パーラーへ行ってから料亭に行こう!
 
 

「全然出ないなぁ・・・この台ちょっとおかしいんじゃないか・・・ふぁ〜っ」

志郎は愚痴をこぼしながらあくびをした。

ここは駅前のパーラー「スカイブルー」。

就職先の決まらない志郎は、暇つぶしにパチンコでも打とうと駅前までやって来たのだ。
珍しく新聞の折込チラシを見た志郎は、今日、このパチンコ店が新装と言うことを知り、
朝から1時間半も並び、やっとの思いで台を取ったのだが、すでに2万円をつぎ込んでいる。

「結構回るんだけどなぁ・・・最近のCR機はどうも相性悪いな。ちょっと休憩するか。」

台の上についているボタンを押し、ホールスタッフを呼び出す。
程なくかわいい制服を着た高校生くらいの女の子が走ってきて、笑顔で俺に話し掛けてきた。

「お待たせしました、お客様。」

「えっと、飯食ってくるから。」

「かしこまりました。休憩時間は40分となっております。時間までにお戻りにならない場合は
台を整理させていただくこともございますので、よろしくお願いします。」

「ああ、分かったよ。」

ホールスタッフの女の子は、リモコンをパチンコ台の方に向けてボタンを押した。
台の上についている液晶画面に「休憩中!」の文字が現れ、残り時間が40分と表示された。
最近のパチンコ店はとても広くて綺麗になっている。景品も豪華だが、それぞれの台についても
かなり凝った作りになっている。

台の上の液晶画面には、回転数や収支のグラフ、3日前までのデータが見れるようになっている。
もちろんテレビだって見れる。
玉は手元のレバーをスライドさせれば自動精算されるので、いちいち重たいドル箱を担ぐ必要も無い。
おかげでこのホールの店員はほとんどが女性で、男性といえば、若いチーフのような人が
3〜4人いるだけだ。

女性客も増えてきたが、やはり男性客の多さから比べれば大した人数ではない。
店員は、若くて綺麗な女性の方がいいのだろう。

「えーと、確かこっちの出口にあったはず・・・」

志郎は、簡易食堂に向かっていた。

「あったあった。」

20人ほどが座れるスペースがあり、うどんやカレーを食べることが出来るようになっている。

「どれにしようかな。」

志郎はしばらくメニューを見たあと、カツカレーを食べることに決めた。

「すいません、カツカレーください。」

「はい、650円です。」

お金を渡したあと、外が見える窓際の椅子に腰をおろす。
外にはたくさんの車が駐車してある。

「お待たせしました。カツカレーです。」

ここでも制服の上からエプロンをしているかわいい女の子が、もって来てくれた。

「ありがとう。」

志郎はそう言って、水の入っているガラスコップにスプーンを浸したあと、カレーを食べ始めた。

「結構うまいな。」

独り言をいいながら前に並んでいる車をぼーっと見ていた。しかし、

「んっ?」

志郎の視線は1台の車に集中した。

「あの車はたしか・・・博和の親父さんのやつだ!」

何度も乗った事のある志郎は、博和の親父さんの車を良く知っている。

「ということは、博和もここに来ているのか。親父さんはたしか賭け事はしなかったからな。
しかしあいつ、なんてとこに止めているんだ。」

博和は、駐車スペースではないところに駐車している。

「警備員が見回りにきたら、絶対アナウンスされるぞ。どけてくれって。」

そう思いながら、ぺろりとカツカレーを食べ終えた。

席を立ち、ホールへ戻ろうとすると、

「ありがとうございました。」

とレジにいる女の子が挨拶してきた。
志郎は軽く手を上げたあと、ホールに戻った。

まだ30分しか立っていなかったので、志郎は博和を探しに少しホールを歩くことにした。
そして、何列か見て回ると、少し青ざめている顔で打っている博和を見つけることが出来た。

「お、あそこにいる。どれどれ。」

志郎はどのくらい出いているか確かめようと、博和に近づいて行った。
しかし、博和の台を見ただけで、そのまま声をかけずに通り過ぎてしまう。

「・・・あいつもヤバイな。俺よりも突っ込んでるよ。」

博和は朝から1度もフィーバーせずに、1000回転以上まわしている。
いくら新装で回るからっていっても、やはり1000回転以上まわすと結構な金額になる。

「あの台は新台じゃないからなぁ。まだ突っ込みそうだな。」

そう思った矢先、ホール内にホールスタッフの声が流れた。

「数ある遊技場の中、当スカイブルーをご指名頂き、ありがとうございます。
  ○○ ん ○○○○のお車でお越しのお客様、至急お車の移動をお願いいたします。
  繰り返します・・・」

「あっ、やっぱりあいつの車だ。言わんこっちゃない。」

そう言って博和の方を見た。博和は周りをキョロキョロと見回したあと、
恥ずかしそうに台の上皿にタバコを置いて車に向かった。

志郎は気付かれないように博和の後をついて行った。
車の前には、しかめっ面した警備員のおじさんが立っている。

「ちょっと君、困るよ。ここに止めちゃあほかの車の邪魔になるじゃない!」

「す、すいません。」

博和はちょっと申し訳なさそうに頭をかいた後、車の底に付けていたマグネットケースから
キーを取り出し、移動を始めた。

「あんなところにキーを隠してたのか。危ない奴だな。」

志郎はそう思い、影から車の移動場所を確かめた。

「今度はちゃんと駐車場に止めてるな。帰りに乗っけてもらうか。」

博和は肩を落としてホールへ戻っていった。

「さて、俺ももう少し頑張るとするか。」

そう意気込みながらホールに戻って、自分の台に目をやった志郎は、あっけに取られてしまった。
なんと、志郎の台に知らないおっさんが座っている。
しかもランプがチカチカとして、無制限の札がついている。

