日曜日 面会(その三)


 凛太郎が家に着くと千鶴が待ちかまえていた。ちょっと気まずいなと思いながら、部屋に入る前に手紙を見せたこと、理が酔っぱらっていたこと、直ぐに寝てしまったこと、時間が早かったので修一の家で遊んできたことを話した。しかし自分の存在を否定されたこと、襲われそうになった事は話せなかった。
 千鶴はその説明に納得したのか、その後は理の話題には触れなかった。

 夜になり、凛太郎はシャワーを浴び、パジャマを着て部屋に戻った。チョーカーは外し手に持っていた。ちょっと早かったがベッドに横たわる。「ワンコの修一くん」を目の前でぷらぷらさせていた。
(僕ってやっぱり変なんだろうか……。お父さんは怖かったけど、同じ男なのに修ちゃんは怖くなかった。……修ちゃんの事、好きになっちゃったのかな……)
 修一の事を考えると、暖かい気持になる。今日の事を取ってみても、修一は自分にとって特別な「男性」なんだと思えた。修一の顔が扉からのぞいた時の昂揚は、これまで感じたことがないものだった。そばにいてくれさえすれば、強くなれる、そう思えた。
 でも、と思う。本当に「女の子」として好きになっていいのだろうか。
(ずっと男だって言っておいて、今更やっぱり女の子だから、って身勝手だよね……)
 凛太郎には自分が何もかも中途半端であるように見える。男のような女のような存在。自分から好きだと言って受け入れて貰えるものだろうか、そんな心配までしていた。
 それに、自分には理の血が流れている。あの自分の子どもすら犯そうとした獣の血が。今の修一を求める気持が、身体が欲したものではないと果たして言い切れるのだろうか。魔物に夢の中で犯された場面が脳裏に描かれると、凛太郎は身悶えしてしまった。
(……あんなにされたから、修ちゃんが欲しくなったって、そう言われたら……。違う、絶対違うよっ)
 あの感触を忘れようとすればする程、カッと身体中心が、凛太郎の股間が熱くなってくる。何かにソコを埋めて欲しい。手に持っていた銀の犬をぎゅっと握りしめ、自分の身体を弄りたくなる衝動を堪えようとした。
(だめだっ、だめだっダメだっ。今ひとりえっちなんてしたら、お父さんと変わらなくなっちゃうっ!)
 両手できつくチョーカーを握り締め、目も瞑った。早く淫らな考えを振り払おうと、奥歯も噛みしめながら。そして少し身体の疼きが収まった時、凛太郎は目を開けた。
「えぇっ?」
 点けていた筈の部屋の明かりが薄暗くなっている。「停電?」かと思ったけれど、蛍光塗料が塗られた時計すら見えない。
(まさか……)
 凛太郎は咄嗟に「ワンコの修一くん」を布団とベッドの間に隠した。もし魔物がそばに来たのなら、十字架と同じように持って行かれてしまうかも知れない。
 薄暗い自室を見回すが魔物は見えなかった。やっぱり停電と思い階下に行こうとベッドから降りるそぶりを見せた瞬間、身体の自由が利かなくなっていた。
(あ、あぁ、また?)
 また犯される、と思うと言葉も出てこない。今日は果たしてどんな事をされるのだろう、その恐怖と一緒にあの快感が再び得られる事への期待感も募っていた。凛太郎の心臓が早鐘のように鳴っている。
「期待2/3、恐怖1/3ってとこかしら」
 いきなり背後から声が聞こえる。凛太郎は心臓が喉から出てくるんじゃないかと言うほど驚いた。
「あら、随分驚かせちゃったみたいね。どれどれ、心臓バクバク?」
 そう言うなり、魔物が凛太郎の乳房に手を触れる。パジャマの上からではなく、その下から。どこから差し入れているのか、パジャマは脱がされていなかった。
「あっ……、やめてよっ……」
 凛太郎が力無く訴える。しかし魔物の手は、触れるか触れないかの感覚で胸をまさぐる。はっきりしない感覚が凛太郎の心を焦らしていた。
(くぅ、ん、やだっ、もっとしっかり……)
「触って欲しい? ちゃんとお願いしてくれないと、お姉さんわからないのよ」
 指で乳輪と乳房の境目を軽く触れて行くと、凛太郎の身体がぶるぶると震えだしていた。たったそれだけの事なのに、凛太郎の身体は燃えるように熱くなってくる。全身に走るゾクゾクした快感は、身体の一点に向かって集約してきた。
(……絶対、欲しがったりしない。もう、言わないっ)
