土曜日6月20日 暗い部屋(その2)


 ナイフの十分な威力に満足したミシマは、次の行動に移った。凛太郎の夏服のリボンを強引に抜き取り、ブラウスのボタンを外してゆく。丁寧に、ひとつづつ。ミシマは時々凛太郎の顔を見ながらその行為を見せ付けるように。次第に、呼吸の度に大きくうねる凛太郎の真っ白な胸と腹部が露わになってゆく。
「あ、あ……」
 緊張と恐怖とで、涙を流し眉を寄せて不安げにその様子を見つめる凛太郎の姿は、それだけで三人の劣情を刺激した。
(あ、やっ、見られちゃうっ、修ちゃん、修ちゃんっ、修ちゃんっ!)
「おぉ、真っ白じゃん、山口色っぺーぞ」
「腕上げてたらシャツ脱がせらんなくね?」
 真正面から見ているミシマが感心して言うと、ヨシノがもっともな事を言い出した。
「上なんて捲って出しちまえばいいんだよ。下だけ脱がせば用が足りんだろーが」
 しゃべりながらミシマはブラウスを大きく割り開いた。スカートの太いつり部分が邪魔になり胸全体は出せなかったが、白いブラジャーは十分に堪能できる。徐にミシマがブラジャーに手を掛けた。
「ああ、だ、だめ、取っちゃヤダ、見ちゃ駄目っ」
 自分は男だと言っていたけれど、しかし身体は女の子なのだ。こんな奴らに身体を見せたくはなかった。触られたくもなかった。勿論、徐々に女の子の意識が強くなっていた事もあるし、心の中では「修一だけ」にしか許すつもりはなかった。
「なんだぁ? 段々女っぽくなってんなぁ。でもなぁちゃんと調べねーとどっちかわかんねーよな」
 ミシマは言うが早いか、ブラジャーをぐっと掴みすばやく引き上げてしまった。
「痛っ!」
 ワイヤーの部分で敏感な乳首が少し擦られひりつくような痛みが走る。
「……も、揉まれてる割には、そんなおっきくないすね。乳首も……ピンクだし」
「……あ、そんなに……してない……見ないでよぉ……ひっ?!」
 生唾をゴクッと飲み込みながらイヤラシイ事を平気でいう阿部に、凛太郎は激しい羞恥に顔を赤く染め、弱弱しく反論した。しかしその声もすぐにミシマがざらつく左手で右の乳房に触れると、小さい悲鳴に変わった。
「おぅ、こいつの肌って触るだけでも気持ちいーぞ」
「ほんとか? どれ」
 ミシマに促されたヨシノが、凛太郎の頭越しに手を伸ばし強く揉みしだいた。
「んぅ」
「おいおい、凛ちゃん感じちゃってんのかぁ」
 握られた痛みと嫌悪感から声が洩れただけだったが、ヨシノは下卑た笑いをしながら言い放った。
 ミシマはニヤニヤしながら身体を少し下にずらし、右の胸に顔を近づけると、そのまま大きく口を開けヤニ臭い唾液たっぷりの舌を出し乳首を「れろぉー」っと舐めあげた。
「ひゃぁっ!? あぁ、やっ、だ」
 不意のおぞましい感触。敏感な場所を舐め上げられ思わず凛太郎は声を上げる。ミシマはその様子を上目遣いで見ながら、左手で乳房を脇から集めるように盛り上げさせると、舌先で円を描くように乳輪を舐めた。
 凛太郎はその生温かい不快な感触に、反射的に両腕で胸を隠そうと力を入れたが、ヨシノにしっかり頭の後ろで掴まれている腕はびくともしない。
 ヨシノは左胸全体を揉み上げると、徐々に指先を乳首へとずらしていく。頂点まで達すると、人差し指と親指で摘みさわさわと乳首を転がした。
「んんっ」
 舐められ、乳首をいじられる度に、凛太郎の身体がビクビクと震える。凛太郎がじりじりとした痛みを感じて、ひざを閉じようと自由な左足を動かそうとしたが、阿部に左足も掴まれ開いた状態で固定されてしまった。そしてミシマがその間に身体を入れてきた。
「どうだよ、気持ちいいだろ山口。あん時言ったろ、絶対モノにしてやるってな。今日がその日なんだぜ。へへ、もっと良くしてやるよ、諸積よりもな」
 全く快感など感じていないし、おぞましいだけだ。それでも身体を緊張させ、腕を足を身体に密着させ縮こまろうと力を入れている凛太郎の呼吸は、次第に荒くなり「はぁはぁ」と吐息を漏らしているように見える。
「あン」
 わき腹に誰のものか解らない手が這い回った。凛太郎は自由度の低い身体を、その手から隠そうを捩る。しかし全く意味を為さない。いつの間にかヨシノは胸から手を離し、代わってミシマが左胸を嘗め回す。
「〜〜〜くぅ、ん」
 まるでナメクジが這い回っている感触に、凛太郎は総毛だった。
 薄暗い部屋の中で、三人は満足げに凛太郎を見下ろしていた。呼吸するたびに大きく盛り上がる胸。真っ白で滑らかな肌は、胸元あたりまで朱に染まっている。そこから目を下にずらすと太めのスカートのつり部分まで肌蹴たブラウスから、形のよい乳房が窮屈そうに姿を覗かせている。たくし上げられたブラジャーが乳房の上で留まっている。乳房は左右とも唾液でてらてらと、窓の隙間から差し込む光を反射させていた。凛太郎は左を向き、執拗な攻めに耐えている。さらさらした髪が涙で顔に貼りついていたために、表情までは見えなかった。唇はわなわなと震えている。煽情的な眺めだった。
 三人の動きが止まりミシマが身体から離れた。凛太郎は開放してくれるのかと思いゆっくりと目を開け周囲を窺った。その瞬間、真っ白な光が瞳を焼いた。それがカメラのフラッシュだと気づくのに数秒かかってしまっていた。
(しゃ写真?! そんな……!)
