teruさん総合






 『皮剥丸夢譚』


               1・自由な二人


朝食の支度を終え、お椀に味噌汁を流し込むとベッドの上の毛布の塊に声を掛ける。

「秋奈!朝食が出来たぞ。 ほら、さっさと起きろ!」
「う〜ん、あと5分……」
毛布の中から声が返ってくる。

「巫山戯るな、味噌汁が冷める。 人がせっかく作った飯を台無しにする気か?」
そう言って俺は毛布を引っぺがす。

「鬼だ!ご飯の事になると鬼になる非情な男だ、清彦は」
身体を丸めて恨めしそうな目で見上げるパジャマ姿の美女……

「どこが鬼だよ?もう8時だぞ?充分に睡眠は取ってるだろ? それにお前の我が儘を聞いてわざわざキッチンから食事を運んできてやったのに鬼呼ばわりかよ?」

「眠いものは眠いのよ」
そう言いながらモソモソとベッドからおりてガラステーブルの前に眠そうな顔で座る。

「顔ぐらい洗ってこい」
「顔を洗っていたら清彦がせっかく作ってくれた朝食が冷めちゃうでしょ?」
そう言ってご飯茶碗を差し出す。

「だらしないヤツだな」
俺は軽くため息を吐いて、ご飯をよそって秋奈に差し出す。

「清彦がよく出来た嫁だから、旦那は安心して堕落できるのよ? 私は本当にいい嫁をもらったわ」
味噌汁に口をつけながらそう言って笑う。

「誰が嫁だ」
「あら?ここは私のマンションよ?そこに転がり込んできたのは清彦の方なんだから嫁でしょ? 家事全般を条件にうちに居候している清彦くん?」

「はいはい、わかってますよ」
そう言って俺は沢庵に箸を延ばすと口に放り込みボリボリと食う。

そう、俺はこの秋奈のマンションに居候している貧乏大学生だ。 中部にある地方都市のここの大学に入学してアパートを借りていたのだが、同じ歳の秋奈と3年前の1年生の時に知り合い、ウマが合って2年前からここに居候させてもらっている。

ちなみに、まぁ、お互いに若いのだからすでに肉体関係はある。


朝食を終えて食後のお茶を飲む。
「それで、今日の講義は大丈夫なのか?」
「10時だから余裕。 清彦の方は?」

「俺は昼からで大丈夫」
お互い、本当に夫婦のような会話だな。 そう思うと笑えてくる。

「なによ?」
「いや、べつに」

「べつにって事はないでしょ? 何を笑ってるのか正直に言いなさいよ」
秋奈がそう言って俺を睨む。

「大したことじゃねぇよ。  今の会話がまるで夫婦みたいだなと思っただけだよ」
洗い物を流しに運びながら苦笑しつつ白状する。

「何だ、そんな事か」
「だから大した事じゃないって言っただろ?」
流しの水を出して答える。

「あら?でも私は清彦となら結婚してもいいんだけどねぇ」
「でも、家のしきたりでダメなんだろ?」
食器を洗いながら後ろに尋ねる。

「ダメって事は無いんだけど、父は村の者と結婚して欲しがってるのよねぇ。 力が宿るように……」
そう言って秋奈がため息交じりに苦笑する。
「なんだよ?力って? ひょっとして秋奈の村って超能力者の集まりか?」

「惜しい。近いけど、村人自体に超能力があるわけじゃないのよねぇ」
「ちょっと? マジかよ、そんな話?」

「冗談よ、冗談。 ウソに決まってるでしょ?」
そう言って笑うと秋奈は立ち上がって、洗面所に引っ込む。

俺はそのまま洗い物を続ける。

秋奈はどこかの田舎の神社の跡取り娘らしい。 田舎に広大な山林を持っていて、その資産はちょっとしたものらしいのだが、詳しい事は俺も知らない。 なんだか由緒正しく、村独特のしきたりがあるらしいのだが……

「八墓村とか雛見沢村とかの類じゃねぇよな?」
布巾で手を拭きながらつぶやいてキッチンのテーブルの椅子に座る。。

「なに?私の村に興味があるの? 何なら連れてってあげようか。もう夏休みだし?」
奥から着替えを済ませて出て来た秋奈がそう言って微笑んで対面に座る。

「夏休み?就職活動は?」
「夏休みになっても決まってないなら、後は開き直るだけでしょ?」

「だけでしょっていいのか、それで?」
「私は無理に就職しなくてもいいのよ。 実家に帰って巫女でもやってれば」

「あれ?"やってれば"ってお前は跡取り娘だろ?」
「ウチは女に後は取らせてもらえないの。 例え婿養子をもらっても神社の後は取れないの。 それがウチのしきたり。 せめて兄か弟でも居れば父さんも頭を抱えなくてすんだんだけどねぇ」
そう言って苦笑する。

「いや、よくわかんないな?婿養子取ったんならそれで問題は解決するだろ?」
「そこがウチの複雑な事情。 それより、アンタの方はどうなのよ、就職活動は?」

「とりあえず、俺は家事手伝いだな。 この四年間、バイトしながらアチコチで色々食い歩いて、気に入った物は自分で作って腕を磨いてきたからな」
「食べ物にはうるさいものね、清彦は。 実家はレストランだっけ?」

「下町の小さな居酒屋だよ。 それなりに繁盛はしてるんだぞ?」
「繁盛してるそのわりには仕送りは少ないのね?」

「まぁ、二年前に二号店を出したから今は借金があんだよ」
「あぁ、だからウチに転がりこんだんだもんね? あ、そろそろ時間か。 それじゃ行って来ます」
そう言って、腕時計を見て立ち上がる。

「あぁ、行ってこい。 夕飯はいつも通りでいいんだな?」
「えぇ、美味しい物をお願いね」
そう言うと秋奈は出て行った。

「あいつん家も仕来りとか伝統とか色々と複雑なんだな。 それに較べればウチなんかお気楽なもんだ。
おかげで兄弟も多いしな」
年を取っても未だにラブラブに痴話喧嘩を演じる親父達の姿を思い出す。

俺も身支度を整えると大学に向かった。 さて、来週からは夏休みだ。 どうするかな?

               *

そして夏休みに入り、俺達は四年だというのにノンビリと過ごしていた。

「そう言えばさ。 前に言ってた跡取りの条件ってなんなんだ?」
ベッドの上で一戦を交えた後、ピロートーク代わりに何気なく尋ねた。

「えぇ?あぁ、私の村の話? ウチの村はね、大昔に都に居られなくなった陰陽師や呪術師達が寄り集まって生まれたの。 天才的な才能のある人達が少なくなかったらしいわ」
俺に髪を撫でられながら気だるそうに答える秋奈。

「才能があるのなら都を追われたりしないだろ?」
「才能がありすぎて政治力がなかったのよ。 他の陰陽師の嫉妬ややっかみを買っちゃったんでしょうね。 そうして都を追われたのよ。 でも、才能がありすぎたからその能力を怖れたライバル達の目を逃れる為に山奥に強大な結界を張って隠れ住んだ。 それが私の村」

「強大な結界?」
「昔は余所者は誰も入れなかったらしいわよ。 でも、今はかなり緩んできてるから目的を持って尋ねてきた人なら入れるわ。 でも郵便や宅配はよく忘れられるけど……」
そう言ってクスリと笑う。

「それでね。 ウチの村にはそんな人達が作り上げた呪具や呪符が沢山有るの」
「呪符? マジナイみたいなやつか?」

「似たような物ね。 ただ、効果は絶大だけど。 」
「すごいな、それは」
そう言って笑う。

「……信じてないでしょ?」
俺の腕の中で秋奈が睨む。
「信じてる、信じてる。 で、秋奈も呪符とか使って何かするんだ?」

俺の質問に秋奈が小さくため息を吐く。
「それが出来ないから問題なのよ。 昔は村人の誰もが使えたんだけど、段々と使える人が減っていって近年に至っては父さんと村の長老格の数人しか使えなくなったのよ。 特にそういうアイテムを管理するウチの神社の跡継ぎが使えないのが問題。 それで、父さんとしては村人の誰かと私が結ばれて男の子が能力を持って生まれてくれば、父さんから孫に後を託せると言うワケ」

「あぁ、だから村人と結婚って事か」
「そ。 村の外の人間と結婚するよりも村人と結婚した方が能力が発言しやすいでしょ?」
そう言って俺の胸を人差し指でツンツンとつつく。

