三人寄ればランチタイム
作:夏目彩香


残暑がまだ残る夏が終わりそうなある日。ランチタイムが始まるやいなや、とある喫茶店に三人の働く女性たちが集まって来た。一人が席を確保し、残りの二人は注文している。好みのドリンクが完成してテーブルの上に3つ並べると、互いにお辞儀をして挨拶が始まった。

「初めまして」

どうやら三人は初対面らしく、自己紹介を始めたのだ。まずは席を確保した女性から自己紹介を始めた。黒いワンピースに身を包み、ローヒールの黒いミュールを身につけている。

「大路久美子(おおじくみこ)です。会社では事務職をしています。よろしく」

こう切り出しながらも隣に座っている女性はサーモンピンクのカバーに包まれたスマートフォンで動画を撮影していた。初対面なのにも関わらず慣れた様子だった。久美子はレンズを意識しながら話を続けた。

「キレイに撮れているといいんだけど、私のチャームポイントはこのつぶらな瞳です!好きなタイプの男性は強くて逞しい感じの人、筋肉ムキムキが大好きです。以上」

続いて右隣に座っている女性へと自己紹介のバトンが渡された。クリーム色のブラウスにサーモンピンクのふんわりスカートという出で立ち、すらりとした脚線がピンクのパンプスに入り込んでいた。

「月島優香(つきしまゆうか)です。私はデザインの仕事をしています。デザイナーという仕事柄、新しいものが好きで、休みの日には美術館巡りをしたり、雑貨屋さんを漁ってます。唇の上にできるエクボがチャームポイントで、私の場合は真面目な人が好きです。そんなところでいいよね」

さらに残る一人が続ける。ふくよかな胸が目立つようにラインをはっきりと見せるブラウスに表地がシースルーで裏地の花柄がさりげなく見えるシフォンスカート、社内用のサンダルから足を浮かせて椅子に座っている。

「佐原晴香(さはらはるか)です。経理の仕事をしています。韓流スターが大好きで、最近はハングルの勉強を始めました。ハングルはゆっくりなら読めるようになりました。好きな韓流スターはリュ・シウォンさんで、いつか直接会話がしたいですね。チャームポイントは唇です」

自己紹介が終わると久美子がスマートフォンを店員さんに手渡し一緒に写真を撮影しすぐにどこかに送ったようだ。そして、どこかのSNSサイトに接続したかと思うと大路久美子の顔をタッチして中沢恵介(なかざわけいすけ)のタグを付け、月島優香の顔をタッチして佐伯博康(さいきひろやす)のタグをつけ、佐原晴香の顔をタッチして池田豪太(いけだごうた)のタグを付けたのだ。

その後、三人は初対面とは思えないほどに、自然に会話を楽しんでいた。周りから見れば女性三人の集まりだったが、自分たちの持ち物やカードを見せ合っての会話が中心だったのだ。

「ということで、今日はこの三人に集まってもらいました。素敵なランチタイムをありがとうね。フフフ」

三人は喫茶店を後にしそれぞれの会社へと向かっていった。



時計の針は3時を回った。とある会社のリフレッシュルームには三人の男が集まり、何やらスマートフォンを一緒に眺めていた。サーモンピンクのカバーに包まれているところからしてさっきの女性たちが使っていた物と同じように見える。

「よっしゃー!やっぱりな、こいつらにとっては晴香が一番の好みなんだよな」

池田豪太の声が部屋の中で鳴り響いた。

「今月も池田に持ってかれたのかよー。俺たちも最高の女を見つけて乗り移ったてのによぉ。連チャンで持ってかれたのには参ったな」

実はランチタイムに三人はそれぞれの女性に乗り移り、乗り移った様子をメンバー限定で公開し、人気投票を行っていたのだ。その結果、佐原晴香に人気が集中したのだ。今月もまた池田に軍配が上がったのだ。

「俺が勝ったからわかってるよな。今日はノー残業デーにして仕事を早く切り上げるように、いつもの場所に集合だからな」



その日の夜。中沢と佐伯は仕事をきっちりと終わらせて、とあるバーへとやって来ていた。二人でやけ酒するためではなく池田が来るのを待つためらしいがここに来てすでに30以上が経過している。それでも二人は冷静に待っているようだ。そして、バーの入口の扉が開いたかと思うや人影が二人の元に近づいて来た。

