火曜日―水曜日 夢の中の陵辱(その3)


 パジャマに着替えた凛太郎は、ずっと着けていたチョーカーを外した。「ワンコの修一くん」が汗でその輝きを失わないように、念入りに磨く。磨き終えると、母が買った十字架を時計から外し、チョーカーに着けた。犬と十字架が重なって傷が入りそうだ。
(これじゃなんだか変だな。やっぱりどっちかだよなぁ)
 魔物対策の十字架だからなるべくいつも身につけるように、千鶴から言われている。寝ている時も時計をしているのは、ちょっと変な気がした。
(寝るときはワンコ外して、十字架付けとくかな。そのぐらいは許してよね、修ちゃん)
 銀色の犬だけをチョーカーから外し、それを十字架が入っていた箱に入れた。チョーカーは十字架が付いたまま、身につける。
 ベッドに潜り込み、今日の事を思い出した。修一のアソコは、やっぱり大きかった、などと思っていると段々頬も身体も熱くなってくる。凛太郎は右手を恥骨の辺りにあてた。
(ここに入れるんだよね? でも、あんなの絶対入んないよ。無理。身体裂けちゃうよ。って、そんな風になるわけ無いじゃんかっ。いつもいつも何で想像しちゃうんだろ)
 自分を慰めたいような気持が次第に高ぶってくるのが解る。しかしこんな事してたら、馬鹿になっちゃいそうとも思ってしまう。
(修ちゃん、僕の写真どうするんだろ。まさか使わないよね……。パンツも見られちゃったけど……興奮したのかなぁ)
 修一が自分を想像してしている姿は、なにか興奮するような褪めるような感じだった。所詮女の子の身体はネタでしか無いのだろうか。男だった頃の凛太郎はそれ程セックスに対して積極的な方では無かった。しかし特別な対象ではなくても、男は下半身が反応する事を、身を持って体験している。修一が自分の心ではなく、身体だけを求められているなら、手近にある凛太郎の身体とヤリたいと思っているなら、そんなに悲しいことは無かった。
(修ちゃんが見てる僕も一応僕だし、ここにいるのも僕だよね。今は一緒にいるだけでいいや。どう思われてるかなんて、僕がどう思っているかと同じで解んないし)
 なるべく前向きにと思い、そんな事を考えていると身体の火照りが消えてくる。一番大事なのは自分が修一をどう思っているのかだけれど、それは後から考えようと、掛け布団にくるまる。答えは出そうに無かったから。頭を空にすると、布団のぬくぬくとした感触が心地よく、眠くなってきた。
「……ちょっとえっちな修ちゃん。おやすみ」
 銀の犬が入った箱を抱えこむようにして、凛太郎は寝始めていた。

 * * * * * * * * *

 混沌とした意識が次第にはっきりしてくると、辺りは真っ暗闇だった。凛太郎が目を見開いても何も見えない。
(……なんか前にもあったような……)
 ふと、そんな気がしたが、記憶は定かでは無かった。見えない空間で自分の身体に触れるとパジャマを着ている。
 ベッドの上にいるのか、少し冷たい布の感触があった。どちらが上か解らないような状態だったけれど、取り敢えず身を起こしてみる。何か不穏な雰囲気を感じた凛太郎は、首に下がった十字架を握っていた。
 目が暗闇に慣れてくると、自分のベッドの上にいるのがわかる。しかし周りにあるはずの机やその他の調度品は何も無い。
(もしかして、あいつの仕業?)