「なるほどね。 でも、俺と結婚しても能力が発現する可能性が無いわけじゃないだろ? お父さんは能力があるんだから隔世遺伝とかで?」

「なに?やっぱり私と結婚したいの?」
そう言って意地悪く笑う秋奈。 まぁ、確かに秋奈の事は嫌いではない。と言うか好きだと思う。
その性格も身体の相性も…… 家事が下手って欠点はあるが……

「まぁ、そうだな」
「あら?嬉しいわ。 私も清彦とだったら結婚してもいいと思うんだけどねぇ」
そう言って俺の背中に手を伸ばしてギュッと抱きしめて俺の胸に顔を埋める秋奈。 
いや、強気な性格してるクセにこういう仕草も可愛いんだよな、こいつ。

「そう言や、能力の有る無しってどうやって判断するんだ?」
「え? あぁ、単純に呪具が使えるかどうかよ。 そうだ、ちょっと待ってて」
そう言うと秋奈はベッドからおりて素っ裸のまま奥の部屋に歩いていった。 

いや、丸いお尻がぷりぷりと揺れる姿が色っぽいよな。 あんな姿を見るとたった今出したばかりだというのに毛布の中の逸物が立ち上がってくる。 
ゴミ箱の中には白濁液で一杯になった避妊具が二つ、三つ……

正直な話、秋奈とならどこか、都会の片隅でも、のどかな田舎であろうと、どこででも一生付き合っていける気がする。 
そんな事を思っていると……

「おまた〜」
秋奈が笑顔で何かを持って帰ってくる。

「お股?」
「どこを見て、何を言ってんのよ?」
笑いながら俺の頭をはたくとベッドの中に入ってくる。

「で、なんなんだ?」
「これ」
そう言うと手に持った物を俺に見せる。

「? 小刀?」
それは変わった紋様の入った柄と鞘に収められた小さな小刀のようだった。

「そう、これが呪具よ。 この前、お爺ちゃんの法要で戻った時に蔵に仕舞ってあったのをこっそりと持ち出してきたの」
そう言って鞘を抜いて見せる。

「こっそりって、いいのかよ!」
「良くないわよ。呪具を管理者の許可無く勝手に村から持ち出してるんだもの。 父に見つかったら大目玉どころか、村中が大騒ぎよ?」
そう言って笑う。 いい度胸だな、おい?

「で、これが呪具だって?」
それは5センチくらいの刃がついた短刀だった。

「そう、これをね? えいっ!」
いきなり短刀を俺の胸に突き刺す秋奈。

「うぎゃぁ! な、何をするんだ!」
俺は驚いて飛び起きる。

「あははは、大丈夫。 刺さってなんかないでしょ?」
「え? あれ?」
秋奈に刺されたはずの胸の辺りを見下ろすと、そこにはキズどころか血の一滴すら流れていなかった。

「どう? 大丈夫でしょ? この呪具は能力のない者が使うとまったく切ることが出来ないのよ」
そう言って短刀の刃を見せる。

「え?切れない?」
俺は秋奈から短刀を受け取り、その刃先を眺める。

「いやいや、この刃先で切れない方が不思議だぞ?」
その刃は何で出来ているのかわからないが、たった今打ち上がってきたように刃先は鋭く輝いていて赤錆一つ浮いてはいなかった。 俺はつい刃先を指でなぞってみた。

「痛っ」
見ると親指の腹がパックリと裂けてピンクの肉が見えている。

「うおっ!やっちまった。 何が切れないだよ! ティッシュ、ティッシュ!」
親指を口に銜えて秋奈の方に置いてあるティッシュを要求する。

「はぁ?何を言ってんのよ? その刀は切れないっていってるでしょ? 見せてご覧なさいよ」
そう言って笑いながら口に銜えている腕を引っ張る。
「そっちこそ何を言ってるんだよ。 これだけ鋭い刃なんだから切れないわけがないだろ。ほら? ……あれ?」
口から引っ張り出された指はキズなんか全くなかった。

「え?あれ?確かに切れたんだぞ?」
「切れないって」
そう言って小馬鹿にしたように笑う。

「おかしいな? 確かに切れたように見えたんだけど……」
そう言ってもう一度、左の親指の腹を刃に軽く……

スパッ
見れば再び、親指の腹が真ん中から割けている。

「え?切れた、切れた切れた! ほら、秋奈!切れただろ!」
そう言って切れた指を秋奈に突きつける。

「え?うそっ」
秋奈が目を丸くして突きつけた俺の指を眺める。 そしてさらに驚いたのは切れたはずの指の傷が見る見る塞がっていくことだった。

「えっ?キズが塞がっていく?ウソだろ?」
俺は塞がったばかりの親指と人差し指を摺り合わせてみるが、そこに傷があったという手応えはまったくない。

俺は試しにもう一度、短刀を手に取って腕に軽く走らせてみる。
スーッと赤い筋は入るが暫くすると傷口が合わさり塞がっていく。

「おぉ?すげぇな? キズがまったく残らないぞ?」
俺は顔を上げて秋奈を見る。 
秋奈も塞がっていく腕の傷を呆然とみていたが、キッと顔を合わせて俺を睨みつける。

「ちょっと待って! なんでアナタがそれを使えるの! 村人でもないアナタが!」
俺の両肩を掴んでガタガタと揺する。

「い、いや、知らねぇよ。 偶然だろ?」
「偶然なんかでこの皮剥丸が使えるかぁ! 村人にしか使えない呪が込められてるのよ! それなのに…… はっ?ひょっとしてアナタの親のどっちかがウチの村の出身だったりする?」
言いながら、俺の手から短刀を取り上げる。 てか、皮剥丸?物騒な名前を付けられてるな、おい。

「いや、オヤジはずっと下町生まれの下町育ちだし、母さんは…… よく判らないけど、地元生まれだと思うぞ? お前んちって中部地方の山の中なんだろ?」
そう言ってる間も秋奈は俺から受け取った短刀で俺の腕に刃を走らせるが傷はつかない。

「信じられない…… 村人でも無いのに……」
そう言いながら皮剥丸と名付けられた短刀を自分の腕に這わせてみたり、丹念に刃を調べて見たりする秋奈。

「なぁ?ひょっとして俺がそれを使えるなら、お前の親父さんも結婚を認めてくれるんじゃないのか」
「え?あぁ、そうね。 なぜだか知らないけど清彦が呪具を使えるのなら父さんを説得しやすくはなるわね?」
と言いながらも秋奈は俺が呪具を使えるのが不思議なのか、首をひねりながら皮剥丸を縦にしたり横にしたり、逆さに振ったりしている。 

「だから、俺がそれを使えるという事で素直に納得しろよ?」
そう言って秋奈から皮剥丸を取り上げると、秋奈の腕を取ってちょっと切ってみせる。

「あっ、バカッ!」
慌てて秋奈が腕を引っ込める。
「大丈夫だって、ほら。 ちゃんと塞がるだろ?」
秋奈の腕に付けられた傷が俺の時と同じように塞がっていく。

「え?あれ? ……なんで私、無事なの?」
秋奈が自分の腕を見てまた驚く。 よく驚くヤツだなぁ。

「だから、これは傷が塞がる呪具なんだろ? 無事で当たり前じゃないか?」
「違うの。 術者以外の者をそれで傷つけると呪具の呪が廻って身体が痺れて動かなくなるって聞いてたのに…… 私、なんともない」
腕を見ながら、再び腕を俺の前に持ってくる。 これはもう一度、切ってみろって事か?

俺は皮剥丸を秋奈の腕にそっと走らせる。 赤い筋がさっきよりも長めに入る。
「ほら?どうだ?」

「痛くもないし、痺れもしない…… どういう事なの? 里の者として耐性があるとか?いや、それはないわね。 里の者に使っても身体は動かなくなるって話だし…… と、言う事は清彦の方に途方もない力が眠っているとか? 清彦、アナタ、何者?」
そう言って俺を見つめる秋奈。

「何者って、俺はただの下町の居酒屋の三男坊だよ?」
「おかしいなぁ? 最低限、絶対にウチと何か縁を持ってないと納得がいかないと言うか……」
なおも首をひねる秋奈。

「でも、この呪具って何の役に立つんだ? お芝居用の小道具?」
「え? あぁ、そうね。 私も話として聞いてただけで実際の効果を見るのは初めてだけど、ちょっと私の手首の周りを切ってみて?」
そう言って秋奈が自分の左腕を出してくる。 俺は言われたとおりに皮剥丸で手首をグルリと皮剥丸を回すと秋奈の手首に赤い線が出来る。

「見てなさいよ?」
そう言って笑うと指の先を摘んで…… 

「うわっ!手が! 手が抜けた!ってか、皮が抜けたぁ!?」
まるで手袋を脱ぐように秋奈の左手の皮が抜ける。 手首から先はピンク色のマネキンのような手が残っていた。

「どう?これが皮剥丸の能力。 名前の通り、人の皮を剥ぎ取ってしまうのよ?」
「いや、笑ってる場合じゃないだろ? 痛くないのか、それ? 普通は皮を剥がされたら激痛だろ?

