ある日俺が目覚めると、俺以外の全ての人間が、「体と魂が分離した世界」になっていた...


体と魂が分離した世界
作:jpeg


 〜目的地に向かう俺の前を女子高生たちが横並びで歩いている。進学校の制服を着た、黒髪の女子高生たち。みな水準以上にかわいい顔立ちだ。

*「あたしの女子高生の体、この服超ほしいんだけど、あたしの女子高生の体に似合うと思わない?」
*「私の女子高生の体も、この服まゆちゃんの女子高生の体に似合うと思う、私の女子高生の体もやせたいなー」
など、自分のことを他人ごとのように会話している。

俺は前を歩いていた女子高生の中で、まゆと呼ばれていた、いちばんかわいい娘の胸をいきなり後ろからわしづかみした。
まゆは無表情の棒読みで、
*「きやあーちよつとなにするんですかーやめてくださいー」
と、口先だけの抵抗をしめすが、無表情で、無意味に手足を上下に動かしているだけだ。
強引にキスをし、舌を思い切り吸ってやる。
まゆは目を開いたまま、無意味に手足を動かし続けている。
友達の女子高生たちは、
*「ちよつとなにこのひと、やばいやばーい」
棒立ちのまま、棒読みでしゃべっている。
俺はなんとなくバカバカしくなり、まゆを裸にひんむいて、歩道に投げ倒した。
まゆはなにごともなかったかのように起き上がり、
裸にネクタイ、靴下にローファーの格好のまま友達と
*「どうするみんなの体 マツクに寄つていく」
などと、直前までの会話を再開しながら去っていった。
そんな格好で女子高生が街中を歩いているのに、通行人たちは全く気にする様子もない。

すこし離れた場所では、癒し系美人で売り出し、「お嫁さんにしたい女子アナNo.1」と巷で人気の有名女子アナが、カメラが回っているにもかかわらず、こちらの騒ぎにまるで無反応で、
*「犯人の体は、通行人の体を無差別に殴り、駆けつけた警官の体に現行犯逮捕されました。
以上、現場から、アナウンサーの体がお伝えしました」
とレポートしている...



 街をゆく人の群れ。サラリーマン、OL、女子高生、主婦、老人...
街にいる、あらゆるタイプの人間。それだけ見れば、ごくありふれた日常の光景。

だが、人々は共通して、まったく感情のない、人形のような目をしている。
そして、頭上1メートルほどのところに、ぼんやり光る球体、魂が浮かんでいる。

頭上の魂が、糸でつながれた人体を引っ張っているような感じで、魂がただよう方向に、体はすこし遅れて歩を進めながら、
サラリーマンは取引先へ電話、 
女子高生はスマホ歩きしながら隣を歩く同じ制服の女子高生とおしゃべり、
老人は病院へ行くためバス停にたたずむ。
しかし、みな自分の行動の意味を理解しているわけではない。
かつて、まだ世界がまともだったころの自分の日常の形をなぞっているだけだ。
しゃべる言葉に感情はなく、セリフはすべて棒読みだ。

ふらふらと歩く体同士が、そこここでぶつかったりしているが、みな気にせず無表情で歩き続けてゆく。
たまに激しくぶつかった体同士が、その衝撃で頭上の魂が入れ替わる。
そうすると、それまでの体がしゃべっていた会話や行動を、入れ替わったあとの体が引き継ぎ、
お互いがそれぞれ向かっていた方向...それぞれが今まで歩いてきた道を引き返していく。

以前、警察に追われる引ったくり犯と、ランニング中の女子バレーボール部のキャプテンがぶつかったときは、引ったくり犯がキャプテンとして部員を牽引しながら
*「みんなの体、あと2キロで折り返し地点だから 苦しくてもがんばるのよ」
などど部員をはげましながら走っていき、
うら若い女子バレー部のキャプテンは警官に取り押さえられ、胸や体をもみくちゃにされながら、
*「ちくしよー、体離せ、離せよー」
と棒読みで言う途中、今度はキャプテンと警官Aの魂が入れ替わり、キャプテンと警官が警官Aの体を取り押さえはじめた。

また別の日、ダンベルをにぎってジョギングしていた、タンクトップで日焼けしたゴツいおじさんが、色白で日傘をさし、ヒラヒラの姫ファッションの華奢なお嬢様とぶつかったあと、
おじさんがお嬢様の友達と並んで内股で歩きはじめ、日傘を傾けながらかわいい仕草で小首をかしげ、棒読みで
*「皆様の体 どこかでお茶でもしませんこと わたくしの体 日焼けしてしまいますわ」
かたや華奢なお嬢様は、
*「ハッハッハ ヤア スポーツで汗を流すのは最高だなア」
と棒読みで言い放ち、ダンベルをにぎってガニ股で走り始めたが、体格や筋力に差がありすぎたのか、100メートルもいかないうちにヘロヘロになっていた。
きっとおじさんはなんの疑いもなくお嬢様の家に帰り、ごつい体でキツキツのフリルの服を着てお嬢様の家族と談笑するのだろうし、お嬢様はボロアパートに帰り、裸にトランクス一丁でプロテインを飲んで筋トレに励み、寝る前にAVをみて存在しないモノをしごく動作をするのだろう。


 試みに、就活生とおぼしきリクルートスーツの女の頭をつかみ、犬とぶつけてみたことがある。
女はおもむろに四つん這いになり、そのまま犬が向かっていた方向へ去っていき、
犬は二本足で立ち上がり、スマホをいじりながら、就活生が向かっていたほうへ歩いていった。

