水泳部の先輩(その7・最終回)
ファシット・ファクトリー・シリーズ


作:JuJu
 




 山本が脱がせてくれと言っている。
 なぜそんな事を言ってくるのか分からなかったが、こんなチャンスは二度とない。
 山本の胸に向けて伸ばした腕が震えているのが自分でもわかった。
 自分の視線が山本の胸に集中している事に気が付いて、慌てて山本の顔を見た。目が合う。山本は微笑んだ。
 俺は目をつむった。恥ずかしくて山本の顔が見れない。
 目をつむったまま手を伸ばすと、柔らかい感触に当たる。この感触は忘れるはずがない。山本の胸だ。


「あん……先輩……?」


 このままでは、ボタンが外せない。しかたがないので俺は目を開けた。やっぱり山本の顔は見れなかった。
 俺は先輩の手を使って、襟もとから下へ向かって山本の服のボタンを外した。
 全部外すと、山本が両腕を上げたので、服の肩の部分をつかんだ。
 服を引っ張り上げると、山本が脱げやすいように上半身を俺の方に、斜めに倒した。山本は上半身がブラジャーだけになる。
 俺はしゃがむと手を山本の腰に回した。
 プールの更衣室で、先輩がスカートを脱いだ時の事を思い出していた。
 たしか、ここら辺にホックとファスナーがあるはずだ……あ、あった!
 ファスナーを下してホックを外すと、スカートは足元に落ちた。山本の水色のパンツがあらわれる。

(山本のパンツだ……。こんな近くで見られるなんて)

 俺は目の前にある山本のパンツに、魅入られる様に眺めていた。


「先輩! 先輩だけ楽しむのはずるいです。先輩も脱いでください」

 パンツに見とれていた俺に、山本はいった。


「え? ええ」


 俺は立ちあがると、山本は少し後ろ離れた。

(服を脱がなくちゃ)

 先輩の手はプールの脱衣所の時の様に勝手に動いて、俺は下着姿になった。


「先輩……綺麗です」


 俺の脱ぐ姿を見ていた絵里子は、脱ぎ終わった途端に近づいて来た。山本は俺のブラジャーを捲って胸を出した。
 まて! ブラジャーを捲って、一体何をする気なんだ?
 だが、そんな事を考える間に、胸から甘い電気を感じた。


「あっ……」

「もう感じているんですか? 相変わらず先輩の胸は敏感ですね? ……こんなに大きいのに」


 山本の手が俺の胸を触っていた。
 山本の言うとおり、先輩の胸ってなんて敏感なんだ。そして、すごく気持ちいい。
 山本の手の動きは少しずつ激しくなった。
 先輩。先輩の胸気持ちいいよ。いい、すごくいい。先輩の体すごくいい。もっと、もっとこの快感を味わいたい。
 そう思った時、先輩の手は勝手に山本の胸に向かって、揉み始めた。


「あっ……」


 山本は胸を掴まれると、かすかな吐息を吐いた。俺の胸を触る山本の手が震えてる。


「絵里子の胸だって、敏感じゃないの」


 俺は先輩のまねをして言った。
 先輩の手は休むことなく揉みつづけていた。手に張り付くやらかい山本の胸の感触。


「先輩……そろそろ……」


 山本の声に反応する様に、先輩の手は山本の胸から離れた。
 先輩の足が数歩後ろに下がると、先輩の手は背中に回り、なれた手つきで捲られていたブラジャーのホックを外した。
 さらにその手はパンツに向かった。
 俺の心は、最後の一枚だけはぬがせちゃいけないと言う気持ちと、先輩を裸にしたいと言う気持ちが混ざり合っていた。
 だが、先輩の手は躊躇(ちゅうちょ)をすることもなく、パンツを脱いでいく。
 先輩の体を隠す布は何もなかった。
 山本を見ると、彼女も裸になっていた。
 両腕で胸を隠し、顔を赤らめて俺を見ている。
 山本が近づいて来た。先輩の体は両手を広げて山本を抱きしめる。
 山本は顔を上げて目を閉じていた。先輩の体は山本の唇に顔を近づけた。
 口を合わせる。先輩の舌は山本の口をこじ開けて中に入っていく。山本の舌を絡ませるように合わせる。
 唇を離すと、銀色の糸がお互いの唇から伸びていた。

 先輩の手は山本の胸を揉み始めた。
 先輩の体が勝手に動くために、俺の意識はすべて快感に集中できる。
 しばらく山本の胸を揉んでいた先輩の手は、今度は山本の下半身を目指した。

 え? そ、そこは……いくらなんでも……!!

