「証拠」
 作:T-MC


第2話 女社長編


「…はっ!?ま、まただわ!一体何なの!?」

これで今日いったい何度目だろう?
気がついたら見知らぬ場所に自分がいて、しかも、全く理解できない状況になっている。
まるで時間が飛んでしまったかのような錯覚。
しかし、その私の知らない時間、私は確かに何かを行動をしているのだ。

良く見ると周りの人たちが好奇の目で私を見、そして明らかに避けて歩いているのに気がついた。
でも、自分の今の姿を見ると、それも当然のことだと思う。
良い年の大人の女性が、あろうことかセーラー服姿で買い物をしているのだから。
それも、こんな人けの多いスーパーマーケットなんかで…。
私が…、この私が、わざわざ自ら好んでこんな所で買い物なんかするはずが無いのに…。


私は最近、大手といわれるまで急成長を遂げたジュエリーショップの社長だ。
若くして成功したのには、私の経営者としての才能以外にも理由があった。
父親のコネクション。
その強力な力のおかげで私は成功を手に入れる事が出来たのだ。
今では数百人の社員を抱える大手企業にまで一気に成長していた。
その会社の代表であるこの私が、社員の前でみすぼらしい格好なんて出来ない。
いつもはブランド物の服に身を包み、わが社の誇る最高級アクセサリーを自ら身につけていると言うのに…。
そんな私が、こんな、こんな恥ずかしい格好をして人前を歩いているだなんて…。


既に注目の的だったが、それでも人目を気にして急いで店内の隅の方へと移動した。
その時、ポケットに自分の携帯電話がある事に気がついた。
私は使い慣れた携帯を手に、とっさに秘書へと電話をかけた。

「もしもし?私よ。」
「あ、社長。どうされましたか?」
「どうされましたかじゃないわ!早く迎えをよこしなさい!」
「え?迎え、ですか?今一体どちらに?」
「わからないわ!どこかのスーパーみたいね。きっといつも通り専用車が近くにいるんでしょう?直ぐに運転手を呼びなさい。」
「あの、社長…?今日は用事があるから電話をしてくるなと言って、一人で出かけられたはずでは…?」
「…え?…」
「それにお付きも車もいらないからと言って、何やら急いで出て行かれましたよ。行き先も告げずに…」
「そ、そうだった…かしら?」
「ええ、今日の午後の商談も会議も全てキャンセルなされて…専務が今大変な思いをなさっていますよ。」
「そ、そう…なの。ああ…もう…いいわ…」

私は電話を切ると、頭を左右に振った。
これは一体何の冗談…?夢、かしら?そうね、きっと夢ね。
夢なら全て説明がつくわ。
私が無理やりそう納得しようとすると、電話の着信音が鳴り響いた。

PiPiPiPiPi……

「…はい、もしもし?」
「あ、社長さん?私です。」
「どなた、かしら?」
「いやだなぁ、忘れちゃったんですか?私、弁護士の…」
「弁護士…!?」
その言葉を聞いて、私は一瞬で思い出していた。
そうよ、あの女弁護士!
突然私に資金援助をしろと話を持ちかけてきたあの無礼な女弁護士!


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確かに私は以前、その弁護士に仕事を依頼した事があった。
その時の印象は、真面目で頼りがいのある素晴らしい女性で、大変好印象だったのを覚えている。
ただし、接点はその時のみ。
依頼した仕事を手際よく処理してもらってからというもの、一度も会った事は無かった。
私の記憶からも薄れかかっていたと言うのに、ある日突然、彼女の方から連絡を取って来たのだ。
どうしても私に相談したい事があると言うので、当時の印象も良かったことから、日取りを決めて会う事にした。

久しぶりに会った彼女は、以前の印象通り大人しく真面目な女性だった。
初めの内は当時の事をお互いに振り返りながら話していた。
どうしてそんな事まで覚えているのだろうと言う些細な事まで、
彼女はまるで今記憶の引き出しからでもとり出したかのように鮮明に記憶しているのだった。
私にとっては些細な依頼だったかもしれないけど、この女性はこんなにもしっかりと私の事を覚えていてくれた。
私は、改めてこの女性弁護士に信頼を寄せはじめていた。