 そう思い、後ろが気になり振り向いてみた。
「!」
「あら、ばれた?」
 そこにはあの店員が、魔物が妖艶な笑みを浮かべ座っていた。凛太郎は声も出せずベッドの端まで飛びのいた。
「きみ、大分女の子してるわよ。鍵のかけ方が甘かったかしら」
 よく見れば魔物は裸だ。凛太郎と同じくらいか、それより白い肌は、大理石のようにつるっとしている。四つんばいで凛太郎の近くににじり寄ろうとすると、たわわな乳房が重たそうに揺れた。
「な、なんでっ? 僕の部屋にっ? どうやって?」
 突然の訪問者に凛太郎はやっと言葉を紡ぐ。鍵はきちんと閉めている。玄関も窓も。どうやって進入したのかさっぱり解らなかった。
 魔物は凛太郎の目の前まで来ると、口の端を上げクスッと笑う。その表情に思わず凛太郎の男の部分が反応し、喉を鳴らしていた。
「なぁに? きみ結構鈍いわね。あたしたちの事調べたでしょう? きみに入り込むなんて簡単な事よ?」
 凛太郎は背筋が寒くなった。図書館で調べた魔物は「夢魔」だ。夢を自在に操る事が出来る。とすると、入り込むと言うのは自分の夢の中の事だと思った。そして夢ならどんなに足掻いても勝ち目が無いだろう事も想像していた。
「でもっ、夢なら現実じゃないから何も出来ないじゃんか。それに……」
 空いている手でチョーカーを外し、魔物の鼻先に十字架をかざす。
「ぎゃーああああっ、やめてぇ、身体が溶けるぅ……」
 絹を裂くような叫び声を間近で聞き、凛太郎は心臓が口から出るんじゃないかと思う程びっくりした。しかし同時にその効果の程に歓喜した。魔物は顔を手で押さえ尚も叫び続けている。
「やったっ! 僕を戻せっさあ早くっ!」
 凛太郎はここぞとばかり、当初の希望を、男に戻る事を魔物に命じる。凛太郎の顔には魔物に勝利した笑みがこぼれていた。が。
「……なーんて事があると思ってるの? ばかねぇ、きみ自分で効果無いって思ってたでしょ?」
 べーっと下を出しながら、凛太郎を小ばかにし、十字架をその手から奪った。
「……そんな……」
 凛太郎にしてみれば、ジェットコースターのように上がり、真っ逆さまに地面に落ちて激突した心境だった。確かに効果はないかな、と思っていたけれど、目の前で苦しむ姿を見れば誰でも「イケル」と思うだろう。薄暗い中で、凛太郎の心は真っ暗になっていく気がした。
「あたしたちはね、十字架なんて効かないの。そりゃ苦手なものもあるわよ。みんな各々嫌いな動物がいるようにね。姿を象った物を見ただけでも飛んで逃げ出すようなのが」
 魔物はそう言うと、十字架を自分の舌の上に乗せ、飲み込む素振りを見せた。
「あ、返してっ、返してよっ」
「きゃー♪」
 凛太郎は母から貰った十字架を取り戻そうと、魔物を押し倒していた。何故か魔物の声が喜んでいるように聞こえる。
「きみの中にも男がまだいるのねぇ。積極的なのはいい事だわ」
 そう言うと、凛太郎の頬に手を添える。凛太郎は自分の行為と組み敷いた魔物の裸の身体を見て思わず怯んでしまった。身を引こうとするが、軽く添えられている手が離れてくれない。
「な?! 離せっ、近づいてくんなっ! 僕の身体戻せよっ!」
 魔物は張り付いたような笑みを絶やさず、上体を凛太郎に近づける。
「きみって意外とわがままね。そんなに戻して欲しいの? 心の中じゃ随分と違うみたいだけど」
 次第に魔物の顔がアップになってくる。目の前に迫る美女のようなモノが、凛太郎の心を見透かしたように語り掛ける。凛太郎は思わず目を逸らしていた。
「んふふっ可愛いわね、赤くなっちゃって。でも、正直に言わないとお姉さんいじめちゃうよ」
 凛太郎は、修一への気持ちを逡巡したが、魔物の目を見据えてもう一度言った。
「僕は元に戻りたい。戻す方法は? 無いって言ってたけど絶対あるでしょ?」
 魔物の綺麗な顔立ちと、鼻腔をくすぐる匂いにくらくらしそうになる。しかしきっぱりと凛太郎は自分の意思を示した。魔物はそれを聞くと、その顔から笑みを消す。
「嘘はダメよ。あたしたちには効かないから。あたしには戻せない。これは本当よ。戻せるとしたらあたしの上司だから、あたしに言っても無駄。それかあたしが契約不履行したときくらいかしら」
 凛太郎はその時初めて自分の身に起こった事を知った。身体を動かそうにも動けない。
(なんで? 手も足も動かないっ。なんかされた?)
