mask!(後編)

 作:Howling




「ねえ、もっと『私』になってみない?」

「え?」

「今、隆弥君の躰は確かに私そのものだわ。

 でもね、今貴女のつけてる顔マスクにはもうひとつとっておきがあるのぉ。」

「も、もうひとつ?」

「そお。身も心も私に変わる方法よ。」

美香は指を鳴らす。

「あがっ!?」

突然美香になった隆弥の体が直立不動状態になった。

一種の放心状態だ。

「どうかしら?貴方の人格を強制的に私のものに上書きしているの。

 身も心も私に変わることが出来るわ。

 淫乱な私にね。大丈夫よ、ちゃあんと元に戻してあげるから。

 もっとも、その気がまだあればの話だけどね。」

隆弥の脳内で光が明滅する。自分の男としての記憶、習性までもが

じわじわと塗り替えられていく感覚。

躰だけでなく、精神、魂まで塗り替えられていく感覚。

それは何とも言えない快感を生み出していた。

脳内に、美香のいやらしい声が響く。





『私になりたいんでしょう。ならその体と心、ちょうだい。
私と一つになるのよ。』





好きな女性と一体化する。隆弥にその甘美な誘いにあらがう術はなかった。



気持ちいい、気持ちイイ、キモチイイ、キモチイイ・・・・・・・



その5文字が、今の隆弥を支配していた。

そして・・・・・・!!!

隆弥に貼り付いていた美香の顔マスクが隆弥の意思に関係なく言葉を発する!







「いいわよ。じゃあ、いただきまぁ〜す!!」








その言葉と共に、隆弥の躰は激しく痙攣する。

しかし、顔の部分だけ、嬉しそうに嗤い、言葉を続けた。






「うふふ、今貴方の精神に浸食してるの。
一度君の全部を空っぽにして私の人格に書き換えてるのよ。
 そうしてこの躰の中で私に吸収されて一つになるのよ。
 どお?キモチイイでしょう?ああ、隆弥君が私の中に溶けていくのを感じるわぁ。
 そうよ、そのまま明け渡してぇ。あ、そろそろね、あ、ああああ・・・・」









その痙攣はクライマックスを迎えた。










「んああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

壊れるかと言うほどの絶叫を挙げて、美香となった隆弥はその場に座り込んだ。

よっほど躰に響いたのか、よだれが絶え間なく流れる。

「改めてどうかしら今の気分は?」

美香は自分の姿をした隆弥に近寄り、尋ねる。

「はぁ・・・・はぁ・・・・・そんなの・・・・・」

隆弥だった美香はニタリと微笑み



「最ッ高 に決まっているじゃないですか。お・ね・え・さ・ま」



そのまますくっと立ちあがった。そして胸と股間をまさぐる。

それが当たり前のように。あまりにも自然で、美香が自然にしている動作そのものだった。

すぐに発情してはぁはぁと荒い息をしている。

「この体いいですぅ。元々お姉さまのこと好きだったみたいだからすぐ同化できましたぁ。」

「いいようねぇ。じゃあ今日から貴女はもう一人の私。

 そうね、『美弥』と名乗りなさい。いいこと、『美弥』」

「はいお姉さまん♪」

「いいわ、それじゃあいらっしゃいぃ」

「はぁ〜い♪んむう・・・」

美香は身も心も『美弥』に書き換えられた隆弥と濃厚なキスを交わす。

互いの舌に吸い付き、貪り合う。

「ぷはあっ。」

一度離した舌先の間にぬめぬめした唾液が橋を造る。

「どうかしらぁ美弥。私とのキス。病みつきでしょお?」

「はいいお姉さまん♪美弥、嬉しいですぅ」

「うふふ・・・・」

美香と美弥は互いの舌を擦り合わせたり吸い付いたり濃厚なディープキスを続ける。

キスだけでも、二人を絶頂させるのに十分だった。

美弥は、突如自分の内側から何かが出てくるのを感じていた。

(い、いくっ!)

