政美が仕返ししたいのは・・・(最終話)
注)皮となった良晴の意識を「良晴>」と書いています。
待ち合わせ場所は、時間も遅いという事で直接「遊園地」の入口。
先ほど渡し忘れていたと引き返してきた美月本人から携帯電話を
預かっている。
美月(政美)は、待ち合わせ時間よりも10分ほど早く遊園地の入口に着くと
その携帯電話にあらかじめ登録してあった伸吾の携帯に電話をかけはじめる。
プルルルル・・・プルルルル・・・
伸吾:「はい。あ、美月か。」
美月(政美):「うん。今どこにいるの?」
伸吾:「もうすぐ入口に着くよ。美月はどこにいるんだ?」
美月(政美):「もう入口に来てるの。だから早く来てよ。」
伸吾:「分かった。すぐに行くから待っててくれよ。」
美月(政美):「うん。分かった。」
美月(政美)はそう言うと、電話を切った。
美月(政美):「レディーを待たすなんて、やっぱりダメな男ね。」
良晴>まだ待ち合わせの時間になってないだろ・・・
良晴の言うとおりだ。
もう少し時間があるというのに、そんな愚痴を言っている。
美月(政美):「早く来てよ。みんながジロジロ見ていくし・・・」
遊園地に入っていく男共がチラチラと美月(政美)の方を見ていくのが
嫌なのだろう。
まあ、このスタイルにこの服装じゃ、いた仕方がないか・・・
入口から少し離れた壁にもたれかかり、伸吾が来るのを待つ。
美月(政美):「まだかなぁ・・・」
ここから早く離れたいという意味で、伸吾が来るのが待ち遠しい。
良晴>そんなに恥ずかしいならしゃがんで俯(うつむ)いていればいいじゃないか・・・
美月(政美):「あ・・・」
美月(政美)の身体が、自然にその場にしゃがみ込むと、
両腕で膝を抱えるようにして膝小僧の上におでこを置いた。
美月(政美):「ちょ、ちょっと、これじゃあ全然見えないじゃない。」
良晴>この方がまわりが気にならなくていいだろそれより少し楽しもうぜ・・・
美月(政美):「良晴ったら、ねえっ。前が見えないよ・・・・あ、ちょ・・・・よ、良晴・・・」
良晴>政美と同じ感覚を楽しめるってほんといいよな・・・
美月(政美):「・・・・・もう・・・こ、こんなところで・・・」
周りには見えないが、身体を抱えるようにしてうずくまっている美月(政美)の
胸は、まるで誰かに揉まれている様に刻々と形を変えている。
良晴が自分で胸を揉むように動いているのだ。
自分で動いていても、その動きから伝わる胸の感覚は
政美と同じように味わう事が出来る。
良晴>うっ・・・どうして女性の胸ってこんなに気持ちがいいんだろ・・・
美月(政美):「・・・・・うっ・・・・ううん・・・・・」
自分で身体を動かす事が出来ない上、胸を揉まれている美月(政美)。
もしかしたらみんなに見られているのではないだろうか・・・
そう思うと、とても恥ずかしい。でも、その恥ずかしさが逆に快感を
引き起こしているような気もする。
美月(政美):「や、やめなさいって・・・そんなに胸を動かさないで・・・」
良晴>俺が気持ちいいって事は、政美も同じように気持ちいいってことだ・・・
嫌がっているみたいだけど、きっと政美も・・・
良晴の考えは当っていた。だが、もともと女性の身体として生まれてきた
政美と、つい最近女性の快感を覚えた良晴とでは
その感覚は違うのだ。
美月(政美)も気持ちいいとは思っているが、良晴ほどの「快感」は
得ていない雰囲気。
美月(政美):「も・・もう・・・やめてよ良晴・・・みんなが見てるかも
しれないじゃないの。」
良晴>そうか?
