お面

 

俺は美奈子と初詣でに来ていた。参道には様々な屋台が軒を並べていた。様々とはいっても、いずれもオーソドックスなものばかりだった。イカ焼きや焼きそばなどの食い物系や綿菓子、飴の駄菓子に達磨等の縁起物、そして玩具…屋台の上部にはお面が並んでいる。昨年のアニメ・特撮のヒーロー、ヒロインや往年のキャラクター達が顔を並べている。しかし、その店はちょっと違っていた。良く見ると紛い物ばかりが並べられていた。著名なネズミやうさぎに猫はすぐに本物でない事が判る。どこかで見たような気のするロボットや怪獣もあった。

 

その中にひとつだけ真っ白なお面があった。目の穴があるだけで、鼻も口も造られていない。だが、妙に引き付けられるものがあった。

「これは?」

俺はそのお面を指して聞いていた。

「あぁ、これね。」と店主は白いお面ともう一つを手にした。

「こうして重ねて十数える。」

白いお面は下のお面を写し取っていった。そしてお姫様のお面が二つになった。

「お嬢さん、ちょっと被ってみないかい?」とそのお面を美奈子に差し出した。

そして、お面を付けた一瞬後、美奈子の服はお姫様のドレスに換わっていた。良く見ると腕もタイツのような生地に被われていて、そのままで遊園地のキャラクターショーにでられる姿になっていた。

「これ面白い♪ヒロシも付けてごらんよ。」と外したお面を俺に被せた。が、一向に変化はない。お面を外すと、そこには俺の顔が写されていた。「へぇ〜、今度はヒロシのお面になっちゃった。」美奈子は俺の手からお面を取ると、早速自分の顔に付けた。

 

 

「おい、いつまでそうしている気だ?」

俺はもう一人の俺に不平を言った。俺のお面を付けた美奈子は服も背丈も俺と同じになっていた。

「そうね。このままホテルに行っても入れてくれないかもね?」

俺の声で美奈子が答える。

「じゃあ、ヒロシはこのお面を被ったら良いんじゃないの?」と手渡されたお面は美奈子の顔だった。

「これって?」と俺が聞くよりも先に美奈子は俺の顔にお面を被せてしまった。

 

 

「じゃあ、行こう♪」と美奈子に手を引かれる。俺達は男と女に戻っていた。

ホテルに入るなり「姫初め、姫初め♪」とはしゃぐ美奈子を、俺は溜め息をついて見上げるしかなかった。

「いっぱい愛してあげるからね。」と耳元で囁かれただけで何故か俺の股間は濡れ始めていた。

「愛してる♪」と「俺」の顔が近付いてきた。頭の中は嫌悪感に満たされているのだが、美奈子の肉体が素直に反応してしまう。唇を割って「俺」の舌が絡み付くと、俺は恍惚としてしまっていた。服が脱がされていた。下着もまた美奈子のものになっていた。

美奈子もまた服を脱いでいた。既に全裸となっていて、股間に俺のモノをそそり勃たせていた。美奈子は俺を抱きあげるとベッドに運んだ。俺の尻からショーツを剥ぎ取ってゆく。そしてゆっくりと体を合わせていった。

 

 

「ねぇ、またしようね♪」元の姿に戻った美奈子がホテルを出たとたんにそう言った。

「バカ言うなよ。」と俺は口では拒絶した。が、俺の股間は疼きを覚えていた。

「また可愛がってあげるわよ。」と紙袋の中からお面を取り出していた。既に美奈子の顔が写されていた。あっと言う間に被せられ、俺は「美奈子」になっていた。

「ノーパンの時に写したから気を付けてね。」と美奈子。確かに股間がスースーした。そこに悪戯な風が突っ込んできた。

 

「「きゃっ!」」女の子の悲鳴が奇麗にハモッて夜の街に響いていった。

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