 二人の鼻の頭が付きそうな位接近すると、魔物の甘い吐息が凛太郎にかかる。吸い込むと不思議と緊張が和らぐような気がする。
「あ、あ、それ以上近づくなっ。契約不履行ってなんだよっ!」
 恐怖心が凛太郎に沸いてきたが、それを悟られないようにわざと乱暴に振舞おうとした。しかし離れる事も出来ない凛太郎の物言いは、魔物にとって何の意味も持たなかった。
「契約不履行ってね、あたしが全てを伝えなかった場合なの。でもね、これから時々来てあげるから、その時少しづつ教えてあげる」
 そのまま魔物は凛太郎に近づくと、ゆっくり唇を合せてきた。
(やだっ、こんなのとキスなんてしたくないっ)
 顔を背けようとしても、動かない。少し冷たく柔らかい唇の感触が、次第に凛太郎を包む。
 魔物も凛太郎も目を開けたままだった。魔物が少し口を開き、唇で凛太郎の上唇を軽く噛む。ゾクリとする感覚が凛太郎の背中に走った。そして今度は舌先を少し出し、チロチロと上唇から下唇を舐めていく。
(うぅ、嫌なのにぃ、なんで気持ちいいなんてっ……)
 ゾクゾクする感触が、唇から胸を通って股間まで続き、凛太郎は身体をぶるっと震わせた。魔物はそれを感じ、唇から少し離れる。
「気持ちいいんでしょう? 正直に言ったら少しは手加減してあげてもいいのよ?」
 凛太郎の心を弄ぶように、魔物が囁く。キスの間息を止めていた凛太郎が一息ついてから言った。
「……気持ちよくなんてないっ。戻す方法はっ?」
 あくまでも頑強に否定する凛太郎に、魔物は解っていたかの様に冷たく微笑んで見せた。
「お仕置き決定よ。ついでにこの間の事も思い出させてあげる」
 言い終わるや否や、魔物が猛烈なキスを始めた。凛太郎の口内を縦横無尽に動き回る舌。口蓋も歯も歯根もヌルヌルと嘗め回す。
(いやだぁ、離せよっ! あっ!?)
 魔物が凛太郎の舌を吸いながら、右手で乳房に触れてきた。下から持ち上げるように下かと思うと、人差し指と中指で乳首を挟み、軽く刺激しながら揉んでくる。胸を揉まれているだけだというのに、堪らない愉悦が生じてくる。
(やだっ、あ、摘まないでっ。ああっ)
 胸から発した欲情が、そのまま脳に走っていく。そして股間にもじりじりとした快美感が溢れ始める。
 いつの間にか、凛太郎はベッドに押し倒されていた。右手だけで弄られていた乳房は、今魔物の左手も加わり凛太郎を攻め立てた。
 不意に魔物が唇を離す。
「押し倒すのもいいけど、でも今は女の子なんだから、責められないとダメよね」
 両方の乳首を指先で弄りながら、今度は唇を凛太郎の首筋に這わしてくる。そうすると、凛太郎の口から感じた証明が洩れた。
「はっあ、や、気持ち……」
 思わず気持ちいいと言いそうになり、慌てて口を噤む。
「気持ちいいときは口に出さなきゃ。女の子は素直が一番よ。さぁ、思い出して……」
 優しく耳元で囁かれ、首を竦めた。そして次の瞬間、フラッシュバックのように、あの夜嬲られた事実が脳裏に蘇った。いやらしく下の口から涎を垂れ流し、膣に指をねじ込まれながら激しく絶頂を味わった記憶。そして修一を無性に欲しがった自分を。
「あ、そんな、違う、こんなの嘘だっ、やだ、変なの見せないでよっ。これも夢だっ」
 乳房を弄られながら、その快感を味わいながら、次第に記憶が蘇ってくる。否定したい自分がいたが、胸から引き出された感覚がこれは本当だと言っていた。
「そう、これは夢。だけど同時に現実なの。そして今思い出したのもそう。現実だけど夢。きみが最も欲しいと思ってるものよ」
 魔物の舌は、凛太郎の首筋から鎖骨を経て、胸の辺りまで来ていた。
「あたしが見せている夢だからこんなの事もできるのよ」
 そういうと、凛太郎のパジャマが一瞬のうちに消えてなくなった。
「あっ。やだっ。見るなっ、見ちゃダメだっ」
 白い肌を朱色に染め、泣きそうになりながら哀願する。けれど魔物はしれっと言った。
