バスはゆっくりと山道を通り、緑に囲まれた合宿場へと辿り着いた。
二階建ての白い箱型の宿泊施設、そして隣には体育館。
屋外にはテニスコートが二面整備されている、かなり広い合宿場だ。
バスから降りた女子バレーボール部員達は、宿泊施設の二階にある部屋に五〜六人ずつ別れて入ると、
荷物を置いて一階の食堂で昼食を取った。
そして少しの休憩を取った後、それぞれの部屋でユニフォームに着替え体育館に集合した。
すでに富雄は、田村千紗の身体から抜け出ているので、体育館に来た千紗の股間はすっきりしたものだ。
襟の付いた白い半袖のユニフォームに七分丈の黒いスパッツ。
白い肘当てと膝当てをした姿はなかなか様(さま)になっていた。


ネットを張り終え、ボールやマットなど必要な物を用意した部員達が、青山先生の元に集まる。
赤いジャージに身を包み、首から笛を描けていた青山先生は、皆の顔を見ながら話を始めた。


「用意は出来たようね。先に話しておくけど、今年は男子バレーボール部は都合が悪くなって合宿に
来ることが出来なくなったの。だから、二面のコートは全部私たちが使えるのよ」


少しのざわめき。
二面使えて嬉しいと思った生徒もいるが、それ以外の目的を持っていた生徒にとっては残念な知らせ。
男子バレーボール部の生徒と一緒に練習することを楽しみにしていた女子も、中にはいるのだ。
そして、千紗と亜衣、富雄にとっても、男子バレーボール部の豊平先輩の身体を使って
小阪先輩に復讐するという筋書きが狂ってしまった。


「まあ……仕方ないわね」


隣に立っていた千紗に亜衣がコクンと頷く。


「じゃあ練習を始めるけど……あれ?小阪さんは?」


青山先生が集まった部員達を見回し、小阪先輩がいないことに気づく。


「さあ……部屋で着替えていた時はいたんですけど」

「わ、私が探してきますっ」


キョロキョロと周りを見る部員達の中、そう言って手を挙げたのは千紗だ。


「あ……え、ええ。そ、それじゃあ田村さん、お願いするわ」


いきなり大きな声で返事をした千紗に驚いた青山先生。
皆の前を元気よく走っていく千紗を見て、「小坂さんは田村さんに任せて先に練習を始めましょう」と言うと、
柔軟体操をするように指示した――





千紗と富雄の悪巧み(第7話)
作:Tira





「上手くやっているかしら?」


千紗は急いで小阪先輩がいるであろう部屋に向かった。
体育館を出ると宿泊施設の階段をハァハァと駆け上り、手前から二つ目の部屋の前に辿り着く。
人気もなく、しんと静まり返っている廊下をキョロキョロと見回したあと、


「……よし」


そう呟いた千紗は、勢い良く扉を開けた!
……つもりだったが、鍵が閉まっていて開けることが出来ない。


「きゃっ!だ、誰っ!」


扉の向こうから小阪先輩の驚いた声が聞こえた。


「あ、田村です。どうしたんですか?小阪先輩、皆が待ってますよ」

「……ちょ、ちょっと気分が悪いだけよ。私の事はいいから練習してきなさいよ」

「でも、青山先生が心配するし……」

「青山先生には気分が悪いから休むって言っといて、分かった?」


ちょっとヒステリックな声で千紗に話している小阪先輩。
これはきっと――


「小阪先輩、それじゃあ青山先生を呼んできますっ」

「えっ!い、いいのっ!そんな事をしなくてもいいからっ!」


青山先生を呼んでくるという言葉に慌てた小阪先輩は、カチャっと鍵を開け少しだけ扉を開いた。
その隙間から覗いた千紗。
どうやら小阪先輩はスパッツの上からジャージのズボンを穿いているようだ。


「え?どうして呼んで来なくていいんですか?」


千紗にはその理由が分かっているから面白くて仕方がない。
表面(おもてづら)は、心配そうな顔をしていても、内心ではケラケラと笑っている。


「いいからいいのよ」

「でも私、小阪先輩の事が心配だから先生を呼んできます」


そう言ってゆっくりと部屋を遠ざかり始めた。


「ちょっと!」


また小阪先輩が慌てて扉を開け、去ろうとする千紗の手首をぎゅっと掴んだ。

「あっ」

「呼ばなくてもいいって言ってるでしょっ!」

「でも……えっ!?」


千紗はわざと気づいたように、小阪先輩の股間を見た。
ジャージに包まれている下半身。
でも、股間には女性とは思えない縦に長い膨らみが存在していた。
わざとらしく、ハッとした表情を見せる。