「お待たせ♪」

池田が現れるかと思ったが実際には佐原晴香がやって来たのだ。昼間見た時とは違って大人の色気を増していた。10センチ以上もあるヒールが晴香の魅力をさらに深めているようだ。すかさず、中沢はバーのマスターに一言声をかける。マスターに連れられてVIPルームへ向かった。VIPルームの鍵を受け取り、マスターが出て行くと鍵を閉めてしまった。

「私ってキレイよね♪ランチタイムとは雰囲気の違う化粧をしてみたので遅くなっちゃったわ。今日はワタシのお祝いなんだから、ちょっと奮発したのよ」

そう言って晴香は手に持っていた紙袋から何かを引っ張り出した。出て来たのは黒のワンピースと透明がかった白いブラウスだった。さらにピンクの下着も一緒に出て来た。

「どう?」

晴香にそう言われた二人は、テーブルの上に置かれた衣装を見ただけで興奮していた。

「お前ったらなかなかいいセンスしてるよな」

佐伯がそう言うと晴香は、ワンピースを胸に当てて見せた。

「だって、ワタシは晴香だもの、当然じゃん」

晴香がそういうと周りの雰囲気が一気に和み、三人の笑い声に包まれた。

「ということで、今日は晴香ちゃんのためにプレゼントを持って来ました!」

すかさず中沢が小さな箱を取り出した。晴香が小箱を手に取りパカッと開けてみると、中には小さな指輪が入っていた。

「わぁ、ステキなデザイン!」
「似合うかな?」

中沢が晴香の右手薬指に指輪を入れようとしたが、指輪が大きくて入らなかった。中指ならぴったりだったのだ。

「じゃあ、佐伯、さんもプレゼント持って来てるわよね。見せてくれる?」

すると佐伯も縦長の箱を取り出した。同じように晴香がその箱を開けて見ると、その中にはネックレスが入っていたのだ。先端には晴香の文字が英文字の筆記体で書かれているブローチがついていたのだ。

「あっ、これカワイイ!」

晴香が首からかけると胸元にさりげなく自分の名前が書かれたブローチが着飾ってくれた。筆記体なので、よく見ないと読めないのも気に入ったようだ。晴香は佐伯の右頬に軽く口づけをして喜びを表現していた。

「ということで、今日の恋人役は佐伯さんに決まりね。中沢さんは記録係に徹底してもらいます♪」
「よし!」

佐伯はここでガッツポーズを決めていた。晴香の正体がどうあれ晴香の恋人役となるのは自分の願ったり叶ったりだったからだ。恋人役が決まったので、晴香は佐伯の横に座り、中沢とは向かい合うように座った。晴香は自分の腕を佐伯の腕の中に絡ませ、仲のいい恋人同士に見えるようになったのだ。

中沢は二人のツーショットをスマートフォンで撮影する。二人は本当に仲のいい恋人として写っていた。

「なんだか悔しいけど、本日のメインイベント始めないか?」

そう言って中沢はスマートフォンのアプリをビデオに切り替えて撮影が始まった。

「わかりました〜」

妙にテンションが高くなった晴香は、ヒールを脱いでテーブルの上に立ち上がった。

「それではこれから晴香の着替えをじっくりと拝見してもらいます。今日は佐伯さん、じゃなくって、博康に脱ぐのを手伝ってもらいます」

晴香がそう言うと佐伯もテーブルの上に立ち上がり、晴香の背後へと回った。

「まずは、スカートのホックを開けてもらえるかな?」

晴香の指示に従って佐伯は晴香の腰を手で探り出した。

「どうして腰を触ってるの?お尻触りたかったら触っちゃっていいのに、マイダーリン!」

その言葉に反応した佐伯はお尻を揉んでから腰元にあるスカートのホックを外した。ふわふわとしたスカートがバサリとテーブルの上に落ちた。

「次は、ブラウスを脱がせて」

晴香の声がより一層色っぽく聞こえた。指示通り、背後から手を伸ばし佐伯はボタンを一つ一つ外していった。胸のボタンを外す時には胸の下から晴香のふくよかなバストを揉み上げていた。