 だが、俺が止めようとしても、先輩の手は勝手に山本の股間に入りこんでいった。
 柔らかい肉が、俺の指を締めつけるように包む。


「先輩……」


 山本はささやいた。
 今度は俺の股間のあたりに暖かい感触があたった。それが山本の指だと理解するのに時間はかからなかった。
 山本の指もまた、先輩の女そのものを目指していた。
 俺も女その物の快感には興味もあったが、それ以上に怖かった。女その物をいじられる事に恐怖を感じていた。
 だが、先輩の体は導く様に、山本の指の場所に下半身を動かした。
 山本の二本の指が、先輩自身に入って来る。


「ひゃう……!!」


 俺は声を出した。
 先輩の女その物が、山本の指を締めつけていく感覚がわかる。

(これは……)

 あの快感が俺を襲ってきた。スイミング・スクールのトイレでオナニーをした時の快感だ。

(……違う)

 あの時の快感とは違う。トイレでオナニーした時とは、くらべものにならない快感だった。
 先輩の手は山本を味わう様に、山本の中で動きまわった。それに合わせるように、
山本の手も先輩の女その物を掻き回していた。


「あああ」

「あん……ああ」


 俺達は声を出した。
 そうか、一緒なんだ。


「あああ……絵里子、一緒に……一緒に行きましょう……」


 その声は、俺の意思で出したのか、それとも先輩の体が勝手にうめいたのか。
 そんな事はどうでもよくなっていた。
 先輩の肉体から伝わる快感の前に、俺の心などなんの価値もなかった。
 今大切なのは、この体。
 俺の心は何の価値もなく、先輩の体は快感を得るための道具に過ぎなかった。
 やがて、体のなかにあった熱は、俺の体を溶かして行った……。
 とにかく体が熱かった。俺の体に入っている山本の指が動く度に、体の中心から熱が広がっていく。
 山本の指が動く度に、体はますます熱く燃えていく。
 俺は体をのけぞらせた。


「ああ……あん……ああああ……」


 息が上がる。先輩の体と俺の心がシンクロしていく、溶け合うような気がして来た。
 海……。そう、海で泳いだ事はないが、海で泳ぐのって言うのはきっとこの感じ……
 海に潜っている感じだろう。
 山本、一緒にこの海を泳いで行こう……。
 俺は、海に沈んで行った。




 *




「あ、先輩、気が付きました?」


 俺はベッドの上で寝ていた。
 どうやら、快感でいってしまい、そのまま気絶していたらしい。


「先輩ずるいです。一人だけで、先にいっちゃうなんて!」


 俺はベッドのなかで、ぼんやりする頭で思った。
 夏美先輩と山本がいつもこんな事をしていたなんて。
 二人がこんな関係だったなんて。
 泳ぎが下手な絵里子が、水泳部に入った理由がわかった。
 目の前に影が出来た。山本が顔をちかづけていたのだ。


「先輩! あたしの恋人になってください!」


 俺は驚いた。
 そうしたら、俺が山本と恋人になると言う予定はどうなるんだ?
 何の為に、先輩の体を借りてまで、泳ぎを習ったんだ?
 とりあえず、山本が俺の事をどう思っているのか聞いてみる事にした。


「ねぇ、同じクラスに吉田君っているでしょ? 彼の事どうおもってるの?」

「あたしも彼があたしの事を気にしている事は知ってました」

「ほんと?」

「でも、嫌いとか好きとかじゃないんです。
 彼には悪いけど、あたしは女しか愛せない人です。
 だから先輩、恋人になってください」

「そう……だったの……」


 そうだったのか。


「先輩。今日は個人指導してくれないから、先輩が他の子に手を出していると思っちゃったじゃないですか。
 でも! 先輩はあたしだけの物ですからね!」


 山本はしばらく目を伏せてから言った。


「今のままのセックスフレンドじゃなくて、恋人になってください!
 今日みたいに、先輩が誰かに取られるんじゃないかと思うと、我慢が出来ません。
 今日だけじゃありません。毎日毎日、先輩が誰かに取られちゃうんじゃ無いかって思うと……もう耐えられなくって。
 先輩って美人だし、スタイルも良いから、みんな狙っているんですよ?
 あたしは先輩の事が、心から好きです!
 先輩はどうなんですか?」