またあるときは、セミロングのかわいい女子大生をポストとぶつけた。
すると何とポストが動きだし、女子大生の向かっていた方向へ、一本足でピョンピョン跳ねながら歩いていった。
女子大生はポストのあった場所に無意味に無表情で立ち、 俺がまじまじとみつめても、まったくの無反応だった。
手紙を出しにきた人々が、女子大生の口にハガキや封書を次々とねじこんでいくが、女子大生はどこか遠くをみつめ、よだれを垂らしたまま立ちつくしている。
俺は女子大生のスカートとパンツをずりおろし、ぷるぷるした白いお尻の茶色い肛門に、落ちていたアイスの棒をグサッ!と差し込んでみたが、
魂がポストに移動してしまい、抜け殻になった女子大生は、もうポストになってしまったのだろう。無反応のままだった。

また別の日、ほとんど裸に近いほど面積の小さい服を着た黒ギャルと自販機をぶつけた。
自販機はずりずりと動いていき、
人々が無表情で立つ黒ギャルの口に硬化を入れ、乳首を押すと、黒ギャルの股間から小便がもれ出した。



 ...思いつくまま、街ゆく人々にちょっかいを出し、いたずらをしながら、俺は目的地、
かつてまだ社会がまともだったころ、俺が勤めていた会社のビルに入り込む。

*「いらつしやいませ おきやくさまの体は アポイントはお持ちでしょうか」
固まった笑顔の受付嬢を無視して、俺はカードがなければ開かないゲートを飛び越える。
後ろで受付嬢が
*「いらつしやいませ おきやくさまの体は アポイントはお持ちでしょうか」
と、なにもない空間におじぎしながら、バカのように同じセリフを繰り返している。
容姿がいいだけに、受付嬢のゲームの村人のような言動がひときわ滑稽に見える。
警備員の中年男性が、
*「こらー そこの若い男の体ー」
と棒読みで言いながらこちらに向かってくる。
立ち止まって警備員を待っていると、俺の目の前まで来た警備員はそのままぼんやり立っているだけだ。
俺は鼻で笑ってエレベータで営業フロアまで向かう。
エレベータを待つ間、ゲートの外で警備員が
*「こらー そこの若い男の体ー」
と繰り返していた。


 いた。俺の目的、営業係長の立花 冴子。
バリキャリで大口の契約を立て続けにまとめあげ、30歳で主任になり、34歳の現在、営業部最短で係長に昇進した切れ者。
メガネをかけたきつい目つき、冷たい顔立ちと口調、仕事一筋、他人を見下し、容赦しない性格だが、そろそろ熟女の雰囲気もただよわせ、むっちりとした体は熟れきって、むせ返るような女の濃密な色気を撒き散らしている。

机で書類を見つめる立花係長の手をつかみ立たせる。どうせ形を模倣しているだけで、いまの立花係長は書類の意味など理解していない。
*「ちよつとあなたの体 なにするのいきなり やめなさい わたしの体をだれだとおもってるの」
俺は立花係長の巨大な胸を思い切りもみしだいた。いつかこのクソ生意気なメスを、こうやってメチャクチャに犯してやりたいと思っていたんだ。
スーツとシャツのボタンを引きちぎり、タイトスカートをまくりあげ、黒い下着をむき出しにした。
地味なデザインだが、高価な体型補正下着。立花係長もオンナの面があったのか、その思いは俺のケダモノの部分をますます刺激した。
そんな騒ぎにもかかわらず、社員のだれ一人としてこちらに注意をむける者はなく、みな形だけをなぞった業務を続けている。
ここで始めてもいいのだが、俺は前々からの計画どおり、半裸の立花係長が机にぶつかるのもかまわずエレベータに叩き込み、最上階の社長室をめざした。
立花係長は
*「ちよつつつつとあなななたの体 なになにすするのいきなりきなり やめななさい わたしたしの体をだれだとおもってるの」
と棒読みで繰り返している。乱暴に扱ったら、ちょっとバグったようだ。

社長室の扉を乱暴に開ける。
社長は仕立てのいいスーツを着た外国人と話していた。俺でも知っている世界的企業のCEOだ。
*「なんだきみの体は 出て行きたまえ 秘書の松島くんの体 警備の体を呼んでくれ」
俺はズカズカと社長とCEOのテーブルまで立花係長の髪をつかんで引っ張っていく。
*「ちよつととと はなしなさささい あなたなたの体 わたしのしの体に こんななことをして ただだだではすまないわよ うつたたたえますからねからねらね」
俺はCEOの鼻先で思い切り立花係長の脚をM字に開かせ、そのまま激しくまぐわった。
立 花係長は名器だったが、それ以上に、かつて頭の上がらなかったメス上司を奴隷のようにモノ扱いしているという征服感と、社長の眼前で部下の美人係長の激しいセックスを見せつけているという変態的な倒錯感に、脳がしびれるような、いままで体験したこともないような快感を感じ、俺は立花係長の中にとてつもない量をぶちまけ た。
魂が解放されたような開放感、浮遊感。目の前が明るく輝いているような目くるめく感覚。
恍惚とした俺の耳に、CEOの棒読みのセリフは全く入らなかった。

社長室に半裸の立花係長を残したまま、俺は会社をあとにする。
どうせ裸でも気にせず電車で帰り、明日にはまた同じように会社に出勤して、かつての業務の形だけなぞるのだ。
罪悪感はまったく感じなかった。

ビルを出た俺の目の前に、驚いた表情の若い女が立っていた。その女の頭上には魂が出ていなかった。
そして、俺の頭上には魂があった。
意識が急速に薄れるのを感じた。








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