「な、何だよあいつはっ!」

焦った志郎は、急いで台に駆け寄り、座っているおっさんに声をかけた。

「ちょっと、おっさん!この台俺が取ってたんだ。勝手に座るなよ。」

「んー、なんだぁ。開いてたから座っただけじゃないか。」

「開いてたって、俺がタバコを置いていただろっ!」

「しらねーよ、そんなもん。無かったんだからあきらめろよ。俺がフィーバーさせたんだからなあ。」

「そんなバカなことあるかよ。この台にいくら突っ込んでると思ってんだっ。」

「さあ、おまえがいくら突っ込んでいても俺の知ったこっちゃないね。」

志郎は完全に頭に血が上っている。

しかし、

「おたく、休憩時間過ぎてたよ。」

隣に座っていたおばさんが志郎にそう説明する。

「アナウンスもしてたんだけどね。あんたが来なかったから店員の女の子がタバコを持ってっちゃったんだよ。」

「う、うそ・・・」

あわてて腕時計を見る。すると、すでに10分以上過ぎていた。

「な、俺の言ったとおりだろ。おまえがちんたら休憩しているから台を整理されちまうんだよ。
  さあさあ、あっちに行った!」

おっさんはそう言って、けだるそうに志郎をあしらった。
隣のおばさんは哀れんだ目で志郎を見ている。

「・・・・」

志郎はがっくりと肩を落とし、台から離れた。

「ちくしょう・・・もう少し早く戻っていたら俺がフィーバーしてたかもしれないのに。
  誰だよ、勝手に台を整理しやがった奴は。」

ぶつくさ言いながら、仕方なく開いている台を探しはじめた。

しばらくうろうろしてみたが、台よりも人の数の方が多いようで、なかなか見つからない。
さらにうろうろしていると、さっき休憩の手続きをした女の子と目が合った。

女の子は志郎の顔を見ると、さっと横を向いて早足で歩いていった。
どうやら彼女が台を整理したらしく、少し後ろめたい気持ちがあったのだろう。

「あの子か。もうちょっと融通きかせてくれたらよかったのに・・・」

少し恨めしく思ったが、かわいい子だったので、なぜかそれほど腹も立たない。
それより博和のことが気になっていた。
あまり突っ込まない方がいいと思うのだが、1回もフィーバーせずにイライラしている博和に
話し掛けるものならば、

「就職活動もしないでこんなとこで遊ぶなーーっ!」

とどやされそうだ。
そっと遠くから見てみると、やはりかかっていないようだ。

「あいつもとことんのめりこむ方だな。」

博和はボーっとして台を見つめている。

「このままじゃあ、あいつ、かわいそうだな。俺も最悪だけど・・・」

そう思った志郎の頭に、ふと、ある計画が浮かび上がった。

「うん。まあこの際、あの子にも協力してもらわないとな。」

そうつぶやいた志郎はいったん外に出て、博和が車を止めた場所まで行った。
そして、車の底に付けていたマグネットケースからキーを取り出し、助手席側のドアを開けた。
そのあと、マグネットケースにキーを戻し、元通りに車のそこにつけたあと、
ドアを閉め、椅子を倒して寝転んだ。

そのまましばらくじっとしていると、次第に眠たくなり、意識がなくなる。
すると、ふわっと体から幽体が抜け出し、車の天井が目の前に迫ってきた。

「よし、準備完了!」

幽体となった志郎は車から抜け出し、先ほどのホールへ向う。
そして入口から入り、辺りを見回した。

「さっきの女の子はどこに行ったんだろう・・・」

ホール内をくるくると回ってみたが、どうも見当たらない。

「休憩にでも行ったのかなあ。」

そこで志郎は、スタッフルームのドアをすり抜けて中に入ってみた。
そこには、休憩中の彼女が一人、椅子に座ってジュースを飲んでいた。

「みーつけた!」

志郎がゆっくりと彼女に接近する。
むろん、志郎に全く気付く様子が無い。

「別に恨んでないけど、とりあえず体を借りるよ。」

彼女の後ろに回りこんだ志郎は、いつものように背中から彼女の体に
幽体を重ね始めた。
ビクンと彼女の体が震える。

「えっ・・・あ・・・ああ・・・」

彼女は目を見開き、苦しそうに声を上げている。
志郎はそのまま彼女の体に入り込んだ。

一瞬真っ暗になったかと思うと、すぐに視界が明るくなり、目の前に壁が映る。
視界を下げると、水色のブラウスに包まれた二つの膨らみが見える。

「へへっ、成功だ!」

まんまと彼女の体を手に入れた志郎は、椅子から立ち上がり、横にあった鏡に全身を映し出してみた。
長くて黒い髪は、後ろで一つにまとめてポニーテールにしている。

水色のブラウスに青いミニスカート。

かわいい顔立ちには似合わない綺麗なプロポーション。
志郎は両手でミニスカートを少しあげてみた。
そこに、白いハイレグカットされたパンティが現れる。

「結構セクシーな下着を着けているなあ。」

彼女の口から男のセリフが飛び出す。
志郎は、胸についているバッチに目をやった。

「加藤 彰子(しょうこ)」

どうやら彼女の名前らしい。

志郎は、彰子のポケットに入っている無制限札やラッキー札、リモコンを確認して、
彼女の体のままスタッフルームのドアを開け、ホールに出た。
うるさい音楽とタバコのにおいが立ち込めている。

「さて、博和の調子はどうかな。」

そう思い、博和のいる台の列に向かった。
彰子の体は志郎よりも小さいので、さっきよりも目線が低く感じられる。
歩くたびに、ポニーテールの髪が肩で跳ねる感じがした。

「ポニーテールも結構いいもんだな。」

彼女の体を実感しながら歩いていると、博和の姿が視界に現れた。
博和の周りは常連客が打っていたようで、みんな休憩に行っているようだ。
ちょうど彼だけが一人、青ざめながら打っている。
しかし、ふいに博和の顔に笑顔がこぼれる。

そして、彼のパチンコ台のランプがチカチカと点滅し始めた。
どうやら、やっとフィーバーしたようだ。
志郎もつられて、思わず笑顔がこぼれてしまった。といっても、彰子の顔だけど!

志郎は、博和の後ろまで歩き、フィーバーした絵柄を見た。
どうやら通常絵柄で、1回交換のようだ。
しかし、俺は周りで人が見ていないことを確認し、気付かれないと分かると

「おめでとうございます。あなたすごくかっこいいから無制限札つけてあげるね。」

そう言って、博和の台に、無理矢理「無制限札」をつけてやった。

「え、いいの?そんな事して。」

「うん、いいの。それより頑張って取り返してね。」

彼の背中に胸を押し付けながら耳元でささやいた。
博和は少し顔を赤くして、

「あ、うん。頑張るよ。」

と言いながら、液晶画面を見つめている。

「じゃあね。」

志郎は、またすぐにフィーバーするだろうと信じ、その場を離れた。

「よし、ちょうどいいや。このまましばらくパーラースタッフの仕事をしてみるか。
  パチンコ好きだし、ここで働くのも悪くないな。」

成り行きとは言え、就職活動をしている志郎にとってはちょうどいい機会だ。
このホールは何度も来た事があるので、大体の事はわかっている。
そうと決まれば、俄然やる気が出てきた!