美月(政美)の頭がくいっと持ち上がり、周りをキョロキョロと見渡す。
意識しすぎているのか・・・
歩いている人たちは、美月(政美)の事を特別視していない。
良晴>誰も見てないって・・・
前を向いた状態でも、胸はモゾモゾと動きっぱなし。
さすがに美月(政美)も気持ちよさが大きくなってきている。
美月(政美):「はぁ、はぁ・・・んっ・・・良晴、このくらいでやめてよ。でないと私・・・」
いつの間にか美月(政美)の呼吸が乱れている。
そんな美月(政美)を体全体で感じることの出来る良晴は、
そのまま政美と共に、更なる快感を求めたいという気持ちになった。
だが、その願いは叶えられない。
目の前に伸吾が現れたのだ。
美月(政美):「あ、良晴っ!ほらっ!」
良晴>ちぇっ・・いいところだったのに・・・
そう思いながら美月(政美)に身体の主導権を譲る。
ゆっくりと立ち上がった美月(政美)が、両手を後ろに回して
可愛らしく首をかしげる。
伸吾:「ごめん、待ったか?」
と声をかけながら、美月(政美)の全身を眺める。
美月(政美)のスタイルのよさがとても分かる服装。
しばし見とれる伸吾・・・
美月(政美):「待ったかって・・・さっき電話で話したでしょ。
あの時にはもうここに着いてたんだから。」
伸吾:「・・・あ、ああ、そうだよな。ちょっと用事があって遅くなったんだ。」
美月(政美):「用事ってなによ。まさか他の女の所に行ってたんじゃ
ないでしょうね。」
伸吾:「そ、そんなわけないだろ。今日は美月からデートに
誘ってくれたんだからさ。そんな事より、早く中に入ろうぜ。」
美月(政美):「ふ〜ん・・・」
良晴>結構政美もきつい事言うな・・
美月(政美)が、わざと疑っているような表情を作る。
伸吾:「そんな顔するなよ。ほんとに違うんだからさ。」
美月(政美):「・・・そう、それならいいけどね。」
良晴>よし、ここで笑顔を作って腕を絡ませてやるんだ!
美月(政美):「あ・・」
美月(政美)の身体が勝手に動き始めると、伸吾の腕に
自分の腕を絡ませた。そして、伸吾の顔を見つめ、
ニコッと微笑んだのだ。
伸吾:「み、美月・・」
美月(政美):「あ・・・そ、その・・・は、早く入りましょ。」
伸吾:「あ、ああ・・・」
自分から腕を組んできた美月(政美)に、伸吾は驚いた。
今までこんな事なかったから・・・
美月(政美)もどう話せばいいのか迷ってしまったが、
とりあえず言葉を繋ぐ事が出来たのでホッとした。
伸吾:「ちょっと待ってろ。入場券を買ってきてやるから。」
普段より積極的な美月(政美)に恥ずかしさを覚えた伸吾が
一人で入場券を買いに走る。
美月(政美):「ねえ良晴、今のあいつの顔見た?
赤かったんじゃない?」
良晴>照れてるのさ、きっと普段の美月はこんな風に
接してないんだろうな・・・
・・・別に二人は会話をしているのではない。
美月(政美)が良晴に話し掛けたことに対して
良晴が思っているだけなのだ。
でも、美月(政美)はきっと良晴が返事をしてくれていると
思っている。
しばらくすると、伸吾が手に入場券を握り締めて近づいてきた。
伸吾:「お待たせ。」
美月(政美):「うん。」
美月(政美)は入場券(何でも乗れるパスポート)を受け取ると、また伸吾の腕に
自分の腕を絡ませた。
美月(政美):「さあ、行きましょうか。」
伸吾:「ああ。」
二人並んで入場口まで歩く。
まあ伸吾もカッコイイ事はカッコイイので、二人で歩くと
とても見栄えがよい。
数組のカップルが、二人の様子を見ながら通り過ぎる。
その視線を気にしながら入場口を通ると、
これまでより大きなBGMが聞こえてきた。
伸吾:「さて、まずは何がしたい?この前の電話で
お化け屋敷に入りたいって言ってたけど、先に行くか?」
美月(政美):「電話で?あ、ああ・・・そっか。電話でね・・・」
美月(政美)は、きっと芳雄が電話で伸吾に話したのだと確信した。
ちゃんと道筋はつけてくれているのだ。
美月(政美):「そうね。じゃあお化け屋敷に行きましょうか。」
伸吾:「ああ。でも俺、あんまりお化けは得意じゃないんだよな。」
美月(政美):「ふ〜ん・・・見かけによらず弱虫なのね。」
伸吾:「そ、そんな事ないけどなっ。」
弱虫と言われて、少し腹が立つ伸吾。
良晴>政美もなかなかうまいじゃないか。その調子だぜ・・
組んでいた腕を解(ほど)き、先に歩き出す。
伸吾:「早く来いよ。」
美月(政美):「分かってるわよ。」
美月(政美)がうれしそうに後ろをついて行く。
美月(政美):「仕返し第1弾っ!と行きましょうか。」
良晴>ああ・・
伸吾とともにお化け屋敷の入口にたどり着くと、
入口の前にいる係のお姉さんに入場券を提示して中に入る。
小さな入口をくぐると、中は非常に暗い雰囲気を漂わせていた。
もちろん照明も殆どついていないので暗いのだが・・・
ドライアイスでひんやりした空気が更に恐怖感をそそるようだ。
伸吾:「おい、美月が先に歩けよ。」
美月(政美):「やっぱり怖いんだ。」
伸吾:「ば、ばかだなぁ。後ろからお化けが歩いてくるかもしれないから
後ろに付いててやろうと思っただけじゃないか。」
美月(政美):「ふ〜ん・・・それならどうしてさっきから私の手を
ギュッと握ったままなの?」
伸吾:「あっ!」
伸吾はパッと美月(政美)の手を離した。
いつの間にか美月(政美)の手を握り締めていたのだ。
それはもちろん握りたいからじゃなくて、怖いから!