「あら、綺麗な身体なんだから、見せないとダメよ。それに手加減なしなんだから」
 凛太郎は身体を隠そうと身悶えしたが、手足のいう事が効かない。絶望的な状況になっていた。そして、脳裏に浮かんでいる情景と味わった快楽が、再び魔物の手によって引き出されようとしていた。
 凛太郎は浅く呼吸をしながら、懸命にクリトリスを弄られ膣に出入りする指の感触を払拭しようとする。しかしそう思えば思う程、記憶は鮮明になり凛太郎の身体を熱くしていく。
 魔物は無言のまま、その上半身を凛太郎にぴったりとつけた。大きな胸が凛太郎の細く薄いお腹にむにゅっと付く。両手で凛太郎の乳房を揉みながら、右乳房の上にあったピンクの綺麗な乳首をペロリと舐め上げた。
「ひぁっ、だめっ、舐めちゃダメっ、もうやめてよっ」
 記憶の中の快感と今味わわされている快感がオーバーラップした。やだやだと言っても身体は人形のように動かない。我慢できない程の気持ちよさが、どんどん引き出されてくる。
 舌の表と裏を巧みに使い、乳首と乳輪を上下左右、そして円を描きながら舐める。舐められる度に凛太郎は切なそうな声を上げ、身体がビクビクと動いてしまう。反対側の乳首は指先ではじくように、くすぐるように弄られている。
「はぁっ、やだっ……。あ……」
 凛太郎は膣から自分が感じている証拠が溢れてきた事に、情けなくなってしまった。自由を奪われた上に、身体を蹂躙される。しかもそれに感じてしまっている。これ以上の屈辱などないと思っていた。
 魔物は身体を起こし、凛太郎を見下ろす。長い髪が凛太郎の顔にかかるかかからないか、微妙な距離を取った。
「気持ちいいんでしょう。責められて嫌だと思ってるのに女の子が濡れてきちゃったのね。きみってやっぱり淫乱だわ」
 かぁっと顔が熱くなるのが解った。言葉でなぶられていると解っても、自分の身体の変化も知っていたし、魔物にはそれもばれていると知った。
「……ん、ちがうぅ、淫乱なんかじゃないぃ……」
 胸を揉みしだかれながら必死に弁明するけれど、ぬるぬるした粘液が合わさった小陰唇から漏れ会陰部を通過すると、その声も小さくなってしまった。
「強情なところは気に入ってるのよ。その方が嬲り甲斐があるから」
 胸を揉むその手はそのままに、肋骨の合わさり目から舌を這わせ、ゆっくりとおへそまで降りていく。
「あひっ!」
 凛太郎はそのなま暖かい感触に嬌声を上げてしまった。
 とろとろと股間を濡らす液体が気持ち悪いと思った時、魔物の右手が乳房から離れた。その手の行き先は、快感に犯され始めた凛太郎の頭でもどこか解ったけれど、抗う術がない。
 凛太郎の細い腰を撫でながら、悠然と下半身まで滑っていく。鼠頸部を撫でられると身体に電気が走った。やわやわと揉まれる乳房から得られるじれったさ。それらが相まって、もっと決定的なものが欲しいと思い始めてしまっていた。あの夜どっぷり快楽につかったせいで、身体が覚えてしまったのかも知れない。
 魔物の左手も乳房から離れ、両手で腿をなで上げる。そのくすぐったいような感覚が、凛太郎のお腹の辺りをキュッと動かした。
「ひゃうん、ダメぇ。もおやめてよお……」
 しゃりしゃりと凛太郎の少し薄目の恥毛を舐めながら、魔物は凛太郎に語りかけた。
「なあに? もう我慢できなくなっちゃったの? 淫乱な女の子はしょうがないわねぇ」
 さも呆れたと言う風に言うと、腿に置いた手をひかがみに差し入れガバッと凛太郎の足を割り開く。
「あぁっ! やっ、だめっ、見ないでっ、お願いしますっ、見ないでえっ!」
 しとどに濡れそぼった性器が、魔物の目の前に広がってしまった。凛太郎は自分の肉欲が知られてしまった事に激しい羞恥心が沸き上がった。自分のびしょ濡れの股間を隠そうにも手が動かない。足を閉じようとしても開ききったまま。何も出来ない自分に腹が立ちくやし涙が溢れて来る。しかしそう思いながらも、疼いて仕方がない女の子の部分をどうにかしてくれるかも知れない期待感も持っていた。