「確か、各列の端で点灯するランプの色でフィーバーしたのか呼び出されたのかが分かるんだよな。
 えーと、緑はフィーバーで赤は呼び出しだな。」

志郎が確認したあと、早速端の列で赤いランプが点灯した。

「よし来たっ!」

志郎は足早にランプのついた列に向かった。
まん中の辺りの台の上にある赤いランプが点灯している。

彰子のしぐさはよく知らないが、なんとなくこんな感じかなという雰囲気で接することにする。

「どうされましたか?」

そこには40歳くらいの小太りの親父が座っていた。

「あー、彰子ちゃんか。玉が出ないんだよ。何とかしてよ。」

「はい、少々お待ち下さい。」

志郎はこんな感じかな、と思って対応した。
腰につけている鍵を、台の横についてきる鍵穴に差込んであける。
そっと中をのぞきこむと、プラスチックケースの中で玉がつまっていた。

「これかぁ・・・」

志郎はプラスチックケースを手でゆすってみた。
しかし、玉はつまったままだ。

「彰子ちゃん、今日は何か他人行儀だねぇ。」

「そ、そうですか。あんっ!」

志郎は思わず小さく声を上げてしまった。
親父が周りに気付かれないようにして、志郎のミニスカートの中に右手を入れていたのだ。
ミニスカートの中に侵入した親父の指は、パンストの上から感じるところをグイグイと押している。

「お、お客さんっ!何してるんですか・・・んんっ・・」

「いいじゃないか。たまにはサービスしてくれよ。この前も触らせてくれたじゃないか。」

「ええっ?」

志郎は親父の言っている意味がよく分からなかった。
もしかして、この彰子っていう子、客にこんなことまで許していたのか?

「早く直してくれよ。時間がもったいないじゃないか。」

親父はニヤニヤして指を動かしながら志郎に話し掛けた。
まさか、体を触られながら台を修理しなければないとは
全く想像していなかった。
触り慣れている親父の指は、執拗に志郎の感じる部分を刺激しつづける。

「はあ、お客さん・・・作業できないので・・・その手を離してください。」

「直し終わったら放してやるよ。だから早く直してくれ。」

そう言って、親父は人差し指を股間の谷間に食い込ませた。

「うあんっ!」

思わず台を握る手に力が入る。

「お、お客さん。お願いですから・・・手を離してください・・・」

志郎は声を震わせながら親父にお願いした。

「ちぇっ、仕方ないなあ。それじゃあ早く直してくれよ。」

親父はそう言って、スカートの中から手を抜いた。
やっと自由になった志郎は、プラスチックケースのフタを外して
玉を手でかき回した。
すると、ジャラジャラという音とともに玉が受け皿に玉が出だした。

「おっ、出てきたぞ。」

親父はそう言いながら志郎を見つめた。

「そ、そうですか。」

志郎は、台のガラス板を外して、スタートチャッカーに玉を2つ入れ、
またダラス板を閉じた。

「また出なくなったら呼ぶから楽しもうなっ。」

親父はニヤニヤしながら志郎に向かってそう言うと、また打ち始めた。

「申し訳ございませんでした。」

とりあえず挨拶をした志郎は、足早にその場を足し去った。

「信じられ無い奴だな、まったく。こんなところで・・・」

志郎はぶつぶつ言いながらも、他の客の対応をてきぱきとこなし始める。
いつもと逆の立場にたつと、いかに自分が店員に対してわがままを言っていたかが良く分かる気がした。

「どうしてパチンコ屋の客って、こんなにわがままなんだろうか・・・」

だんだん情けなくなってきた頃に、博和がカードを持って受付のテーブルに現れた。
時間を見ると、既に夜の9時を回っている。

「結局あいつはどうなったのかな。」

志郎は受付テーブルに近づいた。
カードを差し込んだ機械には、20000発以上表示してある。

「めちゃくちゃ勝ってるじゃんか!」

志郎は思わず口にしてしまった。
その声を聞いた博和が志郎の方を振り向く。
笑顔の博和が、

「あ、サンキュー!君のおかげで助かったよ。大逆転だ。」

「そ、そうですか。良かったですね。」

志郎は慌てて適当に相槌を打った。

「また頼むよ。」

そう言って、博和が交換所に向かう。

志郎はうらやましそうにその後姿を眺めていた・・・しかし、すぐに

「あっ!あいつの車に俺の体を置いたままだった!」

自分の体のことをすっかり忘れていた志郎は、急いでホールスタッフらしき人物に話し掛けた。

「あの、すいません。急にお父さんの具合が悪くなったみたいなんですいませんけど
 今日は帰らせてください。」

と、うそをついた。

「あ、そうなの。いいよ。今日はもう終わりだし、でも君、たしか今日はもともと夕方までだったよね。」

「えっ?そうでしたっけ。」

「ああ、そのはずだよ。なんで帰らないのかなあって思ってたんだけど。」

「そ、そっかぁ。わたし忘れてました。ははは・・・」

しっかりとスケジュールを見ておくべきだった・・・
志郎は後悔しながら博和の車に向かった。
どうやら着替えをしている時間はなさそうだ。

はぁはぁと息を切らせながら車に到着した志郎だったが、まだ博和姿はない。
たぶん交換所が込んでいるんだろう。

「そう言えば、別にこの子の体で来なくても良かったんだよな。抜け出して自分の体に戻って
車で待っていればよかったんだよ・・・
でも、まっ、いいか。やっぱりこのままあいつを驚かしてやろう。」

そう思った志郎は、スッと彼女の体から抜け出た。
そして、急いで自分の体に戻る。

「あ、あれ?わたし・・・」

彼女がふらつきながらも意識を取り戻したとき、志郎は運転席側にあるトランクのロックを外して車の外に出た。

「あ、ちょうどよかった。そこの店員さん、ちょっと手伝ってください。」

「えっ、わたし?あ・・はい。」

頭がぼーっとして何のことだか良く分かっていない彼女は、言われるままに志郎の手伝いを始める。

「ぼくがこのトランクに入るから、トランクを閉めてください。」

「ええっ!この中にはいるんですか?」

「ええ、ちょっと事情がありまして・・・お願いします。」

「で、でももしかしたら息が出来なくなるかもしれませんよ。」

「大丈夫です。どっちみち息はしませんから。」

「はあ?」

「何でもいいから頼みます。」

そう言って、志郎はトランクに入った。
ゴルフバックが入っていたので、結構窮屈だったが、その方が体が固定される。

「お願いします。」

と言いながら目を瞑る。

「はい。」

そう言って彼女はバタンとトランクを閉めた。

「変な人・・」

彼女は不思議に思って真っ暗になった辺りを見回した。

「ここは駐車場よね。どうしてこんなところに来たのかしら・・・」

腕時計を見ると、夜の9時を回っている。

「もうこんな時間・・・わたし一体何してたんだろう?」

そうつぶやきながら、とりあえずホールに戻ろうとしたとき、ビクンと体が震え、自由が利かなくなった。

「あ・・・・くっ・・・・」

顔を硬直させ、息苦しそうにしている彼女だったが、すぐにその表情が緩む。

「へへっ。眠るのはどこかのマンガの小学生並みの速さだな。」

彼女の口からそんな言葉がこぼれる。

「さて、準備完了だ。早く博和来ないかなあ。」

見事な速さで彼女の体に戻った志郎は、博和を騙そうと車の前でしばらく待つことにした。
すると、タバコを吹かしながらゆうゆうと歩いてくる博和の影が見え始める。

「お、来た来た!」

だんだんと近づいてくる。
顔がはっきりと見えたとき、向こうもこちらに気付いたようだ。

「あ、あれ?君はさっきの店員さんじゃないか。」

「はい。先ほどはどうも。」

志郎はかわいらしく笑顔で答える。

「ほんとに助かったよ。玉が途中で無くなっちゃったんだけど、君が無制限札つけてくれたおかげで、
 そのあとのフィーバーも持ち玉で続ける事が出来てさ。最後には8連チャンしたもんね。」