「それで、折り入って相談と言うのは…?」
「あ、でも…個人的な事ですので…今さらなんですけど、やっぱり御相談するのは筋違いかと思いまして…」
「あら?何をおっしゃいますの?どんな事でもお話下さいな。この私に出来る事であれば、是非ご協力させて頂きますわ。」
この立派な女性が何をそんなに困っていると言うのだろう?
この時の私は本気で相談に乗ってあげようと思っていた。

「うふふ、心強いお言葉、嬉しいですわ。実は、私この度独立して個人事務所を構えようかと思うんです。」
「まあ、素晴らしい事ですわ!」
「そこで、申し上げにくいんですが…社長様に私の事務所設立の資金をご援助頂けないかと思いまして…」
「…え?…今何と…?」
「ええ、ですから、お金を出して欲しいんですよ、私の事務所設立の。」
「…お金を借りたい、とおっしゃっているんですの?」

明らかに怪訝な顔をしただろう私をよそに、その女性は表情一つ変えず言葉を続けていく。
「借りたいんじゃ無く、頂きたいと言ってるんです。もちろん全額です。」
「なぜ、そんな事を私に…?」
「いや〜何、私の記憶の中で誰か金持ちに知り合いがいないかを調べてみたんですよ。
 もちろん過去の私の依頼人も全て、ね。そうしたら貴方がヒットした。
 まだお若いのにあの大手企業の社長さんと来てる。
 これは俺のサブボディ…、いえ、私のスポンサーにはもってこいの身体だと思いましてね。」
「…何を言っているの?」
「ああ、そうそう、それに一番の理由は、とてもお綺麗でいらっしゃるという事ですわ。うふふっ」

私は冗談を言われているのだと思い、思わず笑ってしまった。
「おほほほほっ、面白い御冗談ですこと。」
「あっはっは、それが冗談ではないんですよ。あなたはこの私に選ばれたんです。」
「何をおっしゃっているのか、意味が理解できませんわ。」
「いいから金を出してくれって頼んでるんだよ!あんたにとっちゃ大したこと無え金だろ?」
突然、さっきまでの彼女とはずいぶんと態度が変わった気がした。

私は少し身を引いて、きつい口調でいい返す。
「…ふうっ。失礼なお話ね。…私とあなたには一体何の関係があると言うんですか?
 昔お仕事を依頼しただけの、それだけの関係であるあなたに、なぜ私がそこまでしてあげなければならないんです?」
その言葉を聞いて怯むどころか、その女弁護士はさっきまでとはうって変わった不敵な笑みを浮かべて笑った。
「ふふふっ、やはりそう来ますか。まあ、無理も無いか。こんな一介の女弁護士にそこまでする義理は無いってか。」
「当然のことです。話に真面目に付き合った私が馬鹿だったわ!もう、話は終わりですね。」
私はそう言って席を立つ。
「まあ、心配しなくとも直ぐに私たち深い関係になれますよ。きっとあなたの方から資金を援助させて欲しいとお願いする事になると思うわ。」
去り際に彼女がそう言っているのを私は気にも留めていなかった。


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「もしも〜し、もしも〜し。社長さん?私の声聞こえていますかぁ?」
「…はっ、あなた、今どこにいるの!?」
「私?あなたのすぐ後ろにいますよ。」
私が受話器を持って後ろを振り返ると、例の女性弁護士がこちらを見て手を振りながらニヤニヤと笑って立っているのが見えた。
そして、そのまま近づいてくると私の買い物かごから何かを取り出す。
「な、何を…?」
「いえ、これを回収しに来たんですよ。このビデオカメラ。」
「どうして、そんなものが…。いえ、それよりも何故あなたがここに?」
「いやだなぁ、さっき自分で電話して私をここに呼びつけたんですよ。このカメラを私に回収させるためにね。」
「どういう事…?」
「このカメラ、覚えていませんか?まあ、記憶は繋がってなくても断片的には思いだせるでしょう?」