伸吾:「に・・・握ってやってただけだろ。」
美月(政美):「大丈夫よ、私、全然怖くないから。」
そう言うと、先にスタスタと歩き出す。
伸吾:「お、おいっ!ちょ、ちょっと待てよ!」
伸吾も慌てて美月(政美)の後をついていく。
薄気味悪いBGMが流れている中を、二人はゆっくりと歩いた。
ふと、そこに現れたのは唐傘お化け。
ふわふわと薄暗い光を放ちながら宙に浮いている。
美月(政美):「まったく子供だましよね、伸吾。」
美月(政美)が伸吾に話しかけながら、その表情を見てみると・・・
どうやら表情が固まって声も出ない雰囲気。
まさかこんな事で怖がるなんて・・・
美月(政美):「・・・きっと気絶するわ・・・」
良晴>こいつ・・・・ションベン漏らすぜ・・・
そう思いながら、更に奥に進んで行く。
すると、今度は道の横に反対側を向いてしゃがんでいる女性を発見。
少しづつ近寄って行くと、その女性はゆっくりと立ち上がり、
こちらに振り向いた。
美月(政美):「きゃっ!」
伸吾:「う・・・うわぁっ!」
女性の顔には目や鼻、口がなかった。
いわゆる「のっぺらぼう」とういやつだ。
美月(政美)も少し驚いたが、伸吾はしこたま驚いた。
美月(政美)の腕をギュッと掴んで放さない。
美月(政美):「ちょ、ちょっと、いつまでしがみついてるのよ。」
伸吾:「うぐっ・・・・・」
美月(政美):「離しなさいよ。歩けないじゃないの。」
伸吾:「だ・・・だって・・・俺・・・」
美月(政美):「だらしないわねぇ・・・」
伸吾の足を見ると、ガクガク震えている。
顔すらあげることが出来ず、俯いて目を閉じているようだ。
良晴>よぉし、ここで駄目押しといくか・・・
美月(政美):「あ・・・」
良晴は、美月(政美)の身体を使って伸吾に「仕返し第1弾」を開始した。
伸吾の身体を無理矢理離し、自分の正面に立たせる。
そして、伸吾の両肩に両手を乗せた。
伸吾は俯いたままだったが、ゆっくりと目をあけて美月(政美)と
視線を合わせる。
美月(政美)は軽く笑っているように見えた。
伸吾:「な、なんだよ・・・」
じっと伸吾を見つめる美月(政美)に話し掛けると・・・
美月(政美)の顔がドロドロと溶け始めたのだ。
伸吾:「ひっ・・・・・」
顔の皮膚が垂れて、胸まで落ちてゆく。
いつの間にか足元には、溶けた美月(政美)の皮膚がドロリと
溜まっていた。
伸吾:「う・・・うわぁぁぁ!」
人一倍大きな悲鳴を上げる伸吾。
逃げようとするが、美月(政美)が両肩をがっしりと掴んでいるので
逃げる事が出来ない。
その間にも、足元にはドロドロと美月(政美)の皮膚が広がって行く。
伸吾:「ひっ・・・・ひっ・・・・」
力が抜け、白目を剥(む)いた伸吾。
そのまま天を仰ぐようにして、ガクッとその場に倒れこむ。
完全に気絶してしまったようだ。
美月(政美):「うわぁ・・・ダサ〜ッ!ほんとに気絶しちゃった。」
良晴>仕返しったって、全然手ごたえない奴だな・・・
その姿に呆れる美月(政美)。
しかし、その横でもう一人床に倒れている人がいる。
美月(政美):「あっ、まずかったかな・・・」
それは、先ほど二人を驚かせたのっぺらぼうの女性だった。
美月(政美)の姿を見て、伸吾と同じく気絶してしまったようだ。
まあ無理もないだろう。
良晴>まずいな。とりあえず伸吾を担いで表に出るか・・・
元通り政美に貼り付いた良晴は、美月の容姿を作った後
伸吾を引きずりながら出口を出た・・・
美月(政美):「ちょっと怖くて気絶しちゃったみたいで・・・」
出口にいた係の男性にそう話すと、美月(政美)は近くの
ベンチに伸吾を座らせ、ほっぺたをパシパシと叩いた。
伸吾:「う・・・う〜ん・・・」