「そうですか。ほんとに良かったですね。」

「ああ。ところで君。こんなところで何してるの?」

「わたしのおかげで勝ったんでしょ。じゃあ何かおごってくれない?」

「えっ!俺が?」

「ええ。」

「俺と食事に行くってこと?」

「そう。ダメですか?」

目をうるうるさせながら博和に迫ってみる。

「いい。いいよ。君と食事が出来るんなら何だっておごっちゃう!」

なんだ・・・よかったのか・・

「やった!じゃあ、あなたの車でどこかおいしいところに連れ行ってくださいよ。」

「うん。まかしといて。」

博和は急いで車のドアを開けて、彰子の体となった志郎を助手席に案内した。

「さあ、座って座って。」

「はい。」

志郎はちょこんと助手席に座り、シートベルトを締めた。
博和は運転席に座り、シートベルトをした後、エンジンをかけて車を動かし始めた。

「あの、君それって制服だよね。」

「ええ。」

「私服に着替えなかったの?」

「はい。ちょっと時間がなくて。」

「時間がなかった?」

「ええ、だってあなたがすぐに交換所に行ったでしょ。わたし、あなたに追いつこうとこのままの姿で
駐車場に来たんです。でも、どの車か良く分からなくて・・・
うろうろしていたらあなたがこっちにやってきたから、もしかしたらこの辺の車かと思ったんです。」