「うん、まったく痛くないよ」
そう言って手をニギニギと開いたり閉じたりしている。

「それで取れたその手はどうするんだ? 皮が生えてくるのか?」
「ふふん? 大丈夫」
そう言って笑うと引き抜いた皮を再び手袋でも付けるように付けていく。

「ね?」
皮を付け終わった手を俺の目の前に持ってくる。 その手は皮を剥ぐ前とまったく変わらない。

「どういう理屈だ? 痛みも無く皮を剥ぎ取って、再び元に戻せる? 仕掛けがわかんねぇ!」
「理屈なんてないよ。 これはそういう呪いを起動する呪具。 呪いに論理的説明を求めないでよ」
混乱する俺にそう言って苦笑する秋奈。

「でも…… 話には聞いていたけど、実際にこうして呪具が発動するのを見ると感動よね?」
「感動よね、って。 村には沢山有るんだろ?こういった呪具?」

「有るには有るけど、厳しく管理されていて使われる事なんて稀なのよ。 それに村で使う呪具は精々"雨下がり"と"てるてる坊主"くらいだから」
「てるてる坊主? てるてる坊主って、あの?」

「お天気にしてくれる呪具。 ちなみに雨下がりはちっちゃな雨傘の形をした雨乞いの呪具、どちらも軒下に吊すだけで効果が現れるの」
「それは……」

「言っておくけど、子供の作るヤツと同じにしないでよ。 形はチャチでも確実に天候を変えられるんだからね? ただねぇ。効果はあるんだけど、地味なのよねぇ。 二,三時間かけて雲が出たり消えたり……」
そう言って手を上に伸ばして雲がゆっくりと動く様を表現する秋奈。

「三時間かけて? それは確かに地味かも……」
でも雲を動かすアイテムってのも凄いよな?

「だから、目の前で確実に効果を発揮した呪具を見るのは皮剥丸が初めてなのよ。 話には色々と聞いてはいたけど…」
そう言って俺の持っている皮剥丸を見つめる。


その後、試しに俺も手首袋をして見たが、確かに痛みは感じなかった。 元に戻す時も皮自体が手に戻ろうとするかのように滑らかに手に戻っていった。
「世の中には不思議な物もあるものだよな?」

皮剥丸の刃に施された淡い紋様を見つめながら感心する。 多分、この模様が呪を発動させてるんだろうな。 そんな事を考えていると……

「ねぇねぇ、清彦?」
秋奈が悪戯っぽい目で俺の腕を揺する。

「なんだよ?」
「清彦って、今までの人生の中で一度は女の子になってみたいとか思わなかった?」

「はぁ?なんだよ、唐突に? まぁ、一度くらいは思ったこともあるかも知れないな。 それがどうかしたか?」
「試しになってみない? 私は父さんから秋奈が男の子だったらと思われて育ったから何度か、男の子に生まれてみたいと思ったことはあるんだけど」

「あるんだけど、と言われてもそんなの簡単になれるわけがないだろ?」
「ところが、ところが」
そう言ってイタズラを仕掛ける子供のような目で俺の手にある皮剥丸を指さす。

「この皮剥丸がなに?  ……って、えっ? まさか」
「そう。 この皮剥丸の本来の役割は人の皮を丸ごと剥ぎ取れる事にあるのよ。 昔は無能な権力者の皮を剥ぎ取って違う人間が取って代わったりとか、罪を犯した人間を罰したりする為に使われたらしいのよね」

「え?ひょっとしてこれって処刑具なのか?」
「本来はね。 だからこれで傷つけられた者は呪毒が回って動けなくなる筈なんだけど、どういうわけか清彦がそれを操ると呪毒が回らないみたいなのよね」
そう言って皮剥丸を見つながら、続ける。

「だからさ? 皮を交換してみない?」
秋奈の提案にちょっと考える。 いや、確かに面白い提案ではある。 女になってみる……か。 
しかも、秋奈なら充分に美女の部類に入るから結構、楽しそうだよな?

「でも、皮を交換したら元に戻れなくなるんじゃないだろうな?」
「それは大丈夫。 皮剥丸がある限り、回数制限無く使えるからもう一度交換すれば問題なし」
そう言って笑顔で親指を立てる。
そういう事なら問題はないよな? 俺も"女"ってものに興味はあったし……

俺達は全裸のまま、ベッドから下りて向かい合う。

「で?どうやるんだ、これ? 手足をパーツ事に剥ぎ取っていくのか?」
そう言って腕で皮剥丸で切るポーズをする。

「そんな手間を掛けなくても身体の半分以上に縦に切れ目を入れれば全身タイツを脱ぐみたいに皮を脱ぐ事が出来る筈なのよ?」
短刀の握るような仕草で喉元からヘソの下辺りまで切り下ろす仕草をする。
いや、それって切れないとわかっていても勇気がいるんじゃね? 喉元に短刀を突きつけんの?

「あれ?ひょっとして清彦、怖いの?」
上目遣いにニヤリと挑戦的に笑う秋奈。
「そ、そんな事ないよ」
俺は皮剥丸を自分に向かって構えると、喉元に突きつけ、一気に引き下ろす。

俺の身体の中央に赤い筋が入る。
「おぉ!本当に入った!」
「おい、ちょっと待て? 本当に入った、って何だよ!? さては俺を実験台にしたな?」

「いや、私も話に聞いただけだから……」
そう言って誤魔化し笑いをしながら、俺の胸元に手を伸ばしてくる。

「さぁ、清彦ちゃん。 皮を脱ぎ脱ぎしましょうね」
そう言うと赤い線の左右に手を伸ばすと指で摘んで開く。 俺の身体がパックリと割れる。

「うぉっ! 本当に脱げた!」
上半身が腰からぶら下がっているのもシュールな光景だな。
そのまま皮を下に持っていき、足を引き抜くと皮の抜け殻が出来上がる。

「うわっ、皮を脱ぐとそんなのなんだ? なんだかグロテスクよね?」
口に両手を当てて俺を凝視する秋奈。

ふと、秋奈の着替え用に置いてあるスタンドミラーを見るとそこには動くピンクのマネキンが……
「うわっ、これが俺? なんてグロテスクな……」

「今ならオバケ屋敷のバイトが出来るね? ハロウィンならその姿で外も歩けるよ?」
そう言って腹をかかえる秋奈。

「うるさいな。 ほら、お前もオバケになれ!」
そう言って皮剥丸を秋奈に向ける。

「あ、私は背中からやってよ。 前からじゃ恥ずかしいし?」
そう言って俺に背を向ける。 

しょうがないな。 俺は秋奈の指示に従って、うなじの辺りから腰に掛けて切り下ろす。 
なんだか猟奇殺人鬼にでもなった気がするな。

数分後、不気味に動くマネキン人間が二体。 ちょっと、グロ……?

