイーンの派遣依頼を受けてね」

「はあ」

「ところがレースのある日程にスケジュールが空いている登録している女の子が足りないんだ」

「はあ」

「広岡くんが言うには、安田くんなら卒なくこなせると言うんだが」

「そうなんですか」

「じゃあよろしく頼むよ」

「はあ」

 久美のプロポーションは胸はやや小さいものの、身長は165cm、スレンダーなボディにはレースクイーンの衣装がきっと似合うだろうな。

 うん? まてよ、久美・・・久美が出るってことは、俺がレースクイーンをやるのか!

「ちょ、ちょっと待ってください!」

「いやあ、私もレースクイーンのコスチュームに身を包んだ君の姿、見たかったなぁ。おお、そうだ衣装を先に会社に届けてもらおうか。サイズが合うか先に試着してみるといい。そうだ、そうしよう」

 全くこの部長ときたら・・・

「いえ、現場で合わせれば充分ですから」

「そうか・・・じゃあ私もレースを見に行こうかな。たまには現場視察しなければな」

「ぶちょー」

 あんた何考えているんだ。

「じゃあ、安田くん、そういうことでよろしく頼むよ」

「げ!」

 嵌められた。結局成り行きでレースクイーンをやることになってしまったじゃないか。あんなことを俺がやらなければならないのか。

 俺の姿をした久美は、笑いを堪えるように拳で口を押さえていた。




(続く)



                                2003年7月13日脱稿
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