「まぁ、すごいわね。花びらは開き切っちゃってるし、愛液も大洪水じゃないの! よっぽどおち○ちん欲しいのねっ、このやらしいま○こはっ!」
 魔物は凛太郎の股間に座して、腕組みしながら性器の品評をしてくる。凛太郎はもう消えて無くなりたい位だった。
「そっそんなっ、ちがっ、僕お○んちんなんて……。欲しいなんて思ってないっ」
 見てないで触って、弄って! そう思う自分が確かにいる。でもそんな事は認めたく無かった。肉欲に溺れ嬌声を上げながらイッてしまうなんて、一度で十分だった。
「そお? 小陰唇は真っ赤になって飛び出てるし、クリトリスなんて弄ってないのにパンパンに膨れてるわよ? ほら、下のお口なんて物欲しそうに涎だらだらにしてるのに。シーツなんてびしょびしょ。やーねっ」
 もう、凛太郎は耳を塞ぎたかった。これ以上自分が感じている証拠を突きつけられたく無かった。しかし出来ない。
「絶対違うぅ! あ、あんたが、いたずらするから……」
「……ふうん。あたしのせいなの? そう。じゃあ、これからあたしが何してもこれ以上は感じないのよね?」
 からかいと嬲りが同居したような物言いから、トーンが少し下がった。凛太郎はその変化に、ドキドキし始めていた。次の行動に期待してしまったのだ。
 凛太郎の視界の範囲外で、魔物が動く気配がした。次の瞬間今まで味わった事のない、強烈な刺激がクリトリスを襲った。
「ひぃいいああんっ! なにぃ、これっ、いやあああ!」
 生ぬるい感触とぬるっとした刺激。あまりの快感に宙を彷徨っていた視線を何とか下に移すと、魔物の髪が揺れている。正気を保とうとしても次から次へ与えられる甘美な刺激に、意識が飛んでいきそうになる。
「きみのクリトリス、しっかり勃起してて舌触りが最高だわっ。愛液もおいしいわよお」
 魔物はそういうと、舌を尖らせクリトリスを包皮から剥き出してしまう。普段隠れている所を刺激され、凛太郎は身体中の筋肉を硬直させていた。
「あひっ、はあん、やだあ。もうっだめっ」
 クリトリスの丸さを楽しむように、舌が転がしてくる。時々膣口の辺りまで舌を伸ばし、入り口を刺激したかと思うと、大きく平たくし、陰裂全体を舐め上げる。ざらついた舌の感触が凛太郎の子宮に届くと、お腹がまた動いた。
 ぴちゃぴちゃと猫がミルクを舐めるような音が凛太郎の耳に聞こえてくる。それが自分の分泌した愛液だと思うと、はしたないと思う。でもこの悦楽は手放すには刺激が強すぎた。
「もうだめって、いっちゃいそうなの? 感じないんでしょう? 欲しくないんでしょう?」
 魔物は顔を上げると、今度は指で包皮を持ち上げクリトリスを摘んできた。
「!」
 凛太郎は既に言葉が出なくなっていた。その刺激の強さに呼吸もままならない。
(ああっ! もう、やだ、修ちゃん! もう、僕、だめだよお!)
 はあっはあっ、と犬のような呼吸しか出来ない凛太郎に、魔物は更に追い打ちをかける。空いた方の指を収縮を始めている凛太郎の膣にゆっくりと差し入れてきた。
「はああんっ! あああすごいいいっ!」
 クリトリスと膣への刺激は、凛太郎の理性を容易に排除してしまう。魔物は膣の浅い部分でゆっくりと指の抜き差しを始めた。
「もうっ、ずぶずぶ入ってるわよっ。全然ダメじゃないの。きみのまん○はこらえ性がなさ過ぎっ」
 次第に抜き差しするスピードを早める魔物。そして再びクリトリスを舌で攻め始める。
「ああん、いいっ、あはっ、そこっあ、やっ!」
 最早凛太郎は言葉を紡ぐ事が出来なくなっていた。ただ与えられる愉悦のみを何も考える事無く貪り始めていた。
 少しづつ奥へ、そして膣壁の色々なところへ指先が当たる。お腹側の感じるところが刺激されたかと思うと、少し鈍い横の方へ指が逃げてしまう。凛太郎はうまく指が当たるように腰を動かそうとするけれど、動けない。その焦燥がまた凛太郎の感度を増幅させていた。