 凛太郎はきゅっと下唇を噛みしめた。自分の欲望に負けて、これ以上修一に顔向けでいないようになりたくなかったから。しかし魔物は違う所から攻め始める。
「欲しがったりしないって事は、欲情してるって事なのよね? 最初から君のエッチな身体は、エッチな事されたくてしょうがなくなってるのよ。やぁねぇ」
 分かり切った事を改めて言われると、余計に感覚が鋭くなったように思える。
「あふっ、ん…………あっ!」
 魔物の手が乳首へと移動したとき、凛太郎の口から吐息が漏れた。しまったと思った時には遅かった。感じまいとしていたのに、それがばれてしまう。その意識に凛太郎は羞恥を覚え身体を桜色に上気させていた。
「あらっ? あらっ! やっぱり君って淫乱なんだわ、乳首だけでそんな声上げるなんて。感じないフリしてたのね。さすが、父親の血は争えないわねぇ」
 理の事を言われ、悲しくなってしまった。やはり自分には淫乱な血が受け継がれているのだと。そう思うと、精神の自然とタガが外れたようになった。魔物は乳首を弄っていた指を離し、乳房全体を揉みしだき始めると、凛太郎は本格的に自分の欲情を抑え切れなくなってしまう。もっと感じたい。もっと触られたい。もっと、もっと。
「ぅあ、はぁ、や、そこ、もっと強く……もっとぉ」
 魔物の手が、これまでと違いゆっくりじっくり胸をこね回す。もどかしさに自分の手でも弄ろうとすると、思いがけず手が自由になっていた。凛太郎は迷いながら、自分の手を魔物の手に重ね、乳房を下から持ち上げるように揉む。すると今まで触られていた魔物の手の感触が胸から消え、乳首だけにその感覚が得られた。
 凛太郎は胸だけの刺激に陶然とし、鼻を鳴らしながら両手で自分の乳房から快感を引き出していく。既に凛太郎の綺麗なピンクの花弁からは粘液があふれ出てショーツを濡らし始めていた。
「いい眺めだわよ、自分でおっぱい揉んで、えっちな液をたくさん出してるなんて。彼に見せたら泣いて喜んじゃうわ」
 虚ろな目で修一を思い描く。けれどあれ程会いたかった修一の顔が思い浮かばない。変わりに魔物が扱いて見せた修一のペニスだけが凛太郎の前に広がってしまう。身体の戒めは既になかった。もじもじと腿を擦りあわせ、腰をゆらゆらと揺らす姿は魔物からみても淫靡に映る。
「やだぁ、僕は修ちゃんが、修ちゃんが好きなのに……、おちんちんじゃないっ、違うよおお……」
 魔物は満足げに凛太郎を見下ろしている。凛太郎は魔物が見ているのも構わず、疼いて仕方がない自分の股間に手を伸ばそうとした。
「あらぁ? 男に戻せだの彼の事好きじゃないだの言ってたのに。彼の事好きになっちゃたの? 男の子の癖に男が好きなのねぇ。もう立派な変態だわ、君って。お父さんそっくりよ」
 その言葉に凛太郎の手が止まる。アソコが切なくて触りたくて仕方が無いのに、修一が恋しくて堪らなくなっているのに、魔物に言われた言葉が凛太郎の心を抉る。胸から得た快楽に酔いつつボーっとした表情のまま魔物に反論した。
「僕は、男だったけど、解っちゃった……修ちゃんがすごく大切なんだって。いっぱい心の中に修ちゃんがいて。修ちゃんの事……す好きで……修ちゃんがそばにいて欲しくて、堪らない……。でも、伝えられないから……ここが、胸の奥が苦しいよぉ」
 好きという言葉をたとえ魔物に対しても使うと、胸のあたりがギュッと苦しくなる気がする。魔物はその素直な告白に少し戸惑いを覚えた。
「……ふーん、好きになっちゃったの。じゃぁ、そのえっちな身体を彼に使ってもらう訳ね? それじゃぁあたし達的には面白くないわねぇ。鍵が弱かったかしら?」
 荒い呼吸を整え、凛太郎は上半身を起こし、涙を湛えた目で魔物を見据える。
「さんざん、僕の身体いたずらしといて、僕の事えっちにしといてっ面白くないなんて言うなっ。女の子にしといて、戻すつもりも無いくせにっ」
 なんでぽろぽろと涙が溢れるのか、修一の事を改めて好きだと思ったからか、淫乱な身体にされた事が悲しかったからか、それとももう女の子でいるしかないと諦めの気持ちからか、凛太郎には解らなかった。
 凛太郎の様子を見ながら魔物が、男なら誰もがゾクっとするような笑みを浮かべた。
