パターン1 集団入れ替わり
ケースその1



第3話

アンナさんの証言
自分は、今は高校生をやり直しています。
自分で言うのも照れ臭いですが、つまりは華の女子高生ですね。
入れ替わってしまった家庭には補助金が支払われているという事でしたので、
正直、入れ替わってすぐの時は、どうやって生活しようかと思ったので、ほっとしてます。
それで、英語のスキルと入れ替わる以前の仕事で得た知識を生かして、国立大学で薬学を学ぶために、受験勉強に励んでいます。
受験勉強の時には息子にも数学や生物学、化学の知識なんかを教えてもらっているので、少し照れ臭いと思う時もありますね。
学生生活なんてもう十年ぶりですし、学校のみんなにとってみてみれば白人の少女がいきなり転校してきた訳ですから、いろいろと勝手の違うこともありましたね。
最初は、自分と同じように思春期少女の体になってしまった人たちや性別も年齢も違う人間になってしまった少女たちとの交流が主でしたが、今では普通のクラスで多くの生徒たちと学んでいます。
すが、学問にクラブ活動に、とっても充実しています。(少し小声で)ここだけの話、可愛い女子高生達とも、スキンシップが図れたり、あんな事こんな事が一緒に出来ますし・・・
彼女たち、貞操の危険がないなら、中身が男の人でも別に気にしない、ですって・・・逞しいですね・・・

この体の持ち主だったアンナさんは、燕尾服を着た中学生ぐらいの白人の男の子になってました。
柔らかいブロンドの髪をしょっちゅう整えながら、「勝ち組のかわいい男の子になれたのはいいけど、勉強に礼儀作法に、学ぶことが多すぎて大変だ」ですって。
その子の両親は無事だったそうですが、その理由は二人とも仕事にかかりっきりになっていて、その少年をSPさんだけつけて旅行に行かせていたからだそうです。
「自分はどちらかというとあまり生まれはよくなかったし、マムも家を留守にしがちだったから慣れっこよ。』とおっしゃっておられましたが、内心はちょっとさびしそうでした。
すると、『でも、今はこの子がいるから一人ぼっちじゃないわ』と言いながら、アジア人の少女・・・だいたい、小学校高学年ぐらいでしょうか、その子を連れてきました。
アンナさんの今の体の、元の持ち主の少年が入っているんだそうです。
『ぼくも僕の体でお兄ちゃんになったお姉ちゃんが出来て、うれしいよ』って言ってました。
あ、後、アンナさんは『高校ではけっこうセックスしたけど、たぶんヤバい病気にはかかってないから安心してね』ともおっしゃってましたね・・・向こうの女の子は日本人よりも積極的ていうのは聞いたことはありましたが、驚きました。
お風呂やトイレは仕方ないとしても、さすがに勝手に経験の有無なんて調べませんからね。あの時はビックリしましたよ。その後で一応検査を受けて調べましたが、どうやら大丈夫のようで、安心しています。
一番印象に残ったのは、『私はその体に未練はないわ。あなたがセックスなりなんなり好きに使ってちょうだい』って言っていただいて、肩の荷が下りたのを覚えてます。

でも、一番驚いたのは、私たち夫婦の体になってしまった人達が、
そのまま家族として生活している事でした。
私の体の中に入ってしまったのは、空港の売店でレジ打ちをしていたおばさんらしく、
『男になったのはともかく、若い体っていいわね』と言っています。
うだつの上がらないパートから正社員になれたって、喜んでましたね。