「山口ぃ、記念写真撮っとこーな。一応ここまでは女に見えるよな。こっから先もどうなってるか解るようにちゃんと証拠撮っとかねーと」
 腕を掴まれ胸が肌蹴、足を広げられたままの姿が、数回フラッシュによって浮かび上がる。
「いやだぁああっ! 写真! 撮らないでっ、お願いしますっ撮らないでください……!」
 動けない身体を必死によじり身体を隠そうとするが、かえってブラウスが広がりその中では乳房がふるふると踊り、スカートは際どいところまで捲れて綺麗でまっすぐな白い腿が覗いてしまった。
 ごくっと誰かが唾を飲んだのが解った。
 徐にミシマがスカートの中に手を伸ばす。そのままショーツの両端に指を掛けると、凛太郎が抵抗する間もなく一気にひざまで下ろしてしまった。
「あっ……!」
 無理矢理ショーツを引き下ろしたせいで、開いた膝でレースのついた白いショーツが伸びきり、膝の肌に食い込み凛太郎に鈍い痛みを感じさせた。縫製部分のどこかが切れたのか、小さくピシっと音がしていた。
「あっあっ、パンツっ戻してっお願いっ、戻してってばっ!」
 皆、無言で凛太郎の姿を堪能していた。思い出したように、中途半端にショーツが引っかかった凛太郎の姿にフラッシュが焚かれる。
 ミシマは凛太郎の足元を向くように腹の上に腰を下ろし、抵抗できないように両腕でひざを揃えさせた上で両足を抱え、足を上げさせる。阿部はショーツを足首まで下ろし左足だけ抜くと、数回ねじってから再び足首を通した。
「こうしとくとパンツも脱げないし、足も動かないから逃げらんないって、なんかで見ましたよ」
 凛太郎は惨めで絶望的な状況に、抵抗する力を失っていった。下半身を守るはずのショーツは自らの行動を封じる戒めとなっている。もう残った砦はスカートだけだった。
「よっしゃ、スカート捲くって足広げちまうか。どんなちん○付いてっかなぁ〜。ついでに証拠撮らねーとな」
 口の端をぐっとイヤラシげに上げたミシマが、阿部に促す。阿部は我が意を得たりとばかり、ひざをがっちり掴むと左右に割り広げようと体重をかけた。
「あっそんなっ、やだぁ〜、付いてないからっ。全部女の子になってるからっ。阿部君もうやめてよっ。ぅう〜」
 凛太郎は開いてなるものかと喉の奥からうなり声を上げながら、力いっぱいひざを閉じる。しかしミシマもひざをこじ開けるのに参加し、凛太郎の震える両足を徐々に広げていった。ひざを立てた状態から広げられたため、凛太郎の足はひし形に開き、ミシマと阿部がかけた体重で床にぴったりとつけられてしまった。
「………………お願いします。もうこれ以上はやめてください、おねがいします……ゆるしてください……」
 足を大きく広げられ、もう駄目だと感じた凛太郎は、涙をぼろぼろ流し鼻をすすりながら消え入りそうな声で三人に懇願した。しかし三人は何の返答もしない代わりに、次なる行動へ出た。
 阿部に足を押さえつけるのを任せ、ミシマがスカートをたくし上げる。凛太郎からはミシマの身体が邪魔になって何をしたかわからなかったが、腿にあったはずのスカートの感触がなくなり、股間を風がなでたように感じて、女の子の部分が二人に晒されたことが解った。
「あぁっだめぇ、スカート、早く下ろしてっ、見ちゃだめっ、やだやだあ!」
 大声を上げつつ身体を捻ろうと、懸命に腕も足も動かそうとした。しかしがっちり掴まれた四肢は全く動かない。動くのは頭だけだった。ヨシノが平手で頬を張った。涙がパッとあたりに飛び散る。
「ぅるせーなっ、凛ちゃんが騒ぐと諸積が大変なことになるかもしんねーぞっ」
「うぅ、う、ぅ…」
 凛太郎は修一の名前を出され、半ば諦めたように身体の力を抜いてしまった。そのまま横を向き止め処なく流れる涙と伴に嗚咽が洩れた。もう、助かる手段はないのかも知れない。黙って従っていれば修一の事もしゃべらず、写真も返してくれるかも知れない。もしかしたら写真だけで、酷い事はされないかも知れない。凛太郎は抵抗を諦める材料を、理不尽な暴力を肯定する材料を探していた。
(修ちゃん…、助けてぇ…)
 修一が走り回って探している姿が見える。自分を見つけて助けようと必死に探している。もう直ぐそこまで来ていて、今扉を開けようとしている。そんな都合のいい場面が凛太郎の瞼に映っていた。そんな事位しか考えられなかった。今の凛太郎の状況ではその位しか縋るものがない。足音が聞こえてくる筈と耳を欹てたけれど、隣の音がうるさくて解らない。
「おい、山口、こっち向け!」
 ミシマの声にピクッと反応すると、ゆっくり顔を上げた。目を開けても涙で視界がぼやけて何がなんだか解らない。ストロボが五、六回光ったことだけは解った。
「そんじゃ鑑賞会始めっか」
 ミシマはデジカメを阿部に渡すと、体を入れ替え凛太郎の足の間に入ってきた。ごそごそとポケットを探ると、小型のマグライトを取り出し、先端を回転させて明かりを灯した。阿部はヨシノと交代し腕を押さえる。
 暗い部屋の中で、その一箇所だけが総天然色で浮かび上がった。最も残酷で陰惨で恥辱に満ちた鑑賞会が始まった。
「へぇ、山口毛ぇ薄いな。なんかガキみてぇ。ん? ちょっとしょんべんくせーかな。ちゃんと洗えよ」
 自分の秘所をいやらしく評価され、凛太郎は真っ赤になり横を向いた。
 ミシマは構わず両手の指でぴったり合さった割れ目を開いていく。
「! い、あ、だ、め。」
 開かれたソコは綺麗なピンク色を見せている。修一ではない下卑た男達によって隅々まで観賞されていた。
「……すげぇ、こんなきれーなまん○見たことねーな……」