「戻せないわよ、あたしは。でも戻る方法もあるのよね。聞きたい?」
 一瞬魔物が何を言っているのか理解できなかった。どうして今更、そういう疑念がまだ疼く身体をなるべく考えないようにしながら、凛太郎は魔物に問う。
「……それって契約不履行って奴でしょ。もう聞いたよ」
「契約不履行だけじゃないのよぅ。尤もその中身もまだ教えてないけど。聞きたい?」
 クスクス笑いながら、魔物は凛太郎ににじり寄ってくる。しゃくり上げながら、頬に付いた涙をグシグシと擦り、狭いシングルベッドの上で凛太郎は後ずさりした。
「ど、どうす、」
「あ、もう女の子になって彼の事好きになっちゃったから戻らなくてもいいか」
 どうすれば戻るの、と聞こうとしたが、魔物が機先を制してしまう。凛太郎は言葉を繋げなくなってしまった。裸の魔物は四つんばいになるとたわわな乳房がゆるり、と揺れる。そしてその格好のまま凛太郎の目をじっと見つめている。その目は次の凛太郎の言葉を期待し、待っていた。
 ずっと考えないようにしていた修一への想い。それに気付いて言葉に出してしまった。修一が好き。その言葉は、もう戻らなくてもいいと取られても仕方がない。そしてそれは今の凛太郎の本心でもあった。でも、男に戻るチャンスがあるなら……やはり聞いておきたい。
「教えて……下さぃ……」
 聞こえるか聞こえないか、その位の声で言った。聞こえなければこのままずっと……。
「ええっ? 男に戻る気なの? 正気? 折角彼に恋してるのが解ったのに。やっぱり君って身勝手なのね。彼の事本気で好きじゃないんだわ。彼なんてあんなに君の身体のこと好きなのに」
 ベッドについていた手を大きく後ろに反らすと、魔物の大きな乳房がぶるんと揺れた。大仰でどこか芝居がかった驚きっぷりだったけれど、発した言葉が凛太郎の心を傷つけるのに大いに役立っていた。
「そんなっ、それとこれは、全然違う事だしっ。それに、僕、ほんとに修ちゃんのこと……大好き……だし……」
 魔物はいたずらっぽく、口の端で笑う。
「じゃあねぇ……、あたしの事納得させてよ。彼の事本気で好きって言うの見せて、ここで。納得したら教えてあげる」
 どう考えても論理がおかしい話なのに、魔物の口から言われるとそうしなければいけないように思えてくる。この魔物の話しはいつもそうだ。そこかしこに綻びがあるにもかかわらず、それが解らない。凛太郎は毎回絡め取られていた。今回も。
「え? 何を見せるの?」
「相変わらず鈍いわね。彼の事考えながらオナニーして。おっぱい弄って、クリトリス転がして、淫乱ま○こに指をずぼずぼしながら、イキなさい。そうしたら二つの内一つ教えてあげる」
 魔物はそのまま凛太郎が座っているのと反対で胡座をかいて座ってしまった。腰を少し突き出しているせいで、黒い毛に覆われた秘部が少し覗けてしまう。サキュバスの一種にしては色素は定着していないように見えた。思わず目に入ってしまったソコを凝視しないように目を背けた。自分以外の女性器を目にして、身体が熱くなってしまう。
「あ、ぅ、っそ、そんなの、出来ないよ……」
 凛太郎は自分の肩を抱き膝を折って引き寄せた。魔物から身体を隠すように。
「そう。じゃ、この話しは無かったことにしましょ。せいぜいがんばって彼の気を引いてね。君のえっちな身体使えば一発よ。そしてこの機会を逃したことを一生後悔してね。その方があたし達的にはいいしね。ふふっ」
 そう言うと、魔物は立ち上がり凛太郎に背中を向けた。
 凛太郎は逡巡した。今のままでもいいかも知れない。修一が好きだと解ってしまったのだから。でも、本当にこれでいいのだろうか。元の男に戻る方法がすぐそこにあるのに、それを聞きもしないで諦めてしまっていいのだろうか。殆ど小さくなっていた凛太郎の「男」の部分が悲鳴を上げた。
「あ、あ、まっ待ってっ。するから、今するからっ!」
 唇を舐めながら、魔物が振り返る。その顔は巣にかかった美味しそうな獲物を見ているようだった。
「するの? そう。じゃ、彼の前でパジャマ脱ぐ所から始めてね。気分出さないと納得して上げないからね」
