富雄と千紗の悪巧み4(いきなり生えてきたアレ)
作:Tira





「「「いただきます」」」


キッチンのテーブルでは、お母さんと千紗、そして妹の亜依が夕食を食べていた。
楽しそうに話している親子3人。
一応テレビの電源は入っているが、特に誰も見ていないようだ。


「今日もお父さん、遅いの?」

「そうね、残業になるって電話があったわ」

「そっか」

「あら、珍しいわね亜依。お父さんの事を聞くなんて」

「別に。ねえ、お姉ちゃん」


亜依が何やら嬉しそうにニヤニヤしながら千紗を見ている。
すると千紗は、


「何ニヤニヤしてるのよ。気持ち悪いじゃないの」


と答えた。
それでも亜依は内に秘めている楽しさを隠し切れないといった表情をしながら、明日の合宿の事について話をしていた。
そんな親子3人を、少し離れたところから見ている人物が一人。


(いいなあ。俺も食いてぇよ)


富雄だ。
薬を飲み、透明人間のようになっている富雄が、階段を降りてキッチンの前までやってきていたのだ。
楽しそうな会話、そして美味しい匂いにつられて、ゆっくりと近づいてゆく富雄。
すると、床がかすかに「ミシッ、ミシッ」と鳴った。

その小さな音に、敏感に気づいたのは亜依だ。


「ん?……あ、ちょっとトイレに行ってくる」


そう言って椅子から立ち上がった亜依は、見えない富雄の横を通り過ぎて廊下に出た。
その後姿を見ていた富雄だったが――
亜依がクルッと振り返り、キッチンから見えなくなった廊下で「おいでおいで」と手招き
した事に気づいた。
驚いた富雄が、亜依の元へ静かに移動する。


「ねえ、富雄さん。いるんでしょ」


亜依は、小さな声で富雄に話し掛けた。


「気づいてたのかい?」


同じく小さな声で答えた富雄。


「うん。だって床がミシミシいってたから」

「そっか、よく気づいたなぁ。出来るだけ音を立てないように歩いたつもりだったんだけど」

「ふふ……ねえ富雄さん。お腹空いてるんでしょ、よかったら私の身体に入り込んでもいいよ」

「えっ……で、でもさ。千紗が五月蝿いから」

「いいじゃない。黙っていれば分からないんだから」

「でもなぁ……」


富雄は亜依の服装を見ながら首をかしげた。
もちろんそんな仕草は亜依に見えないのだが。

少し丈の長い赤色のTシャツにオレンジの短パン姿。
こんな服装で身体に入り込んだら、異様に膨れ上がった短パンが怪しまれるだろう。
興奮しなければ――要はムスコが大きくならなければ分らないかもしれないが、興奮しないわけが無い。
まあ、Tシャツの丈が長いので短パンが半分くらいは隠れるから、
下から覗き込まなければ見えないような気もするが――


「う〜ん、どうしようかなぁ」

「食べたいから降りてきたんでしょ」

「それはそうだけど」

「もしかして、お姉ちゃんの身体に入り込んで食べる気だったの?」

「いや。実は透明になったこの状態で、つまみ食いしようかと」

「そんなの絶対にばれるよ。それなら私の身体に入って!」

「う〜ん……」


悩んでいる富雄。
しかし、亜依はいきなり富雄に向かって歩いてきた。
いや、正確には富雄の声が聞こえる方向に向かって歩いてきたのだ。


「あ……」


と言ったときにはもう遅い。
富雄の身体が亜依の身体に触れ、無条件に入り込んでゆく。
そして――


亜依の股間はみるみるうちに膨れ上がり、のっぺりとしたオレンジ色の短パンの股間が、
異様に盛り上がったものへと変化したのだ。


「…………」


自分から実行したとはいえ、あまりの変化に驚きを隠せない亜依。
自分の身体に、富雄のムスコが生えてきた事を実感したのだ。
赤いTシャツの裾を両手で摘んで引き上げ、その様子を伺う。

先ほどまで何も無かったオレンジ色の短パンの生地が伸びて、明らかに異物が入っていることが分かる。


「す、すごい……富雄さんのコレ……」


亜依は、その膨れ上がった短パンをそっと触ってみた。
風船のように柔らかいものではなく、カチカチになった生暖かい感触が指に伝わってくる。
そして、カチカチになっているそれからは、指で触られたという感触が確かにあったのだ。