「やだっ、もうっ、いっちゃうっ、いっちゃうよっ、だめっ、ああっ!?」
 もう少しでイケる、そこまで来ていたのに、魔物が急に口をクリトリスから放し、指を膣から抜き取ってしまった。
「え? あ、なん、で?」
 もうちょっとだったのに、そう思い、魔物を見ようと視線をずらす。すると直ぐ真上に魔物の綺麗な顔があった。
「もうちょっとだったのにって? ふふ、残念ね。きみ素直じゃないからお願いしないとして上げないわよ。どうする?」
 そう言いながら、抜いた指をまた差し入れてきた。今度は少し太く感じた。
「んんっ! あっ、やっ!」
 イカない位の刺激だけれど、しかし性感自体は衰えさせない微妙さ。ある一定の高さでずーっと上がったままだった。イキたい、でもイクだけの刺激ではない。凛太郎はもどかしさでおかしくなりそうだった。記憶に蘇った、あの絶頂感がまた味わいたい。けれどそう自分から言ってしまうのは抵抗があった。
「……きみのま○こが指に喰い付いてきてるわよ。きゅっきゅって。ほんとは指じゃ物足りないのって。お○んちん欲しいのって」
「そんなの……いって、ああん、ないっ」
 何とか我慢しようと必死に耐える。でも耐える度に膣から大量の愛液が染み出してきて、指が出し入れされる度に「ぐちゅっぐちゅ」と卑猥な音が聞こえてくる。
「きみの大事な友達も、今頃あのおっきくてふとおいおち○ちんシゴイてるわよ。きみの写真見ながら、きみのいやらしいま○こ想像しながら。でも、彼ってきみがこんなに淫乱だなんて思ってないでしょうねぇ」
 修一の事を言われ、凛太郎の心に罪悪感が広がる。そしてそれ以上に今朝見た修一の勃起を想像し、膣に入っている所を思ってしまった。子宮が震え、膣がこれまで以上に絞まった。
「うああっ、なんでぇっ? すごっ、修ちゃん、そんな事しないっ、絶対しないっ、ああン」
「あらっ?! すごい締まりねっ。よっぽど彼のおち○ちん欲しいのよ、きみのまん○」
 修一はそんな事絶対しない、凛太郎はそう信じていた。修一は、修一だけは自分に誠実に接してくれている。例え女の子の身体に血迷っていたとしても、そんな事ある訳がないと。
「随分信用してるのねぇ、それって愛よ、愛」
 ぐちゃぐちゃと凛太郎の膣に指を差し入れながら、魔物はもっともそうな事を言う。そして。
「でもね、あたし知ってるのよ。彼ってああ見えてとってもえっちなの。毎日おちん○んシゴイてるのよ。きみの可愛いお口で舐めてくれとか、ま○こ向かってどぴゅどぴゅ精子流し込ませろとか。そう思っておち○ちん握ってるの。素直じゃないきみなんか好きになっちゃったから、ほんと可哀想。あたしだったらいつでもどこでもさせてあげるのにぃ」
 凛太郎は涙が溢れて止まらなかった。絶対ないと思っていても、魔物にそう言われると信じそうになる自分が嫌だったから。
「……そ、そんなの、ひン、うそっ、アん、うそっだっ、あふっ。もうっ言わないでよお……」
 すると、魔物の動きが止まった。涙に暮れた目で魔物を見ると、凛太郎の愛液でぬるぬるになった手を、目の前に持って見せた。
「見て。もう解ったでしょ? 身体が彼を欲しいって言ってるのよ。持ち主もそうじゃなきゃダメよ。ちゃんと彼のおち○ちん欲しいって言えたらイカセてあげる」
 瞬間、凛太郎は計算していた。魔物と言えど女だ。例え本当に修一のペニスが欲しくて、「欲しい」と言っても修一を連れてきて貫かれる訳じゃない。記憶にあるように指でイカセてくれるだけだ。今の切ない状態さえ切り抜ければ……。
「……ほ、欲しい、です……」
「何が?」
 魔物はあくまでも嬲ってくる。
「しゅ修ちゃんの、」
「彼の?」
「修ちゃんのお○んちんが欲しいです……」
 真っ赤になりながら凛太郎は言った。しかし魔物は許さない。
「んん? 彼のおちん○んだけが欲しいの? どうしたいのかはっきり言ってくれないと。あたしわかんないわ」
(ひどいっ、全部解ってるくせに、僕に言わせようって事なの?)