 最初にイタズラされたときも、修一のペニスで犯されたときも魔物が裸にしていた。恥ずかしさはあったけれど、自分で脱ぐのとは全く違っている。自分から肌を晒すなんて、たとえそれが魔物相手でも、凛太郎は羞恥に頭がくらくらした。まして身体を開き、オナニーを見せなければならないなんて。
 情けなさと羞恥と、そして修一に対する感情がごちゃごちゃになって、凛太郎は悲しくなってしまった。なんでこんな事してるんだろう、そう思いながら震える手でボタンを外していく。ぺたんと女の子座りしながらゆっくりと。時折、涙目で魔物の方を伺った。
「ん〜、その上目遣いはそそるわねぇ。あ、ほら、おっぱい見えてきたわよ。可愛いわあ」
 再び胡座をかきながら、魔物が実況をし始めた。それを上目で見ながらパジャマの上をぱっと脱ぎ捨てる。ぷるっと凛太郎の乳房が揺れた。
「あの、下も?」
 遠慮がちに魔物に問うけれど、当然と言わんばかりに魔物は無言で先を促す。凛太郎は膝立ちになりショーツと一緒にパジャマのズボンを膝までおろし、再度お尻をベッドにつけてつま先を上げ全部脱ぎ捨ててしまった。
(恥ずかしいよぉ……)
 羞恥で真っ赤になりながらも、魔物に見られていると思うと妖しい快感にお腹のあたりがぞくぞくしてくる。乳首や腰やクリトリスの辺りに、甘美な感覚が宿り始めていた。
「始めていいのよ? 遠慮する事無いわ、お父さん似の淫乱さん」
 魔物はくくっと笑った。その目に蔑んだ色が見えた。凛太郎は唇を噛むと、両手で乳房に触れる。下から支えるように揉むと、柔らかな乳房の感触と、そこから生まれる快楽で次第に息が荒くなってきた。
「ふっ、あン、はぁっ」
「あんまり乗ってなさそうねぇ。…………こっち向きなさいっ」
 突然魔物の口調が変わり、凛太郎はびくっとしながら彼女の方を見た。
「あっ。修ちゃんの……」
 ソコには「修一」が再び生えている。ドクンと心臓が大きな音をたてた気がした。
「よく見て。彼のおち○ちん。ほらっ君の裸見て涎垂らしてるわ。もっと乱れて欲しいって言ってるのよ」
 先端からつーっと粘ついた汁が垂れ、シーツを濡らしている。魔物はその汁を亀頭にまぶし、にちゃにちゃと音をたてながら扱き始めた。
(あぁ、修ちゃんが、修ちゃんが僕の事見てるっ。あんなに大きくして……僕の事、欲しがってるの?)
 凛太郎はごくっと生唾を飲み込むと、乳房全体をこねるように揉みしだいた。自分を見て修一が激しくペニスを勃たせている。そう思うと自然と堪らない程の快感が全身に広がっていく。そしてその瞬間、凛太郎の男の部分は、前より小さく、心の奥底に引き込まれてしまった。
「はぅんっ、修ちゃあん……」
 指で乳首ときゅっと摘むと声が漏れてしまった。自分でも驚いてしまうくらい、鼻にかかった色っぽい声。それまで魔物の手技によって強引に引き出された快美感から発せられた声とは明らかに違っていた。
 次第に吐息が熱くなり、早くなってくる。魔物に生えた「修一」を見ると、じくじくと秘裂から新たな愛液が分泌された。足首で足を交差させ腿をぎゅっと閉じると、ぬるぬるになったソコから鈍い刺激が脳まで届く。腰をゆっくりと振り、自らの手で胸を揉む姿を魔物の前で晒しながら、凛太郎の性感はどんどん高まっていった。
「いいわぁ、えっちよぉ。その手は彼の手なのよ。彼の手でおっぱい揉まれてるの。気持いいでしょう?」
 左手で「修一」を握り、上下に扱きながら魔物が言う。
「ああん、修ちゃんの、手、すごく気持いいっ!」
 凛太郎は尚も乳首を弄る。ちょっと鈍くなった感覚をさまそうと、軽く抓ってみた。
「ひゃぅっ。これっ、すごっ、いいよお……」
 激しく身悶えしながら、背中を大きく反らした。修一の手が自分の胸を触って、乳首を弄っている。手から伝わる柔らかく気持のいい感触は修一が感じているもの。そう思うと凛太郎の手の動きは益々激しくなっていく。
 徐々に胸の刺激だけでは収まらなくなってきていた。閉じていた足を軽く広げ、右手を胸からお腹へ、そして恥丘まで下ろしていく。すべすべの肌を手が滑っていくだけで、恍惚となってしまう程気持がいい。凛太郎はこの気持のいい自分の肌を修一に思う存分なで回して欲しいと思っていた。
「ひっ、やぁん、肌が、触ってるだけなのにぃ、なんでっなんでっこんなにっ?」