「ほんと……これじゃあお姉ちゃんにばれちゃいそう!」


そう呟き、ドキドキしながら短パンのゴムをゆっくりと前に引っ張ってみる。
すると、オレンジ色の短パンの中、白いパンティから大きくなった富雄のムスコが
窮屈そうに頭を覗かせているのが分かった。
それを見て、ちょっと赤面した亜依。
さすがに恥かしいようだ。


「やだ……じっとこっちを見てるみたい」


そんなことを言いながら短パンから手を離し、Tシャツの裾をギュッと下に降ろした亜依は、
その裾にもっこりと膨れ上がった短パンが隠れている事を確かめると、ドキドキしながらお母さんと千紗のいるキッチンへと戻っていった。




「あれ、トイレに行ったんじゃないの?」

「え……あ、うん。やっぱりやめた」

「何それ?」

「別にぃ〜」


千紗の問いかけに対して適当に答えた亜依は、何事も無かったかのように椅子に座った。
そして、左手をそっと股間に添えたまま箸を持っている右手で夕食を食べ始めた。
固くて生暖かい感触が手のひらに伝わってくる。


「……また小阪先輩、嫌がらせしてくるだろうね」

「え〜。そんな事決まってるじゃないの。亜依はしてこないと思ってたの?」

「そうじゃないけど。やだなぁ……んふっ」

「何?」

「な、なんでもないよ、お姉ちゃん」


左手の中指の爪で、短パンの上から何気なく富雄のムスコの頭を掻いた亜依。
そのムスコから「気持ちいい」という刺激が伝わってくる。
思わず変な声を出してしまった亜依はムスコから手を離すと、テーブルの上にあった
コップを持ってお茶を飲んだ。

お母さんと千紗が目の前にいる。
そして、自分の股間には男のムスコが生えているのだ。
この信じられない光景に、亜依は妙な興奮を覚えていた。

出来るだけ股間を気にしないように、夕食を食べる。
こうやって食べている感覚が、亜依の中に入り込んでいる富雄にも同じように感じるのだろう。
そして、亜依がお腹いっぱいになると、富雄も満足するはず。