何かが美弥の内側から飛び出す。

しかしそれは愛液ではなかった。



「うふふ、出てきたわね。」

「あ〜んおねえさまぁ〜。私のあそこからおち○ぽ生えてますぅ〜」

それは、男の肉棒であった。興奮しているせいか、どくどくと脈打っている。

「ふふ、中身が隆弥君だからできることよ。隆弥君と一体化した美弥だから、

 こうしておち○ぽも自在に出せるのね。

 それにしてもすっごいわぁ。隆弥君のおち○ぽ、いやもうこれは私のねぇ。」

美香は美弥に生えた肉棒に頬ずりする。

その先、亀頭からはカウパー粘液があふれつつあった。

「ええ、私の中の隆弥君も喜んでるわぁ。だからこうして乗っ取れたもの。

 いいこと隆弥君、私の躰の中で、たっぷり教えてあげるわ。ふたなりセックスの

 か・い・か・ん♪」

美弥は、自分の中にいる隆弥に告げるように独り言をつぶやく。

「うふふ・・・・じゃあ、いただきま〜す!あむぅ・・・・・」

美香は我慢できず、美弥に生えた肉棒をほおばる。

舌を絡ませ、肉棒の感触を口全体で味わう。

息が敏感な亀頭部分にかかる。

「ああん、いい。いいわぁ、おち○ぽいい〜。」

美弥は歓喜のあえぎ声を上げる。

美香は、唇、舌、喉。使えるものすべてを使って濃厚な愛撫を続ける。

「ああん!お姉さまはげしっ!ひやぁああああん!」

美弥は美香の頭を押さえ込み、叫ぶ。

もはやフェラではなくイマラチオだ。

「んくっ、むふっ、ほふっ・・・・・・・」

美香は容赦なく口でしごく。

「ああん!自分にこんなことされてると思うと、興奮しちゃううん!」

美弥が喘ぐのにもかまわずしゃぶり続ける美香。

「あはんっ!も、もうだめ、い、イク!!イクわ!」

「いいのよ美弥。私に、私に出しなさい!!!」

「あああああんん!!!!い、イク、イク、イクイクいっくううううん!!!!」



びくっ、びくっ、びくっ



口の中に入れた美弥の肉棒が膨らみだし、美弥の体が数回に渡って震えた。

美弥はだらしなくよだれをたらす。そこで、美香は口を離した。

美香は両手を前に出し、そこに向かって口の中にあるものをはき出す。

「はぁあああ〜〜〜〜。見てぇ美弥、あなたのザーメン、こおんなにでちゃったわぁ」

美香は、嬉しそうに言いながら、美弥が自分の口の中で射精したザーメンを見せつけた。
美香は、何のためらいもなしにそれらを飲み干す。

「あ〜んすごい。自分の体に、お姉さまに興奮してこんなに出しちゃうなんてぇ」

うっとりした様子で話す美弥を愉しませようと、美香は、わざと上を向いて、飲み込む喉の動きを見せつけた。

「ああ・・・・・・美弥の、私のザーメン飲んじゃった〜ん。

 頭がぼ〜っとするのぉ。ますまふ美弥にぃ、ひふんひひんに脳天まで犯されへる気分になるわぁ〜。

 わらしこのままおばかになるぅ〜・・・・」

快感の余り、美香は呂律が一瞬回らなくなっていた。

美香のそうした動きに、美弥自身も抑えが効かなくなっていた。

「お、お姉、さまああん・・・!もう私、我慢できない・・・・・」

美香が美弥を見たそのとき、美香はすぐに元に戻る。

「・・・・あら美弥ったら、あんなに出したのにもうこんなに堅いの?」

「そうなんですう。ふたなりになって、胸をいじってたらすぐにこんなに・・・・」

「それじゃいよいよ本番ねぇ。自分自身にファックされるなんて、興奮するわぁ。

 美弥、たっぷり私を犯してねぇ」

そう言って美香は美弥に背を向けて四つん這いになり、股間を両手で広げ美弥を誘った。

「さあ、ここに入れてぇ!もう我慢できないのは私も同じなのぉん!

 はやくズボズボしてえ!!!」

美弥は同化した隆弥の、いや男の本能が赴くままに美香の腰をわしづかみにし、その肉棒をねじり込んだ。

今までの行為で、その膣内は濡れそぼり、難なくそれを受け入れた。

「あっ!!そ、そうよぉ!!!もっと、もっと突いてぇ〜!!!!」

「ああんお姉さまぁ!お姉さまの膣いい味ですぅ!!!腰が止まらないのぉ!!!」

「いいのよ美弥ぁ!!!そのままぁ〜、そのままガンガン突きなさいっ!!!