 ぞくぞくっと快感が走ると、お腹の奥の方にその悦楽が溜まっていく。きゅぅっと子宮が動いた気がした。
「綺麗な肌だもの。彼も満足するわよ。もっと触らせてって。もっと気持のいいところを触りたいって」
 魔物の声が凛太郎の耳に届く度に、その声に逆らえなくなる。凛太郎は恥毛を弄っていた右手の中指をワレメにそっと這わせる。クリトリスの包皮に触れると腰がビクッと跳ねた。
「んんっ。はっ、やだ、だめだよっ。あっ……」
 左手で乳房を弄りながら、包皮の上からクリトリスを刺激すると足が少しづつ開いていってしまう。魔物が足下から見ている前で股間を晒していった。
 ちょっと下に指を移せばもっと身体に電気が走る。その事を凛太郎は以前したオナニーで解っている。果たして中指はクリトリスに直接触れていた。途端に大きな声が出てしまう。
「ああっ、修ちゃん、そこっ、いいっ! もっと、もっとしてぇ!」
 凛太郎が指を動かす度に、くちゅくちゅと卑わいな静かなこの空間に響く。その音さえも凛太郎には自分の快楽を増幅させるものとなっていた。既に小陰唇は充血しピンクから赤にその色を変え、大陰唇を割って外に飛び出している。愛液でテラテラと光るソコは男を誘う華のようになっていた。
「彼、すごく積極的に君の気持ちいいところ攻めてるわねぇ。クリトリスぷっくり膨れて、ほら、すごく美味しそうよ」
「修ちゃん、しゅうちゃんっ、気持いいよお」
 もどかしそうに腰を振りながらクリトリスを弄る凛太郎。左手を胸から股間へ移動させると、人差し指と中指で包皮を剥いてしまう。大きく飛び出た肉芽を指の腹でぐりぐりと刺激していた。
「いいわよぅ、すごくいいわ。君のえっちな気分が彼のおちんちんにビンビン伝わってるわよ。ああん、なんかあたしも感じて来ちゃったわ。これどうしたらいいと思う?」
 豊満な胸を右手でつかみ、魔物は自分の乳首を舐めていた。そうしている間も張り切った「修一」を扱き続けている。先端からは先走り汁がたらたらとシーツを汚していた。その様子を凛太郎はうっとりした表情で眺めている。
「……あ、んっ、修ちゃっん、もう、やっ、我慢、出来ないの? ひぁん、僕、どうしたら……」
 凛太郎はクリトリスを弄るのを止めず、その刺激を甘受しながら魔物に聞いた。魔物は淫蕩な笑顔を見せ凛太郎ににじり寄って来た。仰向けに寝ている凛太郎の上半身を膝立ちで跨ぐと、凛太郎の目の前に「修一」が来た。
「彼のお○んちん、君に気持ちよくして貰いたいんですって。どうしたらいいと思う?」
 目の前で「修一」をゆっくり扱かれ、凛太郎はどぎまぎしてしまった。下から見上げる「修一」はとても大きく感じた。血管が膨れ上がり亀頭は汁で光っている。鈴口からその汁が凛太郎の赤く可愛らしい唇につーっと垂れてきた。
「あっ……」
 凛太郎はそれを汚いとは思わなかった。自分で慰めている秘裂から与えられる快美感に戦慄いている唇。そこについた修一の汁を、凛太郎は舌先で舐め取った。
(……あんまり味ない……)
 その凛太郎の行動に、魔物はニヤリと笑ったが、凛太郎からは見えなかった。
「……君はオナニーして証明しなきゃいけないでしょう? おちん○ん、君の中に入れないのよ。こんなにぴくぴく動いてるのに……。どうしたらいいのかしら? 君ならどうするの?」
 魔物はゆっくりとその腰を凛太郎の胸の上に下ろしてくる。真上を向いている「修一」の角度を手で下げながら。「修一」の亀頭が凛太郎の口の少し上で止まった。凛太郎は中指を少し膣に入れた所で、魔物に問うた。
「ひっん…………あ、口、で?」
「そおねえ。あたしなら先ず舌で亀頭をぺろぺろ舐めてぇ、その後お口の中に入れてぇ、手で扱きながら舐め回しておち○ちんイカセてあげるけどぉ。君がしたいようにすれば? 大好きな彼のお○んちんなんだから。お口でしてあげたらすごく喜ぶと思うけどね」
 魔物は自分の具体例を上げながらも、凛太郎に強要しているようなものだった。そして凛太郎自身に決断を迫っていた。当の凛太郎は、淫らに腰を動かしながら、自分のピンクの肉穴をぐちゅぐちゅにかき混ぜている。痺れるようなむず痒いような感覚に脳は麻痺していた。
(しゅうちゃんの、おちん○ん、なめたら、しゅうちゃん、きもちよくなる? よろこんでくれる?)