伸吾がゆっくりと目を覚ます。
視界がぼやける中、少しづつ美月(政美)の顔が見えてくる。
伸吾:「わっ!」
伸吾は驚いて美月(政美)から離れた。
美月(政美):「な、何よ急に。」
伸吾:「だ、だってお前・・・・」
美月(政美):「お前って・・・お化け屋敷くらいで気絶しないでよね。
伸吾を運び出すの、大変だったんだから。」
伸吾:「お前・・・お化けなのか・・・」
美月(政美):「何訳の分からない事言ってるのよ?」
伸吾:「だ、だって・・・お前の顔が・・・」
美月(政美):「私の顔がどうしたのよ。」
伸吾:「顔が・・・・」
美月(政美):「だから何よ。」
伸吾はじ〜っと美月(政美)の顔を眺めた。
しかし、お化け屋敷で見た時のように、皮膚が溶けた後などは
見当たらない。
伸吾:「・・・・いや・・・・何でもない・・・」
美月(政美):「男らしくないね。何が言いたいのならはっきりしてよ。」
伸吾:「あ、いや・・・別に・・・」
良晴>情けねぇやつだな・・・
美月(政美):「私、喉が渇いちゃったわ。ジュースでも買ってくる。」
伸吾:「あっ、そ、それなら俺が買ってくるよ。」
美月(政美):「いいよ別に。あそこの自動販売機で買ってくるから。」
伸吾:「いいって、俺が行くから。何がいい?」
美月(政美):「・・・じゃあオレンジジュース。」
伸吾:「OK、分かったよ。ちょっと待っててくれ。」
美月(政美):「うん。」
伸吾はズボンの後ろポケットから財布と取り出しながら
自販機に歩いていった。
美月(政美):「もうタジタジって感じね。いい気味だわ。
あんなに情けない男だとは思っても見なかったし。」
良晴>学校にいる時とは大違いだな・・・
伸吾がお金を入れ、ボタンを押している姿が見える。
美月(政美):「でも美月も・・・あはっ、呼び捨てしてるし(笑)。
美月さんもかわいそうよね。あんな男に好きになられちゃって。
それでも美月さんはあいつのことが好きなのかなぁ・・・」
良晴>まあ、好きって気持ちは誰にも止められないからな。
どんな奴でも、好きになったらイイところしか見えなかったりして・・
伸吾が両手に缶ジュースを持ちながら戻って来た。
伸吾:「はい。」
美月(政美):「ありがと。」
伸吾からオレンジジュースを受け取ると、フタを開けて飲み始める。
美月(政美):「ふぅ・・・」
伸吾:「これからどうする?少し日も落ちてきたしさ。」
美月(政美):「そうねえ。もう一度お化け屋敷にでも行く?」
伸吾:「そ、それだけは勘弁してくれよ。他のアトラクションだったらなんでも
いいけどさ。」
美月(政美):「冗談よ。そうね、それじゃあ観覧車にでも乗ろっか。
夕焼け空が綺麗に見えるかもしれないし。」
伸吾:「いいね、それ。そうしよう。じゃあ飲み終わったら行こうか。」
美月(政美):「うん。」
・・・二人はしばし、たわいもない話をした。
美月(政美)は、出来るだけ話が分かるような、ごく一般的な
内容を切り出す。
伸吾もその内容に乗ってくるので、学校の話や友人の話などの
政美が知らない事には発展しなかった。
良晴>政美もなかなかやるよなあ・・・
二人の雰囲気を眺めながら良晴は思った。
良晴は、たまに美月(政美)の身体を動かし、足を組みなおしたり
胸の谷間を覗かせるような姿勢をそれとなくとらせる。
伸吾はその魅力的な太ももや、セクシーな胸の谷間に
目が釘付けになる。そんな視線を感じていた美月(政美)も、気付かない
フリをしながらずっと話をしていたのだ。
良晴>俺より助平な奴だな・・・
少しづつ太陽が落ちてゆく。
伸吾:「そろそろ観覧車に乗ろうか。」
美月(政美):「うん。」