・・・・んおおお〜奥まで刺さるぅ〜!!!!」

美弥は後ろから美香のあそこに己の肉棒を打ち付けながら美香の胸をもみしだく。それに応えるように美香は振り向き、美弥と濃厚なキスを交わす。

同じ姿をした二人のファック。それはまさに融合と呼べるものだった。

セックスを通じて身も心も一体になる。

二人はそれを実感していた。

「んんっ、あーん、あーん、あん、あん・・すっ、凄っ、いっ、狂っちゃううん!女のカラダで、お姉さまを犯してるなんてぇえ!!」

「私もぉ!!美弥ぁ!!出していいのよぉ!私の中にザーメン出してぇ!私の内側も染め上げてぇ!!!」

「ああん!お姉さまぁ!!出ちゃう!!そんなこと言われたら気持ち良くなってザーメン出ちゃう!私がワタシに射精しちゃうう〜ん!!!!!」

最後のスパートとばかりに美弥はいっそう激しく腰を密着させた。そして、いよいよ射精の瞬間が近づく。



「あーーーーんイッくううううううううううううううううううううううううううんん!!!!
出ちゃう、出ちゃう、ピュルピュル出ちゃう!!!!イッちゃうーーん。イク、
イク、イクーーっ、んっ!あんんっ!・・う、うあああああああああああああああんんっ!」

「キタァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!」

二人同時に叫んでいた。

その瞬間、美弥は全身をガクガクふるわせ、挿入した肉棒から熱い白濁液を流し込んだ。

美香の膣内に入らない精液があふれ出す。

「はあ・・・・・・は・・・・・はあ・・・・・・・・・」

美弥はそのまま美香に覆い被さるように倒れ込む。

そしてもうろうとしながらも、美香についた汗を舐めとろうとする。

「はぁ・・・・・はあぁ・・・・・・」

「そんなにワタシの汗が好きなの?もう変態ね。美弥は」

「だってぇ〜、お姉さまの汗、おいしいんですぅ〜。お姉さまだってさっきから私の舐めてるじゃないですかぁ。」

「いいじゃなぁい。それで隆弥君、染まったかしら?」

「ええ?もうお姉さまにメロメロよぉ。もう完全にお姉さまのものだわ。それに・・・?」

「?」

「隆弥君、こういうの内心好きみたいよぉ。人格いじられて身も心も別人に変わるの。」

「そうなんだぁ・・・・うふふ・・・これからもっと楽しみが増えるわね。」

「ええ、お姉さまぁ・・・・」

二人は再度キスを交わした。







「うっふ〜ん!やっぱりこの格好似合うわぁ〜。」

あれから1週間が経った。

隆弥を乗っ取り、心の内を知っていた美弥の言うことは正しかった。

晴れて美香との交際をスタートさせた隆弥。

あの夜、美香から解放された隆弥だったが、女性に、しかも自分が好きだった美香と同じ姿になれることの快感を忘れられなくなっていた。

隆弥が自らの内側の欲望に正直になっていくのは時間の問題だった。

その後、暇を見ては顔マスクを被って「美弥」に変身して、人格を「美弥」に変えて、美香との女同士のセックスに興じたり、

双子の姉妹として外に出てみたり、ときには自分の意識のまま体を自由に動かし、

女湯や女子トイレ、女子更衣室、エステに出入りして"女性"を満喫するようになった。

そして今、ネットで購入したコスチュームを着て撮影をしている。もちろん美弥の姿でだ。



「いいわぁ。もっと貴女の、いやワタシのいやらしい恰好をみせてぇ。」

美香がノリノリでカメラに写す。

ちなみに今着ているのはボディラインがくっきり出る黒色全身タイツにヒョウ柄のハイレグレオタード、そしてタイツと同じ色の全頭マスクだ。

昔見た特撮番組の女戦闘員という感じの出で立ちだ。

マスクで唯一覆われていない口部分に塗られた真紅のリップが妖しさを印象づける。

「うふふ・・・・私は女戦闘員・・・・イーッ!なんてね。」

腰に手をやり、ポーズを取ってみる。

「決まってるわよ美弥ぁ。さすが貴女、ううん隆弥君いい趣味してるわぁ。」

「あ〜んそんなお姉さまもゼンタイ姿似合ってますわぁ」

美香自身もまた同じような恰好をしていた。

美弥とおそろいの全身タイツ。

「じゃあ隆弥君のリクエスト、女戦闘員レズプレイするわよ。」

「はぁ〜いお姉さま♪」

隆弥は「美弥」として、美香は己自身としてそれぞれ欲望をさらけ出し、

自分と同じ姿の女性と時を忘れて快感にふけるのだった。







人はだれしも"仮面"をつけて生活している。

もしかしたら、あなたの周りにも、仮面で本性を隠している人間がいるかもしれない。





「お疲れ様でした〜。」

隆弥と美香の会社の受付嬢。

一見地味な印象だ。 勤務を終えて、一人更衣室へ。

「ふぅ〜。やっと戻れる。」

そのまま彼女は自分の顔に手をやり、自分の顔を引きはがしていった。

「あ〜やっとこんなダッサイ恰好から解放されるわ〜。

 マジ気持ちいいんですけどぉ♪」

無表情な自分の顔マスクを手に持った彼女はそうごちた。








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