続・館にて(中編)

 作:Howling


「ここね・・・・・」

晴樹に指示されるまま着いたのは、俗に言うアダルトショップだった。
店の看板を見ると、コスプレも多数仕入れているようだった。
当然、"18歳未満立ち入り禁止"の看板も。
「晴樹君、君高校生でしょ?いけないな〜。」
優子は言った。
(す、すいません。でも・・・・・)
「ま、いいわ。今の晴樹君は"私"だものね。大人の女性なんだから。
 遠慮することもないしね。さ、入りましょ。」

優子はためらいなしに入店した。

「いらっしゃ・・・・・なっ!?」
店の店員、男性客の視線が優子に刺さった。
無理もない。こんなアダルトショップに女性が、それも男性に不自由しなさそうな
美人が入ってくること自体ありえないからだった。

そんな様子を特に気にかけることなく、優子は進む。
まずは服だ。
エスカレーターに入る。

(ふぅ〜・・・・・すごい視線だったぁ・・・)
視線から一度解放された晴樹は安堵した。直接自分を見られてるわけではなかったが、やはり緊張した。
それは、初めてアダルトショップに入った緊張と、女性になって店に入った緊張とが
ごっちゃまぜになっていた。
(あ、そういや優子さんお金は?)
晴樹は優子に尋ねた。
「心配しなくていいわよ。私こう見えてもお金はちゃんとあるから。」
そう言って優子は自分の長財布を持ち出す。
(すご・・・・)
晴樹は、見たことのない額の札束が入ってることに驚いた。
家もかなり豪華な作りだったが、実際に金に不自由している様子はない。
優子は一体何者だろう?
「さ、晴樹君。素敵なのを選んでね。」

コスプレのフロアにたどり着いた。

「さ、自由に選びなさい。晴樹君。」

優子は、響いてくる晴樹の声に従い、服を次々に手にとった。

「ふ〜ん、こういうのが好きなのね。晴樹君」


商品を見ながらニタニタと笑う優子。晴樹が選んだチョイスは以下の通りだった。


 紫色の、へそだしハイレグレオタード
 胸の開いた白ブラウスと青のミニスカートから成り立つCAの制服。
 OLの制服。
 フロントジッパーの黒色合皮製ボディスーツ。
 網タイツ。
 レースクイーン
 青色のロングスリットチャイナ服。
 ホットパンツとサイズ小さめのタンクトップTシャツ。



優子は、それらすべてを現金で一括購入した。


さらに、別のフロアでは、

「ふ〜ん、このローターおもしろそうね。」

何の恥じらいもなく、ローターを手に取る優子。
小刻みに動くそれの感覚を指で愉しむ。
「ははっ、これが中に入ったらどうなるのかしら・・・・・?」
うっとりとした表情でローターを見つめる優子。
その様子を、店の男性客は固唾を呑んで見守っていた。

「これ、ください。」

美人の女性が堂々とローターを出すのに動揺する店員。
「あの、袋は・・・」
店員が尋ねるのを遮って優子は言った。

「袋は要らないわ。今ここで使うから。」

え”っ”!?

晴樹を含むこの場にいた男全員が同じリアクションをした。

優子は支払いを済ませたローターの袋を破り、店員だけに見えるように自分のスカートをめくり上げようとする。
そのままローターを近づける。

(ちょっ!?ゆ、ゆゆゆ優子さんっ!?)
晴樹が叫ぶも意に介さない優子。

固唾を呑む店員。


「なんてね。冗談よ。うふふ・・・・」

そう言って優子はローターをバッグにしまった。

「ふう・・・・・」

店員は安堵した。少し、残念そうにも見えたが。
 

晴樹の、初めてのアダルトショップ体験は、こうして終わった。






「あ〜ん、ここのパスタ食べてみたかったのよね〜。」
洒落たレストランで、優子(in晴樹)はパスタを食べていた。
優子のチョイスだ。なんでも、ここで一度食べてみたかったらしい。
(もう。びっくりしましたよ優子さん〜店であんなこと・・・・・)
「いいじゃない。晴樹君も、まんざらじゃなかったでしょ?」
(うっ・・・・)
図星だった。返す言葉もない。晴樹は、話題を変えることにした。
(そういや、僕も何だか腹が満たされるって感じしますね。
それに、何か味の感じ方が違うの・・・かな?
シーフードあんまり好きじゃなかったんですけど
全然おいしいです)
「ふふ、当然よ。だって今晴樹君は"わたし"になって食事してるんだから。
 味覚も当然"わたし"と同じように感じるわ。」
(そうなんですね・・・・あ、優子さんも何か買い物したいんじゃないですか?)
「そうね・・・・化粧品でも買おうかしら。当然、付き合ってもらえるのよね。」
(付き合うも何も、今一心同体ですよ。ここで優子さん脱いじゃったら、僕もただじゃすみませんから。)
「それもそうね。それじゃ、しばらく体を借りるわね。」
優子は、残っていたパスタを食べきり、食後のデザートでケーキとコーヒーを味わった。
(太ったりしません?)
「失礼ね。しないわ。だって私、"皮"だからね。」
余裕綽々に優子はそう言ってむくれた。