その返事がきっかけで、二人は観覧車に向かって歩き始めた。
すでに観覧車の前には、綺麗な夕日を見ようとする人たちが結構並んでいる。
10分ほど並んでいただろうか・・・
順番が回ってきたので、4人乗りの観覧車に二人で乗り込む。
始めはお互い向かい合うように席に座る。
係の人がドアを閉めると、二人は外を見た。
ゆっくりと地上が離れて行く。
美月(政美):「何分くらいで回るのかな・・」
伸吾:「さあ。ここの観覧車は大きいから15分くらいじゃないか。」
美月(政美):「そう・・」
徐々に小さくなる地上の人たちを見ている美月(政美)。
夕日のオレンジ色が美月(政美)の顔を照らしている。
その切ない表情は、伸吾の心を深く捕らえていた。
伸吾:「美月・・・」
美月(政美):「何?」
伸吾:「・・・あのさ・・・今日は凄く魅力的だよな・・・」
美月(政美):「今日は・・・って、いつもは魅力的じゃないの?」
伸吾:「い、いや。そういう事じゃなくて、今日は特に・・何ていうか・・その・・」
美月(政美):「さては私がこんな服着てるからでしょ。あっ。」
良晴>その言葉を言ったらこのポーズでしょう・・・
美月(政美)は・・・いや、良晴は座ったまま伸吾の前で前屈みになり
両方の二の腕で胸をギュッと寄せてみせた。
少し口元に微笑を持たせながら、伸吾を誘惑するような表情で見つめる。
薄い水色の長袖Tシャツの襟元から胸の谷間が覗いている。
伸吾:「あっ・・・」
美月(政美):「・・・・い・・・今、服の中、覗いたでしょう。」
言葉を詰まらせながら、恥ずかしそうに椅子に座り直す美月(政美)。
伸吾:「べ、別に覗いてなんか・・・・」
ストレートに覗いたでしょうと言われると、返す言葉がない。
美月(政美):「いやらしいんだから。」
伸吾:「・・・・」
良晴>男の性(さが)だな・・・
しかし、学校ではあんなに偉そうにしている伸吾が
美月の前ではこれほどだらしないとは・・・
よほど美月の事がお気に入りらしい。
二人はしばらく何も話さず、外の景色を見ていた。
観覧車が一番高いところまでたどり着くと、
大きな夕日と赤く染まる雲が綺麗なグラデーションを披露している。
美月(政美):「きれい・・・・」
伸吾:「ああ。」
ゆっくりと下に降りてゆく観覧車でその美しさに見とれる二人。
15分なんてあっという間だ。
地上にいる人たちがだんだんと大きくなり、係の人がドアに手を
かけて横に開いた。
少しバランスを崩しながら観覧車から降りる。
美月(政美):「綺麗だったね。」
伸吾:「ああ、凄く綺麗だった。」
ああやってゆっくりと綺麗な景色を眺めていると、少し心が
洗われる様な気がする。ちょっと大人になった気分・・・
美月(政美):「ねえ・・・遊園地を出て海辺の砂浜に行かない?」
伸吾:「海辺に?」
美月(政美):「うん。なんだかゆっくりと海の景色を見たくなっちゃった。」
伸吾:「もうアトラクションとか乗らなくてもいいのか?」
美月(政美):「うん。だめ?」
伸吾:「美月がいいなら・・・別に構わないけど。」
美月(政美):「それじゃ、行こっ。」
伸吾:「あ、ああ。」
せっかくパスポートを買ったのに、二つしか楽しまないなんて・・・
ちょっと勿体無いと感じながら、美月(政美)と遊園地を後にする。
遊園地の横はすぐに海が広がっていて、結構綺麗な砂浜がある。
二人は5分ほど歩き、砂浜に到着した。
波の音と海の香り。
夕日に照らされて、遠くの海がキラキラと光っている。
伸吾:「ちょっと座るか。」
美月(政美):「うん。」
二人は砂浜に横に並んで座った。
体操座りして海をじっと眺める。
他にも数組のカップルが同じように座っているのが見えた。
美月(政美):「楽しかった?」
