憑依指導
 作:ONOKILL


主人公のプロフィール
氏名:高岡芹奈(たかおかせりな)
性別:女
年齢:19歳
身長:153センチ
スリーサイズ:非公開
職業:女優
漫画かアニメが実写化したような可憐な容姿を持ち、15歳でティーン向けファション誌の読者モデル、16歳で同雑誌の専属モデルとなる。17歳の頃からTVCMやバライティー番組等への出演で注目され始め、高校卒業を機に女優業に進出。初出演したTVの学園ドラマが大ヒットし、その煽りで人気が急上昇した結果、今秋公開予定の映画の主演に大抜擢された。

1. 映画制作会社にて

高岡芹奈(以下芹奈) 「失礼します」
戸川P(以下戸川) 「高岡くん、忙しいところ、よく来てくれた」
芹奈 「戸川Pさんのご希望通り、マネージャーさんを連れずに一人で来ました」
戸川 「うむ」
芹奈 「それでご用件は何でしょうか?」
戸川 「今回の映画の主演が決まったということで、まずはおめでとう。年末の公開に向けてよろしく頼むよ」
芹奈 「はい! 撮影はこれからですが、一生懸命頑張ります!」
戸川 「さて、今日来てもらったのは他でもない、その映画の話を君にしたくて呼んだんだ」
芹奈 「はい」
戸川 「と言うより、君の演技についてだ」
芹奈 「演技、ですか?」
戸川 「君は(映画の)原作のヒロインと瓜二つの容姿で見た目は完璧なんだが、素直に言って演技がかなり下手だな」
芹奈 「はい、…はあ?」
戸川 「で、その演技力だと失敗するんだよ、今回の映画がぁ!」
芹奈 「えええっ!(そんなにストレートに言うわけ? しかもキレ気味。どうして?)」
戸川 「あなたのことが好き、って言ってみて」
芹奈 「…へっ?」
戸川 「だからぁ、あなたのことが好き、って言ってみろ!」
芹奈 「…。あなたのことが好き!」
戸川 「あー、駄目だ。何なんだよ、それ。そこは!じゃなくて♪なんだ。本気で好きなら♪を使うんだよ。あくまでもニュアンスなんだけどな!」
芹奈 「はあ…(てか、それはテメエの好みだろうが(怒))」
戸川 「と言うことで、君の駄目演技では映画が爆死するのが手に取るように分かるんだ。最初の一週目の興業収入ランキングが11位以下で後はジリ貧となり、あっという間に映画館から消える…」
芹奈 「…でも、言わせてもらえば、この手の映画は殆ど爆死していますよ。私の演技が下手かどうかはさておき、どの映画も青春とか難病とかお涙ちょうだいばっかでみんな同じで、企画自体に攻めが見られなくて、そっちの方が悪いんじゃないんですか?」
戸川 「…」
芹奈 「それに映画が爆死したって(私の)人気が落ちるわけでもなく(笑)、ましてや映画会社がつぶれるわけでもないし、誰も困らないんじゃあ…」
戸川 「だ・か・らぁ、爆死したら駄目なんだよ! あの映画の原作は私にとって大事な大事なものなんだ! 青春の思い出なんだよ!」
芹奈 「はあ…(ティーン向け少女コミックが青春の思い出かよ!)」
戸川 「あと、映画に携わる人々のことも考えてみろ! 映画の制作費とか役者のギャラとかその他もろもろで、金が幾ら掛かるのか分かってんのか?」
芹奈 「はあ…(だ・か・らぁ、それは私が悪いんじゃなくて企画が悪いんだって!)」