私は断片的な記憶を思い出してみた。
いつも通り会社へと出社した私は、朝のコーヒーを飲みながら社長室で1人今日の予定を確認していた。
なんら変わらぬいつもの一日のスタート。
その時、私宛に電話が来ていると秘書から連絡があった。
こんな朝の内から誰からの要件だろうと電話に出ると、彼女だった…。
「もしもし?社長さん?あの時の件、ご検討頂けたかしら?」
「あなた、あの時の!失礼な人ね!もう電話は掛けて来ないで下さる?」
私はそう言って受話器を勢いよく置いた。
秘書へももう彼女からの電話は取り継がないように指示をした。

やがてしばらくすると秘書が私の部屋へノックも無く入ってきた。
手には何か小包を持っている。
「ちょっとあなた!今ノックした!?勝手に私の部屋に入ってくるなんて………」
私がそう秘書を叱りつけたかと思うと、急に記憶があやふやになる。
そして、気がついたら今入ってきたはずの秘書の姿も見えず、何故か床に寝そべって倒れていたのだ。
服装も不思議な事に乱れていて、ほとんど半裸の状態だった。
「え?何?何なの!?一体」
なぜ急に意識を失ったのかと思い、身なりを整えた後、先ほど入ってきた秘書を改めて呼んで話を聞いてみた。

「さっき、突然気を失ったみたいなの。その時の様子を詳しく聞かせてくれないかしら?」
「…いえ、別に何もありませんでしたよ。いつも通りの社長でした。」
「そんなはずは無いわ。私ここで気を失っていたのよ。」
「私は社長に荷物を届けに来ただけです。そうしたら突然社長が荷物を取り上げて…」
そうだわ、思い出した。さっき持ってきてくれたはずの小包はどこに行ったのか、私は秘書に尋ねた。
「ああ、中身はただのビデオカメラですわ。この私が会社の経費で購入しました。社長にとっては、きっと重要なモノになると思いましてねぇ。」
「あ、あなた、勝手に会社の経費を使ったというの!?」
「まあまあ、後でたっぷりと苛めてやって下さいよ。この私をね。はっはっは」
そう言って、秘書が笑いながら出て行ったのを覚えている。

そして、その後も不思議な現象は次々と続いたのだ。

廊下を歩いていたと思ったら、突然記憶が飛んでトイレの中にいたり、
私がいない間に勝手に私の部屋に入っていた秘書に厳重注意しようとした途端意識が飛んだり、
会議を始めたと思ったらいつの間にか会議は終わっていて、なぜか女性社員が私の前で裸で泣いていたり…。
また、気がつくと重要な書類が散らばっていて、その中からいくつかの非常に見られてはまずい書類が出しっぱなしになっていたり…。

考えて見ると今日は朝からそんな不思議な事ばかりが繰り返し続いているのだ。


「ふふふ、それにしても、社長さん?あなたのお父様のコネクションの件ですが…色々と黒い過去もあったみたいですねぇ。」
「な!?何を…!」
女弁護士は片手にビデオカメラを持ちながら、ニヤニヤと笑って話を続けた。
「あはは、実は今日一日あなたの事を調べさせて頂きましたの。社長のあなたしか知らない様な事まで、私全部知っているんですよ。」
「な、何の事!?何を言っているのか分からないわ!」
「まあまあ、一代でここまで築き上げるには色々と大変でしたものねぇ。まるでさっきまで私があなただったかの様に良く分かるわぁ。」
この弁護士、どこまで本当の事を知っていると言うの?

