コードNo. S−N02
作品名 猫は頭にきた
作者名 式貴士
掲載メディア 「連想トンネル」角川文庫(小説)
ジャンル 入れ替わり






解説&内容紹介

 とある会社に勤める大友一樹は社長令嬢・朝比奈美麗の婿候補に選ばれていた。平凡で他の二人の候補に比べてあまり取り得のない彼だったが、美麗を見た途端、一目ぼれしてしまう。いつも彼女の側にいたい、彼女の側にいられるなら下男でも奴隷でも構わないと。
 ところで彼女にはロリーというシャム猫のペットがいた。そのロリーを見ると何となくいらつきを感じる一樹だったが、ロリーのほうも段々彼に敵意を剥き出しにするようになっていた。そしてある日、社長宅に婿候補の3人が呼ばれるが、急に腹痛に襲われトイレに向かう一樹の前にロリーが立ち塞がり威嚇する。怒りが頂点に達した一樹はロリーの体をひっつかもうとしてその尻尾をぎゅっと掴む。逆上したロリーは一樹の左手をがぶりと噛み付く。途端に一樹とロリーは入れ替わってしまった。
 ロリーになって四六時中美麗の側にいる幸せを手に入れた一樹は、美麗の着替えや裸を堂々と見たり、彼女の性癖に従ってアソコに塗ったバターを舐めさせられたりと至福の日々を送る。一方一樹になったロリーは他の二人の候補を圧倒し、美麗の夫の座を射止める。妻になった美麗をベッドで陵辱する一樹になったロリー。一樹は夜な夜なそれをただ見ているしかなかった。ある夜、怒りに任せて元の体に飛び掛る一樹だが払いのけられ、ベッドに同衾する美麗に尻尾を掴まれてしまう。痛みに思わず美麗の手を噛む一樹。その瞬間今度はロリーの体の一樹と美麗が入れ替わってしまう。
 美麗になった一樹は、翌日一人になるとその身体でオナニーを始める。それを呆然と見つめるロリーになった美麗。その夜ベッドの中で一樹は美麗が夫の正体がロリーだと見破ったかのように振舞う。そんな彼のネグリジェを引き裂き陵辱し始める一樹の体のロリー。結局美麗の体では思うように抵抗できず、エクスタシーの悲鳴を上げる一樹だった。
 美麗になった一樹は昼はオナニーしたりシャム猫になった美麗にバターを塗った己のアソコ‥しかもそれは元の美麗の体である‥を舐めさせ、また夜はロリーである夫‥しかもそれは元の自分の体である‥に陵辱される肉欲に満ちた日々を送るが、或る日シャム猫の美麗と打ち合わせて今度は夫とロリーの身体になった美麗を入れ替えてしまう。
 リスクを避けるため、元のシャム猫に戻ったロリーを安楽死させ、体が入れ替わったまま生きていくことを選択した一樹と美麗。だが一樹は幸せだった。何よりも彼は元の自分の身体になった美麗を狂おしい位に愛し始めていた。さてこれをネルシズムと呼ぶべきなのか……。


 式貴士先生、実はこの方某有名作家さんですが、本来の自分の作品とは別に「式貴士」のペンネームで何冊かの書き下ろし短編集を書いています。この作品はその中の1作ですが、実にTSマインドに溢れた佳作です。上記の概要説明ではとてもその魅力を書き切れませんが、後半一樹が美麗の身体でオナニーする様、そして元の自分の身体になったシャム猫のロリーに陵辱される様、そしてシャム猫になってしまった美麗に本来の美麗の体である自分のアソコを舐めさせる様は、短い文章ながらほんとはぁはぁもので、この作品も何度も何度も読み返したものです。


作品は
「連想トンネル」(角川文庫刊:昭和57年初版)に収載されています。

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