 中指を第二間接まで入れて出し入れすると、にゅちゅっと音がする。指を少し曲げ、膣の中の襞を捲るように触っていくと、凛太郎はその感触に声も出せず、ただ熱い吐息しか出せない。自然と腰が浮き上がり指を奥へ誘い込もうとする。
「やぁっ、修ちゃんの指がっ、やだっ、あ、んうっ……すごっいっいいっ!」
 凛太郎はその無理な姿勢のまま、垂れてきた「修一」の先走り汁を舌を出して受け止めた。特に酷い味でもないそれを舌に絡ませて嚥下すると、うっとりした表情を見せていた。
(しゅうちゃんのあじぃ)
 少し身体を上げ首を伸ばすと、唇の直ぐ先に「修一」の先端がくる。凛太郎はそこにキスをした。「修一」がその行為にびくんと跳ねる。
「いやぁん、君ってほんっとに淫乱ねえ。元男の子なのにお○んちん好きなんて。すっごい変態さんよ。そうやってネットリと舐めると気持いいわぁ……」
(ちがあうぅ、修ちゃんだから、修ちゃんの事好きだから……)
 忘れていた羞恥心が凛太郎の心に戻ってきたけれど、そのまま舌を伸ばして「修一」をキャンディのように舐め回していく。心が張り裂けそうになったが、「修一」に気持ちよくなって欲しい、その感情の方を優先していた。それでもなぜだか涙が出てきた。どこかに隠れていた男の部分がひょっこり顔を出したが、直ぐにまたどこかに行ってしまった。
 上目遣いで見上げると、魔物が欲情しきった目で見下ろしている。凛太郎は竿の部分に舌を這わせ、根本まで舐めると再び先端まで舐め上げる。丹念に鈴口を掃くようにねぶると汁が舌にまとわりついてきた。自分の唾液と汁でべちょべちょになった「修一」。凛太郎は口に溜まった唾液と汁を「んっ」と飲み込んだ。
 あまり味がないと思っていたけれど、少ししょっぱいような気がする。しかしその味も修一の味だと思えば少しも嫌ではなかった。何か愛おしいものを舐めるように赤く張り切った亀頭部分を舐めていく。ちらっと上を見るとたわわな魔物の胸の谷間に、うっとりとした表情が見える。
(僕が舐めたら、修ちゃんもあんな風に……? 気持いいって表情してくれるの?)
 凛太郎は、自分の秘裂を嬲っていた左手を離し、恐る恐る「修一」の近くまで持ってくる。愛液で濡れた指が自分の欲情を示しているようで卑猥だった。
「あぁ、いいわよぉ、気持よくって堪らないわ。彼のおち○ちん、美味しいでしょう?」
 魔物は凛太郎の手を取ると、自分の股間に生えたペニスに導いていく。魔物に比べると幾分小さな凛太郎の手を包むようにしながら「修一」を握らせた。
(あつい……。すごくかたい……)
 自分が男の時にあったモノより遙かに大きく、太い。散々それで貫かれたと言うのに、今更ながらに期待と恐怖が募っていく。
「美味しいって感じるのはね、君が彼を好きだからよ。ふふっ」
 修一が好きだと言う気持が、凛太郎にペニスを舐めてもいいという事を肯定させていた。魔物にさえ「修一が好き」と言われると凛太郎の気分は高揚してしまう。どうしようもないくらい性感も高まってくる。蜜を湛えイソギンチャクのように指に吸い付いてくる淫らな肉の穴に、指を出し入れするとくちゅくちゅと濡れた音がする。凛太郎の耳にはその音すらも、自分が修一に恋いをしている証明のように聞こえていた。
「ふっ、んっ、あむっ」
 高まる快美感に、「修一」を握る手に力が入る。「修一」を自分の口に近づけ、色々な部分を躊躇いながら舐め続けた。すると魔物が話し出す。
「そればかりだと、彼も飽きちゃうわね。もっと他の事もしてみないとね。好きな気持が薄れて来てるみたいよ?」
 その言葉に凛太郎は少しムッとした。
(そんな事ないっ、修ちゃんの事すごく好きなのに。もっと他の事……。僕だって知ってるよっ)
 手で「修一」を扱きながら、凛太郎は小さな唇を突き出し、「修一」の先端に付けたかと思うと、そのままゆっくりと口の中に亀頭を滑り込ませていく。張り出した部分を越え、唇が括れた部分に達すると、凛太郎は唇を絞め、「修一」の裏筋や先端、カリの部分を口の中で舐め回していく。「修一」が口の中でビクビクとはね回ると、凛太郎は「どお?」言わんばかりに魔物を見上げた。