「わかったわ。話を聞くわ。でも、ここじゃ…、それにこんな恰好で人前にいつまでもいられないし。」
「あら?良くお似合いですけど、気に入らなかったかしら?」
「好きで着ている訳じゃないわ!とにかく、場所を変えて!」
「わかりました、それじゃ人目に付かずに二人きりで話が出来る場所に移動しましょうか?その前に、お買い物を済ませて来て下さいな。」
弁護士の女が不敵に笑い颯爽と歩きだした。
私は人目を気にしながらさっさと買い物を済ませ、後を追ったのだった。


部屋に入ると、女弁護士は電気を付けた。
「まあ、素敵な部屋ね。」
「ちょっと、本当にこんな所で…」
「あら?人目に付かないで二人きりになれる絶好の場所でしょ?こういったホテルは。」
「だからって、女二人でこんな場所…」
「うふふ、何を言ってるんです?あなたがその年まで結婚もせず独身なのには理由があるでしょう?」
彼女はいやらしい含み笑いでそう言った。
「え…?な、何を言っているのかしら?」
私は一瞬ドキリとした。

だが、まさか私の秘密をそこまで知っているはずがないとたかをくくった。
「たまたまそういう出会いがなかっただけよ。大きなお世話だわ。」
「うふふっ、何も隠す事はないわ。あなたがレズビアンである事は私は既に知っているのよ。あの秘書の子ともそういう仲じゃないの?」
「なっ!あの子があなたにそう言ったの!?」
「ええ、しっかりと記憶を読ませて貰ったわ。彼女、本当にあなたの事を愛しているのね。今日は色々とあの子にも協力してもらったし、
 御礼に”あなた”の身体で”あなた”としてたっぷりとご褒美をあげておいたわ。」
「??…何を…、言っているのか良くわからないわ…。」
「うふふ、まあ、気にしなくてもいいわ。でもそのおかげで、きっとあの娘、ますます貴方に心酔したはずよ。」

「ところで社長さん?今日は何も知らない新入社員の子まで毒牙にかけて激しく犯していたわよねぇ?」
「…!?ち、違うわ。それは、その、…違うの。私じゃない…、いえ、私が…気がついた時には既にその子は泣いていて…」
「まあまあ、間違いなくあなたが権力にモノを言わせて犯したんだから。いくら覚えていなくても、ちゃんとこのビデオにはその一部始終が収めてあるわ。」
「え?ビデオ?」
「そうよ、あなたの黒い過去も、レズビアンだという秘密も、そして今日の痴態も、全てこのビデオに収めてあるの。これがあれば、あなたは私に逆らえないのよ。」
「!!…返しなさい!」
私はそう言って彼女からビデオを取り上げた。

彼女はあっさりビデオを取られたにもかかわらず余裕の表情で笑っている。
そればかりか、突然服を脱ぎはじめた。
「何をしているの!?」
「いや何、今からあなたがこの私を襲う映像を撮ってくれるんだから、襲いやすいように準備してあげているのよ。」
「何を…言っているの…?」
「う〜ん、下着は取りあえず着たままでいいか。無理やり襲いかかって脱がすシーンがあった方がリアルだもんね。」
「あなた、さっきから何を言っているの!私がそんな事するはずが無いでしょう!」
「あははっ、心配しなくても大丈夫大丈夫。俺がしっかりと変態な感じで演出してやるから。
 タイトルは、セーラー服のコスプレをした変態美人女社長が嫌がる美人女弁護士を無理やりレイプ。
 って感じかな〜?」
「一体何を… …あ… ああ〜っ…  … 」
そして、私はそこで意識を失ってしまった。

そしてそこから、私の記憶がとぎれとぎれになる。
気が付くと私の口は何かで塞がれていた。
私の口の中で何かが激しくうごめいている。
「ぷちゅ…くちゅる…ん…はぁ…ん」
私はその弁護士とキスをしていた。
それも舌を絡めあう激しいディープキス。
激しく舌を絡めて来ているのは彼女の方だ。
「ぷはぁっ!止めてください!」
それなのに、そう言って口を離す彼女。私はされるがままだった。
「な、何よ!あなたが…うむっ…」
意識がまた途切れ、気がつけばまたキスの体勢に戻っている。
今度は私の方から口を離したものの、直ぐに元の状態に戻る。
私が抵抗したり、何か言おうとする度に直ぐに意識を失ってしまうのだ。