 ヨシノが喉を鳴らしながら言った。白い肌の真ん中に、ピンク色の肉裂が見えていた。白い肌と薄く茂った陰毛とピンクの肉のコントラストは、ライトの光も手伝いよく映えた。包皮に隠れてクリトリスは見えなかったが、ヌラッとした小陰唇や膣口が晒されている。凛太郎が荒い呼吸をする度に、複雑な形状を見せる肉洞が「きゅっ」と蠢く。ヨシノが容赦なくストロボを炊いた。
 隠したい部分が全て晒されてしまった。修一にさえ見せないだろう場所を、全く知らない男達に暴力によって開かれていた。しかも写真までいいように撮られている。凛太郎は惨めに泣くことしか出来なかった。もうどのくらい泣いたか解らない。生まれてから今まで泣いた以上に涙が出たような気がする。
(もう、やだよぅ……。なんで僕ばっかり……修ちゃん……助けに来てよぉ……)
「山口ぃ、まん○乾いてんぞ。特別に俺が濡らしてやっから感謝しろよ」
 ミシマが唾液にまみれた舌を出すと、そのまま開ききった凛太郎の性器を、会陰部から膣口を通り小陰唇をかき分け、クリトリスまでゆっくり、しかし一気にベロリと舐め上げた。
「ひぁっ」
 突然の生温かい湿った感触が敏感な粘膜をゆっくり走り抜けた。凛太郎の口から小さな悲鳴がこぼれた。
 ミシマはクリトリスに狙いを定め、左手で小陰唇を広げ、右手で包皮を剥いた。新たな刺激に凛太郎は身をよじったが、離れる術は無い。そのままミシマがクリトリスに舌を這わせると、凛太郎の身体が大きく跳ねようとした。
「あ、くっ」
「なんだ山口、感度いいじゃん」
 ぬめぬめした舌の刺激が気持ち悪くて反応しただけだったが、ミシマは都合のいいように解釈していた。仮に苦痛のため漏れる声であっても歓喜の声だと思われてしまう。凛太郎は声を上げないように、下唇を噛み口を結んだ。
 微妙な強弱をつけ、円を描くようにクリトリスを嘗め回す。時々口をすぼめ軽く吸い出しながらゆっくりと舐めていく。びくびくと動く凛太郎の反応を楽しみながら、ミシマは執拗に舐った。
 修一にされたなら、もしかしたら感じたかも知れない。しかし暴力と恫喝によるこの状況では、どんなに丹念な愛撫をされても、いくら魔物に快楽を引き出された凛太郎の身体であっても熱くもならないし、濡れてこない。
 ミシマが確かめるように、これから世話になる肉穴まで舌を下ろしてきた。鼻でクリトリスを刺激しながら、舌をゆっくり膣にねじ込んでくる。魔物には「修一」ですっかり犯されていた肉穴だったが、現実ではそんな事をした事がない。凛太郎は得体の知れない柔らかいものが体内に進入してくる感覚に恐怖を覚えていた。
(ぃいやぁだぁ、気持ち悪いぃ…)
 ミシマの舌は執拗に下の口を動き回った。まるで舐るようなディープキスをしているように。尚も感じるおぞましさに凛太郎は一層強く唇を噛み締め、声を出さないように耐えた。
「ああの、もういいんじゃないすか? アレ持ってきてますし」
 蚊帳の外だった阿部が焦れたように口を挟んだ。ミシマはちらりと見上げると凛太郎の股間から顔を上げた。後ろでよだれが垂れそうな顔をして、じっと凛太郎の唾液に濡れた性器を眺めていたヨシノを促し、二十センチ程度の塩ビ製のボトルを、傍らに置いてあった袋からとってこさせる。
「山口ぃ、いよいよお楽しみの本番だぞ。三人いっからお前が男か女かしっかり納得させてくれよな」
 本番と言う言葉自体、凛太郎にも知識はあった。男だからAVぐらいは見た事もあった。その時使われていた「本番」の意味は、「セックス」と同義語だった。今の時点での意味は「強姦」であり「輪姦」だが。
 凛太郎は自分にもペニスがあったから、勃起した時の大きさも堅さも個人差があるとは言え想像が出来る。しかしあの太さと堅さを持つモノが、自分の身体に入るとは到底思えなかった。魔物が行ったのはあくまでも夢の中の話だったのだ。現実世界でも秘裂とその奥に佇む快楽の門が十分に柔らかくほぐされ、濡れていれば指を入れても痛くはなかった。オナニーした時や修一に弄られた時がそうだった。しかし濡れていない今の状況では絶対無理だと思っていた。
「むっ無理ですっ、絶対入らないよ、お願いします、もう帰してください、誰にもいいませんからっ」
 凛太郎の悲鳴にも似た懇願は、真上から阿部の怒声でかき消された。
「うるっせーよ! ガタガタ抜かすな、ボケがっ!」
「やっ……」
 阿部が情欲に駆られた顔をしながら、腕を振りかぶり叩く素振りを見せる。凛太郎は反射的に顔を背けた。
「山口ぃ、誰にもいいませんなんて、誰が信用すんだよ。お前もうダメ、お仕置き決定。ヨシノ、ガムテで口塞げ。声がたけーからうるせーわ」
 ミシマはそう言うと、自らは凛太郎の足の間で手早くズボンとパンツを脱ぎ捨てていた。シャツの裾から勃起したペニスが見えるのが間抜けだったが、凛太郎にとってそれはこれから自分を蹂躙する凶悪な肉の凶器そのものだった。
「たすけてっ、だれかっ、修ちゃん! しゅうちゃああんったすけてえ……んむ」
 凛太郎の叫びは阿部の手で塞がれてしまった。ヨシノがガムテープを千切って近付いてくる。ガムテープを口に貼られまいと、必死に首を振り阿部の手を振払った。首を振る度に髪がふわりと広がり、涙が遠心力でまた飛び散った。
 ヨシノはそのさらさらした髪を掴み、強引に動きを止めると手早くガムテープで口を塞いでしまう。
「うぅ〜……」
 懸命に叫ぼうとするが、最早助けも呼べない。開かれた足元を見るとミシマがドロドロした液体をボトルから出し、勃起したモノに塗りつけている。
(やだやだやだぁっ、あんなの入んないよ……! 助けて、お願いします、何でもするから、誰でもいいから助けて。修ちゃん、修ちゃん!)
 涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔を歪めながら、凛太郎は最後の力を振り絞り足掻く。足の間にいるミシマを締め出そうとギュッと膝を閉める。しかしそのぐらいではいっこうに埒が明かなかった。ミシマは滑つく液体を手にたっぷりと取ると、そのまま凛太郎の性器にべちゃっとつけた。
(ひっ、冷たい! いやだ、気持ち悪い! あ、あぅうう……)
「ひああぅ」
「山口ぃ、これなんだか解るか? ちょっと気持ちよくなるクスリが入ってんだ。効き目遅いけどな。楽しめよ」
 言いながらミシマの指は丹念に得たいの知れないローションを塗りこんで行く。包皮が剥かれたクリトリスを指で扱きながらたっぷり塗りこむ。そして指でV字を作り小陰唇をグイっと広げると、膣前庭と膣口にぬるぬると塗りたくっていく。膣口を丹念に指で柔らかくし、ゆっくりと中指を差し入れていった。
(痛っ。指、抜いてっ抜いてよお)
 指が入ってきた事で疼痛を感じた凛太郎は、喉を反らしうめき声を上げていた。
 ミシマの太い指は、そのままゆっくりと往復していく。ヌチヌチと音が聞こえる。
 指が抜き差しされる痛みの為に、次第にぴくぴくと絞めてくる膣の感触にミシマはにやりとしていた。
「山口、お前何感じてんだよ。男にいじられて感じる男は変態だよな。お前変態だよ。嘘つきだしよ。やっぱ俺たちできついお仕置きしてやっから。ほれ」
(あぁああ、ちがっ、痛いからっ、感じてないっ感じてないいぃっ!)
 理不尽な言い様だった。しかし凛太郎には既にどうしようもない。ミシマは凛太郎の膝を大きく割り広げると、先端から汁を垂れ流す自分の勃起を凛太郎の性器に擦り付けた。たっぷり塗られたローションが、亀頭を上下させる度に「くちゅくちゅ」と音を出す。
(あ、あ、助けて、かみさま、たすけて、しゅうちゃん……!)
 恐怖と羞恥。その感情は大きく凛太郎の心の中で膨らんでいき、身体もそれに支配されていった。ブラウスの中の白い胸とスカートの下のお腹は大きく波打っている。
 ミシマは指とは違いまるまると太った亀頭が膣口を捕らえると、ゆっくりと凛太郎の秘裂に肉棒を突き進めた。途中で進入を妨げようとする関所があったが一切構わず、凛太郎のまだ誰も通った事のない処女の地を蹂躙していった。
「んぁああああ!」
(いたい、いたいさけちゃうさけるいぃぃたいいい!!)
 身体を硬直させ、槍が串刺しにするのを感じたが、痛みでどこまで入っているのか解らなかった。ぎちぎちと凛太郎の狭い肉洞を突き進んでくるミシマの凶器。凛太郎の恥骨とミシマの恥骨が陰毛越しにくっ付いたため、やっとこれ以上入ってこないと知った。
 チョーカーの銀の犬が、鎖骨の中心からスルリとずれ首の後ろに回って行った。
(うあああっ、それ以上入って来ないでっもうっ抜いてっ抜いてぇええっ!)
「うぅおぉぉ、ちょーせめー。気持ちいいぃ〜。なんか蠢いてるって」
 ずっぷりと凛太郎の体内に入り込んだミシマは、ぎちぎちと自分のペニスを握り締める肉筒の狭さに酔いしれ襞の蠢きに陶然とした。そしてもっとこの膣を味わうため、今度は串刺しにした凶器を、ゆっくりと凛太郎のソコから抜き始めた。処女の名残がカリにひっかかり新たな痛みを凛太郎の身体にもたらしてしまう。
「ひぃいいっ……」
 ミシマは腰を引ききると、亀頭だけ膣に銜えられた状態で観察した。大きく上に上げられた腕は押さえつけられ、胸元は痛みの為か浅い呼吸で激しく動いている。ブラウスは肌蹴て形のいい乳房を覗かせ、割り開いた足の付け根には、薄い陰毛に彩られたピンク色の初々しい性器。そこは今、自分のペニスが突き刺し奪ってやった。その証拠が膣の周りに破瓜の血としてこびり付いている。ゾクゾクする眺めだった。それを見ながらミシマが一人悦に入る。
(はははあ、やってやったぜ。くそガキがっ。お前の大事なもん奪ってやったからなあっ!)
 先ほど舐めたときと違いペニスに絡みついた小陰唇は充血しピンクから赤へ変化している。クリトリスも少し大きくなっているようだった。
「ヨシノぉ、写真撮っとけよ」
 ヨシノも阿部も凛太郎の痴態に目が釘付けだった。欲情し興奮しきった二人は涎を垂らさんばかりに口をあけ、はぁはぁと息づかいを荒くしていた。股間はいきり立ってズボンを破りそうに見える。
 ミシマの一言に我に返ったヨシノは、エロ本カメラマンよろしく、繋がった局部のアップや凛太郎の顔を含めて撮った。
 アングルをいくつか変え、痴態を撮られている間、凛太郎は混乱の極みにいた。
(……犯されちゃった……おとこに、汚されちゃった……おとこなのにおんなだけどおとこに……。修ちゃん、好きなのに修ちゃんじゃないヤツに……ごめん……修ち……ひぎっ?!)