「そっか。俺を待っててくれたんだ。」

「はい。」

「ゴメンね。急がせちゃって。」

「ううん。いいの。こうしてあなたと一緒に食事が出来るんだから。」

「そ、そっかぁ。そういえばまだ名前行ってなかったね。俺の名前は博和って言うんだ。」

「博和さん。いいお名前ですね。」

「君の名前は・・・」

そう言いながら志郎の胸に付いている名札を覗き込んだ。

「えっと・・・加藤 彰子・・・さん?」

「ええ。加藤彰子です。彰子って呼んで下さい。」

「う、うん。分かったよ。しょ、彰子。」

「わたしも博和さんって呼んでいいですか?」

「ああ、もちろん。呼び捨てでいいよ。博和って。それから敬語はなんか堅苦しいから、普段使っている言葉でいいよ。
 それの方が話しやすいし。」

「そうですか。わたしはいつもお客さんと接するので敬語も慣れてるんですけどね。博和さんがそういうのなら
 敬語を止めます。」

「うん。そうしてくれる。」

「うん。わかったわ、博和。」

「う〜ん。いいねえ。その言葉。」

「そう?なんかまだ会って少ししか立ってないから恥ずかしいけど。」

「いや、そんな事ないよ。俺たちほんとのカップルみたいだ。」

「ふふっ。うれしいな。」

「ははは。俺もさ。じゃ、何が食べたいの?何でもいいよ。」

「何でもいいの?でも、この格好じゃちょっとおかしいかな。」

「大丈夫さ。名札だけ外してたら私服と変わらないよ。それにとてもかわいい制服だし。」

「そう、ありがとっ!博和。」

「へへへっ」

博和は、志郎が乗り移っているとも知らずにもうデレデレになっている。
そんな博和を心の中で大笑いしながらも、あくまで彰子のフリをする志郎。

「じゃあわたしが好きな食べ物でいいの?」

「もちろんさ。」

「それじゃあねぇ。え〜と・・・てっちりがいいな。」

「て・・てっちり?」

「うん。フグ。フグが食べたいの。」

「フグ・・・・な、なるほど・・・・フグが好きなんだ・・・」

「ええ、この前お父さんにこの近くの料亭に連れて行ってもらったの。そこでてっちりが出てきたんだけど、
それがすごくおいしかったの。」

「りょ・・・料亭・・・」

「だから今日はそこに連れて行ってくれる?」

「・・・う・・うん。い・・いいよ・・・」

「やったぁ!」

志郎はそう言って運転している博和に抱きついた。
彰子の胸が博和の腕でつぶれている。

「お、おやすい御用さ!」

鼻息を荒くしながら博和は彰子の胸元を覗き込んだ。
襟元から腕でつぶれたの谷間が少し見えている。

「ハ・・・ハハ・・・」

口を引きつらせながらも博和は前を見て運転を始めた。

「そこの角を右に曲がるの。」

「ここか。」

「そう。そのあと突き当りを左に曲がって。」

「こう?」

「うん。そのまま少しまっすぐ行って。」

「ああ。」

志郎はグルメ雑誌に乗っていた料亭の場所を覚えていた。
誰がこんな高い店で食うんだよと思っていたが、案外早くその機会が訪れた事に
感謝している。

「ああ、博和に無制限札付けといてよかったよ・・」

心の中でそうつぶやいた。

「もしかしてここじゃないの?」

博和がゆっくりと車を進めた。

「あ、そうよ。ここ。ここだわ。横に駐車場があるでしょ。そこに止めましょうよ。」

「ああ。」

さっきから博和のテンションがやたらに低い。

「どうしたの博和?さっきからなんかテンション低いよ。」

「そんなことないさ。」

その回答から明らかに低い事が分かる。
駐車場に車を止め、二人で入口に入る。

「いらっしゃいませ。」

着物を着た女性が目の前に現れた。

「お二人様でいらっしゃいますか?」

「はい。二人です。」

うれしそうに志郎が答える。

「まあ、かわいらしい服ね。」

志郎が着ているブラウスとミニスカートを見ながら女性がそう話し掛けた。

「フフッ。ありがとう。」

うれしそうに志郎は答える。
博和は、店の雰囲気にやや緊張気味だ。

「それではお部屋にご案内します。」

二人は女性の後についていき、6畳ほどの綺麗な和室に案内された。

「今日はどのように致しましょうか?」

「てっちり下さい。」

「はい。かしこまりました。てっちり2人前でよろしいですか?」

「いえ、3人前下さい。」

「お、おい!3人前も食えるのか!」

「ええ、ここのてっちりはすごくおいしいから博和だって3人前くらい食べられるよ。」

「3・・3人前・・・」

「それではとりあえず3人前と言う事でよろしいですか。」

「はい。あと生ビールを大ジョッキで2つ。」

「だ・・大ジョッキ・・・」

「はい、かしこまりました。大ジョッキで2つ、ご用意します。それではしばらくお待ちください。」

女性は注文をききつけたあと、部屋から出て行った。

「おい彰子。おまえビールまで飲むのか。」

「ええ、やっぱりなべにはビールよね。」

「しかも大ジョッキで飲むのか。」

「うん。おかわりするよ。」

「もしかして酒飲みか?」

「ううん。そんなことないよ。わたしの友達なんか大ジョッキ6杯飲んだ事あるよ。」

「俺とおんなじだ。」

「フフッ、そうかもね。」

「そうかもねって。俺のこと知らないくせに。」

「うん。」

「まったく・・・」

そう言っているうちに、2人の女性が現れてビールとてっちり鍋をセットした。

「だしが沸いたらすぐに弱火にしてくださいね。あと・・・・」

女性は、色々と食べ方のコツを説明したあと、部屋から去っていった。

「それじゃあ乾杯しましょうよ。博和の勝利にカンパーイ!」

「・・・カンパーイ・・」

志郎は大ジョッキを一気に半分も飲み干した。

「プハーッ。働いた後のビールってとってもおいしいよね。」

「そうだな。」

博和は相変わらずテンションが低かった。
さっきからチラチラとテーブルの横にある値段表が気になっているようだ。

「どうしたの?さっきから値段表ばっかりきにしちゃって。
  もしかしたらとっても高いって思ってるの?」

「う・・いや、そんな事ないけど。ここってやっぱりそれなりに高いよな。」

「うん!めちゃくちゃ高いよ。」

「や、やっぱり・・・」

志郎は値段表を広げてみた。

「えっと、わたし達が頼んだてっちりは・・・あった。これよ。えっとねぇ、値段は・・・・
 1人前7900円だって。」

「な・・・ななせんきゅうひゃくえん・・・」

「それからねぇ、生ビールの大ジョッキは980円って書いてあるよ。」

「た・・・たかい・・・・」

「大丈夫よ。いっぱい勝ったんでしょ。」

「そ、それにしてもてっちり3人前で約24000円だろ。それにビールで2000円か・・・」

「けちけちしないの。わたしもう1杯ビールもらうね。」

いつの間にか志郎のジョッキが空になっている。

「わっ!ちょ、ちょっとまった。俺のをやるからまだ頼まないでくれ。」

「ええ〜っ。だってそれじゃあ博和のビールがなくなっちゃうよ。」

「いいんだ。だからとりあえず頼まないでくれ。」

「博和ったら、そんなにお金のこと気にしなくっても大丈夫だよ。」

「何が大丈夫なんだい。」

「いいからわたしに任せといてよ。」

「お金持ってるのか?」

「ううん。持ってないよ。」

「はぁ・・・・」

「お金持ってないけど大丈夫だもん。」

「さてはクレジットカードでも持っているのか!」

「ううん。持ってないよ。」

「じゃあ全然大丈夫じゃないじゃん。」

「いいからいいから。とりあえずこんな機会はないんだから食べようよ。」

「・・・・」

「わたしが責任持つって。」

「・・・ほんと?」

「うん。ほんとに。」

「・・・マジで?」

「うん。マジで。」

「・・・信じていいのか?」

「うん。信じていいよ。」

「そっか。よしっ!じゃあ食べよう!」

「うん!食べようね。」

急に博和のテンションが上がったかと思うと、ビールを一気に飲み干してしまった。

「プハーッ!やっぱウメエや。」

「その調子よ、博和。」

二人はおいしいてっちりをお腹いっぱいにほおばり出した。
さらに3人前追加し、ビールも3杯目に突入する。