次に意識が戻った時、目の前にあるのは口では無く女性のアソコだった。
「ちょっと、どいて…うぷっ!」
私がそう言おうとすると、女性のアソコが私の口をふさいだ。
「ああっ、社長さん…もう、許して下さい。」
弁護士はあくまで私に襲われているフリを装いながら、積極的に私のアソコに舌を這わせている。
気がついてみれば、いつの間にかいわゆる69の体勢になっていたのだ。
口を塞がれている私は声を出す事が出来ず、ただ彼女の攻めを受け入れるしかなかった。

そして、また意識が飛んで次に戻った時、口の中に何かの味が広がっていた。
目の前には、アソコにキュウリを入れた女弁護士がいる。
私が口に含んでいるものはそのキュウリだった。
「!も…んむ…あが…」
声を出そうにも口いっぱいに頬張っているキュウリが邪魔をして声にならない。
「変態!もうやめて!」
女弁護士はわざとらしくそう言ったが、顔はどこかしらにやけていた。

次に意識が戻った時、私は突然襲ってきた快感に思わず声をあげてしまった。
「あああっ〜!!…何!?い、いくぅ〜!」
女性弁護士と私の股間にキュウリが刺さったまま、繋がっている。
記憶があやふやなまま、私はさっき買った野菜を使って、この女弁護士とレズプレイをしてしまい、そして一瞬でいかされてしまったのだ。
女弁護士が私の方に近づいてくると、そのまま倒れている私に抱きついてくる。
そして耳元で小さく囁いた。
「はあ〜、あんたの身体、かなり気持ち良かったぜ。この身体との相性もいいんじゃないか?」
「な、何を…」
「ふふふ、心配しなくても大丈夫。あとは任せておけって。」
そして、また意識が遠くなってしまった。

目が覚めると、私はベッドの上に裸で眠っていた。
(う…私、眠っていたの…?)
ガチャ
シャワー室のドアが開き、中から女弁護士が出てきた。
その姿に私は思わず声をあげてしまった。
彼女はさっきまで私が来ていたセーラー服を身につけていたのだ。
「おっ、もう気がついたのか?へへへ、どう?似合う?」
彼女は私の前でくるりと回って見せた。
私は立ち上がろうとしたが、身体に力が入らずに動けなかった。
「ああ、無理しない方がいいわ。あなたの身体で相当無茶したから、もう足腰ガクガクのはずよ。」
彼女はそう言いながら、荷物をまとめていた。
手にはしっかりとビデオカメラを持っている。
「私の服、さっきあなたに襲われた時に破けちゃったから、代わりにあなたの服、頂いていきますわ。」
「ま、待って…」
「心配しなくても、代わりの服を置いておいてあげたから、それを着て帰ってね。そんじゃ、あとで連絡します。」
「私一体、あなたに何をしたの…?」
「レイプよ。立派な犯罪ですね。嫌がる私を無理やり襲ったんだから。ついでにその後、私をレズ調教しておいたわ。今後も私たちが良い関係でいれる様に、ね。」
「私はそんな事、して無いわ」
「いいえ、あなたの記憶に無いだけで、しっかりと私の事を調教済みよ。また今度、楽しみましょう?まあ、その時もあんたの記憶には残らないかもね。あっはっはっは」

残された部屋で、ふらつく足取りで私は彼女が置いて行った服を拾った。
「な、何よ…コレ…!」

体操着にブルマの格好をして、私は人込みを避ける様に急いで路地を走り、近くでタクシーを拾って帰ったのだった。


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数日後、彼女から一通の封書が届いた。
例の事務所設立に関する同意書と、1枚のDVD。
ある程度の内容は想像はしていたものの、そのDVDの映像はそんな私の覚悟すら簡単に打ち砕く様な、
わが社を脅迫するのに十分すぎる程の内容だった。