「ど……どうって」

「はっきり聞かせてください。
 もしも、あたしが先輩の恋人になれないのなら、あたしもここでキッパリと先輩の事は諦めます」


 ……ここで先輩の体を使って、「嫌いだ」と言えば、先輩と山本は別れる。
 そうすれば、女に幻滅してレズが治るかもしれない。治らなくったって、俺がレズからノーマルに治してやる!
 少なくとも、俺が山本の恋人になれるチャンスは回ってくる。
 そうだ、傷心したばかりの山本をうまく慰めれば、山本と恋人になれるチャンスも高まるだろう。
 ここで、「嫌いだ」と言うんだ。
 そうすれば、山本は俺のものだ。
 嫌いだって言うんだ!
 嫌いだって……。


「絵里子……」

「はい」


 山本は怯える様に俺を見ていた。俺の一言が、山本にはそれだけ重い物なのだろう。
 俺は……。


「……返事は一日考えさせて。また明日同じ質問をして」

「……はい」


 結局、俺は嫌いだと言えなかった。
 山本が帰った後、俺はトイレに入った。説明通り、俺の体は先輩の体から抜け出された。
 先輩はトイレで気絶している。
 先輩から抜け出た俺は裸だったので、先輩の服を借りる事にした。先輩は背が高いしパンツも多いので、家に帰る間位ならば、
なんとかなりそうだ。
 俺は先輩の家を去った。




 *




 プール開きの日が来た。体育の授業は水泳だった。


「泳ぎがうまい人って素敵よねぇ」


 山本は俺の泳ぎを見て言った。山本の笑顔がまぶしい。
 だがその笑顔も、先輩を思い出しているからだろう。
 俺は泳ぎがうまくなりたかったんじゃない、山本と親しくなりたかったんだ。
 なぜ先輩の姿で山本に別れ話を言わなかったんだろう? そうすれば、この笑顔は俺の物になっていたかもしれないのに。
 
 諦めきれない。
 
 あのゼリー・ジュースがあれば先輩に憑依できる。今度は戸惑わない。先輩になって二人を別れさせるんだ。
 放課後になるのを待って、俺はあの喫茶店を探した。
 場所ははっきり憶えていないが、ここら辺で間違いないはずだ。
 だが、喫茶店は見つからなかった。
 どの位捜したのだろう。この近所はほとんど捜した。
 あと捜していないのはあの通りだけだ。
 あそこに喫茶店はある。間違いない。
 歩き出そうとした時、先輩と絵里子が一緒にいる所を目撃した。
 部活の帰りらしい。
 俺は物影に隠れて、二人を見た。
 山本は先輩に向かって何かを話していた。山本の事だから、またつまらない世間話だろう。
 先輩と山本が一緒に歩いている。
 あの時、俺が先輩になって山本の隣を歩いていたんだ。
 先輩の体を使って、山本と体を重ねた時を思い出した。
 
 あの時、山本から先輩への思いを感じた。頼れる、心から安心して自分を任せられる人への思い。
 山本は、先輩のそういう所を好きになったのだろう。
 いや、山本には先輩みたいな安心して心をあずけられる人が必要なんだ。
 山本は先輩が相手だから、自分をさらけ出して甘えられるんだ。
 山本に必要なのは俺じゃない。先輩なんだ。
 肌を通して伝わって来た山本の思いの記憶が、俺にそう語っていた。
 俺は喫茶店を捜すのをやめて、先輩達に背を向けて歩き出した。自分の家に帰る為に。
 振り向くと、夕日を浴びた二人は手をつなぎながら、先輩の家がある住宅街に向かって歩いていた。



水泳部の先輩/おわり




 *




(あとがき)

 こんにちは、JuJuです。(^^)

 それにしても、女性に憑依してレズ行為をすると言うシチュエーションは、やっぱりいいですね〜!(゜∀゜*)<萌

 さて、「その4」を読み終わったところで、これは工藤先輩の体を使って、
山本に水泳の指導のフリをしてエロエロしまくるって思われた方も多いと思いますが、それはやめちゃいました。
 だって、それだとTiraさんの名作「女子高に行こう!」とカブってしまいますから……。(汗)

 お読み頂いて、本当にありがとうございました。
 それでは、またお会いしましょう!

 JuJu拝

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