そんなことを考えながら、亜依はいつもよりたくさん夕食を食べた。


「珍しいね、亜依がそんなに食べたなんて。ダイエットはもう止めたの?」

「え、今日は特別なの。ふふっ」

「何よ、変な笑い方して」

「何でもないよ。それよりお姉ちゃん、また後で明日の合宿の打ち合わせしようよ」

「い、いいけど……合宿の何を打ち合わせするのよ」

「決まってるじゃないの!」


亜依は千紗に軽くウィンクをした。
その悪戯なウィンクに、千紗の眉毛がピクピクと動く。
千紗はチラッとお母さんの顔を見たあと、


「打ち合わせなんて何もしなくていいのよ。ご馳走様でしたっ」


と言って、食べ終わった食器を流し台に置くと、足早に部屋へと戻ってしまった。


「どうしたの?また喧嘩してるの。もう……」

「違うよお母さん。喧嘩なんてしてないよ!」


笑いながら答えた亜依。千紗と同じく食器を流し台に持っていくと、千紗を追うようにして
二階に上がって行った。


「ねえっちょっと!二人とも食器洗うの手伝いなさいよっ」


そんなお母さんに問いかけに、二人の返事はなかった――





「ねえ亜依、富雄知らない?」

「えっ……さ、さあ。私知らないよ」

「部屋にいないみたいなのよ。もうっ、勝手に部屋を出て何処に行ったのかしら」

「きっとお腹が空いたから待ちきれなくなってコンビニに行ったんじゃないの?」

「そうかなぁ……」


二階に上がったところで、部屋から出てきた千紗に話し掛けられた亜依。
亜依は知らん振りをしているようだ。


「きっとすぐに戻って来るよ」

「う〜ん……」

「それよりも明日の計画、もうちょっと練ろうよ」

「そんな事より、富雄が何処に行ったのかが問題よ。だってお母さんにばれたら大変だもん」

「きっと大丈夫よ、さっきだってばれなかったし」

「え?さっきって?」

「え!?あ、ううん。何でもないよ」


思わず「しまった」という表情をした亜依。
その表情に、疑いのまなざしをむけた千紗。


「……ねえ亜依、アンタ何か隠してない?」

「べ、別に。何も隠してないよ」

「……知ってるんじゃないの?富雄の居場所」

「知らないよ」

「ほんとに?」

「うん……」


千紗の目が亜依の下半身へと移動する。
赤いTシャツの裾に隠れているオレンジ色の短パン。
その短パンをじっと見つめる。


「ねえ亜依。もしかして富雄は……」

「あ、そうだ。私、彼にメールしなきゃいけなかったんだ。ゴメンねお姉ちゃん、後でまた部屋に行くから」

「あっ、亜依っ」

「後でねっ」

「ちょ、ちょっと!待ちなさいよっ」


亜依は話をごまかすようにしながら、自分の部屋に戻ってしまった。


「コラッ!亜依っ」


非常に怪しい行動だ。
千紗は後を追って、亜依の部屋の中に入った。


「亜依っ。アンタの身体に富雄が入ってるんでしょっ」

「ち、違うよお姉ちゃんっ。富雄さんなんて知らないよ」

「それならTシャツを捲って見せてよ」

「えっ……そ、それは……」

「ほら、早くっ!」


千紗は勢いよく亜依に近づくと、無理矢理赤いTシャツの裾を捲って、オレンジ色の短パンを食い入るようにして見た。
しかしそこには――


「……あ……あれ?」

「お……お姉ちゃん……だ、だから私は知らないって言ったでしょ……」

「そんな馬鹿な……」

「や、やだなぁ。もう、お姉ちゃんたら早とちりしすぎだよ」

「……じ、じゃあ富雄は……」

「お、お姉ちゃんの部屋にいるんじゃないの?」

「……そうかな……も、もう一度みてくる」

「うん。きっとお腹を空かせて待ってるよ……」


千紗は首を傾げながら、自分の部屋に戻って行った。


「はぁ〜。お姉ちゃんたらあんなにムキにならなくてもいいのに」


千紗の勢いに、ちょっと恐怖を感じた亜依はため息をついたあと、勉強机の椅子に座った。


「富雄さん、タイミングよく抜け出したみたい。でも焦ったなぁ……」



そして――



「富雄、いるの?」


千紗の部屋。千紗が誰もいないであろう空間に問い掛ける。すると、


「ああ、いるよ」


と、ベッドの方から声が聞こえた。


「え!?ずっと私の部屋にいたの?」

「ああ、そうだよ」

「じゃあどうしてさっき部屋に入って来たときに返事をしなかったのよっ」

「ごめんごめん、ちょっとトイレに行ってたんだよ。この身体でもトイレに行きたくなってさ。
 ちょうど戻って来たときに二人が勢いよく亜依ちゃんの部屋に入っていく所だったんだよ。
 それよりさ、夕食買って来てくれたのか?」

「えっ……ま、まだよ。だって今ご飯を食べたところなんだから」

「それなら早く買ってきてくれよ。おにぎりでいいからさ」

「……わ、分かってるわよ」


どこか納得のいかないと言った表情の千紗だが、とりあえず自分の財布を片手に持った。


「何でもいいの?」

「ああ。待っているうちに腹が空きすぎて食欲がなくなったからな。おにぎり1個だけでいいや」

「それなら別に食べなくてもいいんじゃない」

「…………」

「……もう、いいわよ。おにぎりでいいのね」

「ああ」


富雄が返事をすると、千紗は部屋を出てコンビニへ買いに行こうとした……が、
よく考えればあまりにもラフな格好すぎだ。
まさかパジャマのズボンを穿いてコンビニに行くわけには行かないだろう。