ビデオがスタートすると、目の前には驚き戸惑うような表情を見せる秘書が映っていた。
「ふ〜ん…なるほど…へぇ〜、私ってそういう趣味があるのねぇ〜…。」
私の声だ…。私の記憶にはない…言葉…。なんなの…これ?
「あ、あの社長…突然どうされたんですか?私、いったい何故ここに…?」
「んっふっふ、まあまあ、良いから。ところで、貴方と私ってそういう関係なんでしょ〜う?いいのよ、今直ぐここで楽しみましょう?」
何を言っているの…私は?
「そ、そんな、社長。こんな朝から…」
「うるせーわね。いいから、ほれっ、早く私の乳首を舐めるのよ!これは業務命令よっ!」
まるではめ撮りをしているかのような、主観の映像が続く。
撮影しているのは私。声も間違いなく私。でも、私の記憶にはない。
自分の声なのに、そのセリフからまるで赤の他人であるかの様な錯覚に陥っていた。

秘書とのプレイを収めた後、場面が変わって、机の上に私が座っているのが映った。
普段通りの私の姿。
表情も、仕草も、髪をかき上げる癖も…これは間違いなく私本人に違いなかった。私の記憶にないことを除いては。
しかし、画面に映る私が語りだした内容は、社命にかかわる様な重大事項ばかり。
私の個人情報、生年月日やスリーサイズからはじまり、学歴、この会社の設立の歴史、成長の変遷、
取引先との関係、そして、父のコネクションと…それを利用した口外できない様な負の内容まで…。
画面に映る私は、まじめな表情で、まるで社訓でも読み上げるようにスラスラと言ってはいけない内容を口にする。

なんなの…これ…こんなこと、私の口から…、嘘よ…!

画面がまた変わり、今度はうって変わってトイレの映像が映る。
画面には私がアップで映っている。
「は〜い♪ここは女子トイレです。今からこのトイレでぇ…盗撮をしたいと思いま〜す!これってれっきとした犯罪ですよねぇ」
私はそういうと個室へと潜み、社員が入ってくるとトイレのドアの下の隙間から盗撮を始めた。
「くっくっく、社長がトイレの地べたに這いつくばってまで社員を盗撮だなんて…、
 週刊誌とかに売ったら面白おかしく記事にしてくれるんじゃないか?」
盗撮を続けながら、間違いない私の声でそんなつぶやきが同時に録音されていた。

その後、突然始まる私と秘書の痴態。
場所は社長室、私の部屋だ。カメラの位置はどうやら固定した場所に置いてあるらしい。
私は明らかにカメラの場所を意識した行動をとって、秘書を誘導しているようだった。
「よし、ここならバッチリね。うふふ、それじゃあ、始めましょうか?」
「しゃ、社長…今日は、いったいどうされたんですか?」
「え、別に?私はどうもしてないわ。普段通りの私よ。さあ、今日はた〜っぷりと可愛がってあげるわね。」
「社長…ああ、そんなこと…」
「うふふっ、貴方が私にして欲しいと思ってること、今の私なら全部叶えてあげられるわ。なんせ、さっきまで貴方だったんだから。」
「ああ…そんな…社長、私のこと…そんなにも…」
「こ〜んな事、してほしかったんでしょ〜?この私に。いいのよ、今日は何でもしてあげる。沢山働いてくれたご褒美よ。」
「ああん…社長…そんなことまで…。」
画面に映っているのは間違いなく私だけど…絶対に私じゃない…。いえ、でもこれは私に間違いない…。
私のしゃべり方、私の攻め方、私の感じ方…どれをとっても私自身。これは、やっぱり私なの…?