「それでさあ、隣の親父がぶつぶつ文句言ってんだよ。
  なんで1回しかかかってないのに無制限札ついてんだよって。」

「ふーん。それはそうだよね。確変で特定の絵柄でないと無制限札つけないもんね。
 確変だったら最低2箱でるから、周りの人は不審に思ったんだね。」

「そうなんだよ。おまけに結構かかったからさ。まわりの客にまで言いふらし始めちゃって。
  めちゃくちゃムカいついたよ。」

「わかるよ。その気持ち。」

「でもさ、俺も悪いんだから言われても仕方ないって思ったんだ。」

「ふふっ、えらいね、博和は。」

「そっか。」

「うん。わたしなんか、今日とってもスケベなお客さんがいたんだよ。」

「え、どんな感じだったんだ?」

「あのね、台の玉がつまったからって呼び出されたの。それで台を空けて後ろの調整してたらね・・・」

志郎はわざわざ博和の座っている横まで行き、膝をついたまま立った。

「ちょうどこのくらいの高さだったの。わたしのお尻がそのお客さんの手の横に合ったのよ。
 ちょっと手を貸してくれる?」

「あ、ああ。」

「こんな風に触ってきたのよ。」

志郎は博和の手を取って、ミニスカートの中に導き、股の間にあてがった。

「わっ!」

慌てて博和が手を引っ込める。

「聞いてよ。まだ続きがあるんだから。」

志郎は少し膨れた顔をしながら、もう一度博和の手を取ってミニスカートの中に導いた。

「それからね、こうやってわたしの感じるところを指で擦るの・・・あんっ・・・」

志郎は両手を使って博和の右手の指を股間に擦りつけた。
パンストの上から指をギュッギュッと押し付ける。

「あっ・・・あっ・・こ・・こんな風に指で・・・わたしのここを・・・んっ・・・触るの・・・・」

志郎は博和の顔を見ながら手を動かしつづける。
博和は右手が吸い込まれているミニスカートをボーっと見つめている。

「んんっ・・・ねっ・・・酷(ひど)いでしょ。みんなのいるところでこんなことするなんて・・・」

志郎に問い掛けられて我に返った博和は、ハッとして右手をまた引っ込めた。

「そ、そうだな。公衆の面前でそんなことする奴がいるなんて。許せない奴だ。」

「そうでしょ。わたしも困っちゃった。でもちょっと感じちゃったんだ。」

その言葉に顔を赤くした博和は、

「そ、そっか・・・・た、食べようよ。まだ残ってるからさ。」

そうやって話をごまかした。

「博和ったら、なんか顔赤いよ。」

志郎がからかった。

「そんなことないさ。ちょっと飲みすぎたかな。」

「フフフッ、博和は飲みすぎても顔に出ないじゃないの。」

「それはそうだけど・・・ってなんで俺のこと知ってんだ?」

「別に。少しだけ面識があるかもね。」

「そうなのか?俺全然覚えてないけど。」

「うん。たぶん知らないと思うよ。私の事は。」

「え〜と・・・ちょっと待ってくれ。思い出してみるから。」

「フフッ、それじゃあヒントをあげる。
  第1ヒント。実はすごく親しいの。」

「すごく親しい?」

「ええ。たぶん10日間に7日は会ってるんじゃないかな。」

「そ、そんなに会ってるのか。」

「うん。それじゃあ第2ヒント。
 わたし、見た目とは全然違うんだ。」

「どういう事?」

「えっとね。わたしどんな感じに見える?」

「そりゃ、ポニーテールをしたパチンコ屋の制服を来たかわいらしい女の子さ。」

「ううん。違うの。」

「どう違うのさ。」

「それじゃあ第3ヒント。
 わたし、ほんとは加藤彰子じゃないんだ。」

「彰子じゃない?それじゃ、あの名札はウソだったのか!」

「ううん。あれはほんとなの。この子の名前は加藤彰子よ。」

「この子の名前は?」

「ええ、この女の子の名前は加藤彰子なの。どういう事か分かる?」

「・・・なるほど。目の前にいる彰子は加藤彰子で、でも加藤彰子じゃなくて、しかも俺とすごく親しいってことだな。」

「そう、そのとおりよ、博和。」

「はぁ〜。やっぱりなあ。なんかおかしいと思ってたんだよ。だってこんな事絶対ありえないもん。
 もっと早く気付いていればよかったよ。なあ、志郎。」

「ピンポーン!ご名答!」

「おまえ、わざとこの料亭選んだんだろ。」

今までの彰子とはうって変わって、男口調になる。

「ああ、だってこの料亭のてっちりがおいしいって雑誌に書いてあったからな。」

「だからってこんな高いところを選ばなくったっていいじゃないか。」

「だからさっきから大丈夫だって言ってるだろ。」

「おまえが大丈夫だって言っても、俺の持ち金は25000円しかないんだぞ。その彰子って子の制服には
  金が入ってないんだろ。」

「ああ、入ってないよ。」

「だったら全然足りないじゃないか。今頼んでるのでも既に3万円以上足りないんだぞ。」

「だからさ、支払い時にあそこにいたレジの女の子に俺が乗り移ったらいいんだよ。」

「・・・・なるほど。志郎がレジの女の子に憑依して伝票をちょろまかすってことか。」

「そういうこと。」

「でも、彰子の体はどうするんだよ。」

「大丈夫さ。たぶん俺が抜け出ても起きないと思うんだ。それくらい子の体にはアルコールを飲ませたからな。」

「おまえもずいぶん計画的だったんだな。」

「まあな。」

「その頭をほかのことに使う事が出来ないのかよ。」

「そんな事出来てりゃ、とっくに就職してるさ。」

「・・・納得するよ。」

「とりあえずさ、この料理を全部平らげようぜ。」

「おおっ!」

二人は無我夢中で全ての料理と飲み物を平らげてしまった。

「ああ、もうこれ以上食えないよ。」

「俺もだ。しかしこの彰子って女の子の体はよくこれほどの料理が入るな。」

「きっと女性はうまいもの食うときは別腹なのさ。」

「そうかもな。さて、それじゃあ帰るとするか。あのさ、一端俺の体をおんぶしてくれないか。」

「彰子の体を?」

「そう、そのままレジの前まで来てくれ。その間に俺がレジの女の子に憑依するからさ。」

「分かった。じゃ、おんぶするよ。」

「ああ。」

志郎はそう言って博和の背中にヒョイっと乗っかった。

「軽いな、彰子の体は。」

「そりゃなんと言ってもスタイルのいい高校生だからな。」

「そっか、彼女は高校生だったんだ。」

「ああ。」

「そうだよな。俺、大学生かと思ってたよ。」

「最近の女性は発育がいいからな。ま、間違うのも無理はないさ。さ、とりあえず彼女の体から
離れるから、後は頼んだぞ。」

「ああ、任してくれ。」

「うん。任せてわ、博和。」

志郎は最後に彼女の真似をして、後ろから博和のほっぺたにチュッとキスをした。
カーッと博和の顔が赤くなるのを見ながら、彰子の体から離れる。

「ったく。志郎の奴。」

ぶつぶつ言いながらうれしそうに彰子の体を背負い、レジに向かう。

「あらあら、彼女どうしたのですか。」

途中で着物を着た女性に声をかけられる。

「ああ、ちょっと飲みすぎちゃったみたいで。そろそろ帰ります。」

「ありがとうございました。また二人でお越しくださいね。」

「はい。」

もう2度と来る事はないだろうと確信しながら、レジの前に着いた。
レジには髪の毛を綺麗に束ねて、ピンク色の着物を着た若くて綺麗なお姉さんが立っている。

「あ、あの。これお願いします。」

博和は伝票を渡した。

「うまい事してくれよ、志郎。」

しかし、博和の言葉を無視しながら、伝票を確認してレジを打つ彼女。

「あ、あれ?志郎?」

レジを打ち終わった彼女が、笑顔で金額を言った。

「消費税とサービス料を含めまして、6万6千320円でございます。」

さっと青ざめる博和。

「ちょ、ちょっとまってくれ。志郎だよな?」

彼女は不思議そうな顔をして博和を見つめ、

「お客様、お連れ様をお待ちでしょうか。」

と答えた。

「う、うそだろ・・・あいつまだ乗り移ってなかったのかよ。
  ちょ、ちょっと待ってください。すぐに連れが来るんで。」

「お客様は、今日はお二人のはずですが。」

「そ、そうなんだけど、もうすぐ来るはずなんです。」

「お客様。もしかしてお勘定が支払えないのですか。」