2. 続けて映画製作会社にて

戸川 「とは言うものの、今から演技の勉強をしてもとても間に合わない。ドラマの演技を見る限り、センス、無さそうだし(笑)」
芹奈 「…(苦笑)(お前に言われたかねーよ(怒))」
戸川 「で、演技をしながら徐々に上手くなる方法がある」
芹奈 「へー、そんなのがあるんだぁ(冷)」
戸川 「その方法とは君に超絶演技が上手いとあるベテラン俳優の魂を憑依させるんだ」
芹奈 「えっ、何、どういうこと?」
戸川 「憑依だよ、魂を憑依」
芹奈 「はあ?(魂を憑依、って何? オカルトチックなやつ??)」
戸川 「ところで君は志村源五郎という俳優を知っているか?」
芹奈 「知らないです(分かった! 憑依、ってホラー映画とかで人に何かが乗り移るやつだ!)」
戸川 「(ちっ、これだから平成生まれは…)志村源五郎先生は昭和の大スターで、日本のありとあらゆる賞を総なめにした素晴らしい演技力の持ち主なのだ。君の身体に志村先生の魂を憑依させて、練習から本番まで君に成り代わって演技をしてもらう。そして撮影を進めてもらいながら君は上手い演技を勉強する。つまり、心ではなく身体で演技を覚えるんだ」
芹奈「憑依されて演技の勉強ねぇ(爆笑) それよりその志村何とか先生って、私、全然知らないし、昭和って言うことはかなりの爺さんだよね。その爺さんなんかに乙女の演技(※)が出来るの?」
(※)今回の映画で高岡芹奈が演じるヒロインは15歳の女子中学生
戸川 「出来る。男女を問わず、下は産まれたての赤ん坊から上は死んだ老人まで年代を問わず、ありとあらゆる人物を最高のパフォーマンスで演じることが出来るんだ」
芹奈 「はあ(けっ、嘘くせぇ。だいたい死んだ老人の役って何なんだよ。そんなの人形でいいじゃねーか、人形で)」
戸川 「志村先生は現在、とある老人ホームに居られる。で、君さえ良ければ、これから二人でその老人ホームに行って演技の勉強をスタートさせる。名付けて“憑依指導”」
芹奈 「おお、作品タイトル!」
戸川 「多少無理やりだが、作者の思いつきだから仕方がない(笑)」

3. 老人ホームにて

戸川 「志村先生、おはようございます」
志村 「あうぅ、あううぅ…」
芹奈 「これが先生? ただの寝たきり老人じゃん(笑)」
戸川 「志村先生の前で言葉をわきまえろ。失礼だぞ!」
芹奈 「すいません…(ちっ(怒))」
戸川 「今回はこのような企画でして…、はい、そうです…、いえ、そうじゃなくて…、その通りです。よくお分かりで…」
芹奈 「…(な、何なんだ、これ? こいつら大丈夫なのか?)」
戸川 「よし、志村先生と話はついた。それでは早速、憑依指導を始めようか」
芹奈 「えっ、ここで? 今すぐ?」
戸川 「そうだ。志村先生の両手を握って目を閉じるだけでいい」
芹奈 「大丈夫なんですか?」
戸川 「なんだ、怖気づいたのか?」
芹奈 「いえ。何かばかばかしいし、やって本当に意味あるのって」
戸川 「ある。私を信じるんだ」
芹奈 「(やばっ、目がすわってるじゃん(怖))はいはい。…こんにちは、おじいちゃん。ほら両手、握りましたよ(作笑)」
戸川 「それでいい。では志村先生、お願いします」
芹奈 「何も起き…、…今回はこの女子(おなご)を演じるのか。宮里りお以来だな」
戸川 「おお、志村先生、肉声での会話は本当にお久しぶりですね。今回も映画をよろしくお願いします」
芹奈 「承知した。任せておけ…、…えっ、今の何? 私、何にもしてないのに勝手に話して、それで身体も動いてた…」
戸川 「安心しろ。君の身体への道は通じた。憑依は無事に完了した」
芹奈 「でもぉ、私は私ですよ。何も変わってないし、さっきはともかく、今は話せるし、身体を自由に動かせる」
戸川 「あれが志村先生の憑依なのだ。ずっと君の身体の中に居たら本体が死んじゃうからね(笑) で、芝居が始まると自動的に志村先生が君の身体に憑依して演技をする。君はそんな自分を、何て言うか、先程みたく近くで眺めるだけでいい。それで撮影が滞りなくスムーズに進む上、君の演技力も勝手に身につくという」
芹奈 「なるほどー。確かにこれだったら簡単だし、一石二鳥ですね(私もセリフを覚えなくて楽が出来る。ラッキーかも)」
戸川 「だろ。これで撮影が終われば、君は一段階も二段階も成長出来る。そして映画の方も必ずヒットする。よろしく頼むよ、高岡芹奈くん」
芹奈 「はい♪、じゃなくて、はい!」
戸川 「分かってるじゃないか(笑)」