 その淫欲と相手に対する好意に濡れ、熱い眼差しは、魔物すら背筋にゾクゾクとした快感を与える。
(ああんっ、やっぱりこのコ、最高だわっ。ツボが解ってるわぁ。もっともっと負の感情背負わせて、もっと淫乱にして上げるっ。でも今は……)
 魔物はうっとりした表情で、凛太郎の頬に両手を添えた。少し冷たい手が、熱く火照った凛太郎の頬には心地よく感じられる。
「んんっ。いいわよお、君の心がおちん○ん通して感じられるわよ。もっと出し入れして君のまん○と同じくらい感じさせて見なさい。そしてもっと激しくま○こも弄って。イキながら舐め続けないとダメよ。それが出来たら信じて上げる。君が彼を本気で好きな事」
 凛太郎はその言葉を聞いた途端に、激しく、しかし丁寧に「修一」をしゃぶった。じゅぶじゅぶと口から音が漏れる。飲みきれない涎と「修一」から流れ出る汁が口の端からつーっと流れてきた。下の口がしゃぶっている指の動きと、上の口の動きを連動させると、凛太郎の頭の中で「修一」が自分の中で暴れているイメージが湧いてくる。次第に高まる性感に、凛太郎は思い切りよがっていた。
「うんんんっ、うぁっん、ふっぅん、ん〜〜っ」
 いつの間にか、魔物は凛太郎のリズムに合わせ、腰を使って口に突き入れ始めていた。喉の奥まで突き入れられ、はじめは苦しくて涙が出てきたけれど、それも「修一」が与える刺激だと思うと不思議と耐えられ、心地よいものとなって行く。
(あ、やだ、もうっ、来ちゃうよっ。修ちゃん、すごくきもちいいよぉっ。イッちゃいそうっもうっ)
「もういっちゃうの? あ〜っ、あたしもいっちゃいそうよっ! イッていいっ? お口に出すからっ」
 凛太郎はイキそうな自分を少しさまそうとしていた。このままイッてしまったら「修一」を噛んでしまいそうだった。段々と身体に力が入り、膣にを出入りしている指のスピードも早くなってくる。それに抗うようにその指をこれまで以上に締め付けていた。それと同じように、口も力が入ってしまう。口の中の「修一」も次第にその硬度を増し、凛太郎にももうすぐ「修一」が果てる事が解っていた。
 目の前で自分の唾液にまみれた「修一」が、口の中を出入りしている。ピンク色の淫らな肉洞は自分で快感を貪るように妖しく蠢き、腰は指の動きを追ってゆらゆらと揺すられている。それが魔物の股間から見えた。刹那、激情は一気に加速する。
(やあっ、もうっ、ダメっ、イクっイクっ、イク〜ッ!! !)
 きゅっと目を閉じ迫り来る嵐に翻弄されていた。膣はぎゅ〜っと指を喰い絞め、足が硬直してしまう。と、同時にしゃぶっていた「修一」から熱い迸りが凛太郎の口内に撒き散らされた。びゅくびゅくと跳ね回り、熱い粘液を吐き出す「修一」。その脈動は凛太郎の膣の痙攣と同調するかのようだった。思わず凛太郎は目を見開き、魔物の腰を持って「修一」を口から離そうとするが、がっちりと魔物の手で押さえられ離れられない。それどころか、魔物は喉の奥へと「修一」を進入させていく。イッたという身体の満足感と、口内に溢れる「修一」が感じてくれた証拠。喉の奥に満たされたそれに、凛太郎はうっとりしながら、しかし苦しさに涙目になりながら魔物を見上げた。乳房の陰からニマニマと笑う目が見下ろしている。
「君のお口、とろけるみたいに気持良かったわよ。彼も満足してるわ。全部飲み込んで上げなさい。それからちゃんと綺麗にして上げなさい。もっと喜ぶわよ、彼」
 口中に溜まった精液。それ程苦いとは思わないけれど、きしきしして変な感じだった。凛太郎はまた目を瞑り、ゆっくり飲み込んでいく。目の端から涙が一筋流れていった。
「……んっ、んっ、んっ」
(喉に絡んで飲みづらい……)
 少しづつ硬度が失われていく「修一」が、ちゅるっと音を立て凛太郎の口から抜かれていく。ぬるっと「修一」の先端が凛太郎の下唇を撫でていくと、ぞくっと背中に電気が走った。はぁはぁと荒い息をしていると、魔物が覆い被さってきた。
「君の彼への気持、よくわかったわ。処女のくせにお口でイカせちゃうなんて普通じゃあり得ないものね。しかも自分でイキながらなんだから。あたしでも出来ないわ」