「あっ!な、何でもないっ」

「せ、先輩?」

「何でもないのよっ」


小阪先輩はパッと顔を赤くしながら背を向けた。


「小阪先輩……い、今……股間に……」

「何でもないんだったらっ!」


妙にムキになっているところがまた面白い。
見られてはいけない物を見られてしまった。
そんな感じだ。


「でも……すごく膨らんでいたみたい……も、もしかして……」


その「もしかして」の言葉に反応した小阪先輩。


「ち、違うわよっ。そんなの付いている訳ないじゃないのっ」


まだ何も言ってないのに。


「や、やっぱり……せ、先輩の……小阪先輩の股間には……い、いやぁ〜!」


千紗は無理矢理、話を誘導すると急いで体育館に戻ろうと走り出した。


「あっ!田村っ。ま、待ちなさいっ!」


小阪先輩も慌てて千紗を追いかける。


「こ、来ないでっ!気持ち悪いよ〜」

「違うの、違うのよっ!」

「だって……男のアレが付いてるんでしょっ。あっ!」

「だから待ってって」


必死になって千紗を捕まえた小阪先輩。


「ねえ田村、お願いだから皆には内緒にしてっ」

「だ、だって……」

「頼むから。ねっ、私にも何が何だか分からないのよ」

「せ、先輩。それって……ほ、本物なんですか……」

「……わ、分からないわよ。そ、その……急に……は、生えてきたんだから……」


千紗は分かっていながらも、恐る恐る小阪先輩の股間を見てそう言った。
小阪先輩は少し前かがみになって恥ずかしそうに両手で股間を隠し、千紗に見られないようにしている。
そんな小阪先輩の姿を見て、『私は今、小阪先輩より立場が上になっているんだ』と確信した千紗。
それが妙に嬉しい。
千紗が青山先生や皆に言う事を拒む小阪先輩。
あの小阪先輩の弱みを握ったことになるのだ。


「あ、あの……小阪先輩」

「何……」

「ちょっと触らせてもらってもいいですか?」

「ダ、ダメよそんなのっ!」

「まさか……大人のおもちゃなんか入れているんじゃないですか?」

「そ、そんなの使うわけ無いじゃないのっ!」


またかぁっと顔が赤くなった小阪先輩。
普段は偉そうな事を言っている小阪先輩も、今は妙に可愛らしく思える。


「皆が練習している間に、大人のおもちゃを使って遊ぼうと思っていたとか」

「だ、誰がそんな事をっ……」

「そうなんですか。ふ〜ん、それなら見せてくださいよ。本物かどうか、私が見てあげますから」

「い、嫌よ……そんなの。どうして見せなきゃならないのよ」

「……私、小阪先輩の事が心配で言っているんです。別に先生や他の人に言おうなんて思ってないですから」

「……ほ、本当なの?」

「はい。本当です」

「…………」

「見せてくれるんですか?」

「……誰にも言わないって約束するなら……」

「分かりました」


小阪先輩は横を向いて、ゆっくりと両手を股間から遠ざけた。
すると、ジャージの生地まで盛り上げている大きな物――そう、富雄のムスコが現れたのだ。

(いやらしい〜。小阪先輩の股間)

そう思いながら小阪先輩に寄り添うように立つと、ジャージのズボンの上から右手の手のひらで
そっと股間を触り始めた。
硬くなったムスコが喜んでいるように思える。


「あっ……」


小阪先輩が小さく声を漏らす。
初めて他人にムスコを触られた感触。敏感に反応したのだ。


「すごい……これって本物なんですね……」


分かっていながらそう呟いた千紗。
小阪先輩は恥ずかしそうにしながらムスコを触っている千紗を見ていた。


「だ、だからさっき言ったじゃない」

「ふ〜ん」

「あっ!ちょっ……」


千紗は小阪先輩のジャージとスパッツのゴムを掴むと、その中が見えるように
手前に強く引っ張って覗き込んだ。
すると、その中には元気そうにしている富雄のムスコがこちらを見ていたのだ。
驚いたことに、小阪先輩はスパッツの中にはパンティを穿いていなかった。
きっとパンティのゴムがムスコの首を締め付けて痛かったのだろう。


「ほんとに男のアレなんですね……で、パンティは穿いてないんですか?」

「だって……」

「痛いから?」

「そ、そうよ……パンティのゴムが当たって……」

「ふ〜ん」


自分でも体験しているので、その感覚はよく分かる。
こうやってパンティを穿いていなければムスコの痛みや不快感はなくなるのだから。
それにしても小阪先輩、ノーパンで練習に行こうと思っていたのだろうか?
いや、着替えはしたものの、練習に行く気なんてなかったのだろう。