 あまりに惨い仕打ちに打ちのめされ、ごちゃごちゃになっていた凛太郎だったが、ミシマがぐりぐりと狭い膣に押し入り、リズミカルに動き始めるとその痛みで覚醒させられてしまった。ミシマの恥骨が凛太郎の恥骨にぶつかる度に、ローションにまみれた凛太郎の性器からは「ぶちゅっ」「ぬちゅっ」と濡れた音が聞こえている。その音が聞こえる度、凛太郎の鼻からは「ん、ん、ん、ふ、ん」と息が漏れ出す。身体もそうだが、それよりも心がミシミシと裂けていくようだった。
(……いたいよぉ。もう、早く終わってよぉ、しゅうちゃあん……)
「ミ、ミシマ、早く終われって。交代しろよ」
 異常な興奮にヨシノが痺れを切らした。
「すげー、この締め付けって癖になんぞ。お前らも後でわかるって。ちょー気持ちいい。山口ぃっ、これからいつでも、何回でも挿れてやっからな」
(修ちゃんン、ああ、しゅうちゃんっ、痛っ、もうっ終わってっ!)
 やがてミシマの動きが早くなり、バックに流れる音楽と重なっていく。凛太郎は体内の勃起が硬く太くなっているように感じた。
「おーっし、山口、すぐ、せーし、出して、やっから」
 凛太郎はその時になって重要なことを思い出した。
(……ふっ、ンッ、せーし? あ、避妊、してない、よ? え? やだっ!)
 修一に告白され、自分も好きだと言ってしまったあの日、自分は女の子を選んじゃったんだと思っていた。実際に精神は女の子の身体に引っ張られ男の部分が大分消えてきていたし、生理も来た。だから女の子の身体について、千鶴にも話を聞いたし自分でも調べていた。生理のあと十五日目。排卵が行われる。そして一昨日が排卵日だった。
「んああっ! ああえいああいえぇっ!」
「なに、言ってんだっ? 山口っ、お前って、最高だぞお!」
 恐怖だった。犯された上、妊娠してしまうかも知れない。自分の身体の中には女性としての機能が何もかも揃っているのだから。凛太郎は半狂乱になり身体を左右にひねり、膝を使ってミシマの身体を引き離そうとする。しかしミシマにがっちりと腰を掴まれ動けない。ミシマを自分の中から押し出そうと下腹に力を入れたことで、激しく出入りしているミシマの肉棒を、「きゅぅ」っと膣で絞め上げてしまっていた。その一絞めがトリガーとなりミシマの射精を促してしまう。
「やまぐちっ、いくぞっ!」
(いやだ、中でいかないで、せめて外に! はやく僕から出てっ!! そとにいっ!)
 凛太郎は必死にうなり、涙溢れる目で懇願したが、上に乗っている男は膣が与える快感に酔いしれまったく見ていない。そして次の瞬間、体内で硬くなった棒が痙攣しながら熱いものを吐き出している様を感じる他なかった。凛太郎には「びゅるびゅる」と射精の音が聞こえてくるように感じていた。
(あーッ、あ――っ、あー!)
 凛太郎は、ただ心の中で悲鳴をあげるしか出来なかった。
 ミシマが上半身を凛太郎に預け、耳元で荒い息をしている。暫くそうしているとミシマが囁いた。
「山口、気持ちよかったろ。最後すげー絞めてたもんな。お前のまん○最高だよ。これでお前は俺のもんだかんな」
 凛太郎は囁かれ鳥肌が立った。気持ちいい訳がない。ただ体身の痛みと犯された悲しさと妊娠への恐怖しか感じなかった。
(いた、い、もう、やだ、開放してよ……。赤ちゃん、出来ちゃうよぉ……)
 涙で潤んだ目は何も映さなかった。鼻水で鼻が詰まり口を塞がれているせいで呼吸も苦しかった。
 ミシマがゆっくり凛太郎から離れる。勃起が収まりかけた肉棒がヌルリと膣から抜けて行った。
 限界まで大きく開かれた股関節がずきずきと痛む。その中心では、ローションと血で染まったグチャグチャの肉の裂け目があった。小陰唇は無残に開ききりぽっかりと膣口も穴を開けて中の襞を見せていた。しばらくするとトロトロと血が混じった精液が流れてくる。会陰部を伝わりお尻まで流れる感触に凛太郎は身震いした。
(ぅ、流れてきた……、きもちわるい……)
 ヨシノが足元からストロボを焚き、その様子を数回撮影した。しかし凛太郎はもう何の反応も示さなかった。
 写真を撮り終わったヨシノが、凛太郎の足元でズボンとパンツを脱いだ。限界まで勃起したペニスは筋張り、先端はぬらぬらしている。
「りんちゃあ〜ん、今度は俺だかんな。もうクスリ効いてっかな〜」
(あ?! えっ?)
 そう言うなり、凛太郎の足を持ち上げ膝の間に首を突っ込んできた。不意に足を持ち上げられた凛太郎は、びっくりして顔をヨシノに向けた。
「これで奥までぐりぐりやってやるよ」
 下卑た笑みを浮かべ、屈曲された凛太郎の腿に体重をかける。そして精液が流れ出し少し収縮し始めている膣口にいきなり欲情の権化を突き刺した。
(!! いっ?! いた〜いぃ!! おなか、くるしいぃもうしんじゃうよ、やめてよぉ!)