 ずくずくと身体が疼いて仕方がない。時々魔物はクリトリスを弄ってくる。その刺激が凛太郎の口からその言葉を言わせていた。
「修ちゃんのおち○ちんを、ぼ僕の、おま、お○んこに、欲しい……」
 恥ずかしさで凛太郎の頭の中はぐるぐる回ってしまっていた。「おま○こ」なんて単語は生まれてからこれまで使ったことなど無かった。
 魔物は羞恥で歪んだ凛太郎の顔をじっと見つめている。
「……きみってすごい恥知らずね。男の子なのに親友のおちん○ん入れて欲しいなんてっ。しかも自分でおま○こなんて言ってさ」
 そう言われ、凛太郎は身も蓋もなかった。魔物はニヤッと笑うとクリトリスを弄っていた指を、急に膣に進入させた。
「やっああんっ! ちゃんとっはぁっん、言った、のにぃっ!」
 入ってきた指は一本だけ。そして、激しく出入りするかと思えば、膣内でくにくにと指先だけが動いていた。
「あら、これじゃないわよ? きみをイカセるのはね。ちょっと待ってね」
 ぶつぶつと小声で何事か唱える魔物を、イキそうでイケないぼやけた頭で凛太郎は見ていた。魔物が凛太郎の膣に指を入れたまま、体を入れ替え凛太郎のお腹に跨る。すると目の前に信じられないモノがあった。
「う、うそ、なんで? お、おんなじゃないの?」
 白い肌に不釣り合いな赤黒くそびえ立つペニス。えらがしっかり張り出し、亀頭はつるりとしている。竿の部分は血管が方々に浮き出ていた。
「うふっ、あたし達って夢魔なのよ? サキュバスってきみ自身が調べたでしょ? 男でも女でも手玉に取るんだからこのぐらい出来るわよ」
 誇らしげに大きく勃起したペニスを扱いて見せる。その間もこれがここに入るのよ、というかのようにグチグチと膣内をいじくり回す。
 凛太郎は、その指からの快感より、ペニスへの恐怖心に襲われていた。指二本でもきつく感じる自分の性器。そこに、どう小さく見積もっても三本以上の太さがあるペニスは、到底入らないと思った。
「っそそんなのっ絶対むりだよっ、入らないっ、やだ、怖いっ!」
 怖いと言っても逃げ場はなかった。凛太郎の性知識はあまり無い方だったが、それでも処女が初めてする時は「痛い」と言う知識は持っていた。心が男でも身体は全くの女の子だし、ましてや経験があろう筈もない。「それ」が自分の膣の中にあるだろうとも思っていたから、余計にこんなモノが入ってくるなんて冗談では無かった。
「そんなに毛嫌いすることないでしょお。これ、きみの大好きな彼のなのに」
 ニヤニヤと凛太郎を見ながら、尚も扱いている。先端からつーっと先走り汁が垂れ、凛太郎の鳩尾あたりに溜まっていく。
「しゅ修ちゃん? そんな、ん、はずないよっ。おち○ちん無くなったら修ちゃん死んじゃうっ」
 自分でも取り留めのない事を言っていると、凛太郎も思っていた。でもそうでも思わないとパニックになりそうだ。
「厳密に言うと、彼のと寸分違わぬレプリカね。でも凄いわよ。太さも堅さも出てくる精子も、全部同じ。きみの希望通り、彼のおち○ちんを、きみのいやらしく口を開けてるま○こに、ずっぷり埋めてあげる。存分にイッテいいのよ。我慢しないで。好きなだけ味わいなさい。そしてきみのまん○を使って、彼のお○んちんを気持ちよくさせてあげるの。彼はきみの穴だけが好きなんだから」
 そう言うと、素早く身体を浮かし凛太郎の開いた足の間に位置する。ひかがみを持ちより大きく足を広げさせると、亀頭の先端を膣口に軽く触れさせた。
「やだっやだやだやだっ! 止めてよっお願いっもうやだっ。こんなのやだっ! こんな、欲しくないよっ。修ちゃんっ助けてっしゅうちゃあんっ」
 半狂乱になって、修一に助けを求めようとした。けれど夢と現実の狭間にいる凛太郎の声は、全く外部に届かない。
「やあねぇ、彼に助け求めても来るわけないでしょう? ここはあたしときみだけの場所。夢であり現実。現実であり夢。夢だから処女でも痛くないし、現実には処女膜も破らないわよ。しかもちゃんとイケるの。たっぷりと。そして現実だから、きみは彼のおちん○んを味わったら、それ無しじゃダメになっちゃうかもね。可哀想だわあ」
 これでもか、という位に言葉で嬲る。修一のペニスと凛太郎の膣口が、くちゅっと小さな音を立てた。


(その4へ)


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