「あ、今は無理だけど、もうすぐ払えるんです。」

「・・・お客様。ちょっとこちらに来てください。」

「ああ・・ちょっとまって・・・ち、ちきしょう。志郎の奴・・・」

完全に裏切られた博和は、仕方なく女性の後についていった。
少し薄暗い廊下を通り、事務室のような部屋に連れて行かれる。
部屋の電気をつけた彼女は、

「そこに背負っている彼女を座らせて、あなたもここに座りなさい。」

「はい。」

博和は彰子を椅子に座らせ、テーブルに体を預けた。
そして、その横の椅子に座り込んだ。

「すぐに支配人を呼んできますけど、とりあえず今、いくら持っているのですか。」

博和が財布からありったけのお金をテーブルに置いた。

「・・・3万円以上足りませんね。このお金はどうやって支払うつもりなの。」

だんだん彼女の口調が厳しくなる。

「は、働いて返します。だから親には絶対言わないで下さい。うちの父親に知られたら絶対勘当されます。」

「そんな事は知らないの。お金もないのにどうしてそんなに食べたりするの?」

「そ、それは・・・」

「わざと頼んだんでしょ。」

「そ・・・そう・・なんですけど・・・」

「それじゃあ明らかに犯罪ね。警察に連絡するしかないわ。」

「そ、そんな!お願いです。それだけは許してください。」

「そう、それなら何でも言う事を聞くの?」

「はい、だから親と警察には絶対言わないで下さい。それから大学にも。ばれたら就職が内定しているのが
台無しになってしまいます。」

「ふーん。それなら・・・」

女性は後ろで束ねていた髪をパサッと解いた。

「私の言う事を素直に聞きなさい。」

「・・・はい。」

女性は更に着物の帯をシュッと外し始めた。
そしてピンク色の着物をパサッと肩から落とす。
博和の目の前には、綺麗なお姉さんが下着姿で立っている。

「あなたの体で払ってもらうわ。その場に立って。」

そう言って近づき、立ち上がった博和のズボンを脱がせた。
そして、トランクスを脱がせたかと思うと、いきなり博和の相棒を口に含み始めた。

「わっ!なっ、何を・・・・」

「いいから黙ってなさい。んっ・・・んっ・・・んっ・・・」

下着姿のお姉さんは、しゃがんだまま博和の相棒を舌を使って刺激している。

「うっ・・・ん・・・・・」

「だめよ。そのまま動かないで。」

お姉さんはそう言って、相棒を喉の奥までくわえ込んだ。
まさかこんな事をされるとは、全く予想していなかった博和は、頭の中が真っ白になっていた。
お姉さんは博和のお尻を両手で掴んで、上目遣いで博和を見つめている。
博和もお姉さんの顔を見ながら、口の含まれている相棒から送られる気持ちよさを感じていた。

「ぼ・・・ぼく・・・も・・もうだめです。」

「まだまだ。出しちゃだめよ。」

お姉さんはそう言った後、相棒を口から話した。

「さあ、次はあなたがわたしにする番。そこに座りなさい。」

博和は、さっき座っていた椅子に座り込んだ。
お姉さんはブラジャーを取り、パンティ1枚になって、足を広げながら博和のひざの上に座り込む。

「さあ、わたしの胸を吸いなさい。」

「は・・はい。」

博和は言われるがままにお姉さんの胸に吸い付いた。

「んっ!・・・そう・・・その調子・・・両手で胸を揉みなさい。」

博和の手は、お姉さんの綺麗な胸を鷲掴みにしたあと、円を描くように揉み始めた。

「あっ・・・いい・・・そうよ・・・そうやって・・・んんっ・・・・先を噛んでみて・・・ああっ!・・・きもちいい・・」

お姉さんは悶えながらも博和に次々と命令する。

「次は下よ。パンティの中に手を入れて。」

博和の右手が、お姉さんのパンティに侵入する。

「奥まで手を入れるの・・・そう・・・そこっ!そこを指で刺激して・・・あああっ!・・・すごい・・・いい・・・」

お姉さんは体をビクつかせながら両手で博和の頭を抱え込んでいる。
博和は右手でお姉さんの感じるところを何度も何度も刺激した。

「はあ・・・はあ・・も・・・もういいわ・・・じゃああなたの相棒をわたしに頂戴・・・・」

お姉さんはそう言って、パンティを横にずらした。
そして、いきり立った博和の相棒をゆっくりと体の中に導いた。

「んんんっ!」

博和の相棒がお姉さんの体の中にすっぽりと入る。

「うあっ・・・」

博和も思わず声を出してしまう。

「はぁん・・・・んっ・・・んっ・・・んっ・・・」

お姉さんが座っている博和の上で腰を上下に動かし始める。
博和の相棒はお姉さんの体を出たり入ったりする。

「あっ・・・あっ・・・あっ・・・あっ・・・」

お姉さんの体に相棒が入るたびに、お姉さんの口から吐息が漏れる。
博和は、目の前で上下に揺れている胸を掴み、その突起を指でギュッと摘んだ。

「ああっ!・・・いいよ・・そう・・・もっときつく・・・・はぁぁっ・・・ああん・・・」

お姉さんは必死に腰を動かしている。
博和の相棒は、お姉さんにきつく締め付けられている。

「うっ・・・すごい・・・おねえさん・・・・」

博和もその気持ちよさにヨレヨレだ。

「はっ・・はっ・・はっ・・ああっ・・・あんっ・・・あんっ・・・」

お姉さんの息がとても激しくなってきた。

「ああ・・・いい・・もう・・・くる・・・・あっ・あっ・あっ・」

腰の動きが更に激しくなり、博和の頭を抱える腕に力が入る。

「あっあっあっんっんんっ・・・いいっ・・・も・・もう・・だ・・・だめ・・・ああ・・・あうっ!」

お姉さんは急に仰け反り、博和の相棒を思いっきり締め付けた。

「わっ!・・・」

博和もその締め付けには耐えられず、思わず中に出してしまった・・・
 

しばらくそのままの体制で沈黙する二人。
はぁはぁという息だけがその場に聞こえている。
 

「・・・よかったよ。」
 
 

「すごく気持ちよかったよ。」

「・・・そ、そうですか。」

「さすが博和。大きいよ。」

「・・・そ、そうですか・・・それはよかったですね・・・・はぁ?」

「へへへっ・・・おまえのはほんとに大きいや。」

「ま、まさかっ」

「やっと気付いたか。」

「やっぱりおまえだったのか・・・・っていうか、なんとなく途中からそうじゃないかなって思ってたんだ。」

「やっぱりぃ。ばれてたのか。」

「確信はなかったけどな。大体いきなり私の言うとおりにしろって言いながら着物なんか脱がないだろ。」

「そんなの分からないぜ。」

「いや。世の中そんなに甘くないって。」

「ははっ、そうだよな。」

「おまえ、いつからお姉さんに乗り移ってたんだ?」

「そんなのはじめからに決まってるじゃないか。」

「レジのときから騙してたんだ。」

「そういうこと!」

「まったく・・・俺はほんとに焦ったんだぜ。あの時はさすがにやばいって思ったよ。
 志郎が裏切って先に帰っちゃったかと思った。」

「俺がそんなことするわけないだろ。それに彰子の体もどうにかしてやらないといけないしな。」

「そうだった。彼女の体はどうするんだ。」

「とりあえず明日まで俺が乗り移っておくよ。今夜は彰子の体で・・・へへっ。」

「まったくうらやましい奴だ。俺のとこに泊まれよ。」

「いや、適当なホテルに一人で泊まるよ。」

「そ、そんなのもったいない。俺も泊まるよ。」

「バカだなあ。おまえはもうこのお姉さんの体で楽しんだだろ。今度は彰子の体で俺が一人で楽しむんだよ。」

「ちぇっ!」

「とりあえずこのお姉さんの体、元に戻そうか。」

「そうだな。さっきから俺の相棒、入れっぱなしだし。」

志郎は博和の膝の上から立ち上がり、横にあった水道で体を洗った。
そして、四苦八苦しながら着物を着て帯を締めた。
髪の毛を束ねると、元のお姉さんの姿に戻る。

「それじゃ、博和さん。彰子さんを背負って玄関まで行きましょ!」

女言葉でそう言いながら、博和の前を歩いて玄関まで進む。

「それではご利用、ありがとうございました。」

志郎は笑顔で博和達を見送った。
そして、レジに立った後、お姉さんの体から抜け出る。
お姉さんの体は壁にもたれかかった状態になったが、すぐに意識が戻り体制を整える。