「いや、ホント、シュールだよな? 思わず不思議な踊りを踊りたくならないか?」
そう言って手足をバラバラに動かす俺に秋奈が皮を放り投げる。

「ならないわよ。 バカな事を言ってないでさっさと着なさい。 痛くはないかも知れないけど、表面が干からびてくるかも知れないわよ」
「え?マジ?」
思わず自分の身体の表面を調べる。

「私の知識は聞きかじりだからよく判らないけど、皮の中身を晒してるのは良くないでしょ?」
そう言いながら秋奈は俺の脱いだ皮に足を通している。 俺も真似て秋奈に背を向けて秋奈の脱いだ皮に足を通す。

皮は自らが中身を欲するかのように俺の足を先端からするりと飲み込み、奥までピッタリと挿入させた。 次に上半身を持ち上げて腕の部分に手を通す。 首の部分は以外と伸びがよく、頭を受け入れる。
すぐに定位置にフィットして視界が広がる。

「なぁ、秋奈? これって切り裂いた背中の部分はどうやって閉じるんだ?」
俺は隣で俺の皮を着ている最中の秋奈に尋ねる。

「大丈夫よ。 さっきの傷と同じ。すぐに合わさっていくから。 ほら?」
その声に振り向くと"俺"が俺の方を見て笑っていた。 そして切り裂いた上半身の皮が合わさるように閉じていく。 ピンクの肉の部分がみるみるうちに隠されていった。

「ちゃんと着れたようね。 清彦の背中も合わさっていってるでしょ? って、どうしたの?」
驚いている俺を見て首をかしげる"俺"。

「声が俺そのものだ…… 秋奈だよな? って、あ。あ〜、あ〜あ〜」
俺の声もまるで女の声のように高くなっていた。

「そうよ。 外見も声も今や私は木下清彦。 そして貴女は斎藤秋奈」
そう言って腰に手を当てて笑う。 いや、自分の姿とはいえ、堂々とフルチンを見せつける男の全裸は見たくなかったな……

改めて自分の身体を見下ろす。
胸には丸い肉の塊が二つ、俺の身体に付いている。

「重いな……」
すくい上げるように手の平で胸を持ち上げる。
「どう?それが私の胸よ? なかなかな眺めでしょ?」
そう言って俺の姿になった秋奈が笑う。

「お前はどうなんだよ? 俺の姿になって」
自分の胸を軽く揉みながら尋ねる。

「いいわね? 重い胸から解放されたのは十数年ぶり。 確かにEカップの胸はちょっと自慢ではあるけど、四六時中付けっぱなしだと偶には外して休みたいな〜とか思うから、それが実現するとは思わなかったわ」
そう言って笑って自分の胸を平手で叩く秋奈。 だからフルチンで仁王立ちで笑うのは止めてくれ。

しかし…… マジで皮を着てるんだよな? 自分の胸に初めっから付いていたとしか思えないこの感覚…… 揉んでみると胸から揉まれた感覚が返ってくる。 

……つまりはアソコも? 俺は下半身に手を伸ばす。 何もないのっぺりとした股間……、そしてその先には…… あれ?
「おい、秋奈?」

俺は秋奈の方に顔を向け……
「って、何をやってんだよ!」
「えっ?いや。 ちょっと男の子の股間にぶら下がってるオチン○ンがどんなものかと?」
悪戯を見つかった子供のように誤魔化し笑いをしながら股間のペニスを弄ぶ秋奈。

「人のペニスをオモチャにすんじゃねぇよ!」
「なに言ってるの? このチン○ンは今は私の物なのよ? それよか何?」

「いや、お前のここ、指がまったく入らないんだが?」
「い・き・な・り…、人のオマ○コに指を突っこもうとするなぁ!」
パシィ! 思いっきり頭をはたかれた。

「痛ぇ!」
「痛ぇ、じゃないわよ。 いきなり何をハードな事に挑戦してるのよ!?」

「いや、男としては女のアソコの感覚って興味があるじゃないか?」
俺は涙目で頭を撫でて言い訳をする。
「よくそれで人の行動を非難できたわね?」

「いや、お前の言い分を認めるなら、このオ○ンコは今は俺の物なんだろ?」
「それはそれ、これはこれ」
冷静に返されてしまった。

「それと。 私達は皮を着込んだだけだから中身まで変わってないわよ?」
「中身まで変わってない? つまり、このオマ○コは形だけ?」
そう言って俺は自分の股間を指さす。

「オマ○コ、オ○ンコと何度も連呼されると恥ずかしくなってくるわね? 今は形だけよ? 私のここだってただのホースだもん?」
そう言って自分の股間にぶら下がったホースを指さす秋奈。

「なんだ、形だけなのか?」
「そうでもないわよ?」

「どういうことだ?」
「この皮剥丸で剥ぎ取られた皮はね、中身を浸食するの」

「中身を浸食?」
「つまり、清彦が私の皮をずっと着ていると中身まで私に変わっていくらしいわよ? つまり、数時間もするとそこの孔が深まっていき、数日もすると子宮が出来上がるらしいわよ」

「はぁ?子宮? 俺のここに子宮が出来るってか?」
思わず自分のお腹の辺りを見下ろす。

「そうよ。 私のここだって清彦を孕ませることが出来るように精子を生成する精巣ができるのよ?」
そう言って股間のペニスの上辺りを指さす秋奈。

「いやいやいや、さすがに俺は妊娠する気は無いぞ? ってか、本当に赤ちゃん出来るのか?」
「昔、村の長老の人に聞いた話だと皮を交換した男女がいて、男の方も女の方もそれで子供が出来たって話よ?」

「それって、女の皮を着た男が赤ちゃんを産んだって事か?」
「うん。男の皮を着た女の人もちゃんと女を妊娠させたって」

「……いや、本人は納得ずくなんだろうけど、それで出来た子供ってどうなんだ? 自分のお母さんが元男だったって知ったらショックじゃね?」
「まぁ、そうかも知れないわね。 自分の父親が女だったって聞かされたらトラウマものよねぇ?」
そう言って笑う秋奈と二人で笑い合う。

女性としての体験には興味はあるが、そこまでディープな経験をしてみたいとは思わない。 その女性になって子供を産んだという男性はどんな心境だったのだろう? 性同一性障害というヤツだったのだろうか?

「なに? 清彦も私の子供を産んでみたくなった?」
中腰で俺の顔を見上げるようにして、悪戯っぽく笑う秋奈。
「ならねぇよ。 秋奈の事は好きだが、俺自身が赤ちゃんを産みたいとは思わねぇから」
そう言って、秋奈のおデコを指で突いて押す。

「そうか。 とりあえず、外見だけが秋奈になっているのか」
そう言って、もう一度自分の胸を揉んでみる。 それでもリアルに胸が付いている感覚はあるよな?

「そう。 時間が経てばもっと定着してきて、より私になった感覚が芽生えてくるわよ?」
そう言いながら、スタンドミラーの前でボディビルダーのように手足を動かしている秋奈。

俺も暫くは秋奈の身体を色々と調べてみる。

「なぁ?そろそろ戻るか? 俺はなんだか眠たくなってきたし?」
時計を見れば日付はとうに変わっている。

「あら?もう戻るの? 清彦、明日は何か予定はあるの?」
「え?いや、別に無いけど?」

「だったら明日はデートしよ? 清彦が観たいって言ってた映画があったでしょ?」
「あぁ、あれか。 いいな。 だったら早く寝て……」

「お互い、この身体で行こ!」
明るい顔で俺を見つめる秋奈。

「はぁ?このままの身体でか?」
俺は自分の女の身体を見下ろす。

「そう! 面白いと思わない?」
目がキラキラしてますよ、秋奈さん? いや、まぁ、それも面白いかも知れないけど……

「人前をこの姿で歩くのは恥ずかしくないか?」
「大丈夫、誰も中身が清彦だって思わないわよ? 着ぐるみでも着てる気になればいいじゃない?」
まぁ、確かに人の皮を交換してるなんて発想をする人間はいないだろう。 何か失敗をしたところで変な女と思われるくらいで……

「…… まぁ、面白そうだからいいか? でも、俺が何か失敗したらお前がその失敗をした事になるんだぞ? それでいいのならOKだ」
「はい、それじゃ決まりね」
にっこりと微笑む秋奈。 

そしてその夜はお互いにその姿のままで寝る事にした。

               *

「それで、お昼はこの雑誌に載ってるカフェで軽く昼食を取ってから時間潰しにショッピング。 時間が来たら映画館に。 出て来たらホテルのディナー。 このコースでいいわね?」
朝から上機嫌の秋奈が俺に確認を取る。 

「まぁ、いいけど……」
「なによ?不満でもあるの?」

「計画に不満はないけど、今の状況に不満が……」
そう。 今現在、俺はテーブルの前に座らされて秋奈に化粧を施されていた。

「なによ? 外に出掛けるんだから女の子は綺麗にしていなくっちゃ?」
そう言いながら俺の顎をクイッと持ち上げて唇にリップを塗る。

「いや、普段のお前って簡単な化粧だけでこんなに気合いの入った化粧なんてしてないだろ?」
「ふふん。 まぁね。 でも一度、他の女の子を思う存分お化粧してみたかったんだよね。 あ、勿論私の顔なんだからケバい化粧なんてしないから安心して。 今日は清彦をとっても可愛い美女にしてあげるね」
と、上機嫌で俺の顔に何かを塗りたくる秋奈。


それは今朝のことだった。

珍しく俺より早く起きた秋奈は朝から全開バリバリでクローゼットから服を取りだして、着て行く服を選んでいた。
後から起きた俺が朝食の準備をしている間は自分の部屋でなにやらゴソゴソしてるとは思っていたが、メシの支度が出来たと呼びに行く頃には"俺"の外出着一式が選び出されていた。

まぁ、その手に趣味は無いが、股間にぴったりフィットするショーツを穿かさせられて、胸を固定するブラを付けると妙に気分が上がってきた。

目の前のスタンドミラーの中には下着姿の秋奈がニヤついてこっちを見ている。

「なによ、私の顔でスケベったらしい目をしないでよ」
そう言って笑いながら俺の頭をはたく秋奈。

「いや、なんかドキドキしてくるな? 俺が秋奈になってるのをこうやって目の当たりにして、秋奈の下着を自分が身につけてると思うと?」
そう言いながらブラで包まれた胸に手をやる。 初めて経験するブラ。 肉の塊を持ち上げて押さえつけ、脇を通って背中でホックで留められる感覚というものは生まれて初めての経験だし?

