ゲリラ憑依

作:七葉




 ゲリラ豪雨とは、積乱雲の急激な発生によって起こる、予測が難しい大雨のことをいう。まあ、正式な気象用語ではないし、日本でしか使われていない言葉だ。そんな感じのことを理科の先生が言っていた気がする。


「…雨、止まないね」


激しい雨音の中、友達の声がかすれながらも耳に届く。


「そうだね、私達帰れないかも?」


 雨音に負けないように私も言葉を発する。


「怖いこと…言わないでよ」


「冗談だって!」


 ふと、外を歩く人を見ると、みんなしっかりと雨具を持っている。梅雨の時期なので普通なら当然なのだが。


「この後習い事だからさ、早く帰らないといけないんだよね」


「あ、そうだったね、友希ちゃんはピアノ弾けて格好いいよねー、私なんて不器用だしさ」


「そんなことないよ、春香はスポーツできるでしょ?」


 他愛のない会話に、時間は過ぎ去っていく。


「…このままだと遅刻しちゃうからさ、帰らない?」


「え?でも…」


 こんな状況で帰れるはずがない。なぜなら…


「傘もないのに行くの?」


 私達は傘を忘れていた。今日の降水確率は10%程度だったはずだが、この時期ならば仕方ないのだろうか?


「まあ濡れちゃうけどさ、ここから家まではそう遠くないしさ、それが一番早いでしょ?」


 友希ちゃんの言うことは確かではあった。


「…でも、風邪引いちゃったりしたら」


「毎年皆勤賞の健康優良児が何を言ってるの、早くしないと私だけ行っちゃうよ?」


「あ!それはダメ!私も行く!」


 この時何故か、友希ちゃんを1人で帰らせたらいけない気がして、つい大きな声になってしまった。


「よし、じゃあ321GOで行くよ」


「うん、転んだりしないでね」


「そっちこそ。じゃあ行くよ、3…2…1…GO!」


 掛け声を合図に私たちは一斉に駆け出す。途中周囲からの視線が痛かったが、そんなことを気にしている暇はない。


「ねぇ、春香、なんか変じゃない?」


 唐突に、後ろを走る友希ちゃんが疑問を発する。


「変って何が?」


 疑問の意図を掴みかねた私はそれを聞き返す。


「この雨だよ、なんていうかその…なんか見られてる気がするんだ」


「雨の中傘も持たずに走ってるんだよ、そりゃ見られるよ」


「そう…かな?」


 実は私も少しだけそんなことを感じていたが、こんな状況なら仕方ないと思った。


「もうちょっとで家に…うぅっ!?」


「どうしたの友希ちゃん!?」


 急に苦しそうに声を出した友希ちゃんの方を振り返ると、胸元を抑えて苦しんでいる。その手のあたりに、可愛い下着が見えた。


「…は……る……か……ちゃ……」


「友希ちゃん!大丈夫!?」


倒れる友希ちゃんを抱えると、柔らかい感触がした。


「……もう…大丈夫…そう…」


「そっかー、良かった!」


 安堵した私は、文字通り胸を撫で下ろした。そこまで大きくはないが、それなりに感度は良さそうだ。


「はぁ、ずっと走ってたら疲れちゃった、ピアノの練習サボって、2人でどっか行かない?」


 友希ちゃんの提案には賛成するほかなかった。


「じゃあ、例の場所に行こうよ、みんな集まってる頃だと思うよ」


「そうだね、あぁ、楽しみ。どんな娘に入ってくるんだろう?」


 みんな傘を差していたから、どれだけの人が来るかはまだわからなかったが、今から集まるのが楽しみだ。


「ねぇ、水溜まりに私達が映ってる!」


 友希ちゃんに言われて下を見ると、私の体の下に水溜まりがあり、中々可愛い顔が映っていた。


「この顔がどんな風に乱れるのか、想像しただけでワクワクするね!」


「あー、我慢できなくなってきた、早く行こ?春香ちゃん!」


 もう雨は止んでいて、空は清々しい青で満ちていた。


「うん!折角手に入れたカラダ、早く試そうね!」


 こんな綺麗な空なんだから、この娘たちも見たかったのではないか?と思ったが、しっかりと見ているじゃないか。この娘たちの身体だけは。










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