(富雄に気持ちいい思いをさせるのは癪(しゃく)に障るけど、小阪先輩の普段見せない顔も見てみたいし)


そう思った千紗は、そのまま小阪先輩の前にしゃがみこむと、力を入れてジャージのズボンとスパッツを
太ももの辺りまで下げてしまった。


「きゃあっ!」

「すごい!小阪先輩のアレ、反り返ってますよ」

「何するのよ田村っ!こんな所でっ」

「大丈夫、誰も見ていませんよ。それよりも……小阪先輩の股間に男のアレが生えているなんて」

「ダメよっ。早く隠して」


小阪先輩は中腰になってスパッツとズボンを上げようとした。
しかし千紗は、


「本当に本物なのかなぁ……」

「だからさっきから……あっ!ちょ、ちょっと……」

「んふ……」

「うっ……あっ……」


小阪先輩の手の動きが止まる。
そして、妙に色気づいた吐息を漏らし始めたのだ。


「ダ、ダメッ。田村っ……そんな、あぁ」

「んっ……んんっ」

「いや……や、止めて……」

「んん……んふっ……はんっ、ん、んん」

「ふあぁっ……な、何よこれ……はあ、はぁ、あんっ」


生暖かいものに包まれた感触。
吸い付かれる気持ちよさ。
初めて体験する男の快感。

小阪先輩は両手で千紗の頭を掴もうとした。
しかし、千紗はその手に自分の手の指を絡めて掴んだ。
手を握り合う二人。
太ももをギュッと閉じて喘いでいる小阪先輩を下から覗き込んでいる千紗。

(小阪先輩ってこんな表情もするんだ、始めてみたわ。それにしても富雄のムスコ……おおきいな)

千紗は舌を使ってムスコの首を舐めながら、口の中で吸い付くように刺激をした。


「だ、だめっ……そんな事しちゃ……はぁ、はぁ……あっんっ」

「んっ……んんっ……んん……」

「ちょっと……んあっ!た、田村っ」

「んふ……はむっ……んぐっ、んぐっ」

「ふあぁっ……ああっ、あっ。や、やだっ……そ、そんなっ」


千紗は喉の奥までムスコを咥え込み、愛しそうに舐めまわっっている。
その快感に思わずイキそうになった小阪先輩は、腰を引いて千紗の口から
ムスコを離そうとした。
すると千紗はムスコに吸い付きながら小阪先輩のスパッツをギュッと引き上げると、
今度はスパッツごとムスコを握り締めて上下にしごき始めたのだ。


「やっ!田村っ、だめよっ。手を離してっ!」

「小阪先輩、もうイキそうなんでしょ。私が最後までしてあげますよ」

「だ、だって……スパッツが……あっ、だめっ……やだっ……あっ、んんっ……んんんっ!」


千紗が何度かムスコをしごくと、小阪先輩はブルッと身体を震わせてイってしまった。
スパッツの中に白い分身達がほとばしる。


「あっ……ああっ……あ……」


そして、二〜三度放出したムスコは、ビクビクと脈打ちながら少しずつ小さくなっていった。


「小阪先輩、気持ちよかったですか?」

「はあ、はぁ……はぁ……」

「スパッツの中に出しちゃいましたね」

「だ、だって……田村が……ん?」

「あ……」


握っていたムスコがスッと手の中から無くなる。
どうやら富雄は小阪先輩の身体から抜け出たようだ。
いつもどおりのノッペリとした股間になった小阪先輩だが、スパッツの中は
ヌルヌルとした白い分身達が付着していた。


「あれっ?な、無くなったの?」

「そうみたいですよ、先輩。良かったですね」

「え、ええ……」

「だったら早く練習に行きましょうよ。私、小阪先輩の股間にアレが生えていたなんて事は
誰にも言いませんから」

「えっ!?ど、どういう事?ど、どうなってるの?」

「ほら、早くっ!」

「あっ、ちょっと!」


強引に小阪先輩の手を引いて体育館へと連れ出す千紗。
まだ股間の辺りが気持ち悪い小阪先輩は、ジャージのズボンを引き上げながらも
千紗に引きずられるように体育館へと走り出したのだった――