「はい、次はこのキャミを着て」
俺は秋奈から手渡される衣服を着ていく。
「はい、次はこのワンピース」
「ワンピース!?  いや、スカート系を穿くのは覚悟をしていたがワンピース? てか、お前、こんなヒラヒラしたワンピースなんて持ってたのか? お前いつもジーパンばかりで、たまにスカートを穿いても同じくジーンズのスカートだろ?」

俺は手渡されたワンピースを広げてみる。
それはわりと軽い素材で作られた半袖の淡いブルーを基調としたさっぱりとしたワンピースだった。
スカート部分なんか膝下ではあるが、ちょっと風に拭かれただけで捲り上がりそうな軽さだ。

「私だって田舎の出とは言え、いいところのお嬢様なのよ? ワンピースの一つや二つくらい持ってるわよ。 まぁ、主に実家に帰る時くらいしか着ないけどね」
そう言って笑って、俺の持っているワンピースの背中のファスナーを下ろす秋奈。

「いや、これって薄くないか? 色々と透けるんじゃないのか?」
「だからキャミを着たんでしょ? それを下に着てれば透けないわよ」
そう言って着用を促す。

「まぁグダグダ言ってても仕方がないけど、ちょっと待て。 気分を落ち着けるから」
「なによ? 意気地がないわね? 男だったら、男らしくぱーっと着ちゃいなさいよ?」
秋奈が楽しそうに俺をからかう。

「バカヤロ。 男だから着るのに勇気が要るんだよ!」
俺は苦笑で返す。

「下着は素直に着たくせに」
「そこまでは想定内だったし、女性の身体で女性の下着を着る感覚に興味があったからいいんだよ」
そう言いながらも覚悟を決めてワンピースに足を通すと、上に引き上げ袖に腕を入れる。

秋奈が背中のファスナーを上げて、背中に入ったロングの髪を手で梳き上げる。
「うん、我ながらよく似合うわ。 それじゃ、こっちに来てここに座って?」
秋奈がテーブルの前を指さす。 そのテーブルの上にはいくつもの化粧品が……

「えっと? まさか、俺に化粧をしろと?」
「大丈夫大丈夫、私がしてあげるから清彦は大人しくここに座っているだけでいいの」
そう言いながら何かの瓶のフタを開けて手の平で伸ばしている。

「いや、だからさ? お前、いつもそんなに気合い入れて化粧してないだろ?」
「うん、普段は基礎化粧だけ。 でも一回、他の女の子を思いっきり自由にお化粧して見たかったんだよねぇ」
笑って俺の顔に否応もなく化粧を始め…… 

そして、現在に至る。


「ほら出来た! ちょっとこっちの鏡の前にたってごらんなさいよ」
そう言って俺の腕を取り、スタンドミラーの前に連れて行く。

「これが俺?」
そうつぶやきながら思わず膨らんだ胸に手を持っていく。

そこにはいつもより綺麗になった秋奈が驚いた様に目を見開いて立っていた。
そして背後から伸びた手が俺の両肩を掴み、顔を出した秋奈が笑顔で尋ねる。
「どうよ?本格的にお化粧をした私は? 見違えたでしょ?」

「あぁ。 見違えたよ。 なんで普段はこの化粧をしないんだ?」
「面倒だもん。 毎日、戦闘態勢を取ってられますかってのよ」
即答かよ? しかし…… 本当にこれが今の俺? 思わず鏡の中の秋奈を百面相させて見る。

いや、綺麗だよな?可愛いし? この唇を見ているだけで思わず吸い付きたくなってくるよな?
「こらこらこら! 何を唇つき出して鏡に近づいてんのよ」
背後から伸びた手が俺の顔を押さえ付ける。

「あ? つい」
「つい、じゃないでしょ、ついじゃ! どう?気に入った?」

「なんか恥ずかしいのは恥ずかしいんだけど…… 面白いな、これ。 これが俺なんだ?」
秋奈の方を振り返って思わず破顔する。 

なんだか、全くの別人になったようで楽しい。 本当に別人になってるんだけど。
プニプニと胸を揉みながら鏡の中の全身を見つめる。

「あ〜、ところで清彦?」
秋奈が微笑みながら鏡を見つめる俺の肩を指でつつく。

「なんだよ?」
「夕べから気にはなってたんだけど、なにかというと人の胸を気軽に揉むんじゃない! それ、癖になってるわよ!」
そう言って、俺の手を胸から引き離す。

「いや、なんだか落ち着くんだよな、胸を揉んでると。 それに今は俺の胸だろ?」
と、口を尖らせて秋奈のクレームに抗議する。

「確かに清彦の胸かも知れないけど、今のうちに言っておかないと外でそれをやられて知り合いに目撃されたらたら私がまるで痴女のように思われちゃうでしょ! 秋奈さんが胸を揉みながら歩いていた、
って」

「ははは、それは面白…… はい、気を付けます」
凄い目で睨まれた。

「てかさ、マジでなんだか落ち着くんだよな。 こうやって胸に手を当てていると…… 時間が経つ程皮が馴染んできてるんだろうか?」
そう言って引き離された手を再び胸にあてがう。 いや、マジ気持ちいいんだよ?

「あぁ、それはあるかも。 私も夕べはこのホースがオシッコを出すだけの延長コードとしか感じなかったけど、今朝起きた時に"朝起ち"ってヤツを経験したら男のオシッコの気持ちよさは女の比じゃないって思えたもんね?」
そう言ってにっこりと俺に微笑みかける。

「朝……ってお前!!」
「いや、あれって男の生理現象でしょ? 私に文句を言われても……」
そう言って自分の股間に手を持っていく秋奈。

「止めぇ〜い!」
思わず俺は秋奈の手を引っ張りあげる。 
うっかり、アソコを刺激しておかしな快感に目覚められても困るからな。 今の俺は女なんだから……

「えぇ?なんで? 清彦だって胸を揉んでるでしょ?」
「だったら胸を揉め!」

「男の胸を揉んで何が楽しいの?」
「わかった、外では絶対に胸に手を持っていかないように努力する」
俺は宣誓をするように手を上げる。

「うん、まぁ、判ってくれればいいわ。 それじゃ時間もいいようだし、そろそろ行きましょうか?」
そう言って俺の手を取って玄関に向かう秋奈。 俺はそれに従うようについていく。

               *

しかし、いざ秋奈の姿で外に出てみると……

「なんだか下を穿いてないようで心許ないな?」
軽い素材のスカートの足の間をそよ風が抜けていくのを感じるだけで素っ裸で歩いているような不安感に襲われる。 
心境はまるで裸の王維様にでもなった気分だ。 周りは服を着ている俺が見えているのに、本人の俺は素っ裸で街を歩かされている気分……

「慣れよ、慣れ。 もう少ししたらスカートの不安感もブラの締め付け感も感じなくなっちゃうから」
そう笑って俺の背中をパンパンと叩く秋奈。 やめて、背中のブラのホックを意識しちゃうから……

「そういや、お前の方はどうなんだよ? 俺の姿で外に出て恥ずかしくないのかよ?」
「なんで?男の姿で外を歩くのは開放的でいいわよ? 人の目も気にならないし、身体も単純でいいわよ? 股間のアレって歩く時に邪魔になるかと思ったけど、思ったほど邪魔になってないし? 清彦のアレって標準より小さいの?」

