コードNo. S−N01
作品名 ダブル・セックス
作者名 平井和正
掲載メディア 「怪物はだれだ」角川文庫(小説)
ジャンル 変身






解説&内容紹介

 24歳のマンガ家、高城丈はある初夏の夜、恋人で歌手の香山まりとモーテルに入る。何回目かのセックスの後、まりは丈に妙な薬を飲ませ、男女逆転の変態的遊戯を強要する。自分が女に変わっていく幻覚に陥る丈。そしてペニスをまりに奪われるという夢から目覚めると、丈はベッドで一緒に寝ているまりの体の一部に強烈な違和感を覚える。ぐにゃりとしたそれは彼女に有り得ざるもの。そう、まりは男に、そして丈も女に変身していた。
 お互いパニックに陥る丈とまりだが、すったもんだの末ようやく落ち着くと、お互いの服を取替えて生活することにする。まりに教えられながら彼女のフリルのたっぷりついた下着を身に着けさせられ、さらにミニドレスを着せられる丈。まりの服を着るのに悪戦苦闘する丈だが、鏡に映った自分の女っぷりの良さにたちまち機嫌は治ってしまう。ハイヒールで歩く訓練や化粧法をまりに教わった後、自宅兼スタジオに戻った丈は、自分の妹・高城ジュンと偽って弟子たちと暮らすことにする。ベッドの中でオナニーしたり新しい下着や服をデパートで買ったり、女性としてトイレに入ったりして女性としての日常を送っていく丈だが、やがて失踪扱いになった自分に代わって売れっ子の女流マンガ家になってしまう。彼のミニスカートやジーンズを着て仕事する姿に欲情した弟子に危うく襲われそうになったりするものの、マンガ家としての忙しい日々を送る彼は、やがて初潮を迎え、遂に本当の女性となってしまう。
 そして久しぶりに会った丈とまり。まりのほうもすっかり男っぷりが板についていた。当然のように丈とセックスしようとするまり。硬くふくれあがった彼女の股間に身を硬くする丈。だが彼には彼女とセックスする気は無かった。誠実なチーフ・アシスタントと結婚することを決心していたのだ。
 だがいすれ来る、処女を失う日のことを考え腿をぎゅっとこわばらせる丈だった。きっと痛いにちがいないと……。


 平井和正先生のこの作品、今やTS小説の古典と言っても良いのかもしれません。当時エイトマンやデスハンター等のマンガの原作や、ウルフガイシリーズを発表する一方で、自らハチャメチャSFと称した短編、中編も発表されてました。この作品もその一つですが、突然女性に変身してしまったマンガ家の驚き、喪失感、羞恥心、やがて生まれる女性としての誇りや優越感、安らぎ、そんな変化が如何なく表現されてます。短編ながら、私のTSライフに大きな影響を与えた佳作です。


作品は
「怪物はだれだ」(角川文庫刊:昭和50年初版)に収載されています。
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