伸吾:「美月は?」
美月(政美):「楽しかった。」
伸吾:「俺も楽しかった。」
美月(政美):「ほんとに楽しかったの?」
伸吾:「ああ。楽しかったよ。ちょっと怖い思いもしたけどな。」
美月(政美):「そっか・・・・あ・・・」
その言葉をきっかけに、美月(政美)の身体が自然と動き始める。
お尻に付いた砂を払うと、伸吾の前に行って両足を開かせる。
そして、その足の間に後ろ向きになって座り込んだのだ。
両手で伸吾の腕を掴んで、後ろから自分の身体に抱きつかせた美月(政美)。
周りから見ると、よほど仲のよいカップルのよう。
良晴>そろそろクライマックスだぜ・・・
伸吾は、美月(政美)の髪の毛(と言ってもカツラだが)に鼻をくすぐられる感じがした。
美月からこんなに接近してきたのはこれが始めて。
うれしそうに両手にギュッと力を入れてお腹のあたりを抱きしめる。
それに対して、特に嫌がる様子でもない美月(政美)。
良晴>もうそろそろいいだろ・・・
良晴が美月(政美)の手の自由を奪う。
美月(政美)は勝手に砂浜に文字を書いている指を見ていた。
良晴が伸吾にバレないように、そっと書いている。
コンタクトレンズを外せ・・・
そう書かれている。
そんなことをしたら政美の声に戻ってしまう。
なぜピンポイントコンタクトレンズを外さなければならないのか?
美月(政美)には理解できなかった。
良晴>早くしろよ!
いいから早く外せ・・・
新たに砂浜に文字が書かれる。
美月(政美):「そんな事言ったって・・・」
伸吾:「何かいったか?」
美月(政美):「えっ、あ、な、なんでもない・・・」
伸吾:「そう・・・」
伸吾はずっと美月(政美)を抱きしめたまま。
よほどうれしいのだろう。
美月(政美)のぬくもりをずっと感じているようだ。
良晴>何やってんだよ政美。俺が外すぞ・・・
イライラする良晴は、砂のついた指をふくらはぎに擦(こす)りつけて綺麗にした後
美月(政美)の目に近づけた。
美月(政美):「・・・・」
そこまでするのなら何かあるんだと思った美月(政美)は、指に力を入れて
自分で外すと合図した。
それが分かった良晴が力を抜く。
美月(政美)はそっと両目にはめていたピンコンタクトレンズを外した。
すると、良晴が手を動かして短パンのポケットにコンタクトレンズをしまいこんだ。
伸吾:「何しているんだ?」
ごそごそとしている美月(政美)に伸吾が話し掛ける。
良晴が美月(政美)の頭を左右に振る。
伸吾:「ん?」
すでに政美の声に戻っている美月(政美)。
良晴は美月(政美)の身体を抱きしめている両腕を
掴むと、そっと上に移動させて胸に触れさせたのだ。
美月(政美):「あっ!」
伸吾:「えっ?!」
二人は驚いて声を上げた。
セーターの上から伸吾の両手を押し付ける美月(政美)。
美月(政美)の柔らかい胸の感触が両手いっぱいに伝わってくる。
伸吾:「み、美月・・・・」
美月(政美):「あ・・・や・・・やだ・・・」
感激のあまり?それとも政美の声がかすれていたから?
政美の声に戻っている事に気付かない伸吾。
全神経を手のひらに集中させて、その柔らかさを堪能している。
その二人の背後に近づく人物が一人・・・・
みだらな行為をしている二人を見ながら声をかけたのは・・・
「ねえ、何やってるのよ。」
その声にビクッとした伸吾がサッと後ろを振り向くと、
そこには何と、美月が腕組をして立っていたのだ。
言葉を失う伸吾。
美月:「ねえ伸吾。さっきから何やってるのよ。」
伸吾:「み、美月??えっ?」
何が起こっているのか全然分からない。
自分の目の前にいるのも美月だし、後ろで立っているのも美月。
どうなっているんだ?