その後、優子は街を散策し、デパートでお目当ての化粧品を見つけ、購入した。
「さ、帰ろうかしらね。」
優子は満足げだ。
手元には、そこそこに荷物があった。
(そうですね。それじゃあ・・・・)
「あ、そうだ晴樹君。いいこと思いついたの。」
(え?)
優子は笑みを浮かべて言った。
「帰り、君が歩いてみたら?」
優子の提案に晴樹は戸惑う。
ヒールで歩くのに慣れていないからだ。
「大丈夫よ。体が覚えてる、みたいな感じで難なく歩けるはずよ。」
優子の言葉には、妙な説得力があった。
「ただし、これを付けてね。」

(ええっ!?)

優子が差し出したのは、さっき買ったローターだった。
(本気ですか?)
「うん、もちろん本気。ちょっとしたお遊びよ。」
何のためらいもなしに、優子はそのローターを自らの股間に固定する。

「んっ・・・・・はぁ・・・・」
(んあっ!)
優子の口から色っぽいうめき声が漏れる。
晴樹もまた、異物が入る快感を享受した。

「ふぅ〜っ・・・・ねえ。いいでしょう?
 電車で2駅くらい。たいした距離じゃないわ・・・・・」
そう囁く優子。
(でっでも・・・・)
「男ならしのごの言わないの。
 今日は君のワガママにも付き合ったんだからね。
 本当は高校生の君が行っちゃいけないアダルトショップまで行ったんだから。」
(ぬう・・・・・・)

優子の言葉に返すことのできない晴樹。

(わ・・・・わかりましたよぉ・・・・・)

結局、晴樹は承諾した。

「やった!正直、ちょっとだけ疲れてたのよね。
 それじゃ、お願いね。」

その瞬間、体の主導権が晴樹に戻った。
「ひやぁああっ!!」

晴樹は、優子となっている自分の股間にある異物にうめく。
体の主導権が戻る直前、優子はローターのスイッチを入れていたのだ。

「ああっ・・・・う、ううう〜・・・・・・」

膝を少しがくがくさせながら、優子(in晴樹)は何とか立ちあがった。
(ほおら、頑張って。)
悪戯っぽく優子が脳内で囁く。
「かっ、帰らない・・・と・・・・・」
優子(in晴樹)はぎこちないながらもなんとか歩き始めた。
優子の言ったとおり、なんとかヒールで歩くことができた。
しかし、

「んあああっ!んはぁああ・・・・・・・」

歩く度に、ローターの刺激が強まっていく。
そのたびに、優子(in晴樹)の口から快感によるため息が漏れた。
きっと、頬を真っ赤に染めてるんだろう。
時折体をビクンと震わせつつも、何とか歩いていく優子(in晴樹)だった。




「うわぁ・・・・・」
電車の中。満員電車で、座ることもままならなかった。
優子(in晴樹)は仕方なく窓際に立つことにした。
たかが2駅。壁の近くにいれば・・・・
優子の皮の中で晴樹は思った。しかし、
「んんっ!!!」
優子(in晴樹)は手を口に当てて声を押し殺す。
ローターが、この間も容赦なく自らの股間を刺激していたのだ。
(あはあ・・・・・・い、いいわぁ。いいわぁ・・・・・
電車の中でなんて・・・・・興奮しちゃう・・・・♪)
脳内で、快感にうめく優子の色っぽい声までしてきていた。
自分の膝が快感のあまりがくがくと震えているのが分かった。
(ああ・・・・・何度でもイッちゃいそうだわぁ・・・・・
ねえ晴樹君。いいでしょう?イッてもいいのよ・・・・・)
晴樹は、脳内に響く優子の誘惑にかろうじて耐えていた。
(ほらあ。窓を見てごらんなさい。あんなに気持ちよさそうな顔してるわぁ・・・・・・)
優子に促され、窓を見てみた。
窓には、上気して頬をほんのりピンクに染めた自分の顔が見えた。
いやらしい。でもこの顔をした女性が今の自分なのだと思うと
よけいに恥ずかしさが増した。
周囲の人間からの視線がいくつか自分に向いていることも、このとき気づいた。