「でっけぇよ!巨大だよ!超ド級だよ! 男のプライドを傷つけるようなことをさらっと言うなよ!」
思わず叫んでしまった。 いや他人と較べたことは無いけど……

「あら、そうなの?」
「そうだよ! その巨大さでいつもお前をヒィヒィ言わせてるだろ?」

「言ってたかなぁ?」
そう言ってニヤニヤと首を傾げる秋奈。

「いや、まぁ…… でも、感じてただろ?」
ちょっと弱気になって尋ねる。

「まぁ、そういう事にしておきましょう」
えっと、情けを掛けられてる?違うよな? こういう時は話題転換。

「それより、その女言葉は何とかならないか? さっきの話じゃないが、俺も知り合いに会ったら俺がオカマになったと思われるじゃないか?」
「そうね。 気を付けるわ…… 気を付けるよ。 それなら清彦だって男言葉」

「女は男言葉を使うヤツもいるだろ?」
「そこまではっきりした男言葉を使う女性なんていないよ。 幼児期ならともかく」

「そうか? 俺の母さんなんかは普段は女言葉だけど、父さんと喧嘩する時は完全にオヤジ言葉だったぞ? 父さんは、母さんは育ちが悪いから興奮すると地が出るんだって言ってたけど」
「まぁ、激昂すると口調が乱暴になる女性もいるけどね」

「う〜ん、母さんのは乱暴とは違う気もするけどなぁ?」
「でもお母さんも普段は女言葉なんだろ?」

「そうだけど?」
「だったら、今の清彦も女言葉でいいじゃない?」

「オカマになったみたいで抵抗があるんだよ」
「下着は抵抗なく着けたくせに」
そう言って苦笑する。

「それはそれ。 これはこれ」
「何だ、勝手だな。 それじゃせめて乱暴な男言葉を使うなよ。 これが最大限の譲歩だぞ」
そう言って笑って引き寄せた俺の肩を抱く秋奈。 こいつはこいつで男に馴染んでるよな?

「わかった。 とりあえずは乱暴な男言葉を口にしなければOKだ…ね?」
「ま、それでOK」
俺達は近くで地下鉄に乗り目的地に向かう。

               *

「で?何を食べる?」
カフェに着くとさっそく、秋奈が俺にメニューを差し出す。

「そうだなぁ……」
俺は受け取ったメニューを眺める。

「俺はこのカツサンドセットでいいよ」
すっかり俺のフリを自然に演じてる秋奈が俺の持つメニューを指さす。

「カツサンドか……」
「ここの名物だよ?」

「知ってる、雑誌で見た。 でもなぁ……」
「なによ?」

「せっかく秋奈になってるんだから、ここは女性限定メニューに挑戦して見るべきではないかと……」
そう言ってメニューの女性限定欄を指さす。

「あぁ、清彦、かなり食べ歩いてるけど、さすがに女性限定メニューには手が出せないもんな」
「そう。 だから私はこのチャンスを大事にしたい」
そう言いながらメニューをじっと見つめる。 女性限定メニューは3つ程だが、どれを選んだものか。

「あのね?いつまでも迷わない」
「いや、たった一度のチャンスは大事にしないと……」

「ホント、清彦は食の事になると真剣になるよね。 将来はやっぱりそっち系?」
「いや、まぁ、絶対にとは思ってないけどそっち系にいくだろうな…… 人に物を喰わせるのが好きだからな」
メニューから目を放さずに答える。

「清彦の料理って美味しいもんね。 それも和洋中、なんでも出来るし?」
「まぁ、あくまでも趣味のレベルだけどな。 こっちとこっち、二つには絞ったんだけど……」
そう言いながら迷い考える。

「あのさ、清彦?」
「なんだよ?」

「たった一度のチャンスと思わないで、また俺の皮を着て食べに来ればいいじゃない?」
「えっ?」
秋奈の声に思わず顔を上げる。

「いや、だから。 また俺に化けてきたらいいじゃないか?」
「いいのか?」

「いいわよ。 私と清彦の仲じゃない? ここと言わずに他に限定メニューのあるお店を食べ歩いたらいいでしょ?」
「うおっ、それはいいな? 他の店にもこの姿でか? そうなると行ってない店が結構あるんだよな? 女性専門店にも入って行けるし?」
思わず俺は破顔してしまう。 帰ったら行きたい店をチェックしよう。

「はいはい、だから今はもうちょっと気軽にどちらか選びなさい」
秋奈に笑われながら俺は女性限定エビカツサンドセットを頼んだ。 

               *

「どうだった味は?」
「うん、まぁまぁ美味しかったな。 あれはお値段とデザートで女性限定だったのか」

「女性限定と言ってもどこもそんなものよ。 がっかりした?」
「いや、それでも女性にしか食わせないメニューを食えたのは収穫と言えるな」
カフェを出て近くの店をひやかしながら観たい映画の上映しているシネコンへと歩いていく。

「本当に清彦は食に対して貪欲よね」
「そうかぁ? それよりも秋奈。 そろそろ人が多くなってきたから、ここからは私の事は秋奈と呼べよ? 私も秋奈の事を清彦って呼ぶから」

「おや? 秋奈もノリが良くなってきたな。 わかった。俺もお前の事を秋奈と呼ぶよ」
「OK。 それじゃ行きましょうか、清彦」
そう言って笑って歩き出す。

その後も映画館に着くまで秋奈の好きそうなアクセサリーショップに立ち寄ったり、ブティックに寄ったりして、自分から秋奈に似合いそうなイヤリングを見つけて自分で付けてみたり、秋奈の持って来た服を試着してみたりと、ノリノリでお互いの身体を楽しんだ。

映画を楽しんだ頃にはすっかり陽が落ち、ホテルディナーへと歩いていった。

「これで金を私が出していたら格好が付くんだけど、女の秋奈に全て奢ってもらってるのがツライところね」

「なに言ってるの。 貧乏学生の清彦に無理に奢ってもらっても俺が心苦しいよ。 それに今の俺の方が男なんだから男が女をエスコートして当たり前。 それに一応、その可愛いイヤリングはお前からのプレゼントだろ?」
「あなたへのプレゼントを私が付けているってのがふくざつだけどね」
ディナーを食べながらそういう会話をして笑いあう。

軽くワインを飲んで、会話と食事がすすむ。 ホテルのディナーなんて高級なものは口にした事がなかったが、美味かった。

「そういえば、もう気にならないだろ?」
「なにが?」
食後のコーヒーを飲みながら秋奈が尋ねるのを俺の方はデザートのアイスを口に入れながら尋ね返す。

秋奈がニヤニヤと俺の胸辺りを指さす。
「あぁ、胸?」
「それもあるけど、服だよ。 着たときは裸で歩いてるみたいだとか、ブラで胸が締め付けられるとか不満たらたらだったじゃないか?」

「あぁ、いつの間にか気にならなくなってたな?」
そう言って椅子から垂れているヒラヒラしたスカートの裾を持ち上げる。

「こらこら、スカートを持ち上げるんじゃない。 下着が見えちゃうだろ?」
笑いながら俺を叱りつける。
「でも、本当に時間が経つ程しっくりとしてくるな。 服だけじゃなくって身体も」
そう言って軽く胸を撫で回す。

「こら! 人前で胸にさわらないって約束だっただろ!」
「あ、つい。 ごめん、ごめん」
俺は秋奈に睨まれて慌てて胸から手を放す。

「でも、マジで身体が馴染んでるんだよな。 まるで生まれた時から俺は女だったんじゃないかと思えてくるくらいに」
そう言って自分の身体を見下ろす。

「オーバーねぇ? 私も清彦の身体に馴染んでるけど、生まれた時から男だと思うほどじゃないわよ」

笑って俺の不安を笑い飛ばす秋奈だったが、すぐに真面目な顔で考え込む。

「それとも個人差があるのかな? 皮は着た者の身体を浸食していくって話だから。 精神も浸食し始めてるのかも知れないな」

「いや、ちょっと待て待て待て? このままじゃ俺はオカマになっちまうのか?」
「ならないよ。 長期間その皮を着ていたとしても基本的な精神構造は清彦のままなんだから。 精神が皮の持つ情報を受け入れるだけだって聞いたよ?」
「そうなのか? でもなんか怖いな?」