美月:「仲良さそうにして・・・その手は何しているのよっ。」
強い口調で伸吾を攻める。
伸吾:「あ・・・あれ?ど、どうして美月が二人?」
伸吾が再び前を見ると、美月(政美)の髪が妙に短くなっているのに気がつく。
良晴がとっさにカツラを外して、セーターの中に隠したのだ。
伸吾:「・・・・」
恐る恐る前に座っている美月(政美)の顔を覗き込んでみると・・・
伸吾:「げっ!・・・お、お前は・・・」
政美:「ああ・・・も・・もう・・・いつまで揉んでるのよ・・・」
そう、いつの間にか顔だけが政美に戻っていたのだ。
驚いて両手を胸から離す伸吾。
美月:「信じられない。わたしと約束してたのに・・・」
伸吾:「あ・・・な・・・なんで?どうなってるんだ?」
美月:「私と遊園地に行くって言ってたのに・・・
他の女の子と付き合いたいなら始めからちゃんと言ってよ。
もう二度と私に近寄らないで!」
美月が怒りながら砂浜を後にする。
伸吾:「ち、ちょっと!」
何がどうなっているんだろうか・・・
青ざめた顔をする伸吾だが、今度は前に
座っていた政美が立ち上がる。
政美:「二股かける男なんて最低よね。」
そう言うと、お腹を押えながら美月と同じく砂浜を後にしたのだ。
伸吾:「な・・・一体何がどうなっているんだ・・・」
今起きた事が全く理解できず、ただ砂浜で腰を抜かしている伸吾であった・・・
・・・その日の夜
三人は良晴の家に集まっていた。
良晴は既に政美の身体から離れてちゃんと服を着ている。
芳雄:「どうだった?仕返しのほうは?」
政美:「うん。スッキリしたよ。二人ともありがと。」
良晴:「しかしあの伸吾っていう男はシケたやつだよな。
あれほど怖がりで女にだらしないとは思わなかったよ。」
政美:「それよりね、どうしてあそこに美月さんが来たんだろ。
芳雄があの時間に砂浜に来るように言ってたの?」
芳雄:「ん〜・・・まあ色々とな。その辺は秘密さ。」
政美:「この服を持って来てくれたのも美月さんだし・・・」
まだ政美は美月から借りている服を着ている。
芳雄:「その服は政美が持っていろよ。」
政美:「え、でも返さないと・・・」
良晴:「いいからもらっておけよ。別にいらない服らしいからさ。」
政美:「ほんとに?美月さんがそう言ったの?」
良晴:「そうそう。そういう事だからさ。お前が持っていればいいの!」
芳雄:「あのさ、それより細胞均一化チップは最高だっただろ。」
変に突っ込まれる事を恐れた芳雄が、話題を変える。
良晴:「そうだな。ずっと政美の身体にへばりついてたけど
ぜんぜん疲れなかったし。ただ、あまり楽しめなかったな。」
政美:「十分楽しんだじゃないの!あんなに人の身体を触りまくっていて。」
良晴:「そんなに触らなかっただろ。」
政美:「すごく恥ずかしい思いをしたんだから。」
良晴:「ちょっとあいつに胸を触らせてやっただけじゃないか。」
政美:「それ以外にも胸を見せたり遊園地の入口で変な事したじゃない。」
良晴:「あ〜、そうだっけ。そうそう芳雄。このチップって面白い使い方があるぞ。
これって身体を覆った後も形を変えられるし、神経も繋がってるからさ、
自分で胸を動かすとまるで揉まれている様に感じるんだぜ。」
芳雄:「ああ、なるほどな。自分が動くって事はそういう事かもしれないな。」
良晴:「背中の部分を指で撫でるように動くと、自分がまるで背中を撫でられている
ように感じることが出来るんだ。なあ政美。」
政美:「それより私の話はどうなったのよ!」
良晴:「そう怒るなよ。仕返しできたんだからそれでいいだろ。」
政美:「それとこれとは別なのっ。」
芳雄:「まあまあ。二人とも目的が達成できたんだからいいじゃないか。
素直に元通り仲良くやろうや。なっ!」
良晴:「そうそう。また助けてやるから。」
政美:「もうっ。そんな事言って・・・」
三人は、このあとしばらくガヤガヤと話したあと、それぞれ自分の家に戻って行った・・・