「・・・あれ?」

いつものごとく、記憶のない彼女は、辺りをキョロキョロとした後、いつもとは感覚が違う胸に手を当て、

「あれ・・・どうして?」

と顔を赤くして奥に走リ去る。
志郎がわざとブラジャーを付けずに着物を着たのだ。

「ハハハッ。」

志郎は笑いながら博和のいる車に向かった。
 

そのころ、博和は彰子の体を助手席に乗せ、エンジンをかけながら志郎が来るのを待っていた。

「あいつ、まだ来ないな。ちょっとだけならいいかな。」

博和は、助手席で寝ている彰子の胸をそっと揉んだ。

「ぁ・・・」

彰子の口から吐息が漏れる。
ゴクッと唾を飲み込んだ博和は、ゆっくりと彰子のミニスカートを捲り上げた。
彼女のセクシーなパンティが現れる。
博和は周りをキョロキョロと確認したあと、彰子のパンティ越しに指で股間を擦ってみた。

「・・・んっ・・・・んっ・・・」

彰子は眉毛を少し歪めているが、起きる様子はなかった。
博和は調子に乗って、パンティの隙間に指を入れ、直接彼女の感じるところをなぞってみた。
彰子の体がピクッと動き、

「あっ・・」

と喘ぎ声を出した。
博和は興奮し、更に指をもう一本、パンティに滑り込ませた。
しかし、急に彰子の顔がニヤッと笑い出し、

「イタズラしすぎよ。」

と博和に話し掛けた。

「俺が何も言わなかったらどこまでやってたんだ?」

「もしかして、はじめからずっと彰子の体に入ってたのか?」

「ああ、おまえが胸を触るときからな。」

「きったね〜っ!」

「何か汚いんだよ。おまえが触っておいて。」

「ああ・・・・そうか。わ、悪かったよ。」

「そういうことだ。勝手に人の体を触るもんじゃないよ。」

「はいはい、そうしますよ。ところでおまえの体はどこにおいてあるんだよ。」

「後ろのトランクの中。」

「あんなところに置いていたのか。」

「ああ。実はおまえが行ってたパチンコ屋、俺も朝から並んで行ってたんだよ。
 おかけで新台は取れたんだけど、途中でおっさんに台を取られちゃってさ。
  その台を整理したのが、この彰子だったのさ。」

「なるほど。それで彼女の体を使ったのか。」

「そういうこと。別に恨んでたわけじゃなかったんだぜ。俺もおまえも負けるのがいやだっただけさ。」

「そうか。おまえもいい奴だな。」

「だからさ、今日泊まるホテル代、踊ってくれよ。さっきは一銭も払わなかったんだからいいだろ。」

「ま、それも仕方ないか。いいよ。そのくらいは。」

「そう来なくっちゃ。なんせこの子、全くお金持ってないから。もちろん俺の体もすっからかんだけどな。」

「はははっ。おまえもたくさんつぎ込んだんだな。よし、ホテルまで連れて行ってやるよ。」

「ああ、頼んだ。」

「よし、任せとけ。」
 
 
 
 

・・・・こうして志郎は、彰子の体のままホテルで一夜を過ごした。
博和は再三、志郎に一緒に泊まろうと迫ったのだが、志郎の体を頼まれ、
仕方なく家に帰ったのだった。

志郎は一人、彰子の体で楽しんだ後、次の日にそのままパチンコ屋に出勤、タイミングを見計らって
彼女の体から抜け出た。
彰子は、丸1日の記憶がないうえ、家にも帰っていないという事で、かなり問題になっていたようだが、
そんなことは志郎は知った事ではなかったので、そのままほっておいたようだ。
 
 

「なあ博和。俺、パチンコ屋で働こうかな。」

「彼女の体がそんなによかったのか。」

「そういうわけじゃないんだけどさ。あんな店だったら別に頭使うわけじゃないし、
 体を使うわけでもないから俺に向いているのかなって。」

「ま、志郎には向いてるかもしれないな。」

「そうだろ。よしっ!一度あのパチンコ屋に面接に行ってみるよ。」

「ああ、これで決まれば晴れて自由に楽しめるってもんだな。」

「まあな。それじゃあ明日、ビシッとスーツで行ってくるよ。」

「ああ、頑張れよ。」
 

こうして志郎は次の日、あのパチンコ屋「スカイブルー」に面接に行ったのだ。
しかし・・・

「おい、どうしたんだよ志郎。ダメだったのか?」

「・・・・なかった・・・・」

「なかったって、やっぱり採用予定がなかったって事か?」

「・・・店がなかった・・・」

「はあ?」

「・・・つぶれてた・・・」

「そ、それってもしかして倒産ってことか?」

「・・・ああ・・・・」

「・・・おまえも災難だな・・・・」

「・・・ああ・・・・」

「まだ就職先を探さなければならないんだ。」

「・・・・そういうこと・・・」

「プッ・・・ま、仕方がないじゃないか。俺も協力してやるって。」

「・・・プッて・・笑ったの?今。」

「い、いや。そ、そんなことないぞ。」

「笑っただろ。」

「だ、だからそんな事ないって・・・プププッ・・」

「そらっ!笑ってるだろ。この野郎!」

「ご、ゴメンよ志郎〜っ!」
 

・・・・・まだまだ志郎の就職先は決まりそうにない・・・・
 

つづく。
 
 

あとがき

この作品は、当初12月始めに完成する予定でした。
しかし、途中から話につまづき、あれよあれよというまに1ヶ月以上
ほったらかしという状況になってしまいました。
途中で書くのを止めると、後からアイデアを出してもなかなかつながらないから難しい。
他の作家さんはよく連載を続けられるなあと、書きながら尊敬してしまいました。
この作品の7割以上は、後から一気に書き上げたものです。
もともとパチンコ屋で終わる話にするつもりだったのですが、あまりに短い内容に
なってしまったし、盛り上がりに欠けることになるので、あえて料亭まで
追加しました。
ご期待していただいた方々も、多少はいらした(かな?)と思うので、
あまりにつまらない内容だと、本当に申し訳ないので、こんなに時間がかかってしまいました。
また、出来れば今回が最終話としたかった「〜行こう」シリーズですが、
そうするとなんとなくさびしい感じがして・・・
思わず最後にオチをつけてしまいました。

もう少し続けたいと思いますので、皆様、どうぞよろしくお願いします。

それでは最後まで読んで下さった方々、どうもありがとうございました。

Tiraより
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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