もう一度部屋に戻って服を着替えようと思ったが、千紗は自分の部屋を通り過ぎて亜依の部屋に入っていった。


「ねえ亜依」

「何?お姉ちゃん」

「悪いけどさ、富雄のご飯買ってきてくれない?」

「えっ、どうして私が?」

「お金は私が出すから。ねっ」

「う〜ん、しょうがないなぁ。じゃあアイスおごってくれる?」

「……もう。アイスだけよ」

「やったあ。それじゃあ買ってくるわっ」


亜依は千紗から財布を受け取ると、そのまま廊下を降りてコンビニへ向かった。


「余計な出費だわ。あとで全部富雄に払ってもらうから」


そう言いながら自分の部屋に戻った千紗だった。





「あれ、買ってきてくれるんじゃなかったのか?」

「亜依に買いに行かせたのよ」

「どうして?」

「だってまた富雄に着替えを覗かれるのは嫌だったからよ」

「うっ……で、でもさ、もうそんな事をいう仲じゃ……」

「富雄は私の事、全然分かってないもんね」

「そ、そう……かな……」

「そうよ」

「…………」


女心やムードに鈍感な富雄は、あまり分かっていないようだ。
その後、しばし沈黙したあと、富雄が話を切り出した。


「あ、あのさ。合宿の計画を整理しようぜ」

「……そう言えば亜依もそんな事を言ってたわね」

「そ……そうなんだ。面白そうって目を輝かせていたから。まあ俺としては仲間が多いほうが
 やりやすいって事あるからな」

「亜依はあんな風に言ってるけど、私は反対よ。だって亜依を巻き込んで、後で何かあったら……」

「う〜ん、それはそうだけどなぁ。本人がやりたいって言うならやらせてあげてもいいんじゃないか。すごく興味ありそうだったし」

「亜依は大事な妹なのよ。富雄には分からないわ」

「……それはそうだな……」

「亜依ったらすぐに調子に乗るんだから。私がどんなに亜依のことを心配しているか分からないのよね」

「千紗って妹思いなんだな。俺は兄弟がいないからその辺の気持ちがよく分からないや。
 千紗はえらいと思うよ」

「べ、別に普通じゃない。妹の事を心配するのは」

「亜依ちゃんも小阪先輩に苛められているのか?」

「そうね、まあ苛められているって言うか、後輩は全員そうなのよね。話したでしょ、小阪先輩と
 同じ歳の田原先輩がいるって」

「ああ。要は田原先輩の方が容姿が良くてバレーも上手いって話だろ」

「そう。いつも田原先輩にいいところを取られて、しかも男にチヤホヤされるのは田原先輩ばっかり。
 だからその鬱憤晴らしをするために私たち後輩に嫌がらせをしているのよ。取れない場所にボールを打ち込んで
 下手くそ呼ばわりしたり、ちょっと腹が立ったらグランドを走らせたり……」

「何度聞いても酷い先輩だな。自分の努力で立場を逆転してやろうとは思わないのかな」

「元々素質があるから、自分は努力しなくても1番だって思ってるのよ。それに比べて田原先輩は
 いつも遅くまで練習して、後輩もちゃんと指導してくれるし。男じゃなくても田原先輩が良いって
 言うわ」

「田原先輩は小阪先輩の事をどう思ってるんだ?」

「気にはしてはいるようだけど。田原先輩はそんなに気が強い方じゃないから自分からは
 あまり言わないのよ。その辺がちょっと残念なんだけど。田原先輩が言ってくれたら
 小阪先輩も少しは変るだろうなって思うのよ」

「なるほどな。それじゃあ田原先輩から言ってもらうようにすればいいんだよ」

「だって田原先輩は……って、もしかして!?」

「任せとけって!」

「そ、そんな事までするのっ?」

「そのほうが面白いじゃないか。元々俺が小阪先輩の身体に入り込んで、ムスコが生えているところを
 千紗が目撃して、みんなに言いふらそうとする。言わないでくれって小阪先輩がいうだろうから、
 その弱みに付け込んで色々命令してやるって計画だったよな。それと千紗が小阪先輩が好きな
 男子バレーボール部の豊平先輩に入り込んで、小阪先輩に冷たい態度を取るってのも。
 それに加えて田原先輩にガツンと言われたら精神的にもかなりつらいだろっ!」