早く、早く駅に着いて欲しい。
快感に呑まれかけながら、晴樹は思った。



一つ目の駅を抜けた。


あと少し・・・・・・あと少し・・・・・・・

しかし、現実は非情だった。



「!?」
優子(in晴樹)は突然の感覚にびくんとした。
自分の下半身に、何かが触れたのだ!
いや、触れたのではない。撫で回していたのだ。
周囲を見渡す。その瞬間、撫で回していた手の感触が消えた。
そのとき、優子の声がした。
(晴樹君。間違いないわ。 ・・・・・痴漢よ。)
「なっ・・・・・!」
晴樹は絶句し、内心悶絶した。

うそだろ?
まさか、男の自分が痴漢にかかろうとは・・・・・・


そんなこともおかまいなしに、謎の痴漢は容赦なく迫る。

「んんっ!!」

あの嫌な感覚だった。
まとわりつくような手つき。
軽く撫でていた程度が、今度は大胆にも揉んできた。

窓越しに相手を見る。
スポーツ新聞で顔を隠し、手をもぞもぞと動かしている。
それが、自分の触られている感覚と同じそれだった。
間違いない。こいつだ。
もう我慢の限界だ・・・・・・いっそ、軽くボコって・・・・
「んんんんっ!!」
ローターの愛撫でまた痙攣してしまった。
外側と内側、両方から責め立てられていた。
謎の痴漢はそれを見て調子に乗りだしたのか、スカートの下からショーツに手を伸ばしてきた!
ローターを入れているのがバレたら、このまま何されるか・・・・・・!!!!

「や・・・・やば・・・・」
と考えたその瞬間、


「オイコラー!!!テメー何しとんじゃコラー!!」

怒号が響いたと思ったら、自分の真後ろでガタイのいい男が貧相な男を取り押さえていた。
その貧相な男はスポーツ新聞を持っていた。こいつで間違いない。晴樹は思った。
「テメー痴漢だろコラー!!何度もやれると思ってんじゃねえぞコラー!!!」
「ひいいいいいいいい!!!ご、ごめんなさいいいいいいいいいい!!!!」

「認めるのか?」
「は・・・・はひ・・・・・」
「やっぱりてめえかコラー!この辺りじゃ有名だからマークしてたんだぞコラー!!!!」
「ひいいいいいいいいい!!!」

その様子を見て優子(in晴樹)はだめ押しとばかりに言った。

「そ、その人・・・・痴漢です!!!」

声が震えていたのに気づく。晴樹は少し恥ずかしくなった。

気づいたら、駅に着いていた。
どさくさにまぎれて、優子(in晴樹)は足早にその場を去った。
ローターが入っていることなど、もう気にならなくなっていた。





「はぁ・・・・・はぁ・・・・・・・」

優子の館に着いて、優子(in晴樹)はため息をついた。
力なくその場に座り込む。
ショーツはすでにしっとり濡れきっており、パンストにもはっきり染みが見えて、
よく見たら太ももにまで愛液が垂れつつあった。

(お疲れ様。)
「なんか・・・・・どっと疲れました。」
優子の顔でげっそりとした表情を見せる晴樹。
少し憔悴したようで、顔はやつれていた。
時間は、午後2時半だった。
(悪いことしちゃったわ。ごめんねぇ。)
珍しく本気で謝ってる様子の優子に、晴樹は許すことにした。
「はぁ・・・・もう冗談がきつすぎですよ。優子さん」
(本当にごめんなさい。でも助かったわ。
結局無事で済んだもの・・・・・
ねえ晴樹君、シャワー浴びましょうよ。
久々に外に出たから汗が出てべとべとで・・・・・)

「そうですね。そうします。」

優子(in晴樹)は立ちあがった。
(後で、たっぷり愉しみましょう。体は私が洗ってあげるわ。
楽にしててね。)

優子は体の主導権を晴樹からもらった。
そのまま、浴室に入り、シャワーを浴びる。
外でかいた汗を、愛液を洗い流す。
豊満な肢体を、丹念に洗う優子。シャワーの水滴が胸ではじけていた。
一方晴樹は、1人称視点で女性のシャワーを堪能するという未体験の世界にどきどきしていた。

「シャワーが終わったら、たっぷり遊びましょう。」

(はい!)

晴樹は、この後のことを愉しみに思いつつ、優子としてシャワーを浴びた。



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