4. 撮影開始三日後の撮影所にて

助監督(以下助監) 「監督、凄いですね。予想をはるかに超えた演技力。監督の思い通りに動くだけでなく、アドリブもイケる。別のドラマじゃあ、本当に酷い演技だったのに、今はまるで別人のようだ」
監督 「そうだな」
助監 「若いうちに演技に開眼すると本当に伸びるんですね」
監督 「そうかもな。…よし、この勢いで予定を変更して新たなシーンを追加するぞ」
助監 「新しいシーンって、シナリオにない?」
監督 「そうだ。たった今、思いついた(笑) 彼女ならば、どんなシーンが訪れようと完璧に対応出来るだろう」

5. 撮影開始一週間後の撮影所にて

芹奈 「お疲れさまでしたー」
松本拓哉(以下拓哉) 「お疲れさん。(小さな声で)…高岡さん、今から二人だけで飲みに行かない?」
芹奈 「あっ、いや、でもぉ…(…ヤリチンで噂の松本拓哉か。こいつはまずいな。何とか断らないと…)、私、今日は用…、…分かりました。行きます。連れて行って下さい」
拓哉 「それじゃあ、駐車場で待ってるから(…苦戦すると思ってたけど案外軽いな(笑))」

6. 再び映画制作会社にて

芹奈 「どう言うことよ! 何で私、と言うか志村先生は私に成り代わってあのクソ野郎となんかと寝たの? きっちりと説明して欲しいんですけど(怒)」
戸川 「ああ、それな。これは想像だけど、君が松本拓哉の誘いを断ろうとしたのを、志村さんは演技だと感じ取ったんだな」
芹奈 「確かにあの時は、あいつの誘いを断ろうと色々考えて上手く演じなきゃって…」
戸川 「な。そうだと思った(笑)」
芹奈 「ってことは、撮影であろうと私生活であろうと自分が演技をしなきゃ、と思うと、場所を選ばすに私に憑依してくるわけ?」
戸川 「まあ、必然的にそうなるわな」
芹奈 「うっそ、まじで? 私、あんなの嫌! 志村先生は私の知らないテクニックであいつをメロメロにして、それで私の身体が私以上にエロく見えてきて…、じゃなくてぇ(恥)、とにかく目の前で勝手に身体を動かされて、あんな奴とセックスやられたい放題なんて、ホントありえないんだから(怒)」
戸川 「まあ、君の怒りも分からないでもないが…」
芹奈 「でしょ? だからこの憑依、今すぐに解いてもらえませんか?」
戸川 「とは言ってもなあ、撮影中の君の(演技の)評価がうなぎ登りで今更辞められないんだよな(笑)」
芹奈 「ええっ!?」
戸川 「君にあれと同じ演技が出来るんだったら、志村先生に頼んで憑依を解いてあげてもいいが」
芹奈 「ぐうぅ…」
戸川 「ほら、ぐうの音も出ないだろ?」
芹奈 「ぐうぅ、って言ったじゃんか! ぐう音くらい出るよ、ぐう音くらいは(怒) それはともかく、私は映画以外のことまで勝手に演技されるのが嫌なの!」
戸川 「確かに何でもかんでもはまずいよな(爆笑)」
芹奈 「当たり前じゃん。あと、ここ笑って頷くとこじゃねーからな(怒)」
戸川 「…分かった。ようは志村先生が君に対して余計な憑依をしなければいいんだな?」
芹奈 「そうです」
戸川 「よし。この件は私が何とかしよう」
芹奈 「えっ? …よろしくお願いします(何だ、素直じゃん)」
戸川 「これから君のことは、す・べ・て、私に任せるんだ。いいね?」