「そ、それはそうだと思うけど……やりすぎじゃない?」

「やりすぎじゃないよ、お姉ちゃん。それくらいしないと小阪先輩は大人しくならないよっ」

「あ、亜依っ!いつから聞いてたの?」

「ん?ちょっと前からよ」


富雄と千紗の会話に割り込んできた亜依。
いつ買い物から帰ってきたのかは分からないが、
ドアの影からじっと二人の話を聞いていたようだ。


「富雄さん、何処にいるの?」

「あ、ここ」

「はい、おにぎり」

「サンキュー」


見えない富雄におにぎりを1つ手渡した亜依は、短パンのポケットに入れていた財布を
千紗に返すと、持っていたアイスクリームのビニールを破いてペロペロと舐め始めた。


「ねえお姉ちゃん、私も小阪先輩をギャフンと言わせたいよ。お願い、一緒に仕返しさせて」

「亜依、でもね……」

「お願いよ。この前なんて、友達の佐織(さおり)が怪我させられたんだよ。もう許せないんだから」

「…………」

「亜依ちゃんも悔しいんだな。千紗、一緒に仕返しさせてやろうぜ」

「…………」

「ね、お姉ちゃんっ」

「……もう。知らないわよ、後でどうなっても」

「やったぁ!さすがお姉ちゃんだねっ」

「まったく、調子いいんだから」

「という事で、小阪先輩への仕返しは俺と千紗と亜依ちゃんの三人という事で決定だな。
 それぞれ役割を分担しておこうぜ」


何とか話がまとまったところで、亜依が富雄に質問を投げかけた。


「ねえねえ富雄さん、その薬ってもし女性が女性の身体に入り込んだらどうなるの?」

「えっ?さ、さあ。それは試してないから分からないな。だって異性の身体に入り込んで
 アソコが変化することを目的に作ったんだから」

「それじゃあ富雄さんがお父さんの身体に入っても何も変化しないわけ?」

「試してないから分からないよ。アレが2本生えてきたりして。まあそれは無いだろうけど
 さすがに男の身体に入ろうとは思わないな」

「ふ〜ん……そっか。ねえ、もし私がお姉ちゃんの身体に入り込んだらどうなるだろうね」

「いっ、や、やだっ。亜依ったら何考えているのよっ」

「お姉ちゃんのアソコが私のアソコになるのかなぁ」

「そうだな。その可能性は十分にあるよ」

「もうっ!二人で何変な話してるのよ」

「いやいや、それもまた面白そうだなあと思ってさ。だってもしそれが出来たとしたら……」


富雄は何やら考え事を始めた。


「ちょっと富雄、変な事考えないでよ」

「え、あ、ああ。分かってるって。とりあえず今日はこの辺でお開きにしようか」

「う〜ん、そうね。お風呂も入らないといけないし、明日の準備もあるしね」

「じゃあ私、自分の部屋に戻るね。お姉ちゃんアイスご馳走様」

「いいわよ、そのお金は富雄に出してもらうから。ねえ富雄」

「え、俺?あ、ああ……い、いいよ別に。アイスくらい」

「違うわよ。おにぎり代もね」

「ケチくさいなあ」

「え?何か言った?私の家に泊まる宿泊代も払いたいって?」

「うっ……ま、まあおにぎり代くらい安いもんだから払うよ。ははは」


慌てて言い直した富雄。


「亜依。明日は早いから、後でお風呂に入ったらすぐに寝るのよ」

「分かってるって、お姉ちゃん」


そう言って、亜依は部屋を出て行った。


「さて、ねえ富雄。一度薬を飲んで元の姿に戻ってよ」

「え?どうして?」

「いいから」

「だってもし両親が入ってきたら」

「大丈夫よ。早く」

「わ、分かったよ」


富雄は渋々カバンから元に戻る薬を取ると、ゴクンと飲んで元の姿に戻った。
もちろん裸なのでベッドの上に置いてある毛布を下半身に巻いている。


「はいこれ」

「あれ、トランクス?」

「お父さんのよ」


千紗は、まだビニールに包まれた使用していないトランクスを手に持っていた。


「それを穿くのか?」

「そんな格好じゃ私も恥かしいからね」


そう言ってトランクスを手渡した千紗は、明日持っていく物をカバンに詰め始めた。
女子バレーボール部の襟のついた白いユニフォームと7分丈の黒いスパッツ。
黒いジャージの上下に肘や膝を守る白いパッド。そして下着やタオルなど……

必要なものをカバンに詰め終えた千紗は、次にお風呂に入るための準備を始めた。
と言っても、下着とパジャマの上だけだが。


「じゃあ私は先にお風呂に入ってくるから。この部屋を出ないね。というか、ベッドの下に
潜り込んでいてよ。もしかしたらお母さんが入ってくるかもしれないから」

「だ、だったら薬を飲んで透明になっていた方がいいじゃないか」

「それだとお風呂に入っているところを覗かれるかもしれないし、私の身体に入り込んでくるかも
知れないからね。富雄のカバンもお風呂場に持って行くから」

「そ、そんなぁ」

「じゃあね。大人しくしててよ」

「う、うそだろ〜」


と言う富雄を無視して、千紗は部屋を出て行ってしまった。
薬を持っていない富雄は部屋を出る事すら出来ない。


「くそ〜。千紗にやられた……」


さすがに今回は諦めたようだ。
トランクスを穿いた富雄は、千紗の言うとおりベッドの下に潜り込んで千紗がもどって来るのを待った。


「ちぇっ、情けない……」







富雄と千紗の悪巧み4(いきなり生えてきたアレ)…おわり



あとがき
今回はちょっとだけでしたね(^^
その割には長かったですが(笑
お風呂に入って楽しむ話もアリかなぁと思ったのですが、どうも話が合わなさそうなのでやめました。
あとは寝て合宿に行くバスの中、そして合宿場の話へと続きます。
はて、いつ終わるんでしょうか(^^;

それでは最後まで読んで下さった皆様、ありがとうございました。
Tiraでした。


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