私の頭は混乱から抜け出せなくなってきていた。

会議室の場面、私の声で罵声が響いている。
カメラの前では泣きながら服を脱いでいく新入社員の娘が映っていた。
「入社早々クビになりたいの?ほら、早く脱げよ!」
「……はい……」
「社長命令だ、逆らうとどうなるかわかってるんだろうな!?この俺が直々にカメラを回してやってるんだぜ?」
「………」
「ほらほら、早く脱いで準備しなさ〜い。俺の方はもう準備万端なのよ〜?」
カメラが反転し自分自身を移す。
違う人物が映るのを一瞬期待したが、その期待はたやすく裏切られた。
興奮した雌の表情の私がアップで映り、そのあとは自分の股間とそれを弄る指の映像がアップで映された。
「ああん、はぁん、ほら、見なさいよ!俺のアソコ、もうびちょびちょなのよ?早くこっちに来てきれいに舐めてくれよ。」
カメラは泣きながら跪く娘を映していた。
私はずっと男みたいなしゃべり方で、その娘を蹂躙していく。
見ているこちらの気分が悪くなるような、その態度。それをとっているのも、まぎれもなくこの私だったのだ。

あの時のあの娘の涙の訳がようやく分かった…。
こんなレイプのような行為、きっとあの娘は私を許さないだろう…。

また画面が変わり、今度は全身セーラー服に身を包んだ私が映った。
「ほ〜う…こりゃいいや。このミスマッチ、最高だね。」
まるでグラビアアイドルがとるようなポーズを嬉々として決めていく私。
まるで他人を見ているようだ。
「この格好で街中を練り歩いてやるわ。どうせ恥ずかしいのは俺じゃないし。」
私はビデオカメラをまわしながら、そんな恰好で街中を歩いて回ったらしい。
カメラには私のことを遠目に見る人たちの好奇の表情が映っていた。
「おほほほほっ、いいお天気ですね。みなさ〜ん!やっほ〜!元気ですか〜?」
私が言うはずのないセリフを大声で喚き散らしながら、私は町のスーパーマーケットの中へと入っていった。

そこから先の映像は、よく覚えている。
あの、弁護士がこっそりと映していたのだろう。
私と彼女の痴態も、そこにはばっちりと収められていた。
しかし、その内容は…私が一方的に嫌がる彼女を犯している映像。
「おらおらぁっ…気持ちいいでしょう?あなたの身体の隅々まで、気持ちいところは知り尽くしてるのよ!」
「ああっ…や、やめてください。」
「これから、私たちはパートナーとしてお互い持ちつ持たれつの関係になるのよ。今日はその契りだわ!」
「そんな…一方的すぎます…ああっ…そ、そこは…!」
「ここをこうすると気持ちいいのよね〜、その身体。俺が散々開発してやったからなぁ。ほらぁっ」
「あひぃぃぃぃっ…な、なにこれ…き、気持ちよすぎぃ……!!」

これは私…?私が自分でやった行為…?そんなはずは…でも現に…ここにその「証拠」が…


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私の過去の秘密と、あの時の記録が彼女のもとにある以上、私は彼女の要求に全て答えざるを得なかった。

そうして彼女は、私のお金を使って独立し個人事務所を立ち上げた。
冴えない男が1人、彼女の秘書として事務所に席を設けているらしいが、私には関係が無かった。
彼女とのレズ関係は、その後も続いている。
私の方も既に嫌悪感など無く、彼女との恋人関係を楽しんですらいた。
私は彼女にお金を工面し、彼女は私が手を染めた裏の仕事をきちんと処理してくれる。
あの時、彼女が言った通り、私たちは仕事でもプライベートでも深い関係になったのだ。
ただ、心配な事が一つだけある。
あの時以来、頻繁に記憶喪失が起きているのだが……


……ふぅ、記憶喪失が起きているのだが、全然気にしていない。

さて、今日はこっちのサブボディに乗り移って社長ライフを満喫するとするか。
へへへ、めんどくさい仕事は全部専務の奴に押し付けて、俺は今から弁護事務所に直行だな。
今日は、あいつも弁護の仕事で終日法廷の日だし、俺の本体がただ寝ているだけのはずだ。
へへへ、たまにはこのレズである女社長の肉体を使って、睡眠中の俺との男女関係ってやつでも盛大に楽しむとしますかな。
なんてったって、あの法律事務所のオーナーであるこの私のオーナーは「俺」なんだから。






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