・・・次の日
学校の昼休みに伸吾と美月の様子をうかがってみると、
ちょうどこんな話を聞くことが出来た。
伸吾:「美月ごめん。昨日はどうかしてたんだ。どうしてあの子がお前に見えたんだろ。」
美月:「え、何の話?」
伸吾:「何の話って、昨日の事さ。」
美月:「昨日の事って?」
伸吾:「とぼけないでくれよ。この前の女の子と遊園地に行った話さ。」
美月:「遊園地・・・・昨日?」
伸吾:「ほんとに悪いと思ってるよ。もうあんな事もしないからさ。」
美月:「あんな事って?」
伸吾:「・・・・あいつの胸を揉んだことだよ・・・」
美月:「む、胸を揉んだ・・・・」
美月には、伸吾が何を言っているのかよくわからなかった。
たしか伸吾は、日曜日は用事があるからといって携帯電話で
美月とのデートをキャンセルしたはず。
それなのに伸吾は・・・
美月は、日曜日に他の女の子と遊園地でデートをして、更に胸まで揉んだという伸吾の告白を
許す事が出来なかった。
美月:「し・・・信じられない・・・そんな事よく平気で言えるわね。
もう二度と私の前に現れないでっ!」
伸吾:「えっ・・・・だって・・・」
美月:「もうっ!うるさいのっ!あっちに行ってよ。」
伸吾:「み、美月・・・」
美月:「ふんっ!」
美月が怒りながら教室に歩いて行く。
その様子を見ていた良晴たちは、ゲラゲラと笑い転げたのだ。
政美:「あの二人、もう終わりね。」
良晴:「そうだな。あの様子じゃ、まず無理だろ。」
芳雄:「おまえらひどい事するよなぁ。」
良晴:「お前が一番酷いんじゃないか。」
芳雄:「あ、そうだっけ?」
政美:「これって芳雄のせいかな?」
芳雄:「またそんな事・・・・」
三人は少し悪いと思いながらも、楽しそうに教室に向かった。
また昔の仲良し3人組に戻ったようだ。
芳雄:「さて、このチップも使える事が分かったし・・・
いくらで貸し出そうかな・・・」
芳雄はまた次の研究費を稼ごうと、裏のルートに情報を
流す事にした。
芳雄:「そうだなあ・・1日500万くらいにするか!」
政美が仕返ししたいのは・・・(最終話)・・・おわり
あとがき
「皮」と言いながら、それらしい表現はあまり出てきませんでしたね。
素直に本当の「皮」で書けばよかったなあなんて思ってしまいます。
この「細胞均一化チップ」をもっと生かす表現が出来ればよかったなあ・・・
あとから後悔しても遅いですね(^^;
このお話を書き始めたときは、すでに数人の作家さんが「皮」を
取り扱った作品を書かれており、それらの作品が非常に面白くて
インパクトが強かったため、書き込んでいくうちについつい似たような
内容になってしまうという事が多々ありました。
私としてはオリジナリティを出したいと思ったのでこのようなまとめ方に
なったと言うわけです。
この「チップ」は、色々な形に変化する事が出来るので、
身体をスリムにしたり、デブにしたり、あるいは男性の形を作る事も
出来ます。
部分的に男性の象徴を入れてみては?というアイデアも、「皮」のお話を
書かれている作家さんから頂きました。
その方も、部分的に男性の象徴を取り入れておられて、とても魅力的な
お話でした。
非常にありがたいお言葉で、取り入れようかとも思ったのですが、
やはり今回は良晴が女性の身体に貼り付き、女性として楽しむという
内容を貫く事にしました。その分、内容が薄くなりましたが・・・
書くのにとても時間がかかったのですが、とにかく最後まで
書き上げる事が出来たという達成感は味わう事が出来たので
満足しています。
いつも始めはさっと書けるだろうと思って書き始めるのですが、
いざ書いてみるとなかなか難しいものですね。
さて、良晴と政美も仲直りする事が出来たようです。
これから3人はどんなことをするのでしょうか?
また新たに書ければと思っています。
少し長くなりましたが、最後まで読んで下さった皆様、ありがとうございました。
Tiraでした。