(ここで、広樹さんとニーナさんが会話に加わる)
広樹「私の体の中に入ってしまった男の人、就職活動が上手くいかなくって、
ずいぶん落ち込んでいらしたみたいなの。私の体になって、なんだか元気が出てきたって言ってました。それと、先日、私、そ、その人に・・・」
アンナ「その人に?」
広樹「その人に、私の体、好きに使ってくださいって、言ったんです。もちろん、元の体に戻ることを完全にあきらめたわけじゃありませんけど、でも、もう自分の物でもない体を、縛り付けてはおけません」
アンナ「そうか・・・」
広樹「あなたがアンナさんや息子の今の体にうつつを抜かしても、私の心はあなた一筋ですから」
アンナ「えっ!?おいおい、里香・・・」
広樹「うふふ。それで、私は今は、広樹のいた学校に通ってます。小学校が楽しくって」
ニーナ「んもう、ママはずるいよ、僕が学校で作るはずだった友達と一緒に、サッカーとかテレビゲームとかい〜っぱいやってるんだよ!?」
広樹「あなただって、私と一緒に通ってるじゃない?」
ニーナ「でも、クラスのみんなは入れ替わりの事ほとんどわかんないしさ。入れ替わった子の特別クラスだけだと、つまんないよ」
広樹「大人になって賢くなった子は、いじめが怖くてあんまり来ないのよね・・・」
アンナ「ここだけの話、私たちの今の体の事については、本気で悩んでいます。今はそりゃ、いいかもしれません。旅行先でも、家族全員で露天風呂に入れますし、女性の体についての悩みも、家族全体で共有できますし。
でも、十年・二十年経って、僕は「大人の男になった息子の体」を持つ妻と、夫婦という事になります。その時、自分や妻の心がどうなっているのか、正直、不安です。」
ニーナ「僕の体になってお父さんになっちゃったママと、アンナさんの体になってお母さんになっちゃったパパがセックスするの?」
アンナ「広樹っ!?お、お前は隣の部屋でテレビを見せてもらいなさい」
ニーナ「やだ!僕の心はまだ子供だけど、「ちのう」はニーナさんのメモリーでどんどん上がってるって、お医者さんも言ってたもん!」
アンナ「う、うん・・・そうだな。お前はもう、大人になっちゃったんだもんな・・・お前も一緒に聞いてくれ。実は、そうなるかも、っていう話なんだよ」
ニーナ「僕、いいよ。それで。パパとママがそれでいいんだったら。でも、もしパパが嫌なのにママがその気になったんだったら、僕がママをやっつけてあげる」
広樹「こら、広樹!そんなわけないでしょっ!」
ニーナ「えへへっ!でも、僕の体も、今の僕にとっては他人同士なんだよね・・・?おばさんになっちゃった僕が、昔の僕の体になったママを好きになっちゃう事、あるかもって思うと、ちょっと怖いかも・・・」
広樹「んもうっ!二人とも、そんな事にはならないわ!そうでしょう!?」
ニーナ「うん、そう思うよ。あ、そうそう、さっきの『ちのう』が上がってるっていうのは、ホントだよ。お医者さんもそうだし、会いに来てくれたニーナさんもそう言ってたもん!」
アンナ「ああ、ニーナさん、か・・・」
ニーナ「うん。なんか、白髪がちょっとある白人のおじさんになってたけど、
『今の自分をはねのけるために』って、元気いっぱいだったよ」
広樹「・・・・」
ニーナ「でもね、なんだか最初はかわいそうだったけど、今は僕と二人で、ラボでいろいろ便利な発明するために頑張ってて、ホントの意味で元気になった感じだよ」
アンナ「そうだったのか・・・良かった・・・」
ニーナ「ニーナさん、今でも結構悔しいと思ってると思うけど、でも、くよくよしないって感じだったよ。自分の力で元に戻ってやるっ!!て感じかなあ?」
アンナ「広樹も、その研究手伝ってるんだろう?パパもママも、正直本気で期待してるぞ!」
ニーナ「うん!まかせといて!・・・それよりパパ、今度また、二人でお風呂入ろうね?」
広樹「な〜ん〜で〜すってぇ〜?」
アンナ「こら、広樹、その話は内緒だっていっただろう!?」
広樹「あなたっ!?まさか、私たちの息子の体に何かするようなことがあったら・・・」
ニーナ「パパはそんなことしないよ!頭とか背中をちゃんと洗ってくれるだけだよ、ママ。・・・たまに体を洗ってくれたりとか、僕の体を見て時々にやけてる時もあるけど」
広樹「今度から、お風呂はできるだけ家族三人で入りましょ」
アンナ「はいはい、わかりましたよ・・・」
はは・・・(苦笑)
それではこのあたりで、本日は終了とさせていただきます。
長時間お時間を頂き、誠にありがとうございました。
アンナ「ありがとうございます。また何か相談させていただくことも出てくるかもしれませんが、その時はまたどうぞよろしくお願いします」
こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。
ニーナ「おじさん、またね!バイバーイ!」
さようなら、もう外も暗くなっておりますので、お帰りの際は、お気を付けてお帰りください。
広樹「そうだ、この場で写真を撮っていかない?」
アンナ「えっ!?ここでかい?ほんとに里香は写真が好きだなあ・・・」
広樹「いいじゃない、減るもんじゃないんですし」
それでは私がシャッターを・・・
「できればあなたも写真の中に入ってくださらない?」
わかりました。では、この机の上にカメラを置いて、タイマーは・・・こうですかね?
それでは、写真を撮ります。・・・はい、ちゃんと撮れてますか?
「ちゃんと撮れているようです。本当にありがとうございました」
いえいえ、それよりも、先ほども申しましたが、お帰りの際は、お気を付けください。

以上で、証言記録ケース1は終わりである。

その際にとられた写真の、コピーを入手することに成功した。
どこかの会議室と思しき場所にて、「流行よりも実用性を重視した小ざっぱりとした服を着た白人の少女」、「子供用のスーツを上下着て、大人びた表情をしている日本人の少年」、「ボーイッシュな服に女性向けのスラックスズボンを履いており、無邪気な表情をした青い髪の大人の白人の女性」、そして「聞き手と思われるサラリーマン風の男」が全員笑顔で一緒に写っている。
この証言記録の真贋の裏付けを行う過程で入手したものである。
また、その際にその後の追跡調査を行い、この証言記録が本物であるという確認とともにアンナ・ジョンソン(仮名)氏が某国立大学薬学部への合格を果たしたということ、この家庭には今のところ離婚や家庭内暴力の兆候や存在は確認されていないという事、現在吉田 慶介(仮名)氏になっている人物と現在吉田 里香(仮名)氏になっている人物の間に元気な男児が誕生した事も判明したので、併せて記しておこう。


(記録者:どせいさん)



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