田中さん総合

 他者変身特捜
 作:田中


 先日行われた大規模な乱交に関して、変身薬が使用された件に関して報告させていただきます。今回の事件は単なるわいせつ罪に留まらず、青少年の未来を破壊してしまうような恐るべき犯罪であったので、今後このような事件が同じように行われないよう、警察の総力を挙げねばなりません。
 事件は先月の十九日に行われました。会場はS県の別荘地にある施設で、収容人数は百五十人。そこに、百名あまりの人間が集まりました。
 この事件の特筆すべき点は、当事者全員がこの変身薬を使用し、姿を変えていたことです。
 首謀者はどこからか手に入れた、子役の小山優君(十二歳)とたちばな藍ちゃん(十二歳)のDNAデータを基に、二人に変身できる薬を開発。それぞれ五十人の小山優とたちばな藍が出来上がったわけです。
 主催者側が撮影していた実際の映像がありますので、参考にご覧ください。これが、確たる証拠となって、彼らを一網打尽にできたわけであります。


 ビデオは唐突に、女の尻を映していたが、女というには、明らかに体が小さすぎるのは誰の目からも明らかだった。
 たちばな藍は子供らしからぬしっとりとした黒髪をおかっぱにして、アンバランスな妖美さを一面に押し出した子役で、彼女の保護者は、藍が通う学校のPTAから不健全だと吊し上げられたという噂があった。子供らしからぬ巨乳を惜しげもなく晒している画面上の少女は、同じく子役の小山優の小さなペニスを咥えこんでいた。陰毛も生えていない幼い身体ではあったが、AV男優顔負けの嫌らしい顔で、たちばな藍に奉仕を強要していた。藍の頭を掴み、腰を叩きつけるようにして動かしていた。
 藍は苦しげに喘ぎ声を漏らしていた。カメラが二人を横から捉えようと立ち位置を変えた。しょんべん小僧よろしく腰を突き出した優が、カメラに向かって楽しげに手を振った。
 先日までテレビで、好きな食べ物はハンバーグだと、目をキラキラさせながら言っていた子供とは思えなかった。
 一方の藍も、自分の屈辱的な状態が撮られているとわかっているにもかかわらず、目尻を下げて、より一層卑猥な音を立てるように最善の努力を尽くした。
 実際のところ、たちばな藍と小山優の共演は今までで一度だけ、ドラマ『少年先生』ただ一回だった。プライベートでやり取りがあるのは報じられたことがあったが、少なくとも、このような関係は、どんな芸能記者でも思いつかなかったであろう。
 カメラが二人のアップから、徐々に背景を映していく。フェードインしていた背景の、何十にも重なる藍の嬌声が徐々に大きくなった。
 市民体育館のような建物の床一面に毛布が敷かれ、最低限の二人のスペースを確保していた。そしてそこには、五十組のまったく同じ顔の人気子役が、何十通りもの狂態を晒しているのだった。
 隣の藍は、胡坐をかいた優の上に腰を下ろし、足でしっかり互いの身体を絡めていた。優が小慣れた様子で、首筋に何度もキスの嵐を降らせる度、藍の身体はピクリピクリと跳ねた。
 その上の一組は、この狂騒の中でもお互いのペースを乱すことなく、長々と口づけを続けていた。藍が優の上に横たわり、互いの吐息を交換していた。そんな二人にちょっかいを出そうと、もう一人、優がやってきて、悪戯を思いついた子供のように、自分のペニスを握ると、後ろから藍の上にのしかかった。一番下になっている優が二人分の体重に呻いたが、一番上の優は気にせず、二人のサンドイッチになっている藍を後ろから犯しにかかった。挿入の激しさに、とうとう藍が口を離して、小さな悲鳴を上げた。
 次にカメラが映し出したのは、事後を迎えたカップルだった。精液、愛液が滴る生気をそのままに、ぎゅっと互いの手を握って横になっている藍と優の横には、快感で表情がとろけている、股を開いた藍の姿があった。股間に顔を埋めているのは優で、彼が舌を動かすたびに、藍の身体は震えた。
 それぞれ一人ずつがカップルになって、セックスをしなければいけないという決まりはなかった。部屋の隅にはちょっとした休憩スペースがあり、飽きた者がスポーツドリンクを飲めるようになっていた。先ほどまで肌を重ねていた優と藍はそこで別れ、また新たな一組を作って、セックスに励むことも可能だった。
 中には、複数プレイを好むものもいた。
 三人がかりで一人の優のペニスにご奉仕をする藍の姿があった。たちばな藍の、歳不相応に発達した胸を、他の藍に吸わせるものも現れていた。部屋の中央で円を作っている五人の優は、一人のたちばな藍を四人で攻めている藍を見ながらマスターベーションに励んでいた。股に、左右の胸に、そして唇に。四人がかりで、自分と同じ顔の少女をイかせようと、彼女たちは舌を動かしていた。
 お互いの胸をぶつけあい、ねっとりと互いに愛撫を繰り返す藍もいた。シックスナインに励む二人の藍は、ちゅうちゅうとよく響く音を立てていた。その二人のそれぞれの女性器に、優が二人がかりでペニスを押し込んだ。双子の二組が、乱交をしているようにも見えた。
 正常位で攻められている藍の上に腰を下ろすのもたちばな藍だった。自分と同じ女性器を舐めていた。奥では二人のたちばな藍が絡み合い、互いの女性器を重ねた姿を、他の優たちに見せつけ、早く犯しに来いと誘っていた。
 主催者側は、優と藍のセックスよりも、むしろ、藍同士のセックスをビデオに残したいようだった。女性同士で楽しむための道具が、大量に用意されていた。
 藍が藍の体にのしかかり、後ろから犯している絵。二つの穴を同時に攻められ、唾液をこぼしている藍。ローションにまみれ、互いの性器を擦りつけ合う藍。テレビでは見ることができないたちばな藍がたくさんいた。膝立ちになった二人の藍は、互いたがいに股間に手を伸ばし、手でお互いを慰めていた。
 そして、映像は唐突に途切れた。
「警察だ!」
 そんな叫びと共に、警察官たちが会場に突入した。凍りついたように動けなくなるたちばな藍と小山優。中には、ショックでちょうど射精したカップルもいた。
「いつまでやってるんだ、早く服を着ろ!」
 淫行にふける子供を引きはがすと、女性器から精液が滴った。


 以上が、今回の事件の決め手となり、全員を逮捕することができました。さすがの彼らも、服を着ずに逃亡するわけにはいきませんからね。
 マスコミにはこの情報は伏せてあります。何故なら、今回被害者となったたちばな藍と小山優に、この残酷なる真実を伝えるわけにはいきませんから。
 しかし、他者変身による集団乱交というものは、今まで盲点でした。これがもし、流出したらと思うと、我々は背筋が凍るような思いになります。
 考えてもみてください。
 中学校で生徒に人気の女性教師が、空き教室にこもってセックスをしている。しかしながらそれは、本人ではないのです。女性教師を性のはけ口として見ている男子生徒が、一時の快楽のために姿を偽っていたとしたら。
 まるで、仮面舞踏会です。しかしながらその仮面は、すべて実在する人物なのです。
 どんな理由があろうとも、変身薬は、使われてはならないのです。
 変身するモデルがいる限りは。





inserted by FC2 system