「いああぁあっ!」
 ヨシノはずっぷりと奥までペニスはめ込み、そこから返ってくる感触に酔いしれた。
「おおお、凛ちゃんいいモノ持ってるじゃん。絡みつくみてーだよ。ミシマこれすげーな」
 ズボンを穿き床に腰を下ろしながらタバコをふかしているミシマを振り返った。ミシマは「だろ?」とでも言いたげにニヤけた笑みを浮かべた。
 そのまま激しい抽送を始めるかと思われたが、ヨシノは出し入れする代わりに腰を回すようにぐりぐりと竿の部分で膣口を、そして亀頭で子宮口を刺激し始めた。その刺激に凛太郎は悶えた。
(ぅああぁ、いた、いたいぃ……)
 時にゆっくり引き抜き、すばやくねじ込み、次第にそのスピードを速めて行った。突かれる度に凛太郎の声帯からうめき声が洩れる。そして男をくわえ込んだ女から、「ぐちゃっぐちゅっ」とローションと精液が混じった、濡れた音が聞こえてきた。
「ぅうう、すっげー…。いい」
 強烈な絞まりに思わずヨシノがうめく。
 体重をかけられ腰を上げた状態の凛太郎は、息苦しさと股間を埋め尽くす灼熱の棒が与える身体的な苦しさで、目の前がチカチカしだしていた。
「阿部っ、腕放していいぞっ。お前これ撮っとけよ」
 荒い息のヨシノが、阿部に命じる。阿部は凛太郎の腕を放しデジカメを手にすると、横から、そしてねじ込まれた姿を晒している後ろから数枚撮っていた。
 腕は開放されたけれど、長い事同じ体勢だったため肩が抜けそうに痛い。凛太郎は情欲に駆られ自分を犯している相手の顔など見たくなかったし、自分の苦痛に歪む情けない顔も見せたくなかった。ガムテープで手首を交差された腕を頭から抜くと、痛んだ腕で顔を隠した。
「凛ちゃんなに隠れてんだよ。俺にいい顔みせろっ」
「! んあぁあッ」
 ヨシノは凛太郎の腕を掴み、強引に顔から下げさせた。いやと叫んでも言葉にはならず、ただの音だけ響く。
 凛太郎の腰をより高く上げさせ、殆ど真上からペニスを突き入れる。骨盤は床から離れていた。凛太郎からは突かれる度に揺れ動く自分の乳房の間から、股間に激しく出入りしている汚らしい棒が見えた。
(……あ、あんなに、たくさん、でたり、はいったり、してる…)
 ぐちゃぐちゃと出入りしてる棒は、膣に溜まっているローションと精液を泡にしながら掻き出していた。犯されている姿を見る事で、女の子である自分を再認識していた。
「うお、そろそろ、来たぞっ、来たぞっ。凛ちゃん、ぶちまけてやっから!」
 がっちり手綱のように腕を掴み、大きく抽送を繰り返すヨシノ。凛太郎にもヨシノがイキそうなのが解った。けれどもうどうしようもない。
 ビュクッっと中で出るのが感じられた。続けて二度三度痙攣している。膣の中が汚いモノで満たされていく感触に、凛太郎は絶望を感じていた。
(う、あ、また出てる……。また中で……)
 凛太郎の頭の中は、もう早く終わって欲しい、それだけになっていた。犯され、蹂躙され、輪姦され、誰も助けに来てはくれない状況。もう暗い部屋から早く開放されたいだけだった。
「う〜、ちょー良かった」
 ぷるぷると射精の快感に身体を震わせながら、ヨシノは凛太郎の手を離した。肉の棒を膣から引き抜き、凛太郎の足の間から身体を抜きつつヨシノがいう。
「凛ちゃんのって名器って言うんだぜ。もう中古になっちまったけど、たまには諸積にも使わせてやれよ」
(!)
「うあああ、あああああぁぁ……」
 なるべく考えないようにしていた修一の名前を出され、凛太郎は身体を左に向け激しく泣きじゃくった。
(修ちゃん、修ちゃん、しゅうちゃん、しゅうちゃん!)
 何度頭の中で呼んでも叫んでも、修一は現れない。解りきった事だったけれど、それでも凛太郎は修一に助けを求めていた。
 白く丸いお尻から濁った液体が流れて出て行く。ドロドロしたそれは、先程ミシマに流し込まれたものと同じ位の量があった。
「おい、山口、泣いてんじゃねーよ。まだ俺が残ってんだよ」
「いあぁ!」
 阿部が凛太郎の右腕を掴み、上を向かせた。横を向いた時閉じた足は、股関節が固まったのかじんじんと痛みが走っていた。
「あっ」
 既に下半身裸の阿部は、一旦上を向かせた凛太郎を突き飛ばすと、今度は後ろから腰を高く持ち上げた。
「なんだよ阿部、バックからかよ。初めてでそこまでする?」
 その姿を見て笑いながらミシマが言った。ミシマは腰を上げると阿部の傍に置いてあったデジカメを撮り、横からその姿を撮った。
 横から見た凛太郎の姿は、無残だった。括られた腕の上に頭を乗せ上半身の体重を支えていた。背中は弓なりになりピンクの乳首と白い乳房がブラウスの間から少し見え、腰は高く突き上げられている。スカートは腰まで捲くれあがっている。まるで阿部に挿れてとせがむような格好だった。
 うつ伏せになった拍子に銀の犬が、前に戻ってきていた。
「おっ、ケツの穴まで丸見えだ」
 阿部の遠慮会釈ない言葉に凛太郎は真っ赤になり、身体が熱くなる気がした。