6. 高岡芹奈のクランクアップにて

監督 「高岡さん、お疲れ様でした。初めての主演なのによく頑張ったね」
てる子「ありがとうございました。本当にお世話になりました。良い演技が出来たのは全てみなさんのお陰です」
助監 「ほんと人が変わったよな、あの娘。少し前まで演技だけが最高だったのに、全スタッフさんへの心遣いとか、今では全てにおいて最高に見える。あれこそ女優であり、スターだ」
監督 「人間、やりぁ出来るってもんだ」
助監 「本当ですね」
拓哉 「やあ、お疲れさま、芹奈ちゃん」
芹奈 「拓哉さん、こちらこそお疲れ様でした。お先にあがらせていただきます。この後も頑張ってください」
拓哉 「(小さな声で)…芹奈ちゃんの打ち上げが終わったら、二人っきりでこの間みたいに、ね♪」
芹奈 「はい、喜んで♪」

7. 打ち上げ後のラブホテルにて

芹奈 「はあん、ああん、ああああん」
拓哉 「芹奈ちゃん、気持ちいい?」
芹奈 「きもち、いい、せりな、まん〇のお、おくが、あっ、ああぁ、あたって、くうぅ、くうううぅ、きもちいいよぉ」
拓哉 「もっと気持ちよく、ああっ、させてやる、からな、はあ、はあ(…こいつ、今日と言いこの間と言い、なんてテクニックなんだ…。完全にペースを握られて…、本当に19か? ダ、ダメだ、また俺の方が先に…、イッちまいそうだ…)」
芹奈 「ひやぁあ、たくやさん、らめえ、いやぁああ、らめえ、イッちゃう、イッちゃう、せりな、イッちゃうううぅー!!」

8. 高岡芹奈のクランクアップと同日の老人ホームにて

介護士A(以下介A) 「こんばんは、志村さん。…で、どうなの調子は?」
介護士B(以下介B) 「そこに貼ってあるカレンダーを見つめながら一生懸命話しかけてくるんですよ」
志村 「あうぅ、あううぅ…」
介A 「えっ、何を言っているの? うーん、これじゃあ、分からないわね…」
志村 「あっ…ああぁ…、…あうぅううっ…(泣)」
介A 「ど、どうしたの? どうして急に泣くの? 何があったの?」
介B 「最近、人が変わったようによく泣くんですよ」
介A 「そうなんだ。志村さん、大丈夫? 何が問題なのかしら? …それより、志村さんのパンツ、替えた? この辺から何だか臭うんだけど」
介B 「いえ、まだです。すいません。すぐにやります」
志村 「ああう、あああぅ(恥)」
介B 「うわぁ!」
介A 「あらら、うんちまみれ。しかも物凄い下痢(笑) 下痢状のうんちを漏らして下半身全体が気持ちが悪くて、それを訴えたくて泣いていたのね」
志村 「あぁああ…、うぅうう…」
介A 「気づかなくてごめんね。パンツを急いで交換するから待ってて。…先に下半身のうんちを全部拭き取ってくれる?」
介B 「はい」
志村 「あぁ、あああぁー(嫌) あうううぅー(嫌)」
介B 「あのぉー、拭き取ってたら、コレ、勃起しちゃいました(苦笑)」
介A 「ったく、男ってやつは(苦笑)」
志村 「…あうぅ、ううん、うううん(違) うぅううっ…(涙) うっ、うう…、うわぁあ、わぁあ、あぁあああーん!!(号泣)」

おわり

あとがき
高岡芹奈さんはクランクアップの打ち上げが終わってから二日後(笑)、無事に元の身体に戻り、その後は演技が格段に上手くなりましたとさ。
ちなみに肝心の映画の興収は…、公開時のランキングをお楽しみ、と言うことで(笑)







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