「まぁ、元の皮を着なおしたらすぐに問題はなくなるわよ?」
「……だな。 帰ったらすぐにお互いの皮を着替えよう。 いくら馴染んでると言っても精神まで女性になってしまうのは勘弁だな。 身体だけが女になるのだったら面白いですむけどな」
そう言って残っていたワインをグイッと開ける。

               *

「ふひゃははは。 いや、最後のワインは余計だったよな」
「ちょっと? いやぁね、酔ってるの?」

「酔ってないよ。 ちょっと足下がふらついてるわりに気分がいいだけぇ!」
「それを酔ってるって言うのよ」
レストランを出た後、俺は急に酔いが回ってきた。 やたらといい気分だった。

思わず路上でワンピースのスカートを翻して踊り出す。

「やめなさい、ばかぁ」
秋奈が俺の身体を抱き留める。

「なんで? いやぁ、この身体は最高だぞ? このスカートから伸びる綺麗でしなやかな足。 ほら、こうやって踊ると胸がぷるんぷるん揺れるし?」
「って、人が見てるでしょ! 足を見せるんじゃありません。 飛び跳ねて胸を揺らすんじゃない」

「約束通り触ってないも〜ん、胸が勝手に躍り出すんだよ? ほらほら」
「この酔っ払い! 身体が違ってるからお酒の回り具合がおかしくなってるのね? 私の身体も酒に弱い方じゃないのに…… タクシー!」

俺は秋奈の止めたタクシーに無理矢理押し込められ、マンションへと帰途についた。

               *

「ホント、大丈夫?」
「大丈夫。 ちょっと足にきてるけど、酔いは醒めてきた」
秋奈に肩を支えながらマンションのドアをくぐる。

「醒めてきたじゃないわよ」
「いや、マジで酒で失敗した事はないんだが、やっぱり身体が違うと勝手も違ってくるのかな?」
キッチンの椅子に腰掛けて秋奈の持って来た水を飲む。

「そうでしょうね。 まさかあなたが路上で色気を振りまくとは思わなかったわよ」
「あはは。 最後の最後で失敗したな。 それでも今日は色々といい経験をしたよ。 それじゃもう戻ろうか?」
俺は首を巡らして秋奈に提案する。

「そうね。 それじゃ服を脱いで。 皮剥丸は皮以外の物は刃を通さないからね」
「そうだったな」
俺はワンピースのファスナーを下ろす為に背中に手を回すが、まだ酔いが残っているせいかうまく指がファスナーを掴めない。

「なにをやってるのよ。 仕方がないわね?」
そう言うと秋奈が俺の後ろに回ってファスナーの先を摘んで下ろしてくれる。

「すまないな」
「酔っ払いさんに文句を言っても始まらないしね」
笑いながらワンピースを開いて、肩から引き下ろすと俺は足を上げてそれを脱ぎさる。

「次はキャミね。 はい腕を上げて」
秋奈の指示に従って両腕を上げると着ていたキャミソールを捲りあげて頭から抜き取る。

そして俺の横に屈み込むとショーツとブラだけになった俺の身体を抱き上げる。

「え?なに?」
秋奈に持ち上げられ途惑う俺。 これってお姫様抱っこってヤツをされてるのか?

「いいから、いいから。 やっぱり男の力って強いのね?」
秋奈がそう言って笑いながら、抱き上げた俺の身体を奥へと運んでいく。

ベッドの上に身体を優しく横たえさせられる。
ふと見上げると秋奈がスーツのネクタイを解いて、シャツのボタンに手を掛けているところだった。

この光景だけを見ると、まるでこれから初夜を迎える新婚カップルのようだな。 そう思うとなんだか面白くなってくる。 
そんな事を考えてしまうのはまだ酒が残っているせいなのかも知れないな。 つい、クスクスと笑ってしまう。

「どうしたの?」
そんな俺を見て秋奈がズボンを脱ぎながら面白そうに尋ねてくる。

「優しくしてね?」
俺は笑いながら秋奈を見上げて、そんな冗談を口にしてみる。

「わかってるよ、清彦」
俺の冗談にのって秋奈が優しく応える。

「ふぅ〜、まだ酒が残ってるみたいだな……」
そう呟いて身体を休めるように目を瞑ると、ベッドが少し揺れる。

俺の背中に手が回されて少し持ち上げられ、背中のブラのホックが外される。 拘束から解放された胸
が揺れる。

「準備が出来たのか? 皮剥丸を……」
そう言って手を出しながら目を開けると……

トランクス一丁になった秋奈がショーツ一枚残した俺に跨がるようにしてマウントポジションを取って面白そうに笑っていた。

「えっと……? 秋奈さん? 皮剥丸はどこに?」
途惑うように秋奈を見上げる。

「ねぇ、清彦〜?」
悪戯を企む子供のような目で笑って俺を見下ろす秋奈。
「な、なんだよ?」

「元に戻る前に女のセックスを楽しんでみたいと思わない?思うよねぇ? 人の皮を着た途端にアソコに指を入れようとしたくらいだもの? 男と生まれて女の快感を味わってみたいと思わないような男は男と言えないよね? だから、どうしても清彦が女の快感を知りたいというのなら手伝うのは吝かではないわよ? それにさっき、優しくしてねって言ったよね?」
そう言って、ニヤニヤと動けない状態の俺を見下ろす秋奈。 これでどう返事をしろと?

「つまり、秋奈は男としての体験をして見たいと?」
「言ってないわよ。私は清彦が女としての体験をして見たいんじゃないかって聞いてるのよ?」
本当にこのお姫様は…… でも、確かに女のセックスに興味はある。 

女のセックスって本当に気持ちがいいのだろうか? 好奇心は抑えきれない。
「はいはい、いいですよ。 俺は女のセックスに興味があります」

「ふふふ、仕方がないなぁ、清彦は。 しょうがないから私が清彦の希望を叶えてあげよう」
嬉しそうに笑いながら俺の胸に手を伸ばしてくる秋奈。

「あ、言っておくけど終わったらちゃんと戻るからな? あ……」
「判ってる、判ってるって。 ほらほら、清彦。レロレロレロ〜」
笑いながら俺の乳首をなめまわす秋奈。 こいつ、自分の身体でも平気でそういう事が出来るのかよ?

「あひゃ、ひゃひゃ……」
秋奈に乳首を責められて思わず手で目を覆い隠すが、声が漏れる。

「ちょっと?なにを色気のない声を出しているのよ?」
「いや、なんか変な感じなんだよ。 ただ、胸を舐められてるだけなのに男の胸とは別の感じが…… 
これは女の身体だからなのか? ふひゃぁ、くすぐったいような、痛いような……」

「気持ちいいような?」
秋奈が俺の言葉を引き取って笑いかける。

「いや、それは……」
「でも清彦は感じてるのよ?ほら、乳首が起ってきた。 これって男性の勃起と同じらしいけど、どうなの? 両方を体験した清彦としては?」
そう言いながら尖り始めてきた俺の乳首を指で摘んで優しく弄ぶ。 

「あひぃ、わ、わからねぇよ。 こんなの較べられねぇって! 誰がそんな事を言ってんだよ?」
「えっと? なんとかいうエロ小説家の書いた小説」

「お前、そんなの読んでるのか? そのエロ小説家は女になった事があるのかよ!俺の前に連れてこい! 皮を剥いで女の身体に押し込めて試させてや…… あひゃひゃひゃあ!」
「はい、はい。 ご託が多いよ? 今は素直に女性の快感を楽しみなさい」
胸を責める秋奈の攻撃が更に激しくなる。 

身体が責めに慣れてきたのか、痛さと快感の度合いの天秤が逆方向に傾いていく。
「はふぅん、あ、あひひ、い、いい……かも?」

「よしよし、馴染んできたみたいね? それじゃ、次は下の方に行くよ? 覚悟はいい?」
そう言うと俺の胸から手を放す。 目を覆っていた手を退けて自分の身体を見下ろすと双丘の丘に尖った小さな果実が実っていた。 
これは…… 乳首が勃起したってヤツか? 胸の先が痛さだけではない感覚でジンジンと感じている。

「あ、あひゃぁ!」
「ふふ、ここを触っただけでそんな反応をするなんて。 清彦、結構感じてたんじゃないの?」
股間のアソコを指でなぞられただけで身体が悲鳴を上げてビクンと震える。

「感じて…… ルのか?身体が勝手に…… あ、ひゃぁい! ゆ、指が股間にめり込んでぇ!」
「うん、ちゃんと孔は出来上がってるみたいだよ? 指が、ほら、こんなに」

「あ、ひゃひゃひゃひゃぁ! い、挿入れるなぁ!し、痺れる」
秋奈に指を入れられ、俺の意思に関係なく感電したように身体が仰け反ってしまう。

「ふふふ、秋奈ちゃんは普段の私よりも敏感みたいね? やっぱり、男が初めて女の快感を味わうから
本来以上に感じるのかしら? かくいう私もほら? こんなに大きくなっちゃってる」
そう言って自分のペニスを持ち上げて俺に見せつける。 

「えっと、ちょっと待て? 本当に普段の俺の時よりでっかくなってないか?」
「女が初めて男の快感を味わってるんですもの、少しばかり過剰に反応するのは仕方がないでしょ? 
と、いうか私のここが爆発寸前みたいに痛くなってきてるの。 ね?そろそろいいでしょ?」

「仕方がないでしょじゃねぇよ!いいでしょじゃねぇよ! それは俺の中にぶち込むんだろ?冗談じゃねぇぞ!」
確かに女の快感を味わってみたいと思ったが、それは快感というよりも拷問じゃねぇか?