 凛太郎は顔を隠すように左腕を上げる。そして少しぐったりした様子だったが、息を整え魔物に言った。
「……ちゃんと、したから、教えてくれるんでしょ?」
 ふっと凛太郎の上から魔物の気配が消える。それを感じ慌てて凛太郎は上体を起こした。消えたと思った魔物はベッドの端に移動し凛太郎の表情を伺っている。
「約束したでしょ? 僕が、修ちゃんの事……好きって納得したら……ちゃんとしたんだから、教えてよ」
 静かにもう一度言った。魔物はくすくすと笑いながら答えた。
「ええ、約束したわよ。君のちゃんとオナニーしながらイッたし、彼の事もイカセたからね。初めてなんて思えないくらい良かったわ。男の子の時からずっと想像して練習してたんじゃないの?」
「そ、そんな事してないっ……。それより教えてよっ」
 凛太郎は真っ赤になりながら、シーツにくるまり魔物に詰め寄っていく。妖艶な笑を浮かべたまま、目だけ笑っていない魔物は凛太郎の問いにやっと答え始めた。
「……二つあるの。一つは契約不履行の場合。もう一つはあたし達を現実の世界で「捕まえた」場合。尤も今まで捕まった間抜けもいないし、捕まえたコもいないけどね。捕まえられたらあたし達にも上からペナルティあるから必死なのよぉ。だからきっかけを与える時以外は絶対に夢でしか会わないの。ごめんねぇ、君の短い一生かけても無理よね」
 暗い部屋の中が、更に暗くなったような感じだった。
(そんなの、ないよ……。それが解れば直ぐ戻れる方法だって思ったのに……)
 だから浅ましいと思っても、自分から身体を貪る姿を見せたのに。男の自分を隠してまで女の子のように「修一」を求めたのに。凛太郎はまんまと魔物の策略にはまった自分を呪った。
「そんなに落ち込まなくてもいいじゃないの。彼が好きならその内、今したのと同じ事きっとするんだから。その可愛いお口で彼のおち○ちん気持ちよくして上げられるのよ? 舐めて、吸って、出したの飲んで。凄いわ。まるで淫乱で好色な女そのものよ。彼の精子受け止めながらイッちゃうんだから。君も気持よかったでしょう? 美味しく味わったでしょう? あの親にしてこの娘あり、だわね」
 ずけずけと言ってのける魔物に、凛太郎は返す言葉が無かった。確かに「修一」がイッタ瞬間は苦しかったけれど得も言われぬ快感が走ったのは事実だった。この熱い迸りが自分の中で出されたらどうなってしまうんだろうと。それに修一の味はけっして不味いと思わなかった。
「うぅ、違う、僕は……僕は、淫乱じゃないよぉ。修ちゃんが……、好きだから……」
 ぐるぐると考えが纏まらない。淫乱だから口でしたのか、好きだからしたのか。「修一」のと同じと言っても、魔物に生えたものだ。修一自身としている訳ではない。ただ身体の刺激が欲しいから、そう言われたら反論のしようがなかった。魔物はそれについては追求していなかったが。
「君はもう、彼が好きな事も、彼が欲しい事も告白しちゃってるのよ。観念してもいいんじゃないの? まぁ、まだ悩んで苦しむといいわ。あたし達もその方が面白いし。今度来るときには、別の話をして上げる。じゃあね、あたしの可愛い淫乱ちゃん」
 次の瞬間には、魔物が来る以前の自分の部屋になっていた。パジャマもちゃんと着ている。しかし口の中には「修一」が放った残瑳があったし、秘裂は自分の分泌物でぐしょぐしょになっていた。
(なんて馬鹿なんだよぉ、解ってたじゃんか。魔物の言うことなんて……、信用出来ないのに……。どんどんダメになってくよお)
 自分がしてしまった事。自分の気持が解って、それを解放してしまった事。しかもそれを魔物に伝えてしまった事。凛太郎は枕に顔を埋め、声を殺しながら泣いた。一頻り泣いた後で「ワンコの修一くん」をベッドと布団の間から取り出し握りしめていた。
(……こんなんじゃ、一生修ちゃんにはちゃんと言えないよ……)
 こんな自分嫌だと思いながら、凛太郎は下着を替えベッドに潜り込んでいた。


(月曜日 勉強会?へ)


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