コードNo. S−N05
作品名 改竄(The Splicer)
作者名 ドン・ダマッサ:Don D’Ammassa
(尾之上浩司訳)
掲載メディア 「喘ぐ血」祥伝社文庫(小説)
ジャンル 変身







解説&内容紹介

 映画館で映写機担当のスコットは、ある日映画の内容が改竄されているのではにかという疑念を持つ。
 最初の作品はゴジラ映画フェスティバルで上映された「ゴジラ対ヘドラ」の中でヘドラから逃げ惑う群集の先頭に白い肌を顕わにした破れた服を着た少女を見止めた時だった。群集に踏みつけられた彼女は、白い太股もお尻も顕わになっていく。その時は何となく違和感を覚えただけだったものの、その1週間後に今度はオリジナル版「キングコング」において巨大類人猿が主演女優の衣服を探ってその乳房が覗いた時だった。「どうもおかしいぞ」とはっきり確信に変わっていったのは「禁断の惑星」でアン・フランシスとスリー・ニールセンの濃厚なラブシーンを見た時だ。「いったいどうなっているんだ」。さらに次の週末、「宇宙戦争」で宇宙ステーションにいる筈のない女性の乗組員がいる。「恐竜100万年」では原始人女の乳房が顕わになる。
 だが数少ない観客は一人の少年を除いて誰もその異変に気づかなかった。スコットは上映したフィルムをチェックするが、内容は本来のもので異常はなかった。どうして上映した時に内容が変わっていたのか。原因と犯人を探るスコット。その間にも「未知との遭遇」でリチャード・ドレファス扮する夫がテリー・ガー扮する妻に暴力的セックスを強要するシーンに遭遇してしまう。どうやっているのかわからないが犯人は観客の中にいると確信したスコットは、「バーバレラ」の中でジェーン・フォンダの衣装が卑猥なものに変えられているのを見て犯人の絞り込みを進めていく。その間に上映した映画の改竄はどんどんえげつなさを増していった。
「猿の惑星」でモノ言えぬ少女が電気ショックの実験台にされ「タイムマシン」ではウィーナが火あぶりにされてしまう。
 3人に容疑者を絞り込んだスコットは、最後にチャックというニキビ顔の少年を問い詰める。チャックと一緒に彼のアパートに入ったスコット。そこはエンタープライズ号の模型や多くのフィギュアで溢れていた。SFマニアのチャック少年は、スコットに自分の力について話し始める。彼には自分が思う通りにモノを変える力があるのだ。
 彼の力を使ってひともうけしようとチャックを説得するスコット。拒否するチャック。彼の悪戯をバラすというスコットに、チャックは「うちのオヤジにしたことと同じことをやってやる」という。途端にスコットの体が変化し始める。棟が膨らみ股間にむずむずした感触が広がる。さらにその両手がシーツで縛られてしまう。そして彼の体もそして声さえも女性のものに変わってしまう。スコットのジーンズが引き下ろされ、むき出しになった股間には見慣れたものはなくなっていた。
「ぼくが変えられるのは映画だけじゃない。あんなものちょろいものさ」


 かなりマニアックな作品です。SF映画作品を良く知っている人は、改竄された映画のシーンの一つ一つを想像するとたまらないかもしれません。
 女に変えられてしまったスコットがどうなったのかはあえて触れませんが、この後作品はすぐに終わってしまいます。ですから変身後の描写自体は少ないです。

 さて、この作品は「喘ぐ血」という短編集に収載されていますが、これは以前紹介した「震える血」の第2弾になります。ということでこの短編集も「エロティック・ホラー・アンソロジー」です。でTS或いはTG的作品はやはりこの1本だけです。

ということで、作品は
「喘ぐ血」(祥伝社文庫:平成12年初版)に収載され刊行されています。

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