「大丈夫、大丈夫、私はいつも清彦のこれを受け入れてるんだから。 だから、今の清彦の身体にこのオチン○ンはジャストフィット!」
目をキラキラさせながら脳天気に宣言して元々は俺の股間に付いていたモノを構える。

「ほ、本当に痛くないんだろうな?」
「ん〜? 私は慣れたけど清彦は初めてだからどう感じるかは保証できないわね? でも大丈夫。 痛
いのは最初だけ」

俺の両足を持ち上げ、強引に割って入るとペニスを俺の股間にあてがい……
「やっぱり痛いんじゃないかぁ! ひやぁ!? 入った、入った、挿入ってきたぁ!!」

「くふふ、処女じゃあるめぇし、なにを乙女ぶってんだよぉ。 さぁ、これからお前をヒィヒィ言わせてやるからな」
楽しそうにエロオヤジのようなセリフを吐いて、俺の中にズブズブとペニスをねじ込んでいく。

「くひゃぁ、入ってる、入ってる。 俺の股間に俺のペニスがぁ! あひゃひゃあ!!ひえぇ!?」
「うるさいわねぇ? もうちょっと色気がある喘ぎ声を出せないの?」

「出せるかぁ。 今までまったくそこになかった場所に異物が入って来てるんだぞぉ! あ、頭が痺れるようでバカになるぅ!」
秋奈のペニスで俺の中が一杯になる初めての感覚。 痛みとも快感ともつかないような衝撃が股間から頭に突き抜けている。

そしてペニスが俺の奥に到達する。 その状態で二人の動きが止まる。

「どう?痛くなかったでしょ?」
「わからねぇ…… これ痛いのか?気持ちいいのか?」
とにく自分の身体が自分の物じゃないみたいな感覚、神経の全てがそこに集まっている。 俺の全てが俺のペニスを包み込み、その大きさや硬さを脳に伝える事にしか使われていない。

「ふぅん?それじゃもっと具体的に判らせてあ・げ・る。 動くわよ?いい?」
そういうと俺の太腿を抱えて腰をゆっくりと動かし始める。

「ちょ、ちょっと……まだ覚悟が…… あ、ひ、ひひ、ひひひぃ」
「だから、もうちょっと色気のある喘ぎ声を上げなさいよ?」
動きながら呆れたように俺を見下ろす秋奈。

「む、むり。 そんな余裕ないって、あひゃぁい、あひ、あひぃ……」
「う〜ん、これもヒィヒィ言わせてる範疇に入るのかなぁ?」
てか、なんでこいつは初めて男を体験してるのに余裕があるんだよ! あ、でもなんだか……

「はひ、はひ、あはぁ、ひひぃ、あ、あん、あぁ……」
バカのように口を開けて秋奈の腰の動きを受け入れる。

「あれ?ちょっと慣れてきた? どう?女の子の感じは?」
「あはぁ、あひ、あひ、ひもちいいはも……、あ、あはぁ、あ、あん、あぁ……」
身体から力を抜いてソレを受け入れ始めると快感が身体中に広がる。 女のセックスってなにも考えずに受け入れるのが基本なのかな?

秋奈が楽しそうに俺の身体を好き勝手に蹂躙する。 俺は秋奈に全てを任せて喘ぎ声を上げながら快感を楽しむ。
……あ、女って楽だよな? 男は頑張って快感を得ようとするけど、女はそれを素直に受け入れてればいいんだから。 俺に向かって股間に腰を打ちつけている秋奈を見てそんなふうに思う。

「どう、清彦? 気持ちいい?」
「あひ、あひ、あは、あはぁ。 いい、凄くよくなってきた…… いい、もっと、もっと……」
あはは、思わずペニスをねだってしまった。 なんだか楽しい。

「ふふふ、言ったな? よろしい、清彦の希望を叶えてあげよう。 うりゃうりゃ、うりゃあ!」
秋奈の腰の動きが速くなる。

「あ、あひぃ、あはぁ、あは、あは、あはぁ! ちょ、ちょっとぉ! だめ、ちょっと、タンマ!」
激しい快感が脳天を突き上げる。 本当にバカになってしまいそうな快感が……

「まだよ? これからが本番なんだから」
俺の胸に顔を近づけたかと思うと乳首を甘噛みして吸い上げる。

「あはぁ、らめ、らめぇ! あはは、乳首が、乳首がぁ!」
「あはは、キヨちゃんは可愛いなぁ? 乳首がどうしたのかなぁ?」
胸から顔を上げて悪戯っぽい目で俺を見つめてくる。

「あはぁ…… はぁはぁ、な、なんでもねぇよ」
「なんでもないんだ? だったら続けるね」
そう言って再び、俺の胸に……

「あひゃぁ! ダメ、感じる、感じすぎる!そこ責めないでぇ! 気が狂うからぁ!ひぃぃん、あはぁ!あはぁぁぁぁぁ! 乳首、乳首が弱点なのかぁ! ひゃめてぇ、もっとぉ!」
思わず両手で顔を隠して嬌声を上げてしまう。 もう自分が何を言ってるのか、理解できない。 

「じゃ、そろそろイっちゃっていい?」
あれからどれくらい攻め続けられただろう。 秋奈がやっとフィニッシュ宣言をする。

男が女の快感に晒されるとあまりの気持ちよさに廃人になってしまうという説をどこかで読んだ気がするがあながち間違ってないのかも知れない。

身体中が気持ちいい。 胸の先が敏感になっている。耳元で囁かれる声に身体が痺れる。脇を舐められて身体が震える。股間に指を入れられて足の先が引きつる。 すでに股間は愛液が溢れかえっているのが確かめずとも判ってしまう。
男のプライドなんて宇宙の果てに飛んでいってブラックホールに飲み込まれてしまった。
女の自覚なんてないが、男の自覚もなくなってしまった。

てか、なんで男初心者の秋奈のペニスがこれだけもつんだよ……?

「やっぱり個人差? 皮を交換しただけだからお互いの表面が入れ替わってるだけで、中身は自分自身のままだから? つまり清彦は女になると本性は脆弱で、私は男になると精力的?」
俺の疑問に笑って応える秋奈。

「いや、それ、俺のプライドをズタズタにしてるよな? あ、あひゃぁぁぁ!」
俺の言葉が終わらないうちに秋奈の腰の動きが最高潮になり、俺の子宮口の入り口をペニスが叩きつける。 俺の下腹の中を強大なモンスターが蹂躙する。 手の平で下腹を押さえるとモンスターが動き回っているのが判ってしまう……

「あ、あひゃぁ! 逝く、逝く、逝くぅ!イっちゃうぅぅ!」
身体を仰け反らせ、酸素を求めるように大きく口を開けて絶叫する俺。
そんな俺を見下ろして楽しそうに俺にペニスをぶち込む秋奈。
「あはははは、イっていいんだよ、清彦。 というか、イっちゃえぇぇぇ!!」
叫びと共に熱い塊が俺の中にぶちまけれられる。

「あ、あ、あ、あぁぁ……」
あ、俺、秋奈に中出しされたのか…… あまりの快感に膣が、いや、全身がビクンビクンと痙攣を起こ
し、俺は意識を手放してしまった。






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