 そのまま阿部は背後から亀頭を充血して厚くなった小陰唇につける。お尻を掴んだ手は、親指を使って小陰唇を割り広げると、中からは精液が出てきていた。右手でペニスを掴むと亀頭で膣口からクリトリスまでゆっくりと往復させる。
「うんっ」
 クリトリスを刺激され、思わず凛太郎はうめき声を上げた。痛みのせいではなかった。その様子に、既に欲望を吐き出した男たちはどよめきたった。
「お、山口感じてんじゃん。なぁ。やっとクスリが効いてきてんだな」
「だよな。今のは絶対そうだ。しっかし効きが遅すぎだって」
 阿部は二人を見て満足そうに笑っている。
 クスリの効果で、とは言いながら凛太郎は自分の身体が恨めしかった。暴力で犯されてるのに、なんで感じるのか。好きでもない奴らにいいようにされて、おもちゃにされてるだけなのに。
「あぅああぁ……」
 クリトリスを嬲っていた亀頭は、徐々に膣口へ上がって行った。二三度先端だけ埋めては戻す。凛太郎はその度に今度は痛みへの恐怖でうめいた。阿部はそんなうめき声にはもう興味ないとばかりに、ゆっくりと凛太郎の身体に進入していった。
(うあああぁいやぁぁぁああ)
 三度目のおぞましい感触に、再び強烈な痛みが走った。クスリの効果と痛みは別物だというのが、凛太郎には助かった。痛い間は感じなくてすむ。
 阿部はゆっくりゆっくり抽送を繰り返した。その度凛太郎の小柄な身体は、阿部の下でびくびくと跳ねる。まるで内臓ごと削り取られるような感じだった。しかしどういう訳か、膣はきゅっきゅっと絞まって侵入者に心地よい刺激を与えていた。
「ミシマさん、ほんとすごいっすねこいつ。奥がざらついてんのがいいですよ」
 恥ずかしげも無く、卑猥な事を口にする。自分の性器の評価など聞きたくなかった。凛太郎は耳を塞ぎたかったけれど繋がれた腕は広げられない。
「阿部、ゆっくり楽しむのもいいけどよ、時間ねーぞ」
 ヨシノが早く終われと促す。
「んな事言っても、さんざん焦らされたんすから。俺最後なんだからいいじゃないですか」
 腰をゆっくり前後左右に振りながら言うと、凛太郎のクリトリスを指で嬲った。
「! うんんんん〜っ!」
 凛太郎はいきなり、感じ始めているクリトリスを刺激され、これまでにない大きなうめき声を放ってしまった。
(あああ、いやあああ、なんでっ?! 声、出したくないのにぃ)
「あ〜、すげーぎゅーって絞まってるぅ。」
「あべぇ、またヤレばいいんだからよ、そろそろイケよ」
 時計を気にしたミシマが焦れて低い声を出した。
「…わかましたよ」
 阿部はミシマが怖いのか、急に動きを早めた。凛太郎のお尻がたぷたぷと揺れ、男女の腰同士が叩き合う乾いた破裂音が楽器の音に混ざりながら室内に響く。
「山口っ、お前が悪いんだぞっ。俺の事振るからっ。最初から俺に、しとけばっ。おーっし、もう、いっちょ中出しだぁ」
 そういうなり、阿部はぶるぶると震えながら射精していた。
(やっと、終わった……。もうこれですんだんだ、もう開放されるんだ……)
 三度目の射精の感触も凛太郎になんの感情も与えなかった。ただこれで終わったという安堵感だけだった。
「なんだよ、早すぎだって。早漏かよ」
 ヨシノがけらけら笑いながら阿部をからかった。
「ええ? 先輩たちだって早かったじゃないですか。こいつが良すぎんですよ」
 阿部がそのまま離れると、支えを失った凛太郎の身体は横に倒れて行った。そこへミシマが寄っていく。
「山口ぃ、お前やっぱ女だな。すげーいいまんこしてるよ。諸積の事は黙っててやる。その代わりまたまんこ使ってやるからな」
 その言葉に、凛太郎は愕然とした。約束が違う。痛みの残っている腕で上体を支え、涙で濡れた目でミシマを睨みつける。
「う、ううあうう」
「何言ってるかわかんねーよ。俺たちと仲良くしてる写真撮ってんだよ。聞き分けねーと誰かに見せちまうかも知れねーぞ?諸積とかよ。解るか? だからよ、これからも仲良くまん○使わせろってことだよ。な。解るだろ?」
「……」
 撮られた写真。一部始終全部、何から何まで。これからも相手をしないと写真が出回ると言う事だ。そして修一にもばらすと。羞恥も屈辱も通り越し凛太郎は目の前が真っ暗になった。修一にだけはこんな風に汚れてしまった自分を知られたくない。
 首を垂れ、声も無くぼろぼろと涙を埃っぽい床に零す凛太郎の、そのほっそりした白い首もとをミシマがふと目に留める。凛太郎の身体が震える度にチラチラと輝く銀の犬。ミシマは徐にチョーカーを掴むとそのまま引き千切ってしまう。
(あっ、ワンコっ)
「あえいえっ!」
 ミシマの暴挙に返せと叫んでも言葉になっていない。引き留めようとしても腕は使えなかった。
「だからわかんねーっての。お、そうだ、諸積にも穴使わせてやっていいぜ。俺たちの専用まん○でよければな。ああ、恨むなら諸積だぞ、お前の大事な修ちゃんだ。あの糞生意気な、な。それと月曜もちゃんと学校来いよ。阿部が見張ってんだからな」
 そう言うと腕のガムテープだけ外し、立ち上がる。凛太郎が縋り付こうとするのと同時にミシマが凛太郎のお腹を蹴った。
(!)