「晴香って結構デカイよな」

そう言った瞬間、晴香が佐伯の方に倒れ掛かりながら薄ら笑いを浮かべていた。

「結構って、ワタシの胸って誰が見ても大きいわよ」

ブラウスもテーブルの上に落ちると、肩にかかっているキャミソールの紐を丁寧に外していく、ブラとショーツ、ストッキングだけになったところで、晴香は自分の右手で自分の右手で佐伯の右手を掴み、股下を触り出した。

「どうかしら?博康もさっきまで月島さんになっていたからわかると思うけど、ここには裂け目しか無いのよ」

そう言いながら佐伯のモノを後ろから付き当てる晴香、この様子を撮影している中沢と言えば、すっかり股間が大きくなってしまった。

「さすがに健全な男子たちね。これだけで欲情しちゃったのかしら、下着も脱がせて。なんなら脱がせた後で入れちゃってもいいわよ。昼みんなで乗り移ったのとは違って今は体を変化させただけだからね」

そう言うと佐伯は晴香のショーツとストッキングを一緒にゆっくりと足元まで引っ張って行く、晴香の処理された陰毛が現れると、更に興奮状態が高まっていた。ブラのホックも外すと、晴香を包み込むものは無くなっていた。

「晴香の裸はあとでモザイク処理してちょうだいね!」

全裸姿となった晴香は中沢に向かって注文していた。テーブルの上から佐伯が降りると、晴香は一人で持って来た服へと着替えを始めた。着用する時は佐伯の手を借りなかったので、すぐに新しい服に身をまとった晴香となった。テーブルの上から降りて、ピンヒールに脚を戻すと、着替える前と同じように三人が座り直した。

「最後に、博康の買ってくれたネックレスブローチを首に飾ってもらいま〜す」

佐伯が晴香にネックレスをかけると、胸元のぽっかりと空いたところに、ブローチがしっかりと収まった。中沢はここでもじっと撮影を続けていた。

「ということで、これで晴香の着替え完了で〜す!今月も御視聴ありがとうございました!次回もいい女性を見つけては乗り移りたいと思います。優勝者は変身することができますので、応援ヨロシクね!ちなみに、今回は持ち物を全て借りて来たのでランチタイムと同じ服装でここまで来ることができました。本物の晴香さん、サンキューで〜す!」

中沢が撮影をし終えても、三人は来月の企画について話し始めているのだった。



その後、三人が立ち上げたサイトを確認してみたところ、会員制のサイトとなっており、どうやら普通に入ることはできないことがわかった。ログインするためには審査が必要で、必ず口外しない誓約を交わさなくてはならないため、このサイトにログインできるのは本当に限られた人数(現時点で15人ほどしかいない)なのだ。審査に通ったので中を見ることができたが、このサイトのシステムはざっと次のようになる。

一ヶ月に一日だけが該当日で、三人がその時のテーマに沿った女性に乗り移ってランチタイムに集まる。その時に自己紹介の動画を撮影、撮影したデータをすぐに秘密サイトにアップして、15時までにそれを見た会員による集計でもって優勝者を決めるのだ。ランチタイムに乗り移るためには薬を使うが、乗り移れるのはランチタイムの1時間だけに限られている。

実際には1時間よりも短い時間しか乗り移ることができないのだが、優勝すると薬の二次作用が働くようになって、その時に乗り移った人物にいつでも好きなだけ変身できるようになるのだ。変身するのは体だけであり、別途服を用意しなければならないので注意する必要がある。さらに優勝者の希望によってお祝いをやったりするが、その内容もサイトで随時アップされることになっている。

さらにこれだけではなく、会員になるとこれらの動画が見られて投票に参加できるだけでなく、優勝者に投票した中から毎回1名はその優勝した姿でデートする権利を得るのだ。デートする際は、できるだけ色々な希望を聞いてもらえるということと、会員規模が少ないから当選する確率が高いことからも人気なのだ。

もし、このサイトを見つけた時は是非とも会員登録に挑戦して欲しい。憧れのあの子とデートできるかも知れないから、次回の予告動画が登場するのを心待ちにしよう。

(おしまい)











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