体育館では柔軟体操を終えた女子部員達が練習を始めていた。
スパイクやレシーブ、そしてトスを上げる練習など、それぞれが一生懸命身体を動かしていた。


「遅かったわね、何かあったの?」


走ってきた二人に、青山先生が声をかけた。


「いえ、何でもありません。ね、小阪先輩」

「え、ええ。すいません、遅くなりました」

「ジャージなんて穿いて、体調でも悪いの?それなら無理して練習しなくてもいいわよ」

「そ、その……だ、大丈夫です」

「そう、それなら早速練習に加わって」

「はい」


小阪先輩と千紗はまず柔軟体操を始めた。
普段なら絶対に小阪先輩と柔軟体操なんて嫌な千紗だが、今日は特別だ。


「じゃあ先輩、ジャージのズボンを脱いでくださいよ」

「えっ……だ、だって」

「大丈夫ですよ、何も見えませんから」

「…………」


小阪先輩は千紗に背を向けると、そっとジャージのズボンを下ろしてみた。
スパッツの生地には、ほんの少しだけシミが見えている。
富雄の白い分身達がにじみ出てきているのだ。
でも、それはほとんど見えないし、半袖のユニフォームの裾に隠れてしまうので
気にはならないだろう。
そう思った小阪先輩はズボンを脱ぎ終えると床に座り、


「背中を押してよ」


と千紗に話しかけた。


「いいですよ」


と言って、背中を押す千紗。


「イタイッ!そんなにきつく押さないでよっ」

「ごめんなさい。つい力が入っちゃって」

「もうっ」

「だって、先輩の股間に男のアレが生えていたかと思うと……」

「シ〜ッ!それは内緒にするって約束じゃないのっ」

「あ、ごめんなさい」


本当にからかい甲斐のある先輩だ。
そう思いながら、ギュウギュウと背中を押す千紗。
我慢しているのか、小阪先輩は「ううっ、うっ」と呻(うめ)きながら顔をしかめていた。


「じゃあ先輩、今度は私の背中を押してくださいね」

「ええ田村、しっかりと押してあげるから」

「優しくしてくださいよ。でないとまた生えてくるかもしれないから」

「……そ、そんな事あるはずないじゃない」


千紗が床に座り、小阪先輩が背中を押し始める。
痛い思いをさせられたので、仕返しをしてやろうと手に力を入れた小阪先輩だが、
あの嫌な感覚が蘇ったような気がしたのでふとスパッツを見てみた。


「やっ……う、うそ……」


そこには、先ほどまで消えていたムスコがしっかりと生えていたのだ。


「いやっ!」


たまらずその場に座り込んだ小阪先輩。


「どうしたんですか?」


振り向いた千紗が小阪先輩に話しかけると、


「ま、また……アレが……」


と言って、ぎゅっと太ももを閉じた。


「まさか……生えてきたんですか?」

「……あ、あれ?」


もう一度股間を見てみると、生えてきたと思ったムスコの存在がなくなっている。
確かに感覚はあったのに――

柔軟体操をしている間に、そんな感覚が何度か続いていた。
すると、小阪先輩には『いつムスコが生えてくるのか分からない』といった
不安な気持ち……一種の恐怖感が生まれてくるのだ。
柔軟体操が終わった後もしきりに股間を気にする小阪先輩。
何もないのに、自然と両手を前に持っていって股間を隠そうとする。


「どうしたんですか?」

「な、何でもないわよ」

「ずっと股間を気にしてるんですね」

「ち、違うわよっ!そんな事ないっ」


強気な言葉も、真っ赤に顔を染めながらしゃべっているところを見ると可愛いものだ。

(さすが富雄ね、上手くやってるみたい)


そう思った千紗は、小阪先輩と共にバレーコートの中に消えていった――





富雄と千紗の悪巧み(第7話)……おわり




あとがき

久しぶりの続編です(^^
小阪先輩への復讐が始まりました。
見えない身体で小阪先輩の中に入る富雄。
いきなり生えてきたアレに驚き、体育館に行くのをためらっていた小阪先輩を連れに来た
千紗がわざとらしく気づいて、あんな事を……
まあ、後輩に厳しく指導……というか、嫌がらせをしていた小阪先輩にとって、
千紗に弱みを握られると言うのは精神的な苦痛が大きいのではないでしょうか。
初めて男の快感を知った小阪先輩。
そんな事を考えている余裕なんてなかったでしょうが、これからまだまだ復讐が続きます。
バレーコートの中でどうこうという話はほとんどなく、練習が終わった後の入浴や
寝た後に焦点を置いて話を書きたいですね。
もちろん、折角登場するバレー部のユニフォームはしっかりと描写して(^^

それでは最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございました。
Tiraでした。

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