 声も出せない衝撃と痛みに、しかし妙に頭だけははっきりしていて、凛太郎はその場で苦しさに悶えていた。
「じゃぁ、山口ぃ、またよろしく頼むわ。溜まったらここに呼ぶかんな。必ず来いよ」
「凛ちゃん、またな。専用名器使えて幸せだよ、俺ら」
「ミシマさぁん、次は俺が最初でじゃだめっすか?」
「なんだよミシマ、チョーカーか?」
「ん? ああ、何となくな。戦利品だ」
 口々に勝手なことを言いながら、三人は扉から出て行った。一瞬外から差し込んだ光に、凛太郎の目が眩む。
 暫く背中を丸め、蹴られたお腹を両手で押さえ苦しさと痛みを堪えていた。次第に苦しさが引いてくる。痛みはまだあったが。
 手だけ解放された凛太郎は、のろのろと上体を起こし、がっちり口を塞いでいるガムテープに手をかけ、引き剥がした。頬と唇がガムテープにくっ付いて取れそうに感じ、痛みが走る。全て剥がし終わると口の周りがひりひりした。
 横座りになって、足首にからみついているショーツを見た。ブラジャーとセットでレースがついているショーツは、その元の色が白だったとは思えない程埃にまみれ汚れていた。右手を足首まで伸ばすと肩が痛んだ。捻られたショーツを足首から抜こうと手を見ると、小刻みに震えている。足首から抜き去ったショーツは、その汚れで穿くのが躊躇われたが、帰りは自転車に乗らなければならないし、短めのスカートなのにショーツ無しで帰る訳にも行かない。広げて穿こうとした時、体内から三人の男が放った精液が混ざり合い、ドロリとした粘液となって流れ出てきた。
「あ……。ふかなくちゃ……スカート汚れちゃうよ……」
 スカートのポケットからティッシュを取り出そうとしたが入れ忘れたのか感触がない。仕方なく代わりにハンカチを取り出し、座りながら股間に充てた。ローションにまみれた精液と自分の血がゆっくりと染み込んできた。
(このハンカチ、気に入ってたのにな……)
 股間を拭ってから、立ち上がりショーツを穿いた。また精液が流れ出るかもと思い、ハンカチを裏返しクロッチの部分にあてた。舐められた乳房は、唾液の乾いた臭いが立ち上って臭くなっていたが、乳房を露にして置くわけにも行かず、ブラジャーのホックを外しきちんと着けなおした。
 セーラーカラーのブラウスのボタンを震える指でひとつづつ丁寧にとめた。千切れて飛んだものがなかったのは不幸中の幸いだったのか。リボンがないのに気づき、制服についた埃を手で払い落としながら、あたりを見渡す。足下を見ると粘ついた、白とピンクの液体が床に着いているのが見えた。
「これって、夢だから。目を、つぶって、開ければ……、綺麗に元に戻るんだよ。ちゃんと……前と同じ……」
 凛太郎は目をつぶったけれど、開けられなかった。きつく瞑った目から涙がぼろぼろと流れだしていた。
「うっ、ふっ、うああああああん、えああああああぁ、ぅえっ、ひっあああああん」
 その場にしゃがみ込み、膝を抱えて大声で泣いた。
「しゅうぅちゃあん、うあああああぁ」
 頭の中は修一に対する感情で一杯だった。早く会いたかった。あの浅黒い健康的な顔が見たかった。防具と汗の混じった独特の匂いを身近に感じたかった。でも同時に会えないとも思った。強姦されてしまい処女が散らされた今、自分はすっかり穢されてしまったのだ。そんな自分に触れて欲しくないという意識があった。
 悔やむのは修一が相手ではなかった事だ。修一とは結局最後の一線だけはどうしても越えられなかった。それは男としての意識がまだあった事もあるし、千鶴との約束もあったから。でも、こうなると解っていたなら、修一が求めてきた時にした方が良かった。やっぱり自分は女の子として、修一とちゃんとしたかったのだと、今更ながらに思っていた。
(でも、もうだめだよ、もう、汚れちゃったもん……。汚い……、触れてもらう資格無いよ……。それに、僕が一緒にいたら、修ちゃんに噂立てられちゃうよ)
 あんなくだらない奴らに修一が陰口を叩かれるような事になったのは自分の存在のせいだと思った。親友が、いや、恋人がホモ疑惑をかけられている。全ては自分が女の子になってしまったせいなのだ。女の子になっていなければ、修一が凛太郎の身体を求める事もなく、隙を見せるような事もなかった筈だ。そう、今からだって一緒にさえいなければ疑惑なんてかけられないだろう。大体修一が汚くなった自分の身体に触れて、汚れてしまう気がして嫌だった。
(今日で、最後にしよう……)
 つらい決意ではあったけれど、今の凛太郎の思考はそこにしか行き着かなかった。もっと違う解決策も、本当ならあった筈だったけれど。
「あはは、せっかく肌が綺麗になったのに。違うとこが汚くなっちゃってる、しかも戻らないよ、この汚れって……」
 ハンカチを使っているため、流れた涙を手でごしごし拭き、自嘲気味に言ってみるが部屋の中は一人きりだ。だれも返事などしない。変わりに隣の部屋で音楽が流れているだけだ。
 涙を拭き終わると、リボンを探し綺麗に結んだ。扉を開け周囲に誰もいないことを確認すると、ずくずくと痛む股間とお腹を気にしながら第二教室棟のトイレに駆け込んだ。
 第二教室棟のトイレは最新型に代わっている。ビデも付いたものだった。凛太郎は個室に飛び込み、ショーツを下ろしビデで股間を洗浄した。ぬるま湯に設定しても膣は中身が全部捲れて出てしまってるんじゃないかと言う程沁みて痛みが走る。しかもあとからあとから血に塗れた精液が出てきた。まだソコは疼痛があったが、トイレットペーパーで優しく拭い、綺麗にした。
 ハンカチのおかけでショーツまでは精液が付いていないのは助かった。そのままショーツは穿き精液でどろどろのハンカチを持って個室から出る。
 時間的にそろそろ修一が図書室に行っているかも知れない。凛太郎は慌てて鏡を見た。鏡の中の自分は女の子になってから、かつて見たことが無いほどひどい有様だった。髪は涙で顔に張り付き、目は真っ赤になって瞼も腫れていた。叩かれた頬は赤くなって、ガムテープで塞がれた口元も四角く赤くなっていた。肌が白いせいで、それが際だってしまっている。
 ハンカチを洗い、それで顔を冷やそうかと思ったが、精液の臭いが染みついていて気持ちが悪くなりそうだったので、顔を洗うだけにした。もう一度顔を上げ、制服のチェックをした。所々埃が落としきれていない場所があり、また手で払い落とした。
「…きたないけど、しょうがないね」
 鏡にそう言うと、修一が待っているだろう図書室へ向かっていった。途中、泣き顔と汚れた制服の事をどう説明しようかと考えたけれど、「階段で転んだ」位しか思いつかない。何かがまだアソコに入り込んでいるように感じてずきずきと痛む。自転車乗って帰れるかな、と少し現実逃避気味になっていた。



(その3へ)


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